従業員のメンタルヘルスは、企業の生産性に影響を与えます。
不調を抱えたまま働き続けると、仕事中の集中力や判断力が低下し、ミスや事故につながったり生産性が低下します。それだけでなく、ポジティブな気持ちで熱意を持って日々の業務に取り組めない状態が続くと、当人だけでなく周りにも悪影響を及ぼします。
その対策として、厚生労働省が提唱している三段階の予防方法と4つのケアを取り入れることが有効です。
本記事では、企業でのメンタルヘルス対策の取り組み方や具体的なアクション例をご紹介していきます。
目次
メンタルヘルス対策は何のためにやるのでしょうか?それは企業にとっても従業員にとっても双方にメリットがあるためです。
メンタルヘルス対策の目的は、従業員がさまざまな精神障害に陥る事態をセルフケアで未然に防いだり、周囲の人や適切な機関へ相談することで解決策を見出すきっかけを与えるためです。
メンタルヘルスとは「心の健康」のことです。世界保健機関(WHO)※1ではメンタルヘルスについて、人が自身の能力を発揮し、日常生活におけるストレスに対処でき、生産的に働くことができ、かつ地域に貢献できるような満たされた状態(a state of well-being)であること、と定義しています。
※1 WHOメンタルヘルスアクションプラン 2013-2020(翻訳)
出典:Promoting mental health: concepts, emerging evidence, practice, WHO, 2004
メンタルヘルス不調というと、うつや、パニック障害、適応障害、依存症など、日常生活が困難になるような重度な精神疾患をイメージしがちです。しかし、厚生労働省の定義※2 によると、特別な精神疾患だけを指すものではないことが分かります。
※2 平成27年11月30日 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」P14
これはすなわち、疾患ほど重度ではなくても悩みや不安を抱えた状態も指すため、私たちの日常生活でも「メンタルヘルスの不調」は起こりえます。
メンタルヘルスについて対策を講じる前に、ストレス要因を理解することが重要です。
医学や心理学の領域では、心身にかかる外部からの刺激を「ストレッサー」と言い、ストレッサーに適応しようとして、心身に生じるさまざまな反応を「ストレス反応」と言います。従業員がメンタル不調を訴える場合、ストレッサーが1つとは限りません。さまざまなストレッサーが複合的に関連することもあります。
ストレッサーにはさまざまなものがありますが、働くなかでのストレッサーには3種類あります。
出典:厚生労働省 働く人のメンタルヘルスポータルサイト「こころの耳」「1 ストレスとは」
日常生活で、私たちは上記のようなストレッサーによるストレス反応を緩和するために、脳や体がさまざまな工夫をします。これをストレス対処と言います。ストレス対処が適切になされている場合は良いですが、ストレス対処能力を上回るほどのストレッサーを経験したり、その期間が長期化すると、ストレス反応も慢性化していきます。
これにより、イライラや不安感が続き、抑うつ状態に近づいていき、さまざまな症状が表れます。
今やメンタルヘルスは日本が抱える社会的課題となってきています。近年労働者の受けるストレスは拡大する傾向にあり、仕事に関して強い不安やストレスを感じている従業員が5割を超える状況を受けて、国民に広く関わる疾患として重点的な対策が必要とされています。
メンタルヘルス対策はメンタル疾患を抱える人が受けるものと思われがちですが、そうではありません。メンタル不調に陥るリスクはどんな人にもあります。10~20代と、30代、40代はほぼ同率で、約30%が心の病を抱えています。
出典:公益財団法人 日本生産性本部 2019年11月22日 プレスリリース 第9回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果「心の病」多い世代 20代が初めて3割を超える
企業においては、メンタル不調は組織へ悪影響をもたらすため、常に心身の健康状態を良好に保つことが重要です。不調を訴える人の数が増えれば、それだけ組織にインパクトを及ぼすものとなり、部署、事業部、企業全体の生産性の低下を招き、業績不振にも繋がっていきます。従業員のメンタルヘルス対策を行う企業が増えているのは、企業を支える従業員が活力を持って健康的かつ長期的に働き続けることを可能にするための施策として「メンタルヘルス対策に投資」する必要があるからです。
この投資によって企業は次のようなメリットも得られます。
関連記事:メンタルヘルスとは?職場のメンタル不調の予防と対策
そして企業は、従業員が生命・身体等の安全を確保しながら労働に従事できるよう必要な配慮をする「安全配慮義務」があり労働契約法に規定されています。企業が安全配慮義務を怠った場合には、従業員に対して損害賠償責任を負う可能性があります。
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メンタルヘルス対策における3つの段階とは、ストレスに対してどの段階で予防・対処するのかという考えに基づいた枠組みで、一次予防・二次予防・三次予防に分かれています。
一次予防とはメンタルヘルス不調を未然に防止、予防することです。メンタルヘルスに不調をきたすことのないよう、職場や業務に起因するストレスを未然に防止する段階です。従業員が自分で行うストレス緩和ケアのほか、ストレスチェックの実施、業務環境の改善がこの段階に含まれます。
二次予防は、メンタルヘルス不調を早い段階で発見し、適切な措置を行う「早期発見」です。重度な精神疾病に至る前に、早い段階で不調を把握・発見し、対処するための取り組みのことを指します。
三次予防は、メンタル不調を発症してしまった従業員の治療と、休職後の職場復帰・再発予防の取り組みです。おろそかにすると、再発したり離職につながることもあるため、慎重に取り組む必要があります。
関連記事:メンタルヘルス不調の予防策は? セルフケアや企業が講じるべき対策
一次予防とはメンタルヘルス不調を未然に防止、予防することです。メンタルヘルスに不調をきたすことのないよう、職場や業務に起因するストレスを未然に防止する段階です。
従業員がメンタルヘルスケアを必要とする状況になる前に、企業としてメンタルヘルス不調を未然に防ぐことが大切です。メンタルヘルス不調の予防につながる取り組みを紹介します。
効果的なメンタルヘルス対策を実施するためには、まずはどこに問題があるのかを特定することから始めます。ストレスチェックや従業員サーベイなどを活用すると、解決すべき課題を客観的に見つけることが可能です。課題を特定したら終わりではなく、課題を踏まえて目標設定・実施計画まで行い対策を実施しましょう。
課題を特定する方法としては、ストレスチェックや従業員サーベイ等が考えられます。
メンタル不調のリスクは若手が多いと思われがちですが、その考えは誤りです。心の病を抱えているのは10~20代と、30代、40代はほぼ同じ割合になるため、幅広い層を対象に実施することが望ましいです。
そのため、健康診断の結果分析だけでなく、全従業員を対象としたアンケートを実施し、その結果を活用し現状把握を正しく行う必要があります。
労働安全衛生法に基づき、常時50名以上の従業員がいる事業場に1年間に1回、従業員のストレス度合いを調べるストレスチェックの実施が義務付けられています。ストレスチェックでは、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」といった項目を調査します。
ストレスチェック調査票において「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が高い者は「高ストレス者」となります。「疲れがずっと抜けない」「休日でも仕事のことが気になって落ち着かない」など、メンタルヘルス不調を示すサインを多く持つ人が該当します。
ただし、それほど極端な自覚症状がなくても、担当業務の責任が重い、業務量が過度に多いなどストレス要因の多い仕事を抱えている人や、上司や同僚からのサポートが乏しい人も、今後メンタルヘルス不調に陥ることが懸念される対象として高ストレス者に分類される場合もあります。
こうしたストレスチェックの結果を活用し、どのようなメンタルヘルス対策を実施していくのか、どうやって参加率を高めていくのか検討することで施策の効果が向上します。
関連記事:ストレスチェックで高ストレス者が。対応と根本的な改善策とは?
組織の環境や風土、コミュニケーションでカバーしていも、それらはあくまで定性的なものであって、人の状態を定量的に説明することは難しいものです。ストレスチェック等に代表される従業員へのヒアリング機会もありますが、年に1回では課題の早期発見ができず、スピーディーな対応は難しいものです。
ではどうすればよいでしょうか?
昨今では、年1回のストレスチェックだけでなく、もっと高頻度で細かく状況を把握する従業員サーベイが注目を集めています。近年では、「パルスサーベイ」と呼ぶケースもあります。
パルス(pulse)とは脈拍のことです。組織と個人の関係性の健全度合いを測ることを目的とした定量評価の手段です。脈を図るように、刻々と変わる組織状態を把握することで課題の早期発見につながるという考えからこのように呼ばれています。
以下が従業員サーベイの項目例になります。
・業務の量や負担の満足度
・企業方針への理解と共感
・評価への納得
・上司とのコミュニケーション満足度
設問をある程度固定化することで、推移を把握でき、比較しやすくなるため有効です。
従業員サーベイの結果と、健康診断等のデータ等を一元管理して分析できるDXツールも昨今多く出てきているので、従業員の状況把握として活用すると良いでしょう。
メンタルヘルス対策は、中長期的視点に立って、継続的かつ計画的に行われるようにすることが重要でその推進に当たっては、事業者が従業員の意見を聞きつつ事業場の実態に則した取り組みを行うことが必要です。
事業場内産業保健スタッフ等が一次予防~三次予防まで気を配り、中心的な役割をしながら実施していくために、衛生委員会等において十分調査審議を行い、「心の健康づくり計画」を策定することが必要です。
心の健康づくり計画に盛り込む事項は、次に掲げるとおりです。
この推進を助けるものとして「心の健康づくり計画助成金」というものもあります。
この「心の健康づくり計画助成金」は、事業主の方が各都道府県にある産業保健総合支援センターのメンタルヘルス対策促進員の助言・支援に基づき心の健康づくり計画を作成し、計画を踏まえメンタルヘルス対策を実施した場合に助成を受けることができる制度です。 こういった制度の活用も視野にいれながら、対策にあたり、まずは、①現状を把握し、②目標を設定し、③アクション、という3ステップで考えていきましょう。・
その中で、メンタルヘルス対策についての目標設定は難しいポイントです。しかし現状を把握し、「中長期的に取り組むことで、1年後、3年後、5年後にはどういった状態を目指していくか」を定量的に設定することができます。
例えば以下のような設定が例としてあげられます。
しかし、目標とする数値のアップダウンが、健康施策を講じたことによる直接の相関関係であるとは断定しづらいという側面があります。
そのため担当者の目標設定としては、行動評価(セミナーを年3回開催する、などの行動そのものを評価とする方法)などで人事評価の目標とするのも良いでしょう。
従業員のメンタルヘルスを考える中で最も重要なのがセルフケアです。「セルフケア」は、従業員が自分自身で行うメンタルヘルス対策を指します。
セルフケアは従業員一人ひとりが自らのストレスを予防し、気付いた時に適切に対処することです。簡単そうですが実は正しい知識がないと適切に対処できません。
例えば、体や気持ちに異変が生じていても「今の自分は、うつ病かもしれない」と、自発的に気付いて対応できる従業員ばかりではありません。また異変の度合いや、生じる症状や頻度は、人によってそれぞれであるため、判断が難しい場合があります。
このセルフケアが十分にできれば、不調を未然に防いだり、重度に至る前に対処でき、組織全体でストレスへの対応力が強化されることとなります。また不調を感じた場合も重症化することなく改善できれば、企業にとってのダメージも軽減できます。
ストレスの認知や、その反応に自ら気付くためには、従業員一人ひとりがストレス要因に対する反応や、心の健康について理解するとともに、気付こうとする姿勢が必要です。自ら気付き、対応する「セルフケア」を適切にできるようになるには、教育研修の機会を設けて、意識を高めていくことが重要です。
関連記事:企業で実践するセルフケアとは?個人・職場での取り組み例
全ての健康問題に影響すると考えられている健康リテラシーを高めることは、メンタルヘルス対策にも有効です。健康リテラシーを高めることで「健康意識を高めること」につながるのです。
メンタルヘルス対策を実施する際にも健康リテラシーの高い従業員に対して施策を実施することで効果が最大限に高まります。
健康リテラシーとは、「自分に必要な健康情報を入手し活用する能力のこと」です。健康リテラシーが高いと正しい情報を理解でき、自身の健康状態に応じて活用することができます。
例えば、健康診断などで疾病の早期発見や、重症化する前に軽症の段階で治療できることもあるでしょう。あるいは健康な方の場合は、維持増進のために、積極的な取り組みを行うなどの工夫ができます。
健康リテラシーを身につけ、セルフケアを従業員自身がすすめられることで健康状態が改善されアブセンティーイズムやプレゼンティーイズムの改善につながり、結果的には労働生産性の向上にもつながります。
高い健康リテラシーを身に着け、適切な行動ができる従業員が増えることで、社内全体の健康レベルは底上げされます。
関連記事:従業員の健康リテラシー向上策を知ろう
心理的安全性とは、職場などの組織やチームの中で、意見や質問、違和感の指摘が、いつでも誰でも気兼ねなく発言できる状態のことです。自分の言動が上司の叱責を招いたり、同僚の不信を買ったりすることがないという「心理的安全性」がなければ、いくらコミュニケーションの機会を設けても従業員は本音で交流することはできません。
まずは職場内の「心理的安全性」を確認しましょう。もし十分な「心理的安全性」が確保できていないようであれば、個別のヒアリングや配置換えなどを検討する必要があるかもしれません。
心理的安全性を高めるには、以下のような取り組みが考えられます。
関連記事:心理的安全性とは?測り方、作り方、マネジメントの役割を解説
身体活動・運動の促進は生活習慣の改善だけでなく、プレゼンティーイズムの改善にもつながります。
プレゼンティーイズム(presenteeism)とは、WHO(世界保健機関)によって提唱された、健康問題に起因するパフォーマンスの損失を表す指標です。欠勤には至っていないものの「健康問題が理由で生産性が低下している状態」を指します。言い換えると、心身の不調によって、パフォーマンスが思うように出せない状況のことです。
プレゼンティーイズムによる一人当たりの年間損失額の1位は頸部通・肩こり、3位は腰痛となっています。これらの症状に対して、職場環境の改善に加えて、定期的な身体活動が役立つと考えられます。
運動機会の促進にあたり、研修会内での運動イベントの実施など単発の施策に加えて、運動習慣の定着に向けた継続的な施策も同時に行うことが重要となります。
▼実施施策例
適切な量とバランスの良い食事は運動習慣と並んで従業員の心身を活性化し、業務のパフォーマンスをあげる取り組みとして欠かせません。職場において、従業員が自ら正しい食事を選べるように、継続的な情報提供や実践活動、サポートが必要になります。
▼実施施策例
長時間労働は過労死やメンタルヘルス不調につながります。企業はリスクマネジメントの視点からも、長時間労働によって従業員の健康が損なわれないように、時間外労働の削減や、有給休暇の取得促進、福利厚生の充実等を行う必要があります。
▼実施施策例
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受動喫煙によってさまざまな病気のリスクが高くなることから、健康増進法にて必要な措置を講ずるよう努めるべき旨が定められております。厚生労働省は、事業者における受動喫煙防止対策を推進しています。
▼実施施策例
メンタルヘルス不調の未然防止のためには、職場環境の整備は欠かせません。
コミュニケーション不足などが原因で人間関係に問題が生じている場合には、従業員にメンタルストレスが溜まりやすくなります。改善策や対策をとらないと、従業員がうつ病にかかる恐れがあります。職場環境の改善により従業員の心身のストレスを減らすことは、従業員の健康維持に役立ちます。
ストレスチェックの集団分析を職場、各部署などの単位で行うことで、職場環境が整っておらず、高ストレスの従業員が多い職場を特定できます。
ストレスチェックの結果を参考に職場に潜むストレス要因を特定し、それを改善していくことで従業員のストレスを減らすことが期待できます。
関連記事:職場環境の改善アイデア|組織向上への取り組みと成功事例
たとえば、ストレス要因ごとの職場環境改善例は下記のとおりです。
仕事の進め方で悩んだり抱え込んだりすると、ミスやトラブルの原因になったり、その対処に費やす時間が増える可能性が高くなりストレスの一因になります。仕事の進め方が悪いと感じる場合、業務効率を改善するには「段取り」を整える必要があります。
この段取りを個人個人で対策するのではなく、チーム全体で業務内容、業務工程の負担を軽減させるなどの改善策を講じると、業務の効率化につながります。
高ストレスにならないよう業務をスムーズに遂行するには、働きやすい作業場・オフィス環境であることも大切です。人と人との交流が活性化されることによって生産性向上のアイデアや想いがブラッシュアップされ、職場のストレス軽減だけでなく活性化されていくことにつながります。
人間関係が悪い職場環境では、従業員がメンタルヘルスの不調で悩んだり、心身症(ストレス性内科疾患)にかかったりする恐れがあります。従業員同士が円滑なコミュニケーションを取るためには、共同の作業スペースを設置するなど、コミュニケーションが生まれやすい職場を作ることが大切です。お互いに「気軽に話す、笑う、感謝する、それぞれの業務内容を知る」などのコミュニケーションを取り、理解し合う関係を作ることがストレスのない職場づくりにつながります。
従業員が育児休暇や介護休暇などの制度を利用しやすい環境をつくることも大切です。家庭と仕事を両立できる職場環境がつくられているとストレスを感じづらいだけでなく従業員が長く勤めやすくなり、研修や教育にかかるコストや時間を削減できます。
ここまで見てきたようなメンタルヘルス対策に加え、より効果的に対策を実施するために、近年重視されている「健康経営」の視点を取り入れることも大いに役立ちます。
健康経営とは、『従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法』です。
あくまで企業が用いる経営手法ですので、従業員の健康を促進することは手段であり、目的は組織の活性化・生産性の向上であり、最終的には業績向上、企業価値の向上を目指します。
職場で健康プログラムを実施することで従業員の行動変容をもたらします。最も効果を発揮するのは各施策の単発での実施ではなくに提供されるのではなく、組織の戦略の中心に位置づけられ継続的に実施されているときです。
健康経営として健康プログラムの推進やメンタルヘルス対策を練ることで、事故や傷病予防だけでなく、ストレスの要因への対処や適切なワークライフバランスの達成が可能になります。
健康経営の取組みとして、「メンタルヘルス不調者への対応」や「特定保健指導の推進」など従業員の健康増進につながる項目が含まれています。そのため、健康経営と併せてメンタルヘルス対策を推進することで、より効率的に従業員の健康を保持・増進ができ、生産性の向上へ取り組み効果を最大化することができます。
関連記事:【徹底解説】健康経営とは?
二次予防は、メンタルヘルス不調を早い段階で発見し、適切な措置を行う「早期発見」です。重度な精神疾病に至る前に、早い段階で不調を把握・発見し、対処するための取り組みのことを指します。
具体的には、メンタル不調者本人・上司・同僚への気づきの支援や検診、相談窓口などの体制整備があります。
SOSを上げたり、気兼ねなく相談できる風土醸成により、二次予防が効果的に働きます。ストレスチェックはメンタルヘルス対策の一次予防に用いられるものですが、副次的な効果としてメンタルヘルス不調の早期発見(二次予防)にもなります。
不調に気付いた時に、ためらわずに相談できる相談窓口を社内外に設置したり、産業医との面談機会を設けることも重要です。
企業や組織は、従業員に健康診断を受診させなくてはなりません。
従業員の健康課題を探るためでなく、従業員の健康に対する取り組みの中で健康診断受診率を100%にするということはそれだけで従業員の健康への取り組みの一つとなります。労働安全衛生法第44条では、企業や組織はそこで働く従業員に健康診断を実施しなくてはならないと定められています。
企業や組織は健全な運営を行う必要があり、健康診断はその健全な運営を支える従業員の健康を守るための根幹となります。
ラインケアは、職場のライン上にいる直属の上司が部下の異常に気付き対応することです。
部下からの相談に適切に対応したり体調不良等にはやめに気づくには、メンタル疾病に対する偏見を持っていては適切に対応できないことがあります。適切なラインケアの実施は、企業のメンタルヘルス状況を改善・強化させます。管理監督者は日常的に部下と接点があるため、早期発見や問題があった場合のケアにおいて非常に重要な役割を果たします。
働き方の多様化により、異変に気付ける頻度が下がるケースもあるようです。
そのため、積極的に1対1の面談機会を作ったり、なるべくコミュニケーション機会を多く設けるなど、工夫や試行錯誤することが必要です。対面でのコミュニケーション機会が減ってきている中で、いかに早期発見するか、また未然にプレゼンティーイズム・アブセンティーイズムを食い止めるかは組織の重要課題の一つとなります。
産業医面談に至る前に人事や課・部単位でキャッチアップできていれば、プレゼンティーイズムやアブセンティーイズムに陥る従業員を未然に食い止めることや、適切な人材配置等の措置が可能となります。
課や部の上長または他のメンバーが異変を早めにキャッチアップすることが、組織にとっても従業員にとっても、よりよい「働く環境」になります。
関連記事:ラインケアとは?管理職の具体策・企業のメンタルヘルス対策
高ストレス者とは、ストレスチェックによってメンタルヘルス不調の兆候が強く確認された人を指します。高ストレス者はメンタル不調に陥る可能性が高いとされているため、高ストレス者への対応はとても重要になります。面談へと促すだけでなく、面談を希望しない場合にも様々な方法で対応し放置しないようにしましょう。
メンタル不調になると気分の落ち込みや意欲の低下だけでなく、脳機能の低下をもたらし、集中力や判断力を鈍らせます。結果的には仕事の生産性が低下するだけでなく、重度の場合は休業になる可能性も考えられます。
また、一緒に働いている身近な仲間が2人、3人とメンタル不調によって業務効率が下がったり、体調不良になっていくと、職場内には不穏な空気感がひろがります。そして不調ではない従業員に対しても、不安感をもたらしたり、モチベーション低下を招くことがあります。
関連記事:【ストレスチェック】高ストレス者の対応|面談・有効な施策
特定保健指導は、主にメタボリックシンドロームの予防・改善を目的として、40歳以上の従業員に実施される保健指導です。健康増進のためには、問題が発生する前に予防することが理想ですが、そのために有効なのが特定保健指導です。
義務化されているのは基本的に40歳以上ですが、40歳未満の若年層にも実施することで問題の早期発見やヘルスリテラシーの向上が可能になり、より効果的な予防が実現できるでしょう。
従業員がメンタルヘルス不調について気軽に相談できる窓口を設置することは重要なメンタルヘルス対策です。
2020年6月に施行された改正労働施策総合推進法によって設置が義務化されています。中小企業については2022年3月31日までは努力義務となっていますが、2022年4月1日には、大企業と同様に義務化が適用されるため、全ての企業において体制整備が必要となってきます。
こうした観点からも、相談窓口を設置し、社内に周知して従業員の利用を促すことはリスクヘッジにもつながります。
社内に設置する方法と、社外に設置する方法の2つがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
社内の場合は体制を作り、メールや電話、面談等の相談方法を決めることで設置できるという手軽さがあります。
しかし社内に不信感や疑念を抱いている従業員は相談しづらい側面もあるため、社外に相談窓口を設置することも有効です。必要に応じて検討すると良いでしょう。
三次予防は、メンタル不調を発症してしまった従業員の治療と、休職後の職場復帰・再発予防の取り組みです。おろそかにすると、再発したり離職につながることもあるため、慎重に取り組む必要があります。
休職した従業員は、症状の回復への不安だけでなく、回復後に社会復帰できるかどうかの不安も抱えています。復職については、休職時と同様に、医師の診断結果や見解に基づく判断と、本人とも相談の上、慎重に時期や受け入れポジションを決めていくことが重要です。
産業医との協力体制を構築し、無理のないように勧めていく必要があります。
また一度復帰しても、一定期間をおいて再度不調に陥ることもあります。そのため、定期的に産業医や担当スタッフとの面談機会を設けたり、慌てることなく療養するよう促すことも必要です。
復職後すぐは業務量や、納期の厳しい業務については注意を払ったり、短時間での勤務形態にするなど、受け入れ体制の構築も三次予防に有効です。
メンタル不調と向き合うための有効策として、厚生労働省から「労働者の心の健康の保持推進のための指針」(改正)(平成27年11月)が発表されています。メンタル不調と向き合う4つのケアを解説します。
セルフケアは従業員一人ひとりが自らのストレスを予防し、気付いた時に適切に対処することです。
事業者は従業員に対して、次に示すセルフケアが行えるように教育研修、情報提供を行うなどの支援をすることが重要です。また、管理監督者にとってもセルフケアは重要であり、事業者はセルフケアの対象として管理監督者も含めましょう。
ストレスの認知や、その反応に自ら気付くためには、従業員一人ひとりがストレス要因に対する反応や、心の健康について理解するとともに、気付こうとする姿勢が必要です。自ら気付き、対応する「セルフケア」を適切にできるようになるには、教育研修の機会を設けて、意識を高めていくことが重要です。
このセルフケアが十分にできれば、不調を未然に防いだり、重度に至る前に対処でき、組織全体でストレスへの対応力が強化されることとなります。
ラインケアとは、組織の管理監督者による部下のストレスケアのことです。管理監督者が従業員の具体的なストレス要因を把握し、相談に乗ったり、必要に応じて環境を改善したり、配置転換等の策を講じることを指します。
ラインによるケアで大切なのは、管理監督者がスタッフの「いつもと違う」に早く気付くことです。「いつもと違う」とは、「スタッフがそれまでに示してきた行動様式とのズレ」です。例えば今までにない遅刻や業務の進行など細かな部分での違和感に気が付けるかどうかがポイントです。速やかな気付きのためには、日頃からスタッフに関心を持って接し、いつもの行動様式や人間関係の持ち方について知っておくことが必要です。
また、部下の変化に気がついていても、どう対処したら良いか判断がつかず悩むこともあるでしょうし、管理監督者自身が強いストレスを抱えて困っている場合もあります。そのため、人事担当者やさらに上位監督者による定期的なコミュニケーション、研修機会が重要になります。
関連記事:ラインケアとは?職場で重要な管理職によるメンタルケアの具体策
事業場内産業保健スタッフ等によるケアとは、産業医や衛生管理者、保健師、心理職、精神科医など社内の産業保健スタッフ等による支援のことです。
セルフケアやラインによるケアが効果的に実施されるよう、従業員や管理監督者に対する支援を行うとともに、次に示す心の健康づくり計画の実施にあたって、中心的な役割を担います。
具体的な支援内容は以下があげられます。
事業場外資源によるケアとは、メンタルヘルスケアの専門知識を有する外部の機関やサービスを活用することです。
事業場内での相談を希望しない従業員のケアや、企業が抱えるメンタルヘルスの課題解決のために、カウンセリング、従業員への教育研修、情報提供、復職支援など、専門性や第三者の介入が必要なケースもあります。
そのため、外部の専門的な知識を有する資源の活用が有効です。
必要に応じて外部EAP(Employee Assistance Program)など、適切なサービスを得られるネットワークを整えておきましょう。
※外部EAP:身体と精神の両方の健康を支援するプログラムのこと
心の健康であるメンタルヘルスとフィジカル面での運動は一見すると別々のように感じられますが、これは表裏一体であり相互に関連があります。
運動には、
など、さまざまな良い効果があります。
少し古いデータになりますが、運動がうつ病に与える影響について、1999年 アメリカのデューク大学医学部のブルメンタール教授らの研究が有名です。うつ病患者156人を、薬(抗うつ剤)と運動、運動のみ、薬のみの3グループに分けて、4か月後と10か月後の経過を見るという研究がありました。
4か月後には、薬のみのグループは改善率68.8%で最も改善が見られましたが、10か月後は38.0%が再発しています。
一方、運動のみを見ると、4か月後は改善率60.4%であり、有意な改善が得られましたが、10か月後の再発率はさらに顕著であり、わずか8%の再発率だったという結果が得られています。
こうした研究からもわかるように、運動はメンタルに良い効果をもたらし、それを継続することは、さらに効果的です。
RIZAPが2018年11月から開始した筑波大学 水上研究室との共同研究「企業向け健康増進プログラムによる心理的変化の検討」においても、その効果が実証されています。
この研究は、298名(男性195名、女性103名)にRIZAPウェルネスプログラムを実施し、プログラム前後でのメンタル面での変化を比較した研究です。
「自己効力感」 :自分の可能性を認知する力
「主観的健康感」:自らの健康状態を評価する力
「把握可能感」 :現在の自分の状況を理解し冷静に捉える力
「処理可能感」 :ストレスに遭遇した際に”なんとかなる”と前向きに対処できる
これにより、プログラムの前後で参加者のBMIが最適化されたことに加えて、メンタルヘルスに好影響がある結果が得られました。
RIZAP式メンタルヘルス対策概要資料
RIZAPのメンタルヘルス対策は運動実践を織り交ぜ効果を最大化しています。プレゼンティーイズム予防や良質な対人関係の構築に向けて、自己肯定感を高めてストレスに対応できるようになるプログラムをご紹介いたします。
従業員の心身の健康増進には、企業(人事や総務、健康管理担当者)が従業員に対して健康情報に触れる機会をなるべく多く提供し、健康の維持増進を計ることが重要です。
「今は関係ない」「自分のことではない」と思ってしまうと、一度聞いた内容でも関心が薄れてしまい、あまり重要視できないことがあります。まさに、「対岸の火事」のことわざの通り、向こう岸の火事は自分に災いをもたらす心配のないという意味です。
メンタルヘルス対策や健康増進に関しても同様です。健康な時に疾病や薬のことを聞いても、なかなか自分事としてとらえにくいものです。このことを踏まえ、長期的に複数回、テーマを変えてセミナー機会を設けることが重要です。
「昨年セミナーをやったから今年はもういいだろう」と考えるのではなく、テーマをや登壇者(話し手)を変えて年に数回セミナー機会を作るなど、健康情報に高頻度で触れる機会を作りましょう。
そうすることで着実に健康意欲は高まり、健康風土が醸成されていきます。セミナーや健康増進のプログラムを検討し、定期的に実施していきましょう。
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関連記事:【最新】メンタルヘルスセミナーの種類と効果|目的・事例
ライザップでサポートしたウェルネスプログラムで、メンタルヘルスが向上した事例をご紹介します。
ベネッセホールディングスは、比較的若い従業員が多く、病気の人が多いわけではありませんが、生活習慣病予備軍については気を付ける必要があり、過去に生活習慣病の予防としてポピュレーションアプローチをいろいろ実施してきました。
今回RIZAP開催による健康セミナーでは参加者アンケートにおいて半数以上の従業員から、「運動不足の解消・運動習慣の改善」につながった声だけでなく、「気持ちがポジティブになった」「モチベーションが向上した」とメンタル面にも好影響を与えたと捉えられる前向きな回答が多く挙がりました。
ベネッセホールディングス様は健康無関心層が集まらず毎回関心のあるメンバーしか集まらないなど健康施策に関して苦戦を強いられている現状を変えるため、RIZAPの健康セミナーの導入を実施しました。
参加満足度は97.5%と高く、2019年度以降、参加申込人数は翌年に4倍、翌々年には9倍もの推移を遂げる結果となりました。2020年度よりテレワークなどで運動不足に悩む企業が増えている中、上記の取り組みの末「運動習慣がある」と回答した割合が毎年向上しています。
株式会社シマキュウでは、社長が率先して健康経営を推進し、RIZAPウェルネスプログラムを3ヶ月間実施した結果、下記のような結果が現れました。心身ともに変化が見られた好事例です。
約8割の従業員が健康数値に何らかの問題がある有所見者であり、メタボ、高血圧症、糖尿病などの生活習慣病を抱える従業員が多い状況の中、社長が従業員一人ひとりと面談をされました。「健康を気遣った生活に変えて欲しい。大病せずいきいきと働いて欲しい」と想いを伝え、最終的には健康施策への参加率は100%になりました。
導入したRIZAPウェルネスプログラム「結果にコミット®コース」では3ヶ月の間、従業員同士でコミュニケーションをとりながら、RIZAPトレーナーが一人ひとりに合った生活習慣の定着をサポートしました。
トヨタ自動車九州株式会社では健康セミナー、卒煙施策など一般的なポピュレーションアプローチは既に実施されていましたが、疾病休業日数の低減・トヨタグループBMIワースト3からの脱却・高齢化対応のために一歩踏み込んだ健康施策を検討されていました。
健康無関心層にも波及する強いポピュレーションアプローチとしてRIZAP法人ウェルネスプログラム「結果にコミット®コース」を導入し下記のような結果が現れました。まずは厳選したメンバーが生活習慣を改めて見た目を変え、追随するメンバーを増やそうと実施した50名において心身ともに変化が見られた好事例です。
プログラム後には参加者から自発的な健康アクションが増えてくるとともに、参加してない方からも高い関心が寄せられ 「自分も参加したい」「体を変えたい」という声も上がっているとのことです。
メンタルヘルス対策に
RIZAPのメンタルヘルスプログラム
1,600社、19万人以上に健康プログラムを提供してきました。
その中で、行動変容まで導くRIZAPの健康セミナーは満足度が98%ととても好評となっております。
座学だけでなく『運動』を織り交ぜ、効果を最大化します。
企業が具体的なメンタルヘルス対策を実施する際、厚生労働省は「労働者の心の健康保持増進のための指針」を参考にしながら推進していく場合も多いでしょう。
その中で、対策を推進する際の留意点として以下のような指摘がなされています。
メンタルヘルス対策において、その評価には本人から心身の状況の情報を取得する必要があるだけでなく、客観的な測定方法が確立していないためプロセスの把握が困難です。また心の健康問題を抱える従業員に対して、健康問題以外の観点から評価が行われる傾向が強いという問題があります。
メンタルヘルス対策を進めるに当たって、健康情報を含む労働者の個人情報の保護及び労働者の意思の尊重に留意することが重要です。個人情報の保護への配慮は、メンタルヘルス対策がより効果的に推進されるための条件です。
従業員の心の健康は、職場配置、人事異動、職場の組織等の人事労務管理と密接に関係する要因によってより大きな影響を受けるため、人事労務管理と連携しなければ、適切に進まない場合が多くあります。
心の健康問題は、職場のストレス要因だけでなく家庭・個人生活等の職場外のストレス要因の影響を受けている場合も多くあります。また、個人の要因等も心の健康問題に影響を与え、これらは複雑に関係し、相互に影響し合う場合が多くあります。