ワークライフバランスとは
ワークライフバランスとは、「仕事と生活の調和」のことです。仕事がうまく進めば私生活が潤い、私生活が充実すれば、モチベーションや経験を仕事に還元できるといったように、お互いによい影響を与え合いながら、相乗効果を生み出します。
またワークライフバランスには就業継続や両立支援だけではなく、社員が能力を発揮し、積極的なキャリア形成を図ることも期待されています。
ワークライフバランスの定義
内閣府が掲げる「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」では、仕事と生活の調和のとれた社会について、以下のように定義しています。
「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」
引用:内閣府 男女共同参画局 仕事と生活の調和推進室「仕事と生活の調和とは(定義)」
具体的には以下の3つが満たされている状態を表す社会であると定義されています。
- 就労による経済的自立が可能な社会
- 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
- 多様な働き方・生き方が選択できる社会
内閣府が掲げる「仕事と生活の調和推進のための行動指針」では、仕事と生活の調和がとれた社会を実現するために、子育てや介護など、従業員の置かれた立場によって柔軟に働き方が選択できる制度や風土づくりなどを企業に求めています。
実現が求められる社会的背景
内閣官房が2019年より実施している【ワークライフバランス推進強化月間(2020年に「働き方改革推進強化月間」に改称)】の影響により、ワークライフバランスが一層注目を集めるようになりました。
その背景には、下記のような要因があると考えられています。
従業員の価値観の変化
仕事と家庭の両立や、プライベートの時間を確保するために、長時間労働への対策・柔軟な働き方が選択できる環境が企業に求められています。
従業員の価値観の変化は、ワークライフバランスの浸透に大きな影響を与えました。働き方改革が進む昨今では、「仕事だけではなく、プライベートも大切にしたい」という考え方が広まってきています。
また働き方の多様化(在宅勤務・副業の自由など)により、会社により柔軟な対応、フレックスタイム制の導入、テレワークの導入を求めている従業員が増えているのも現状です。実際に約50%以上の労働者が、正社員の働き方の多様化・柔軟化に対して賛成(現状を変える必要がある)、どちらかといえば賛成と意向を示しています。
一方で、日本の正社員は年間労働時間が約2,000時間と高止まりしており、週60時間以上働いている割合が12.5%にもなります。これは世界保健機関(WHO)が「過労死の危険性がある」としている働き方です。
企業は従業員の価値観の変化に合わせ、働き方を見直し、長時間労働への対策・柔軟な働き方をすることで人材の確保・生産性の向上を目指すことが今後より必要になります。
企業の労働力確保への課題
少子高齢化が進むことで、今後日本の労働人口は減少していくとされていくとされており、労働力の確保は日本企業にとって大きな課題です。
企業間競争の激化が国内外で進んだことや、経済低迷・産業構造の変化といった背景から、人件費をできる限り抑え利益を確保する目的で、非正規雇用の割合が大幅に増加しています。
総務省が発表している「労働力調査(2022年3月分)」によると正規雇用の割合は63.4%、非正規の割合は36.6%になっています。平成元年の非正規割合は約20%だったため、大きく増加していることが分かります。
ただ、非正規雇用で働いている従業員の中には低賃金や不安定な雇用によって経済的に自立できず、例えば「結婚したくてもできない」「子供が欲しくても産めない」などの問題が生まれています。従業員がこのような問題に直面した場合、離職する可能性は高くなります。
企業は労働力を確保し、競争力を強化するためにも、柔軟な雇用形態の導入や、従業員の人生のフェーズに合わせたニーズへの対応を通して従業員が「働きたい」と思える環境を整える必要があります。
類似した概念との違い
ワークライフバランスと類似する概念に、「ワークライフインテグレーション」、「ワークライフマネジメント」があります。また近年では「ワークアズライフ」というキーワードも出てきました。
ワークライフインテグレーションは、仕事と生活を相反するものとして切り分けるのではなく、どちらも人生の一部として統合する考え方です。一方、ワークライフマネジメントは、自分の意志で仕事と生活を主体的にマネジメントし、どちらも充実させようというものです。
ワークライフマネジメントとは、仕事(ワーク)と生活(ライフ)、双方の充実を自ら積極的に意識してマネジメントし、相乗効果を発揮していく考え方です。「ワークライフマネジメント」は、「マネジメント」という言葉を用いることで、仕事と生活のバランスを誰かに準備してもらうのではなく、自らが主体的に作り上げていくものであるという考え方が込められています。
ワークアズライフとは、仕事とプライベートを区別せず、全てが仕事であり趣味だとする考え方です。提唱しているのは、筑波大学図書館情報メディア系准教授であり、多方面で活躍されている落合陽一 氏です。
ワークライフバランスが、仕事と仕事以外のプライベートの時間、これらを区別して、それぞれを充実させようとする考え方であるのに対し、ワークアズライフは、仕事(やりたくないこと、ストレスの溜まる嫌なこと)と生活時間を区別せずに捉え、睡眠以外の時間を最大化させるという考えです。睡眠以外の時間、つまり起きている時間はすべて仕事でもあり生活でもあるという考え方です。
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取り組む効果
社会的な要因でワークライフバランスが注目されているいま、対策を考え実行に踏み出したいと考える企業は多いでしょう。しかし具体的に、ワークライフバランスが実現すると、企業と従業員にはそれぞれどのようなメリットが生まれるのでしょうか。
企業のメリット
企業の立場においてのワークライフバランスを改善するメリットは、離職率の低下や採用などの人材面と生産性向上の経営面の2点が考えられます。以下で詳しく解説します。
生産性向上
事業活動において人材は最も重要な経営資源であり、従業員が健康的に働ける労働環境の整備は企業の義務と言っても過言ではありません。従業員の労働時間が長く、残業が増えすぎると、体調を崩して休職するはめになったり、過労死の危険も考えられます。また、従業員の健康状態が悪くなると、病気で仕事を休まざるを得ない従業員が出てきて、人手不足に陥ります。そうなると、仕事の穴埋めをする他の従業員の負担が増えて、さらに健康状態が悪化するという悪循環が生じる恐れもあります。
ワークライフバランスが実現すれば、従業員たちはプライベートの時間を十分確保できるようになります。
独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の調査によれば、健康不安を抱えている人の4人に1人は、自身の能力を充分に発揮できていないと回答しています。
健康不安と能力発揮の関係

休暇日数や趣味に費やす時間の増加で心身がリフレッシュされれば、健康不安も解消される可能性が高くなるため、労働生産性の向上が期待できます。生産性向上への取り組みによって人手不足の解消やワークライフバランスを実現することで、従業員は精神的にも肉体的にも健康状態を保てる可能性が高まります。
企業イメージの向上
「ワークライフバランスに力を入れている企業=従業員を大切にする企業」というイメージが定着すると、企業の社会的な信頼度もアップします。社会的にもワークライフバランスは注目されているため、SNSで紹介されるなどして優良企業としての知名度が上がります。
また近年、企業には社会的責任(CSR)が求められています。CSRの概念には、顧客や地域社会に対する取り組みだけではなく、従業員に向けた活動も含まれます。
CSRの一環としてワークライフバランスを取り入れれば、「働きやすい会社」、「ホワイト企業」といった認知が広まり、企業イメージの向上に結びつきます。
優秀な人材の獲得・人手不足の解消
近年はワークライフバランスに力を入れている企業の人気が高く、積極的な取り組みを行う企業は、求職者によい印象を与えます。「社員を大切にする会社」、「先進的な働き方ができる会社」と認知されることで求人応募が増え、優秀な人材を獲得しやすくなります。
ワークライフバランスは求職者が職場を決める際の重要な要素のひとつでもあります。ワークライフバランスの取り組みの一つにに福利厚生がありますが、新卒者に就活時に福利厚生について確認したことがあるかを質問したアンケートでは回答者の52.3%「ある」と回答をしています。他の企業にはない独自の福利厚生サービスがあれば、求職者の関心を集められるでしょう。
昨今、若年層を中心により良い職場への転職は当たり前になっており、優秀な人材ほどその傾向が強いといわれています。また、転職にハードルが低い人材はプライベートを大事にする傾向も広く知られています。
離職率改善
今後、少子高齢化に伴う労働力不足の深刻化や、育児・介護、病気治療、自己啓発等、男女を問わず何らかの制約の下で働く人が増加するとみられ、属性に関わらず多様な社員が活躍できる組織づくりは、企業にとってますます重要になると考えられます。その際にワークライフバランスを整える取り組みは大変重要になります。
また離職のきっかけとして「心身の健康」が年々高まっており、ワークライフバランスの取り組みとして心身の健康を保つような取り組みが進むことによって、上記のような理由だけでなく健康上の理由で離職する割合を改善していくことにもつながるでしょう。
業務効率改善による時間外労働の削減
時間外労働で働き過ぎると、生活や休息のための時間が削られ、豊かな生活を送ることができません。仕事と生活の両方を充実させ、両者のバランスをとるためには、時間外労働を是正することが大変重要です。
ワークライフバランスの取り組みと時間外労働の削減は切っても切り離せません。時間外労働や長時間労働の取り組みなしには、ワークライフバランスは実現しないでしょう。
単に減らすのではなく、業務効率改善による削減であることが重要です。
多様な働き方を実現できる環境整備
働きがいや働きやすさを追求していく上で男性・女性、既婚・未婚といった属性にとらわれることなく、多様な働き方を実現できる環境を整備していくためにワークライフバランスへの取り組みは大変重要です。
特に女性は結婚、出産といったライフイベントに影響を受けやすい上、それぞれのライフステージで必要となる支援も多様なため、サポート体制も取りこぼしのないよう多角的に各種制度や環境の構築を進める必要があります。
従業員のワークライフバランスを充実させる取り組みを推進することで女性活躍を推進することだけでなく、すべての従業員が働きやすく、働きがいのある職場環境を構築しモチベーション高くいきいきとした就業継続ができるようになります。
従業員のメリット
一方従業員側のメリットとしては、フレキシブルな働き方の実現や自己実現、モチベーションの維持など、実際の働く制度から精神的な面までの改善が考えられます。
個人の事情に合わせた働き方の実現
時短勤務やテレワークを導入すれば、時間や場所にとらわれない多様な働き方が可能になります。個々の事情に合わせて働き方が選べるので、子育てや介護を抱える従業員や、心身の事情により出社が難しかった従業員たちなども活躍できる場が広がります。
健康的な生活習慣の実現
長時間労働や睡眠不足といった不規則な生活を続けていると、健康リスクが高まります。ワークライフバランスを見直すことで、運動やゆっくりと食事をする時間が確保できるため、健康的な生活習慣の実現につながります。
独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の調査によれば、週実労働時間が 60 時間以上ある方は、週実労働60時間未満の人に比べ、健康不安を感じる割合が大きい傾向があります。ワークライフバランスの実現には、労働時間や生活環境の見直しがとても重要だと言えます。
週実労働時間の長さと健康不安の関係

自己実現の可能性向上
プライベートな時間が確保できれば、趣味やスキルアップ、副業にも時間を費やせるようになります。読書やセミナーに参加するなどしてスキルを磨けば、自身のキャリア形成にも役立ちます。
企業が取り組むべき施策
ワークライフバランスとは、仕事と私生活とのバランスが保たれている状態をいいます。どちらか片方に重きをおくライフスタイルではなく、あくまで両方を充実させることを目指します。働き手にとって、ワークライフバランスのメリットは、多様な働き方ができること、私生活の時間の充実により自己実現が叶うこと、そして何より仕事へのモチベーションがアップすることです。
また、企業側が得られるメリットも多くあります。従業員のモチベーションがアップすることで、従業員の離職を防いだり、生産性の向上を目指せます。
では実際に、企業側ができるワークライフバランスに対する施策はどのようなものがあるのか、具体的な施策についてそれぞれ紹介していきます。
福利厚生の充実
従業員にとって、充実した福利厚生はワークライフバランスを高めるためにも重要になります。
資格取得支援制度などがあれば、キャリアアップにも繋がり、レジャー施設や宿泊施設の割引制度などがあれば、私生活を充実させることにも繋がります。また、福利厚生が充実すればするほど、仕事に対してのモチベーションの向上と生産性を高める効果も見込めます。
十分な福利厚生があることにより、私生活とのワークライフバランスが充実できることで、さらに人材の定着は見込めます。特に就活生の中では企業の福利厚生を知ることは社風の理解につながるとも考えられており、ワーク・ライフ・バランスの実現可能性を知る上でも重要は情報源となっています。それほどまでにワークライフバランスの向上をはかるためには福利厚生制度は重要であると考えられています。
さまざまなライフステージ上で職場を離脱する可能性の高い年代だけでなく、病気やキャリア等様々な両立支援系の福利厚生を充実させることで、すべての年代が風通しの良い職場に定着できるよう福利厚生の活用が期待されています。
下記のような福利厚生を充実させることで、従業員満足度向上・採用強化・生産性向上に効果が期待できるでしょう。
- 健康管理
- 休暇制度
- 働き方の多様化に対応するもの
- 住宅補助
- 食事補助
- キャリア支援
- 育児・介護・治療等の両立支援
- 社員交流に関しての制度
- 自己啓発
関連記事:福利厚生の種類一覧|法定福利厚生から法定外福利厚生まで解説
フレックスタイム制の導入
今では聞きなれた言葉となった「フレックスタイム」ですが、ワークライフバランスの取り組みには欠かせない制度です。
企業側ではなく、従業員個人が始業・終業の時間を決められるので、有効な時間の使い方が実現します。従業員にとっては働ける時間が限られている方や、自身のパフォーマンスがよくなる時間帯に合わせて労働時間を設定できるため、自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能です。
短時間勤務制度の導入
勤務時間が短くなることで、従業員によっては労働環境が向上する可能性があります。
育児や介護など既に家庭の事情で長時間の労働が難しい場合でも、時短勤務の形態があることで就労が可能です。また、労働形態が選べることによって、本来であれば離職を検討するようなライフイベントが発生しても、同じ企業で継続して長く働くことができます。例えば小学校修了まで時短勤務とする、など企業独自で年齢制限を設ける取り組みも効果的です。
参照:厚生労働省 育児・介護休業法の概要
在宅勤務の導入
今や出社をせずともパソコンさえあれば様々なツールを駆使して自宅で仕事ができる時代です。また、ミーティングなどのコミュニケーションもオンライン上で行えます。在宅勤務を導入することで、出勤のストレスが解消されたり、仕事と育児・家事との時間を調節しやすく、ワークライフバランスを充実させるのに適しています。
オフィスの方が集中できる出社派の従業員もいれば、自分のペースで仕事をした方が生産性向上につながる場合も考えられます
休暇制度の整備
ワークライフバランスの取り組みを積極的に行っている企業は、育児休暇はもちろん様々な休暇制度が整っています。十分な休暇制度があることによって従業員のリフレッシュが測れ、プライベートとの両立もしやすくなります。
「休むこと=罪悪感」といった観念を払拭するためにも、企業側が休暇制度を積極的に整えるとよいでしょう。従業員へ、信頼感と安心感を与えられます。
有給休暇・育児休暇などの取得促進
休みを取りたいけれど何となく言い出せない雰囲気では、快適な職場とはいえません。
どの立場の従業員も平等に休暇が取得できる環境である必要があります。そのためには、まず上司から率先して休暇を取る姿勢が望ましいです。休暇制度の取得が企業によって促進され、従業員が有給をとることで、従業員の満足度の向上や健康維持効果が見込めます。
また、社内掲示板等を活用し、有給休暇や育児休暇について取得状況の進捗を見せると前向きに施策に取り組んでいる姿勢が伝わります。
長時間労働への対処
労働時間が長ければ長いほど、プライベートな時間が減ります。ただし残業や休日出勤の廃止など、労働時間を減らすだけで仕事量が変わらなければ、負担が大きくなるだけです。
労働時間の見直しを行うことで、平日であっても十分なプライベートの時間を取ることができ、ワークライフバランスの向上に繋がります。
効果的な労働時間削減のためには、ひとつの作業を複数人で行ったり、代休制度を設けたりするなどの全社的な取り組みが必要です。
関連記事:長時間労働の原因や引き起こす問題とは?具体的な対策ステップ
雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
国の取り組みとして推奨されている「働き方改革」のポイントとしても挙げられているように、雇用形態の違いによって待遇に差があってはいけません。
正社員・非正社員にかかわらずどのような雇用形態であっても、公正な待遇を確保する必要があります。公正な待遇が保障されていなければ、仕事面でのモチベーションも低下し、十分な賃金が支払われなければプライベート生活も充実して過ごすことはできません。ワークライフバランスを向上させるためにも意識改革を行い、すべての従業員に公平な待遇を徹底することが重要です。
参照:厚生労働省 働き方改革
ワークライフバランスを取り入れ企業課題が解決した事例
続いて、具体的にどんな制度を導入するかを検討する必要があります。
企業が実際に取り入れ、企業課題が解決したワークライフバランスの取り組みの事例をいくつか紹介します。
大胆な改革で労働時間を軽減|第一生命保険株式会社
第一生命保険株式会社では内勤職員の職員満足度が低下し、内訳として女性職員の満足度が低くなっていることを課題としていました。
解決策としてマタニティ休暇の導入のほか、女性が出産、育児に際して働きやすい制度をが導入しました。さらに、さらに、終業時刻目標の設定に加え年間6日間の年次有給休暇取得のをルール化などを行っています。
これにより、月間の平均残業時間が約3分の1に減少し、有給休暇の取得率も7割近くに向上しました。
参照:内閣府 社内におけるワーク・ライフ・バランス浸透・定着に向けたポイント・好事例集
独自制度で休暇取得率の向上へ|株式会社ツナグ・ソリューションズ
株式会社ツナグ・ソリューションズでは、従業員が長期的に継続して働ける環境を構築することを課題として、特別休暇制度を導入しました。
例えば大切な人の誕生日を祝うための「LOVE休暇」は、年1回の休暇に加えてプレゼント代として1万円が支給されます。他にも、チケット代上限5,000円が支給されるエンタメ休暇や、資格取得のための勉強休暇などがあります。
従業員数が増えることで特別休暇の取得率が減少していましたが、社長自ら制度活用を呼びかけ、部長会で特別休暇の取得状況の報告を行うようになり、取得率が100%まで向上しました。
参照:内閣府 社内におけるワーク・ライフ・バランス浸透・定着に向けたポイント・好事例集
学童完備で安心して働ける環境作り|大里綜合管理株式会社
大里綜合管理は従業員の子育てに伴う労働の負担を課題としてその負担を少しでも軽減させるために、福利厚生として学童保育を開始しました。
共働き世帯にとって学童の存在は大きいですが、社内にあれば、親は安心して仕事に集中できるうえに、送迎時間の短縮にもなります。さらに、地域の子どもたちも利用が可能という、地域貢献にもひと役買う福利厚生施設が利用できるのは大きなメリットです。
利益よりも、周りとのつながりを大切にすることが企業の成長につながるという理念が功を奏した例です。
参照元:千葉県 ワーク・ライフ・バランス取組事例集
業界に先駆けた活動が多くのメディア等に掲載|パシフィックコンサルタンツ株式会社
パシフィックコンサルタンツ株式会社の主要な業務は公共事業のため、毎年年度末の1~3月に業務が集中するだけでなく急な顧客からの要望への対応等も多く、長時間残業となりがちであることが以前からの課題でした。
【具体的な取り組み】
- まずはグループ単位で自主的に働き方の見直し、改善に取り組み、進捗状況の報告と成果報告を実施
- 長時間労働削減のための施策を実施している組織を社内で公募し、優れた事例を表彰
- 従来から設定されていた毎週水曜日のノー残業デーをより強化
- ファミリーデー(従業員の家族を職場に招待する日)の開催
- スタンディング会議、テレビ会議等の実施 等
業界に先駆けた活動が多くのメディア等に掲載され評価されることにより、社員の取り組みへの肯定感も高まりました。
グループ単位で行った見直しの中で効果が確認された「朝メール」「報告メール」(出社時に自分の1日の業務スケジュールを、帰社時に1日の成果や業務の状況等をグループにメールで配信し、自らの状況を共有する仕組み)は、その後多くの部門に展開されています。
また、業務改善の取り組みにより売上は増加しても残業時間は減少傾向にあり、売上を落とさずに生産性を向上させられることが実証されました。
参照元:内閣府 社内におけるワーク・ライフ・バランス浸透・定着に向けたポイント・好事例集
月間平均残業時間は業界平均値の約3分の1程度| 第一生命保険株式会社
第一生命保険株式会社では、内勤職員の職員満足度が2003年から2004年にかけて低下し、中でも女性職員の満足度が相対的に低かったことが大きな契機となりワークライフバランス推進につながっていきました。お客様サービスの担い手となる女性職員の満足度の低下を重要な経営課題と考え、解決を図ってきました。
【具体的な取り組み】
- 両立支援関連施策を大幅に改定
- 勤務時間の縮減(入力端末の稼働を17時に一斉にシャットダウン、業務量削減のために業務工程の見える化や事務の標準化、早帰り日の設定)
- 休暇取得の推進(マタニティ休暇、産前・産後休業期間の給与を全額支給、育児サービス経費補助、孫誕生休暇、計画公休制度を導入し、年間6日間の年次有給休暇取得をルール化)
- 在宅勤務制度の導入 等
ワークスタイル変革の取り組みにより、月間平均残業時間は業界の平均値と比較し、約3分の1程度となっています。年次有給休暇取得率も向上し、7割近くとなりました(いずれも2013年度実績値)。また、上記のような取り組みを含む経営品質向上に関する 好事例を表彰して「見える化」することにより、好事例を全体に共有していきました。
参照元:内閣府 社内におけるワーク・ライフ・バランス浸透・定着に向けたポイント・好事例集
次世代の人材育成で組織力の維持・向上へ|白鳥製薬株式会社
白鳥製薬株式会社では、本質的に社員のことを考えるのであれば、景気に左右されない、というよりむしろ景気の悪い時ほど社員の底力が発揮されるような人材基盤を築くことが求められると考え、人材育成で組織力の維持・向上に向けて取り組みを進めてきました。
その背景として、研究職は一人前になるまである程度の年数がかかるため、女性は結婚や出産を理由に退職に至ることのないよう社員の定着や育成と絡めてワーク・ライフ・バランスに取り組むことは重要であり、男女ともに働き続けられる職場を目指してきました。
【具体的な取り組み】
- 育児休業復帰後の短時間勤務制度の利用促進
- 全社的に有給休暇を取得しやすい環境づくり
- ワークライフバランスの取り組みを経営戦略の1つとして明確に位置づけて取り組む
短時間勤務制度の利用や有休の取得促進などの取り組み効果は目に見えにくいもので、効果として現れるのに時間がかかるものの、優秀な人材の確保や育成につながっています。
参照元:千葉県 ワーク・ライフ・バランス取組事例集
社員が会社の財産として定着率向上へ|株式会社清水メガネ
株式会社清水メガネでは、。企業が長期的に存続していくためには、しっかりとした組織体制と雇用の永続性が前提であると考え、社員が気持ちよく働ける職場づくりを進めてきました。また近年では「親の介護」が社員一般の退職理由になっているため対策の必要性を感じていました。
また、若い人材の採用も積極的に行い一人前になるまで先行投資として長期的な視野を持って人材育成に努めています。
【具体的な取り組み】
- 新入社員から各種スペシャリストまでキャリアステップごとにプログラムを作成
- 就業時間の短縮化
- 最寄りの店舗への異動
- 帰宅時間を早める取り組み
- 子どもの成長過程に合わせた勤務時間の調整 等
結果的に福利厚生や職場の風土といった生活にかかわる面の充実で社員の定着率を向上し、長期的な視点で必要なところに投資をしていく必要性を実感しています。
参照元:千葉県 ワーク・ライフ・バランス取組事例集
他にも検討しておきたい、人事課題と解決策
紹介したようなワークライフバランスの取り組みを積極的に行って結果を得るためには、人事的な課題とその解決策を検討する必要があります。
現状把握
従業員が抱えている問題や不満が、トップまで上がってくることは少ないです。以下のような方法で客観的に課題をとらえる必要があります。
従業員アンケートや面談の活用
直接的な方法としては、面談やアンケートの実施です。ただし、面と向かって意見を言えなかったり、名前を記載するアンケートでは本音を言えなかったりする場合もあるので、反応を確かめながら行う必要があります。
- 1on1
- 従業員満足度調査
- コンプライアンスチェック
- ハラスメントアンケート
- 360度評価
ストレスチェックの活用
ストレスチェックとは、従業員のストレス度を測り精神的な負担を軽減するために国によって定められた制度です。結果をもとに各種研修を行ったり、ハラスメント対策として活用したりする方法もあります。近年は、社内で行うだけでなく、産業医やカウンセリングサービスを連携して、根本的な問題解決を行うことが推奨されています。
- 厚生労働省が公表している ー職業性ストレス簡易調査票(23項目・57 項目・80項目)
- 個人に対するヒアリング
関連記事:ストレスチェック制度とは?対象者、目的、メリット、実施方法
エンゲージメントサーベイ等ツールの活用
仕事に対するやりがいを指標化するのがエンゲージメントサーベイです。従業員満足度と違って、働きやすさを指標化するため、ワークライフバランスに対する課題が見えやすいのが特徴です。調査によって従業員と企業理念や企業ビジョンにどれだけ共感をもっているのかや、会社への貢献意欲の度合いなどを確認することができます。
その他にも、ワークライフバランスを向上するツールとして以下のようなものがあります。
- 従業員アンケートツール
- 360度フィードバックツール
- 感情認識・解析ツール
離職率改善の取り組み
離職の原因は個人によってそれぞれですが、従業員が何かしらの問題を抱えていることに変わりはありません。
解決策としては、その問題を放置するのではなく、いち早く把握することです。そのうえで労働条件や勤務体制など、ワークライフバランスの取り組みを行うのが効果的な解決策です。
- 早期発見のための定期的なヒアリング
- 各従業員に合った労働形態の整備
- 労働時間の見直しを含む労働環境の整備
- 充実した研修制度の構築
- コミュニケーションの活性化
関連記事:離職防止のための対策とは?離職の原因と取り組み方を解説
生産性向上の取り組み
人員の配置が適切でないと、業務効率が悪くなり生産性の低下にもつながります。
人事的な取り組みとしては、個人のスキルや志望などの情報を踏まえて適切な配置を心掛ける必要があります。また、従業員のモチベーションを上げるために職場の環境を整えることも重要なポイントです。コミュニケーションの活性化や、公平な評価を徹底しましょう。
- 業務内容の見直し
- 生産性向上のためのツールの導入
- アウトソーシングの活用
- 適切な人材配置
- 従業員エンゲージメントの向上
関連記事:生産性とは?向上につながる取り組み事例、課題
採用強化の取り組み
優秀な人材を確保することは、業績に直結する取り組みです。
しかし、高齢化が進み労働人口そのものが減少しているうえに、優秀な人材であればあるほど競争率が高いのが現実です。自社にマッチする人材を確保するためには、やはり他社より魅力的な企業である必要があります。積極的なワークライフバランスの取り組みによって、採用時の強みとなる独自の体制の構築を行いましょう。
- 企業認知のために採用ブランディングを実施する
- 柔軟に働けるような勤務制度を作る
- 求人媒体の選定、見直しを行う
- 採用候補者の対象を広げる
- 求人情報の見直す
モチベーション向上の取り組み
従業員のモチベーションが下がる原因はひとつではありません。
労働環境や人間関係など個人差があるので、取り組みにも多様性が求められます。ここでポイントとなるのは、やはり仕事と私生活の調和を目的としたワークライフバランスです。業務体制の見直しや福利厚生の充実など、仕事とプライベートの両方から様々なアプローチを行い、やりがいを感じる職場環境を整えることを心掛けてください。
- 職場環境を改善する
- 個人の適性やスキルに合った人員配置を行う
- 社内コミュニケーションの活性化する
- 評価制度の透明性を高め、共有する
- 従業員個々人で新たな挑戦をできるような環境を整える
関連記事:【企業事例】仕事のモチベーションを向上させる方法とは?
まとめ
ワークライフバランスへの取り組みは、魅力的な企業へと成長するためのキーポイントです。効果的な取り組みを行ってさらなる成長を遂げるためにも、ぜひこちらでご紹介した施策や具体例を、課題解決の参考にしてみてください。<a
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