職場のハラスメント防止・メンタルヘルス対策とは

ハラスメントは従業員のメンタルヘルスに大きな影響を与えると同時に、企業イメージの悪化につながるリスクをはらんでいます。

そのため、会社はハラスメントを早期に発見して被害者をケアし、行為者に対しては適切な措置をとらなければなりません。

本記事では、職場におけるハラスメントの種類や予防策の必要性について解説します。

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目次

職場のハラスメントとメンタルヘルス

ハラスメントとは精神的・身体的な攻撃や嫌がらせによって相手に不快感や不利益を与え、個人の尊厳を傷つける行為のことです。行為者に悪意がなくとも相手が不快に感じればハラスメントとして判断されます。

社内でハラスメントが横行し、適切な対策が取られていないケースでは、職場環境が悪化し、社内全体における意欲の低下や従業員のメンタル不調、それにともなう離職率の増加など、企業にとってさまざまな悪影響が生じます。

令和3年3月に東京海上日動リスクコンサルティング株式会社が公開した「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によれば、パワハラの具体的な内容として最も多いのが「精神的な攻撃」(74.5%)とされています。これは過去3年間にパワハラと判断される事例があった企業に対する聞き取り調査の結果です。

職場でのハラスメントによって精神的なストレスがかかれば、従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすリスクが考えられます。中には行為者が自身の行いをハラスメントだとは認識できていない場合もあるため、職場でのハラスメントを防止するためには、どのような行為がハラスメントに該当するのか、社内で周知する必要があります。

ハラスメントの種類

職場で発生する可能性のあるハラスメントには、いくつか種類があります。ハラスメントの種類を把握し、予防策や発覚後の対策、メンタル不調者への対応を考える際に役立ててください。

パワーハラスメント

厚生労働省の定義によると、パワーハラスメント(パワハラ)とは、以下の3つの要素を全て満たした行為を指します。

  1. 職場で行われる優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

パワハラは、もっぱら身体への攻撃と精神への攻撃に分けられます。

【身体的な攻撃】
・経営者や役員、上司といった優位な立場や職権を利用し、部下を突き飛ばす・殴る
・物を投げつける

【精神的苦痛を与える行為】
・嘲笑や人格否定、他の従業員がいる前での叱責・罵倒
・特定の従業員を業務から外したり集団で無視したりして社内の人間関係から切り離す
・本人の能力に照らして過大あるいは過小な要求をする
・個人のプライベートを侵害する

セクシャルハラスメント

雇用機会均等法第11条第1項では、以下のようにセクシャルハラスメントを定義しています。

職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること
引用:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000113

これには異性に対するものだけでなく同性に対するものも含まれ、さらには事業主や上司、同僚に限らず、取引先や顧客、病院の患者、学校における生徒もハラスメントの行為者になる可能性があります。

性的な言動の例としては、性的な冗談を言ったりからかったりする、食事やデートにしつこく誘う、性的な関係を強要する、必要なく体に触るといった行為が該当します。

モラルハラスメント

職場におけるモラルハラスメントとは、言葉や文書、態度など目に見えない暴力によって従業員の人格や尊厳を傷つけること、肉体的な外傷を与えずに精神的に傷を負わせてその人が退職せざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪くさせたりすることを指します。

一般的にみられる職場でのモラハラ行為としては、特定の従業員を無視する、陰口を言う、冷笑する、業務に必要な情報を教えないなどが挙げられます。パワハラと違って立場の優位性は関係なく、部下から上司、同僚同士の間でも発生することがあります。

マタニティハラスメント・パタニティハラスメント

マタニティハラスメントとは、女性従業員の妊娠・出産・育児、それにともなう休業の申出・取得を理由に本人に不利益を被らせる行為のことです。解雇や降格、減給、有期雇用者に対する契約更新の拒否、正社員に対する雇用形態の変更強要などがあります。

男性従業員が育児休業制度を利用することに対してこれらの不当行為がなされる場合にはパタニティハラスメントと呼ばれます。

カスタマーハラスメント

「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」
引用: https://www.mhlw.go.jp/content/11921000/000894063.pdf

一般に、企業へ寄せられるクレーム・苦情は、商品・サービスや接客態度に対する不平・不満を訴えるものであると同時に、業務改善や新しい商品・サービスの開発にもつながります。

しかし、中には従業員に過度な精神的ストレスを感じさせるほど不当・悪質な要求がなされるケースもあります。たとえば企業側に瑕疵や過失が認められない、要求の内容が商品・サービスとは関係がないなど、顧客の要求が妥当性を欠く場合です。

また、長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム、名誉毀損・侮辱・暴言など、従業員に身体的・精神的苦痛を与える行為もカスタマーハラスメントに該当します。

その他ハラスメント

上記のハラスメント以外にも、職場ではさまざまなハラスメントに遭遇することがあります。たとえば以下のようなハラスメントです。

・アルコールハラスメント:会社での飲み会の席で上司が部下に飲酒を強要する
・エンジョイハラスメント:部下や同僚に「仕事は楽しい」という共感を無理やり求める
・リストラハラスメント:リストラ対象者に不当な配置転換などの嫌がらせをして自主的に退職させようと追い詰める

ハラスメント対策の必要性

社内でのハラスメントを放置しておくと、企業はさまざまなリスクにさらされます。ハラスメントは行為者個人の問題ではなく、企業の問題として対策すべきです。対策の必要性を理解するため、ハラスメントが企業にもたらすデメリットを押さえましょう。

職場全体の生産性低下

ハラスメントが発生すると職場の雰囲気が悪化するため、被害者本人だけでなく、周りの従業員の仕事に対する意欲まで低下します。作業効率の悪化やミスの増加を招き、職場全体の生産性を低下させてしまうのです。

プレゼンティーイズム・アブセンティーイズム

プレゼンティーイズム・アブセンティーイズムとは、WHOが提唱した指標で、健康問題に起因するパフォーマンスの低下がもたらす損失を表すものです。

プレゼンティーイズムは、軽度の頭痛やうつ症状など、健康の問題を抱えつつも多少の無理をして仕事をこなしている状態を指します。出社することはできていても、心身が万全の状態にないことから100%のパフォーマンスを発揮できず、生産性が低下します。

一方のアブセンティーイズムとは、心身の不調によって欠勤が続いたり、無断欠勤が増えたりする状態のことです。プレゼンティーイズムが悪化するとアブセンティーイズムに発展するとされています。

ハラスメントの被害者はいずれかの状態に陥りやすく、その結果、企業に損失をもたらすとして近年問題視されています。

離職率の増加による人材不足

ハラスメントが横行する職場は雰囲気が悪く、直接的なパワハラやセクハラの被害者ではなくとも連鎖的に退職する人が増えるリスクがあります。離職率が増加すれば会社は慢性的な人材不足に陥り、在籍している従業員に皺寄せがいきます。その結果、長時間労働やそれにともなう心身の不調が生じてさらに退職者や休職者が増えるという悪循環に陥るのです。

企業のイメージダウン

近年はSNSの普及によって、会社内でのハラスメントが簡単に公に出回るようになりました。従業員によるパワハラやセクハラの事実がマスコミに報道されてしまうと、企業イメージの悪化は避けられません。

マイナスの印象が社会的に広まることで優秀な人材が集まりにくくなるほか、顧客や取引先、株主、投資家といったステークホルダーからの信頼を損なうことにもなり、業績に深刻な影響を与えるリスクが生じます。

採用コストの増加

ハラスメントを理由に退職者が続出すれば、それにともなって採用コストも増加します。採用にかかるコストには、求人媒体への掲載費用や人材紹介を利用する際の手数料、採用担当者の人件費などがあります。

大企業に比べてネームバリューが小さく応募が集まりにくい中小企業にとっては、特に痛手が大きいでしょう。せっかく時間と労力を割いて人材を雇っても、すぐに辞められてしまえばその分だけ利益率を引き下げる結果となります。

労働者からの損害賠償請求

ハラスメントの被害者が離職するだけでも企業にとっては損失ですが、ハラスメントを理由に本人が精神疾患などを発症した場合、慰謝料や治療費、休業損害といった賠償金を請求されるおそれもあります。

パワハラやセクハラの被害を訴えられた場合、行為者とされる上司や同僚は社内での地位が危うくなるでしょう。中にはパワハラで訴えられることを恐れて、部下・後輩への指導や、部下と関わること自体を避ける人も出てきかねません。

安全配慮義務違反

安全配慮義務とは、労働契約法第5条に定められる、企業が社員の安全を確保するための義務を指します。

安全配慮義務違反に問われるケースには、ハラスメント被害や過労死ラインを超える長時間労働、不十分な対策による労働災害などがあり、安全配慮義務違反が認められた場合、損害賠償の支払いなどのリスクが生じます。

ハラスメントによるメンタル不調者への対応

社内でハラスメントに起因するメンタル不調者が出た場合、どのように対応するのが適切でしょうか。いざというときに焦らないためにも、対応のポイントを知っておきましょう。

早期発見・早期ケア

職場でのハラスメントは早期の発見とケアが重要です。ハラスメント被害の経験者にその後の行動を訪ねた調査結果では、「何もしなかった」という回答の割合がもっとも高いことがわかっています。被害を受けていても声を上げることなく、メンタル不調に発展するまで我慢し続ける従業員もいるということです。

メンタル不調は悪化するほど回復が遅れるため、症状の軽いうちに発見し、業務を軽減する、医療機関の受診を勧めるといった措置をとる必要があります。また、ハラスメントを速やかに発見できる体制の整備もしておかなければなりません。

参照:https://www.mhlw.go.jp/content/11910000/000775799.pdf

事実調査

社内でハラスメントが発覚したら、被害者と行為者の双方から事情聴取を行い、実際にハラスメントの事実があったのかどうか、経緯や内容を調査してください。当事者同士の言い分は食い違う場合がほとんどであるため、同じ部署の同僚や他の上司などにも事情を聞き、事態の正確な把握に努めましょう。

適切な措置

調査の結果、ハラスメントが認められた場合は適切な措置をとります。会社としての謝罪に加え、行為者からも被害者に謝罪させ、必要に応じて行為者に配置転換や何らかの処分を下します。被害者がメンタル不調を訴えていれば医療機関の受診を勧める、休職を申し出た場合は休職や復職の支援を行うといった対策を行いましょう。

欠勤・休職している場合

被害者がメンタル不調によって欠勤・休職している場合、ハラスメントが労災として認定されれば労災保険が適用され、被害者には休業補償給付などが支給されます。メンタル不調とハラスメントの因果関係が認められる場合、企業は休職期間の満了を理由に被害者を解雇することはできません。一方、メンタル不調とハラスメントに因果関係が認められない場合には、欠勤や休職期間の満了による解雇も認められます。

職場復帰支援

欠勤・休職している従業員に対して、企業は復職を支援する義務があります。本人に復職を検討してもらった上で、職場復帰が困難な場合には解雇を選択することも可能です。

ハラスメント防止のために企業が講ずべき対策

ハラスメント対策を進めると、ハラスメントの予防や解決に加えていくつか副次的な効果が得られることがわかっています。前述した東京海上日動リスクコンサルティング株式会社の調査では、ハラスメント対策を実施したことによって得られた効果として、以下のような回答の割合が高い結果となりました。

・「職場のコミュニケーションが活性化する/風通しが良くなる」(35.9%)
・「管理職の意識の変化によって職場環境が変わる」(32.4%)

そこでハラスメントを防止するとともに良好な職場環境をつくる上で、企業が取り組むべき対策のポイントを解説します。

事業主の方針の明確化およびその周知・啓発

企業としてハラスメントを認めないという方針を明確化するとともに、ハラスメント該当行為や、ハラスメント行為者に対する罰則を就業規則などに規定し、社内で啓発する必要があります。

ハラスメントは正社員から正社員に対して行われるケースが多く、上司から部下へはパワハラやセクハラ、同僚同士であればセクハラや介護休業の取得に対するハラスメントの発生が目立ちます。

どのような立場であってもハラスメントの加害者、もしくは被害者になる可能性があることを前提に、従業員から役員まで全ての労働者に情報を周知してください。

教育・研修

継続的な研修やeラーニングの実施によって全社員がハラスメントについての正しい知識を身に付け、ハラスメントを許さない社内文化を形成することが重要です。

とはいえ、研修から時間が経つにつれて学んだ内容は記憶から薄れていくものです。中には「自分は大丈夫」とハラスメントを他人事として捉え、義務的に研修に参加しているだけの管理職や従業員もいます。

一方通行の講義だけでなく、ロールプレイングを通して「この行為はハラスメントに当たる」としっかり自覚させる必要があります。

働きやすい職場環境づくり

東京海上日動リスクコンサルティング株式会社の調査によれば、ハラスメントを受けた場所として最も回答が多かったのは「通常就業している場所」でした。また、ハラスメントの発生しやすい職場には、以下のような特徴があることもわかっています。

・「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」
・「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」
・「従業員間に冗談、おどし、からかいが日常的に見られる」

相手を責めたり貶めたりする意図がなくとも、コミュニケーションの行き違いでハラスメントへ発展する場合もあるでしょう。良好な人間関係を築くためのコミュニケーション研修を取り入れるのもひとつの手段です。

さらに長時間労働が常態化している、管理職の責任の比重が重すぎるといった職場でもパワハラが起きやすくなります。この場合はパワハラの行為者だけの責任として片付けるのではなく、労働時間や業務の配分を改善することも必要でしょう。

相談窓口の設置

令和2年6月1日に施行されたパワハラ防止法により、企業にパワハラ対策のための相談窓口の設置が義務化されました。管理職や人事・労務部門、コンプライアンス担当部門など相談に応じる担当者をあらかじめ定め、社内に解決の場を設けましょう。

ただ、窓口を利用したことが知られたら行為がエスカレートするのではないか、職務上の不利益を被るのではないかといった不安から、相談へのハードルは決して低くありません。

上述の通り、ハラスメント後の被害者の行動として「何もしなかった」が3割を超えているとの調査結果もあります。社内の人間関係や業務への影響を心配することなく相談に踏み出せるよう、外部の相談窓口サービスを利用することも検討するとよいでしょう。

定期的な実態把握

相談窓口を設置していてもハラスメントを見落としてしまう可能性はあります。定期的に社内アンケートや産業医によるヒアリング、個人面談を実施して、実際にハラスメントの被害を受けている、もしくは受けていると思われる従業員がいないかどうか、実態を把握してください。

まとめ

ハラスメント予防・解決のための取り組みを進める上では、「ハラスメントかどうかの判断が難しい」「発生状況を把握することが困難」といった課題があります。

ハラスメント研修やメンタルヘルス研修などを定期的に行い、社員の意識レベルを引き上げることが重要です。ハラスメントに関する正しい知識を周知し、ハラスメントのない職場づくりを目指しましょう。

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