生活習慣病予防につながる運動の効果
生活習慣病はその名の通り、食習慣・運動習慣・飲酒・喫煙といった日々の生活習慣が原因で引き起こされる疾患の総称を指します。
脳血管疾患や心疾患の危険因子となる糖尿病・高血圧・脂質異常症のほか、日本人の三大死因であるがん・脳血管疾患・心疾患なども生活習慣病として数えられています。
生活習慣病の予防には、日常生活の中でのバランスの取れた食事や充分な睡眠をとり、禁酒・禁煙といった生活習慣の改善が効果的です。他にも「運動習慣」を身につけることで生活習慣病のリスクをさらに下げることもできます。
厚生労働省が発表した平成27年国民健康・栄養調査では、運動習慣を「1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している者」と定義しています。運動を続けることで得られる効果や必要な運動量は、それぞれどれくらいあるのでしょうか。
運動の効果とは
運動を行うことによるエネルギー消費が、生活習慣病予防の大きなカギを握ります。
エネルギー消費量が増大すると、内臓脂肪の燃焼・内臓の動きの活発化・代謝量の増加・血流の改善といった変化が身体に現れます。このような身体の変化は肥満の改善、血糖値や脂質、血圧の状態の数値改善につながります。さらに、筋力トレーニングなどの運動の場合、筋肉量の増大による体力の向上や体温上昇などの効果も期待できます。
また、運動は生活習慣病の予防以外にも、ストレス発散、集中力・想像力の向上、セルフイメージや自信・目標達成能力の向上など、心理面・パフォーマンス面においても大きな効果があると言われています。組織で取り組むことで、生活習慣病の予防だけでなく、従業員同士のメンタルヘルスやコミュニケーション促進にも効果的です。
運動量の目安
そして、日々の運動量の目安については、厚生労働省が2013年に発表した『健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)』に詳しく記されています。
具体的には「+10(プラステン):今より10分多く体を動かそう」をスローガンとしており、健康づくりのための「身体活動」と「運動」の目標も下記のように年齢別に定められています。
生活活動や運動の基準は、18歳未満は毎日最低60分以上、18歳~64歳は毎日60分、65歳以上は毎日40分です。そこに、筋力トレーニングやスポーツなどが含まれると、さらに効果的だとされています。
まずは生活の中で、歩く時間を増やす、椅子に座ったまま足を動かす、階段を利用する、仕事や家事の合間にスクワットをするなど、「10分多く(+10)」を意識し、運動を毎日の習慣にしてみてはいかがでしょうか。
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運動不足チェック
しかし、実際に自分がどれほど運動不足なのか、実感できていない人も多いかもしれません。そこで必要なのが、現状の運動量の把握です。
『健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)』では、運動を習慣化させるための4つのステップ「1. 気づく」「2. 始める」「3. 達成する」「4. つながる」を推奨しており、「1. 気づく」では運動習慣について、個人であれば自身の、組織であれば従業員の生活や環境を振り返るよう呼びかけています。
まずは項目で簡単にチェックをしてみましょう。以下の項目で当てはまるものが多いほど運動不足が進んでいるため、改善が必要です。
- 仕事が忙しくて運動ができない
- 休日は家でゴロゴロして動かないことが多い
- 軽い運動であっても、翌日まで疲労感が残る
- 足が重くトボトボ歩きが多い
- 長時間歩くと、膝や腰など身体が痛くなる
- 立ったままでは靴下が履けない
- 最近お腹まわりが太くなってきた
- 1階分でもエレベーター、エスカレーターを使ってしまう
- 坂道や階段をのぼると、息切れがする
- 動き出すとき、「よいしょ」と言ったり、終えるときにため息をついたりする
また、上記項目でのチェックのほかにも、1日あたりの歩数でも運動不足のチェックが可能です。一般的には1日1万歩※が歩数の目標として定められています。
新型コロナウイルス感染症拡大やテレワーク普及の影響で外を出歩く機会が減った今、より意識をして歩く量を増やすことが必要です。
※海外の文献より週当たり2000kcal(1日当たり約300kcal)以上のエネルギー消費に相当する身体活動が推奨されています。体重60kgが歩く際のエネルギー消費量は10分間のウォーキング(約1,000歩)に対して30kcalになります。そのため、1日のエネルギー消費を歩数に換算すると1万歩の計算になります。
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すぐにできる運動実践
運動を継続的に取り組むためにも、すぐに日常生活に取り入れられて、簡単に実践・継続できる運動から始めましょう。
簡単に始められるのが「ながら運動」です。家事の合間など家の中で行う運動や、移動時など外でできる運動など、日常生活に取り入れることで習慣化を目指せます。
両脚を軽く閉じてまっすぐ立ち、かかとをゆっくりと上げ、上がりきったらゆっくりと下ろし、かかとが床についたら再びゆっくりと上げます。かかとが床につく前に挙げるとさらに負荷を掛けることができます。
歯磨きをしながら・料理をしながら・洗い物をしながらなど、家の中で立ちながら行う家事や生活に取り入れやすい運動です。また、電車の中でも行うことができるので、つり革などに掴まりながら実践してみましょう。1回あたり5回が目安です。
歩くときは足先をまっすぐ前に向け、上半身が前や後ろに倒れないようお腹を引き締めて肩の力を抜きます。手を軽く握り、目線は数メートル先に向け、普段よりも少し広い歩幅で歩きます。歩く速さは、軽く息が上がるくらいの速めのペースが目安です。
通勤時や買い物、お出かけの時など、歩くときに簡単に実践できます。ひとつ前の駅で電車を降りる、車を少し離れたところに停めるなど、意識的に歩く機会を増やすことで、運動量の調整が可能です。歩くときには毎回実践してみましょう。
日常動作でできる「グッドモーニング」
立ちながら手軽にトレーニングができる「グッドモーニング」です。消費カロリーアップや姿勢の改善、腰痛予防にもつながります。
運動をしたいが社会人の場合、なかなか時間が作れない人も多いのではないでしょうか。運動が苦手な方や、きついトレーニングはしたくない方は日常動作を意識しましょう。
疲れ知らずのカラダを目指す「スクワット」
疲れにくい身体のためにおすすめの運動が「スクワット」です。運動が苦手な方でも簡単にでき、場所を選ばずにできます。1日1回、1セットでも構いませんので継続して行いましょう。
下半身の筋肉は、全身の筋肉の6~7割を占めているほど大きいです。筋力が増えると基礎代謝が上がるので、日常の消費カロリーが増えたり、食べても太りにくくなったりするなど、ダイエットにもうれしい効果が期待できます。
脂肪燃焼を最大化させる「HIITトレーニング」
HIIT(High-Intensity-Interval-Training)は強度の高い運動と少しの休憩を交互に繰り返し行うトレーニング方法です。トレーニング中はもちろんですが、トレーニング後も脂肪燃焼効果が長く続くと言われています。
「自分は続けることが苦手」「短時間で結果を出したい!」と思う方はぜひチャレンジしてみましょう。
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運動習慣化へのポイント
運動を始めたら習慣化するためにも、何が習慣化を阻む原因となるか知る必要があります。
厚生労働省が発表した『令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要』では、運動習慣の妨げになる点として、「仕事(家事・育児等)が忙しくて時間がないこと」が総数で38.1%以上と最も多い結果となりました。特に、運動習慣を改善するつもりである(概ね6か月以内)と回答した方の割合は52.8%と半数を超えています。
その他にも、「面倒くさいこと」「年をとったこと」「経済的に余裕がないこと」「仲間がいないこと」などの回答がありました。
この結果から、ただ運動を始めただけでは習慣化は難しいことが分かります。では、運動を習慣化するための具体的なポイントや対策とは何なのでしょうか。
個人でできる習慣化へのポイント
個人が運動に取り組む目的には生活習慣病予防のほか、ダイエットや冷え性改善が挙げられます。しかし、始めることは簡単でも、自分ひとりで運動しているために続けていくことが難しいと感じる人も多いのではないでしょうか。
具体的に、個人でできる習慣化へのポイントは3つです。
- 日常生活や習慣と結びつけること
- 小さな達成感や成功体験を励みにすること
- 複数人で楽しみながら実践すること
1. 生活の中に運動を取り入れる
新たに運動をする時間を作る際には普段の生活習慣の中に運動を取り入れることを意識してみてください。1日の行動を振り返って、どこに運動を取り入れられるか考えてみましょう。
- 朝 (散歩をする、ラジオ体操をする、ストレッチをする)
- 通勤(広い歩幅で早歩きをする、自転車通勤をする、電車の中でながら運動をする)
- 家事(大きな動作で身体の動きを意識して掃除や洗濯をする、合間にながら運動をする)
- 仕事(移動に階段を使う、遠くのトイレまで歩いて行く)
- 休憩(散歩をする、テレビをみながらストレッチをする)
- 夜 (テレビを見ながらストレッチをする、洗い物中にながら運動をする)
最初から無理をすると思わぬ事故やけがにつながる恐れがあるので、運動をする時間は少しずつ増やしていくことがポイントです。また、体調が悪いときや病気や怪我をしているときは、無理せず医師などの専門家に相談をしてください。
2. 目標設定をする
運動の習慣化には目標設定も効果的です。ここで重要なのが、目標設定はネガティブな動機付けではなく、ポジティブな動機付けで行うことです。
ネガティブな動機だとすぐに行動に移せますが、モチベーションが保ちにくく長続きしません。目標設定は運動を続けて健康でいることで叶えたい自分の姿を想像し、「子供と外で思い切り遊ぶ」「家族とたくさん旅行をする」などのポジティブな動機付けから行いましょう。
ひとつずつ達成することで目に見える結果をコツコツ積み重ねることで、運動を習慣化できます。
3. 誰かと実施する
複数人で運動に取り組むことも有効な方法で、『健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)』の4つのステップ、「4. つながる」に相当します。
家族や友人と一緒に運動をしたり、サークルなどの地域コミュニティに参加したり、誰かと実施することで「みんなが頑張っているから自分も頑張ろう」と思える環境を作ります。
他にも、周りに「毎日〇分〇〇の運動を続ける」と宣言することや、前段の目標設定でも紹介したように、「子供と遊ぶ」「家族と旅行する」など、誰かのために頑張ると決めることも習慣化に有効です。
ひとりで続けるのが不安な人は、周りを巻き込んで複数人で運動しましょう。
組織でできる習慣化へのポイント
企業などの組織が行う運動習慣化の取り組みは、従業員の生活習慣病予防だけでなく、仕事のパフォーマンス向上などに大きく効果を発揮します。
RIZAPが2021年・2022年に実施した「テレワーク中の従業員の不調と対策」「ニューノーマル時代の従業員の心と体の健康管理」調査では、テレワークを導入している企業のうち、テレワーク普及の前後で、従業員の健康面の変化があったと回答した企業は約8割という結果でした。
テレワークが普及する中で従業員のメンタルヘルス不調を含む生活習慣病を防ぐための取り組みとして、以下の2点が挙げられます。
- 運動セミナーで運動習慣への”キッカケ作り”を行う
- 健康経営オフィスで健康を保持・増進する行動を誘発する
1. 運動セミナーで運動習慣への”キッカケ作り”を行う
運動セミナーは、運動不足の解消や従業員同士のコミュニケーション機会の促進を目的としたセミナーです。対面だけでなくオンラインでの運動セミナーも実施されており、その需要は高まっています。
セミナーは座学と実践に分かれており、座学では運動の重要性や、運動不足による健康リスクについての解説、実践では筋力トレーニングやストレッチ、ヨガなどを行います。
運動セミナーの効果を最大限に発揮するためには、組織の健康課題や目的に合わせたセミナーを実施することが必要です。たとえば、デスクワークによる健康被害を防ぐ対策として、座りながらできる筋力トレーニングや小スペースから始めるトレーニングで解決するセミナーや、肩こり腰痛の対策・運動不足解消を解消するセミナーがあります。
運動セミナーには、生活習慣病予防に向けた運動の習慣化はもちろん、組織で実施することで従業員同士のコミュニケーションの促進といった効果が期待できます。他にも、生産性の向上やメンタルヘルス対策など、仕事面でもポジティブな影響を与えられるでしょう。
2. 健康経営オフィスで健康を保持・増進する行動を誘発する
健康経営オフィスは、健康を保持・増進する行動を誘発することで、働く人の心身の調和と活力の向上を図り、ひとりひとりがパフォーマンスを最大限に発揮できる場のことを指します。
- 従業員が利用できるジムを社内に設置
- 社内食堂で健康メニューの提供
- 社内クリニックの設置 など。
このように、快適性を感じるスペースや空間の確保・社内コミュニケーションが活性化する工夫や適切な食行動の促進も「健康経営オフィス」づくりとして重要な役割を担います。
従業員の健康作りのための取り組みが健康だけでなく、仕事のパフォーマンスや企業価値を最大化することへ繋がります。
まとめ
近年はコロナ禍によるテレワークの普及により運動不足を訴える人が増えたため、生活習慣病のリスクも上昇傾向にあります。運動不足は、個人の健康に影響を及ぼすことはもちろん、企業にとっても従業員のパフォーマンスや企業価値に大きな影響を及ぼすため、運動の習慣化は大きな課題と言っても過言ではありません。
運動の習慣化は個人単位で行っても問題ありませんが、企業単位で従業員に対して健康セミナーの実施や健康経営オフィス導入など、運動不足の解消のための施策を取り入れれば、より多くの人の運動習慣化に寄与できるでしょう。
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