運動不足がもたらす従業員への悪影響
「身体活動」とは、安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する骨格筋の収縮を伴う全ての活動を指し、「運動」とは身体活動のうち、スポーツやフィットネスなどの健康・体力の維持・増進を目的として計画的・定期的に実施されるものを指します。
引用元:厚生労働省 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023(案)
一般論として「運動が健康に良い」ということは分かっていても、運動しないことが、それほど悪いこととは思われていません。実際のところはどうでしょうか?
平成30年9月に厚生労働省が発表した資料「身体活動・運動を通じた健康増進のための厚生労働省の取組み」によると、運動不足が原因で毎年5万人が死亡しているという衝撃的な情報が記載されています。
しかし、なぜ運動不足で毎年5万人もの方が死亡するのでしょうか?
運動不足により体力や持久力が落ちる
↓
筋力低下になる(肩こり・腰痛・眼精疲労など)
↓
立つ、歩く、走るといった移動能力が低下する
↓
糖尿病、耐糖能異常、脂質異常症、高血圧症、肥満、メタボ、フレイル、骨粗鬆症、サルコペニアなどの生活習慣病の発症リスクが上がる
↓
死亡リスクが増す
このような理由で、死亡リスクが増していきます。
体力・筋力の低下
運藤不足は意識的に改善しないと血行不良はさらに悪化します。しかもこれらの症状が慢性化してしまうと、常に体にだるさが出てしまうため、業務が思うように捗らず、やはり生産性の低下につながります。
日本人の平均座位時間は世界最長の7時間という結果がシドニー大学などオーストラリアの研究機関の調査で明らかになりました。長時間座位を続けることで血流や筋肉の代謝が低下し、心筋梗塞、脳血管疾患、肥満、糖尿病、がん、認知症など健康に害を及ぼす危険性が指摘されています。
1日に座っている時間が4時間未満の成人と比べ、1日に11時間以上座っている人は死亡リスクが40%も高まるといわれ、2011年、WHO(世界保健機関)によれば、「世界で年間200万人の死因になる」という発表もあります。
WHOの発表では、喫煙は世界で500万人以上、飲酒は300万人以上の死因といわれています。いまや“座りすぎ”も喫煙や飲酒と同じように健康リスクを脅かす問題の一つなのです。
参照:スポーツ庁web広報マガジン
肥満・生活習慣病のリスク増加
身体活動・運動が不足している状態では消費するエネルギーが少ないために、肥満、特に内臓脂肪型肥満が起きやすく、その影響で高血圧や糖尿病、脂質異常症などの肥満関連の病気が起きるリスクが高まります。
ある研究で、各人のふだんの身体活動量とその後の全死亡及び主要死因別(がん、心疾患、脳血管疾患)にみた死亡との関連が調べられました。平成7年(1995年)と平成10年(1998年)にアンケート調査に回答した45-74歳の男女約8万3千人を、平成17年(2005年)まで追跡した調査結果にもとづいて身体活動量と死亡率との関連を調査した結果、男女とも、仕事、余暇に限らず、全体的に身体活動量が多いことにより、死亡リスクが低下する傾向がみられました。
死因別に見ると、男性ではがん死亡リスクは身体活動量最大群で0.80倍、心疾患死亡リスクは最大群で0.72倍と顕著な低下が見られましたが、脳血管疾患については死亡リスクの低下は見られませんでした。女性では、身体活動量最大群でのがん死亡リスクは0.69倍と低下し、心疾患と脳血管については統計的有意性がないものの、死亡リスクの低下傾向が見られました。
今回の結果から、身体活動の種類によらず、全体的によく動いている人で、死亡リスクが低くなることがわかりました。男性と女性、仕事をしている人としていない人、家事のある人とない人などによって日頃の身体活動の種類は異なることが多いのですが、自身の生活の中で可能な方法によりよく動く時間を増やしていくことが、早死にの予防につながると考えられます。
参照:身体活動量と死亡との関連について 国立研究開発法人国立がん研究センター
肩こりや腰痛等の痛み
身体活動・運動が不足している状態ではさらに筋力の低下、筋肉量の減少、あるいは関節の可動性が減って、ロコモティブシンドロームやサルコペニアなどの運動器疾患が生じます。
ロコモティブシンドローム(ロコモ:運動器症候群)は、加齢に伴う筋力の低下や関節や脊椎の病気、骨粗しょう症などにより運動器の機能が衰えて、要介護や寝たきりになってしまったり、そのリスクの高い状態を表す言葉です。
またサルコペニアとは高齢になるに伴い、筋肉の量が減少していく老化現象のことです。25~30歳頃から進行が始まり生涯を通して進行します。サルコペニアは、広背筋・腹筋・膝伸筋群・臀筋群などの抗重力筋において多く見られるため、立ち上がりや歩行がだんだんと億劫になり、放置すると歩行困難にもなってしまうことから、老人の活動能力の低下の大きな原因となっています。
その影響は、膝や腰など関節が痛む、1人で行動できる範囲が狭くなる、骨折しやすくなるといったかたちで現われます。そのためにさらに運動不足になるという悪循環に陥ってしまいかねません。
メンタル不調
心の健康であるメンタルヘルスとフィジカル面での運動は一見すると別々のように感じられますが、これは表裏一体であり相互に関連があるという結果が様々な角度から得られています。
少し古いデータになりますが、運動がうつ病に与える影響について、1999年 アメリカのデューク大学医学部のブルメンタール教授らの研究が有名です。うつ病患者156人を、薬(抗うつ剤)と運動、運動のみ、薬のみの3グループに分けて、4か月後と10か月後の経過を見るという研究がありました。
4か月後には、薬のみのグループは改善率68.8%で最も改善が見られましたが、10か月後は38.0%が再発しています。
一方、運動のみを見ると、4か月後は改善率60.4%であり、有意な改善が得られましたが、10か月後の再発率はさらに顕著であり、わずか8%の再発率だったという結果が得られています。
また米国のイェール大学と英国のオックスフォード大学などが共同で行った米国内に住む18歳以上の成人約120万人を対象に大規模な調査では、運動をしないでいると気分が晴れない日が増えるということがわかっています。
ウォーキング、サイクリング、ランニング、スポーツジムでの筋トレ、スキー、釣りなどの運動から、育児、家事、芝刈りといった身体活動まで、あらゆる種類の運動について調査した結果、運動を習慣として続けている人は、運動をしていない人に比べ、1ヵ月間に気分が優れないと感じる日数が、平均して1.49日(43.2%)少なかったことがわかりました。
参照:保健指導リソースガイド
運動不足はうつ病や気分の優れなさ、メンタル不調の予防に影響があるといえるでしょう。
関連記事:運動とメンタルヘルスの関係とは?有効性と従業員への取組み
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運動不足がもたらす企業リスク
運動不足によって従業員の健康不良が進んでいる場合、「プレゼンティーイズム」という目に見えない損失をしている可能性があります。
プレゼンティーイズムとは、頭痛、肩こり、腰痛などの体の痛みをはじめ、鼻炎や便秘、めまい、耳鳴り、胃もたれ、軽度のうつ、不眠など、心や体の不調によってパフォーマンスの質が落ちている状態のことをいい、近年従業員の生産性を語るうえで欠かせないキーワードです。
関連記事:【まとめ】プレゼンティーイズムとは?測定と改善対策の具体例
プレゼンティーイズムの問題は「生産性の低下」と「健康問題による仕事の欠勤」を招く恐れがある点にあり、どちらも企業にとって大きな痛手となります。
生産性の低下
心身に重度の不調が見られた時、大半の人は医者や専門機関に相談し、欠勤して治療に専念します。しかし、軽度の頭痛や肩こり、腰痛をはじめ、食欲不振や胃もたれ、下痢または便秘、軽度のうつ病といった不調の場合、休むことなく業務を行う人が多いのではないでしょうか。
ですが、このような状態では十分なパフォーマンスはできず、結果として仕事の効率は下がります。つまり、無理して出社しても十分にパフォーマンスができないプレゼンティーイズムは、無意識に企業の生産性を低下させており、損失を作り出す可能性があるのです。
しかも軽度の不調は長期化するリスクをはらんでおり、多額の損失が出る恐れがあります。
アブセンティーイズムの増加
アブセンティーイズム(absenteeism)とは、「健康問題による仕事の欠勤」を指します。いわゆる「病欠」を指します。
出社できるほどの軽度の不調も改善せずに放置したり、無理をしたりすれば症状が悪化して仕事に従事することが難しくなり、欠勤(病欠)につながります。
欠勤が短期間であればそこまで問題はありませんが、長期休暇が必要となると業務に大きな支障をきたします。さらに場合によっては健康問題を理由に退職してしまうこともあり得ます。そうなれば生産性の低下だけでなく、既存の仕事を回せなくなったり、新規の仕事を受注できなくなったりと、企業の業績にも大きな悪影響を及ぼします。
最近では「ブラック企業」「ホワイト企業」のような言葉も出てきており、どんなに良い商品やサービスを提供していても、劣悪な環境で従業員を働かせている企業の商品は消費者から選ばれない時代になっています。
そのため運動不足の解消は従業員個人だけでなく、企業全体で取り組むべき課題なのです。
離職率の増加
従業員の健康不安が増すことで、健康不安を抱えての休職や退職(アブセンティーイズム)が増え、離職率の増加につながります。
離職率を上げる理由として「二要因理論」という考えがあります。「衛生要因」という不満足に関わるものと、「動機付け要因」という満足度に関わるもので構成されており、衛生要因とは健全に働くための土台となります。その中には「労働条件」「オフィス・作業場環境」「チームワーク」「健康状態」などが含まれます。
厚生労働省による令和2年雇用動向調査結果によると、自主退職理由(会社都合ではない)の78%は「人間関係」などの衛生要因が占めています。つまり、離職には衛生要因が大きく影響していることがわかります。
参照:厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概要 転職入植者が前職をやめた理由」
実際に、健康経営銘柄・健康経営優良法人における離職率は健康経営を実施していない企業の約2倍以上低い結果が出ています。従業員の健康不安をそのまま放置し「衛生要因」が整えられないことで、離職が増加していくことにつながります。
引用元:経済産業省 「健康経営の推進について」
医療費の増加
運動不足を放置することで、従業員の通院や治療の頻度が減少するきっかけを与えることが難しいことから、企業が負担する医療費の増加につながります。
健康リスクが低い従業員の労働生産性損失コストが年間推計56.4万円であるのに対して、健康リスクが中の従業員では1.2倍(年間推計66.8万円)、健康リスクが高い従業員は2.8倍(年間推計159.4万円)と非常に差があることも示されており、健康リスクの予防に対して注目が集まっています。
参照元:日本労働研究雑誌 2018年6月号(No.695)掲載 古井祐司(東京大学特任教授)村松賢治(東京大学受託研究員)、井出博生(東京大学特任准教授)「中小企業における労働生産性の損失とその影響要因」
具体的には、身体的リスクに関しては既往歴(通院などの記録)や血糖値・血圧・血中脂質などの数値が高い場合に医療費が上昇します。医療費の削減につながる要因として、身体的リスクの減少・生活習慣リスクの減少、心理的リスクの減少が考えられています。
生活習慣リスクに関しては、喫煙・アルコール習慣、運動習慣などがありますが、特に良質な睡眠がとれていない場合に医療費の上昇につながります。
心理的リスクに関しては、ストレスや仕事・生活への満足度のほかに、自分自身が健康についてどのように感じるか表す主体的健康感が低い場合に医療費の上昇に影響があるとされています。
実際に、経済産業省商務情報政策局「健康経営の推進に向けた取組」によると、社員が健康になることで1人あたり30万円の損失を削減できると説明されています。
運動不足を解消する方法
運動不足は体力を低下させるだけでなく、糖尿病や高血圧症、脂質異常症といった生活習慣病の発症リスクになります。疾患を抱える従業員が増えれば、企業には労働力の低下や離職率の上昇などの経営リスクが生じます。そのため、企業が運動不足解消の取り組みを実施することは非常に重要です。以下で、運動不足解消に適している運動を紹介します。
外での有酸素運動
有酸素運動とは、筋肉を動かす際に、エネルギー源として体内にある血糖や脂肪とともに酸素を使う運動のことです。代表的なものは、ウォーキングやジョギング、エアロビクス、水泳、サイクリングなどです。
有酸素運動には、脂肪の燃焼や心肺機能の強化をはじめとして、さまざまな効果が期待できます。これらの運動は、あまり高価な道具などを必要とせず、また続ける時間も自由に決められて習慣化しやすいため、運動不足の解消にも適しています。
自宅でできる有酸素運動
有酸素運動は屋内でも可能です。自宅にいても取り入れやすい運動法を紹介します。
スタンディングツイスト
運動の種類には無酸素運動(一般的な筋肉トレーニング)と有酸素運動があります。スタンディングツイストは有酸素運動になりますが、ランニングなどと違って家で手軽にできることがポイントです。
多くの女性が悩んでいる皮下脂肪を落とすにはおすすめのトレーニングです。運動量を確保することにあわせて、バランスのよい食事を取ることで効果を上げることができます。
ステップ・エクササイズ
ステップ・エクササイズとは、ステップ台の昇り降りを基本動作とする運動です。専用のステップ台がなければ、自宅の階段や玄関の段差、雑誌を重ねてガムテープを巻いたものなどで代用可能なので、手軽に始められます。昇降運動によって足の太ももやふくらはぎの筋肉が鍛えられるため、歩行機会の減少に伴う運動不足の解消に効果的です。筋力や持久力アップといった効果が期待できます。
ランニング・ステップ
地団駄を踏むように、その場で素早く足を動かすのがランニング・ステップです。前後左右にほとんど動かないため、広いスペースは必要ありません。道具が要らず、いつでもどこでも実行できることから、運動不足の解消に適しています。手軽に体を動かしたい場合やカロリーを消費したい場合におすすめです。
フィットネスバイク
自転車をこぐような動作で使用するフィットネスマシンです。膝に負担をかけにくく、ダイエットや筋トレ目的でもできるため、自然に運動不足を解消できるのが特長です。折り畳み式や省スペースタイプ、椅子に座りながら運動できるものまで、多様なマシンがあります。
ラジオ体操
小学生が夏休みに行う印象の強いラジオ体操ですが、実は有酸素運動とストレッチを兼ねた優れた運動です。起床後に行えば自律神経が整い、代謝もアップします。決まった時間に行うことから習慣化しやすいため、運動不足の解消に役立ちます。ラジオの放送時間があわないときは、インターネットの再生動画を利用しましょう。
筋肉トレーニング
国際的な身体活動ガイドラインの策定のために実施された介入研究では、筋トレにより、筋力・身体機能および骨密度が改善し、高齢者では転倒や骨折のリスクが低減することが示されています。また、18~98歳を対象とした筋トレの実施と疾病と死亡リスクに関する研究や解析においても、筋トレを実施している群は実施していない群と比較して、総死亡および心血管疾患、全がん、糖尿病、肺がんの発症リスクが、有酸素性の身体活動量に関わらず、10~17%低いことが示されています。
さらに筋トレの実施時間の影響について検討した調査では、全く実施していない群と比較すると、わずかな時間であっても実施していた群は、総死亡および心血管疾患、全がん、糖尿病の発症リスクは低い値を示すことが報告されいます 。このように、筋トレを実施することは、運動器障害だけではなく、生活習慣病の発症や死亡リスクの低減につながる可能性があります。
参照元:厚生労働省 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023(案)
日本人筋肉量の部位別の加齢変化に関する研究により、特に下肢筋肉量は早期より加齢に伴い大きく減少することがわかりました。加齢に伴う健康づくりにおいて特に下肢筋肉量に注目した支援の必要性も示唆されています。
参照:日本老年医学会雑誌 日本人筋肉量の加齢による特徴
正しいフォームで、使っている筋肉を意識し可動域を最大限にとることでトレーニングの効果は得られます。筋肉を”伸ばして縮める”ことで、筋肉量の維持・増加が期待できます。
スクワット
疲れにくい身体のためにおすすめの運動が「スクワット」です。運動が苦手な方でも簡単にでき、場所を選ばずにできます。1日1回、1セットでも構いませんので継続して行いましょう。
下半身の筋肉は、全身の筋肉の6~7割を占めているほど大きいです。筋力が増えると基礎代謝が上がるので、日常の消費カロリーが増えたり、食べても太りにくくなったりするなど、ダイエットにもうれしい効果が期待できます。
スプリットスクワット
自宅で簡単にできるスプリットスクワットを紹介します。
下半身の筋力だけでなく、全身を鍛えることができるため、運動不足の解消だけでなく姿勢改善や美しいくびれ作りにも効果的な運動です。
下半身の筋肉は、全身の筋肉の6~7割を占めているほど大きいです。筋力が増えると基礎代謝が上がるので、日常の消費カロリーが増えたり、食べても太りにくくなったりするなど、ダイエットにもうれしい効果が期待できます。
シット・アップ
シットアップとはいわゆる「腹筋」です。シットアップで腹直筋が鍛えられることによって、お腹全体の引き締め効果が期待できるだけでなくインナーマッスルや太もも前面の大腿直筋など、多くの筋肉が同時に鍛えられることによって、基礎代謝が上がり、運動不足解消につながります。
仰向けの状態になり膝を立て、おへそをのぞき込むように上体を持ち上げ、腰を床から離していきます。腕と太ももが触れたら、ゆっくりと上体を下ろします。10回3セットを目安に行うとよいでしょう。
ノーマル・プッシュ・アップ
プッシュアップとはいわゆる「腕立て伏せ」です。上半身を鍛える意味合いだけでなく、筋持久力を高め、引き締まった筋肉を作り、総合的なフィットネスと健康状態を向上させます。。さらには心血管の健康にもメリットがあるということが、いくつかの研究で明らかになりました。
両手を肩幅の広さに置き、肘を伸ばした体勢のまま、まっすぐに上体を下ろします。
最適な運動能力を発揮するには関節の安定性向上が必要であり、特に体幹の関節の安定性が大きな役割を果たすことが明らかになっているため、プッシュアップは運動不足解消に効果的な筋トレの一つといえるでしょう。
バック・エクステンション
バック・エクステンションとは、いわゆる「背筋」です。うつ伏せの状態になり、両手を頭の後ろで組み息を吐きながら、無理なく上がる高さまで上体を上げ、息をを吸いながらゆっくりと上体を下ろし、10回3セットを目安に行う運動となります。
背筋を鍛えることで姿勢改善や肩こりや腰痛の予防が期待できるだけでなく、背中がたくさんの筋肉で校正されていることからこれらを鍛えることで筋肉が増えて基礎代謝が上がり運動不足解消につながります。
忙しい毎日に最適な各種運動
決まった時間を確保して運動するのが難しいこともあります。何かをしながらでも手軽に運動不足を解消できる運動法を紹介します。お金をかけず、時間を自分で決められるので、始めやすく継続しやすいのがメリットです。
ペルビッククランチ
オフィスで座ったまま骨盤を整えることができるのが「ペルビッククランチ」です。
カラダを支える土台である骨盤のゆがみを改善・予防することで、カラダとメンタルの調子を整えることができます。また、血行促進にも繋がるため、眼精疲労の軽減や脂肪燃焼効果アップも期待できます。
仕事中やテレビを見ながら座ったままストレッチ
長時間のデスクワークやテレビ鑑賞は、同じ姿勢をずっと続けるため、血行不良になりがちです。仕事中やテレビ鑑賞の際に座ったままストレッチをすれば筋肉がほぐされ、血行の改善につながります。また、椅子に座りながら足の曲げ伸ばしをして腹筋や太ももを鍛える、力を入れながら合掌をして胸筋を鍛えるなど、ちょっとした工夫で「ながら運動」ができます。
自転車通勤や徒歩通勤
通勤に車やバスではなく、徒歩や自転車を使用すれば、おのずと運動量が増加します。歩くときは大股で、腕を大きく振ると効果的です。駅の構内などを移動する際は、エスカレーターやエレベーターではなく、階段を利用しましょう。
家事と絡めたエクササイズ
家事をしながら運動すれば、時間がなくても効率よく運動不足を解消できます。たとえば洗い物をしながら、かかとの上げ下げをする、開脚しながら洗濯物をたたむといった手軽なエクササイズなら、無理なく毎日続けられます。
スタンディングデスクやバランスボールの使用
オフィスでスタンディングデスクを使用して立ちながら仕事をすれば、代謝や血行を促進させる効果が期待できます。また、カジュアルな会議や休憩中などには、椅子の代わりにバランスボールに座ることで、話しながらインナーマッスルが鍛えられます。姿勢がよくなる効果やダイエット効果も期待できます。
運動不足のリスクを解消する運動量
運動不足を解消させ、健康的な生活を送るには、具体的にどのくらいの運動を行うべきかを解説します。
運動量の目安(健康づくりのための身体活動指針2013 アクティブガイド)
日々の運動量の目安については、厚生労働省が2013年に発表した『健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)』に詳しく記されています。具体的には「+10(プラステン):今より10分多く体を動かそう」をスローガンとしており、健康づくりのための「身体活動」と「運動」の目標も下記のように年齢別に定められています。
参照元:厚生労働省「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」
生活活動や運動の基準は、18歳未満は毎日最低60分以上、18歳~64歳は毎日60分、65歳以上は毎日40分です。そこに、筋力トレーニングやスポーツなどが含まれると、さらに効果的だとされています。
まずは生活の中で、歩く時間を増やす、椅子に座ったまま足を動かす、階段を利用する、仕事や家事の合間にスクワットをするなど、「10分多く(+10)」を意識し、運動を毎日の習慣にしてみてはいかがでしょうか。
身体活動・運動の推奨事項(令和5年5月 21世紀における第三次国民健康づくり運動)
「健康日本 21(第三次)」においては、ライフステージ(幼児期、青壮年期、高齢期等の人の生涯における各段階)やライフコース(胎児期~高齢期に至るまでの人の生涯を経時的に捉えた健康づくり)を踏まえた健康づくりに重点が置かれています。
身体活動・運動に関する取り組みを進める上では、座りすぎを避け、今よりも少しでも多く身体を動かすことが基本となっています。このガイドでは、新たに座位行動という概念が取り入れられていますが、立位困難な方でもじっとしている時間が長くなりすぎないように少しでも身体を動かすことが推奨されています。
メッツとは、身体活動の強度を表し、安静座位時を1メッツとし、その何倍のエネルギーを消費するかという指標です。歩行の強度は、3メッツに相当します。メッツ・時とは、メッツに身体活動時間を乗じた活動量の単位です。
〈成人版(案)の推奨事項〉
- 個人差等を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組む。今よりも少しでも多く身体を動かす。
- 強度が3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時以上行うことを推奨する。具体的には、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上行うことを推奨する(1日約8,000歩以上に相当)。
- 強度が3メッツ以上の運動を週4メッツ・時以上行うことを推奨する。具体的には、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上行うことを推奨する。
- 筋力トレーニングを週2~3日行うことを推奨する(週4メッツ・時の運動に含めてもよい)。
- 座位行動(座りっぱなし)の時間が長くなりすぎないように注意する(立位困難な人も、じっとしている時間が長くなりすぎないよう、少しでも身体を動かす)。
引用元:厚生労働量 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023(案)
生活習慣病等及び生活機能低下のリスクを低減する運動量
日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本動脈硬化学会は治療ガイドラインをそれぞれ定め、運動療法を推奨しています。これらをもとに厚生労働省では「概ね1日30~60分の中強度の有酸素性運動を週3日以上」することが望ましいとしています。中強度とは、うっすら汗ばむ程度で、からだがきついと感じないくらいの運動を指します。
参照:厚生労働省e-ヘルスネット 特定健診・保健指導における身体活動・運動指導
参照:厚生労働省 運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書
しかし、仕事をしながら、このような運動量を継続することは現実的には困難なこともあります。そのため厚生労働省は「最初は+10(プラステン:今より10分多くからだを動かす)程度から始める」といった呼びかけをしています。
参照:厚生労働省 アクティブガイド
メンタルヘルスに効果的な運動量
ここまで運動とメンタルヘルスの関係性をお伝えしてきましたが、実際にメンタルヘルス改善、ストレス解消、うつ病等の改善のためにはどの程度の量(強度・時間)体を動かせばよいのかという具体的な数値は明らかになっていないといわれています。
それでもさまざまな研究結果として下記のようなものがあります。
1日あたり3.5~4時間程度、何らかの形で体を動かすことが望ましい
東京医科大学精神医学分野の志村哲祥医師・井上猛教授らの研究グループは、一般就労者を対象にした質問紙調査によって、精神的健康の維持において1日あたり3.5~4時間程度、単なる歩行や家事も含めて何らかの形で体を動かすことが望ましいことを明らかにしました。
また、上記の時間より大幅に少ないか(運動不足)あるいは大幅に多くても(運動過多)、精神的健康が損なわれる傾向があったとのことです。
参照元:東京都医科大学精神医学分野 産業精神医学支援プロジェクト
1日20分の有酸素運動
リラックスや睡眠リズムを整えるために効果的な有酸素運動を、1日20分を目安に身体がポカポカして汗ばむくらい続けることが推奨されています。過剰に行うと疲れてしまい逆効果になる可能性もあるため、1日にたくさんの時間を費やすよりも、継続することが大切だと言われています。
軽いランニングやサイクリング、ダンスなどがハードルが高いようであれば、近所の散歩や緑の多い公園でいつもより速めに歩くなどするだけでも身体がポカポカして汗ばんできます。
参照元:厚生労働省 こころもメンテしよう
運動不足を解消する企業の取り組み
従業員の健康増進は、企業の生産性の維持・向上に不可欠といっても過言ではありません。運動不足を解消するための企業の取り組みをさまざまな観点から紹介します。
運動セミナーの開催
従業員の運動不足解消に取り組む多くの企業では、運動セミナーを開催しています。セミナー形式の場合、一度に多くの社員に均等にアプローチできるのがメリットです。セミナーに参加して知見を得たり、実際に体を動かしたりすることで、従業員の健康意識が高まります。
セミナーのテーマは、運動だけでなく、食事や睡眠、メンタル面などさまざまです。開催形式も多様で、企業に専門トレーナーを呼ぶほか、オンラインでも行えます。オンラインによる実施の場合、参加へのハードルを下げ、従業員の家族も一緒に参加できるメリットもあります。
なお、セミナーのテーマ選定にあたっては、客観的なデータにもとづいて健康に関する自社の課題を的確に把握することがポイントです。
関連記事:企業向け運動セミナーの種類・選び方
スポーツジムへの補助金、福利厚生の整備
新たに運動を始める際はウェアやシューズ代、スポーツジム会員費、体育館の施設利用料など、多くの費用がかかります。これが健康増進への足かせになることを防ぐため、企業として補助金や福利厚生の整備に注力します。たとえば法人契約を結んだジムなどの利用料を一定額補助する方法などが挙げられます。この場合、従業員自身のスケジュールを中心にして進められるので、運動が生活に定着しやすいメリットもあります。
ただし、福利厚生はすべての従業員が利用できることを前提にしているため、事前に仕組みを整える必要があります。
日本経済団体連合会「2019年度福利厚生費調査結果の概要」を見ても、健康・医療関連費の占める割合が多く、健康管理に力を入れている企業が多いことがうかがえます。従業員の健康管理を行い、健康状態を良好に保つことは生産性の向上というメリットにもつながります。また近年は「健康経営」といった経営手法も注目を集めており、従業員の健康状態を企業が管理し改善することで、パフォーマンスを上げようとする動きが活発化しています。
予防としての支援だけでなく運動促進やメンタルヘルス予防・改善についても促進すると従業員の健康増資を様々な面からサポートすることにつながります。
スポーツクラブへの補助以外でも、健康管理ができる福利厚生として挙げられるのは、以下のようなものです。
- 人間ドックの費用補助
- 健康管理室の設置
- 社内フィットネスジムの設置
- スポーツジムや運動施設の無料または割引での利用
- カウンセラーや産業医による相談
- 従業員50人未満の事業所でのストレスチェックの実施
関連記事:【福利厚生】スポーツジムの法人会員|おすすめ8選、導入メリット
共通の運動機会の提供
運動会のような大がかりなものなくても、従業員が気軽に参加できる機会を提供しましょう。激しい運動が苦手、体力に自信がない、短時間で済ませたいといった従業員にも気軽に参加してもらうには、ラジオ体操や、会議室を利用したヨガ会、ストレッチ会などがおすすめです。
運動会を開催する場合は社外の広いスペースを確保する必要がありますが、ラジオ体操やヨガなどなら、会議室や食堂などのちょっとしたスペースで実施できます。始業直前や業務終了後などの時間を使って開催できる手軽さも魅力です。早朝に実施すれば、仕事前に適度な運動をすることで生産性の向上が期待できます。業務終了後の実施なら「定時に仕事を終わらせよう」という意識が生まれ、残業時間の削減や時短労働につながります。
健康機器配布やアプリの導入
余暇に手軽に使える運動器具を配布します。より多くの社員が自分の運動能力にあわせて利用できるように、バランスボールや縄跳び、ヨガマットなど、いくつかの種類を用意することがポイントです。
また、スマートフォンアプリなどをインストールして運動量を計測するのも有効な取り組みのひとつです。とくに「歩数」は計測しやすい指標なので、アプリを活用した「ウォーキングラリー」などを実施すると、楽しみながら運動量を増やせます。所属チームごと、あるいは無作為にグルーピングして、歩数を競い合うのも効果的です。職場全体で同じアプリを利用することでおのずと健康意識が高まります。健康に関する会話が増えて、コミュニケーションの活性化にもつながります。低い導入コストで運動促進が図れることも魅力です。
このほか、健康管理機能の付いたウェアラブル端末を配布する企業もあります。数値やグラフなどのデータで運動量の少なさを客観的に示すことで、運動に取り組むよいきっかけになります。
運動場所の整備等職場環境の整備
職場環境とは、単に作業をする場所そのものに限られません。作業方法や疲労回復するための設備、従業員の事故防止や健康面の管理なども、職場環境に含まれています。
従業員の安全と健康に配慮する「安全配慮義務」は、企業が負っている責任です。労働契約法 第5条(労働者の安全への配慮)では、使用者は「労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められてます。
参照:厚生労働省 労働契約法
企業側が「労働者の安全への配慮」を実施するためには、労働環境や業務内容を加味し、具体的な対策を講じなければなりません。安全への配慮のためには、従業員の作業環境を整えることと、従業員の健康管理を行うことが重要になります。
企業は休憩時間などに手軽に運動ができるよう、職場環境を整えていきましょう。たとえばオフィスの一角にフィットネスやコンディショニングスペース、ボルダリングウォールなどを設置する企業があります。
オフィスで運動ができれば、ジム通いのための交通費や時間を削れるので、運動が習慣化されやすいのがメリットです。運動場所を使う人同士での親睦が深まれば、職場を超えたコミュニケーションにもつながります。
定期的なスポーツイベントの開催
全社を対象にした運動会などを定期的に実施することも、運動を始めるよいきっかけとなります。規模の小さい企業なら、ボーリング大会や公園などを利用したウォーキング大会などが挙げられます。
マラソン大会など、自治体主催のスポーツイベントに企業として参加するのもひとつの方法です。年齢や役職関係なく共通の競技に取り組むことで、立場を超えたコミュニケーションが生まれることも期待できます。
余暇・レクリエーションに関する福利厚生の充実は、従業員のコミュニケーション活性化やストレス解消につながるというメリットがあります。
従業員同士の親睦を深めて、円滑に意思疎通をはかれるようにすることも、生産性の向上に大きく関わります。交流を通じて協力体制を築き、お互いの知識やアイデアを共有することなどが、生産性向上に寄与します。
余暇・レクリエーションの例として挙げられるのは、以下のようなものです。
- 運動会の開催
- 社員旅行の料金支援
- サークル活動補助
- 保養施設の利用補助
- テーマパークや映画館といったレジャー施設等の費用補助
通勤や時間ルール等社内ルールの整備
従業員が運動をしやすいように社内ルールを整備することも必要です。たとえば年数日のスポーツ休暇制度を導入する、プレミアムフライデーにはフレックスタイムを推奨するなどの方法があります。
ジョギングやウォーキングで退勤したり、退社後にスポーツジムに直行したりする従業員に対して、スポーツウェアや運動靴での通勤を認める企業もあります。
インセンティブの導入
従業員のモチベーションを挙げるのに効果的なのが、インセンティブの導入です。たとえばアプリで計測した運動量をポイントに変えて、商品やECサイトのポイントと交換可能とする方法などがあります。目標をもって運動に取り組め、達成感も味わえます。
運動不足が解消した企業事例
現在、デスクワークによる運動不足に加え、テレワークによる運動不足によって従業員の健康リスクが向上しています。
その中でも、従業員の運動不足解消に成功した企業事例をご紹介します。
運動習慣者率20%UP|株式会社シマキュウ
株式会社シマキュウでは、すでに実践している健康経営の取り組みにプラスして、RIZAPウェルネスプログラムを導入しました。
社長が率先して健康経営を推進し、RIZAPウェルネスプログラムを3ヶ月間実施した結果、1年後の健康診断の結果では運動習慣者比率が2倍以上に向上しました。
【RIZAPウェルネスプログラム導入結果】
約8割の従業員が健康数値に何らかの問題がある有所見者であり、メタボ、高血圧症、糖尿病などの生活習慣病を抱える従業員が多い状況でした。
そこで、社長が従業員一人ひとりと面談し、「健康を気遣った生活に変えて欲しい。大病せずいきいきと働いて欲しい」と想いを伝え、最終的には健康施策への参加率は100%になりました。
導入したRIZAPウェルネスプログラム「結果にコミット®コース」では、3ヶ月間RIZAPトレーナーが一人ひとりに合った生活習慣の定着をサポートしています。
業務時間内に実施し、健康意識の向上だけでなく、体重が平均6.2kg減、体脂肪率平均4.3%減と従業員全員が健康を手に入れる結果となりました。
実施後も、健康をテーマにする日常会話がうまれたり、運動習慣が定着し、富山マラソンに参加する従業員が初めて出てくるなど、健康文化が醸成されていることが分かります。
株式会社シマキュウの詳しい事例ダウンロードはこちら
運動習慣者割合が増加 │ 株式会社ベネッセホールディングス
株式会社ベネッセホールディングスでは、比較的若い従業員が多く、病気の人が多いわけではありませんが、生活習慣病予備軍については気を付ける必要があり、過去に生活習慣病の予防としてポピュレーションアプローチをいろいろ実施してきました。
しかし、健康無関心層が集まらず毎回関心のあるメンバーしか集まらないなど健康施策に関して苦戦を強いられている現状を変えるため、集客に好影響がありそうだと判断してRIZAPの健康セミナーを導入しました。
参加満足度は97.5%と高く、2019年度以降、参加申込人数は翌年に4倍、翌々年には9倍もの推移を遂げる結果となりました。2020年度より運動不足に悩む企業が増えている中、上記の取り組みの末「運動習慣がある」と回答した割合が毎年向上しています。
また、参加者アンケートにおいて「セミナーを通して、健康改善や運動習慣に関する知識や姿勢は向上しましたか」という質問に対して、参加者の85%が向上したと回答し、好結果が得られています。
その他にも、半数以上の従業員から「運動不足の解消・運動習慣の改善」につながった声や、「リフレッシュできた」「気持ちがポジティブになった」と前向きな回答が多く挙がりました。
※RIZAPウェルネスプログラム導入による直接的な効果を実証するものではありません。
参照:https://benesse-hd.disclosure.site/ja/themes/154
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健康増進月間でテレワーク中の運動不足解消 │ NTTテクノクロス株式会社
運動不足の解消と同時に、テレワークにより従業員同士もなかなか会えない時期だからこそコミュニケーションの促進を目的に「健康増進月間」を企画しました。
LIVE形式のRIZAP健康セミナーを含め、延べ200名以上が参加し、想定以上の盛り上がりとなりました。
『健康増進月間』ではオフィスに出社している従業員は会議室から参加し、テレワークのためオンラインで参加している従業員とともにセミナーを視聴したり、5minトレーニング動画をみるなどしてイベント形式でトレーニングを行う企画を複数回立てて実施しています。
健康セミナーや5minトレーニングに参加した人も、参加できなかった人もRIZAPの共通話題で盛り上がり、運動不足の解消だけでなく社内コミュニケーションの活性化にも繋がりました。
NTTテクノクロスの詳しい事例ダウンロードはこちら
従業員の心身の不調を予防する取り組み
運動不足解消の取り組みと同時に、心身の不調を予防するためには下記のような対策を並行して実施していくことが求められます。
それらの対策に3つの段階とは、ストレスに対してどの段階で予防・対処するのかという考えに基づいた枠組みで、一次予防・二次予防・三次予防に分かれています。
一次予防とはメンタルヘルス不調・健康不安を未然に防止、予防することです。心身ともにに不調をきたすことのないよう、職場や業務に起因するストレスを未然に防止する段階です。従業員が自分で行うストレス緩和ケアのほか、ストレスチェックの実施、業務環境の改善がこの段階に含まれます。
二次予防は、メンタルヘルス不調・健康不安を早い段階で発見し、適切な措置を行う「早期発見」です。重度な精神疾病に至る前に、早い段階で不調を把握・発見し、対処するための取り組みのことを指します。
三次予防は、メンタルヘルス不調を発症したりすでに体調を崩してしまった従業員の治療と、休職後の職場復帰・再発予防の取り組みです。おろそかにすると、再発したり離職につながることもあるため、慎重に取り組む必要があります。
関連記事:メンタルヘルス不調の予防策は? セルフケアや企業が講じるべき対策
一次予防対策の具体例:未然防止につながる取り組み
一次策はメンタルヘルス不調・健康不安を未然に防止する「予防」です。心身ともに不調をきたすことのないよう、職場や業務に起因するストレスを未然に防止する段階です。
従業員が心身の治療を必要とする状況になる前に、企業としてメンタルヘルス不調・健康不安を未然に防ぐことが大切です。従業員が自分で行うストレス緩和ケアのほか、ストレスチェックの実施、業務環境の改善がこの段階に含まれます。
≪一次予防の具体例≫
- 解決すべき課題を特定する(ストレスチェック・従業員サーベイ・健康診断等)
- メンタルヘルス対策の目標設定・実施計画を練る
- 従業員のセルフケアを強化する
- 従業員のヘルスリテラシーを高める
- 心理的安全性を高める
- 運動習慣を定着させる
- 食習慣の改善を後押しする
- 休養を見直す
- 職場環境を整える
- 健康経営を推進する
二次予防対策の具体例:早期に発見し、早期治療につなげる取り組み
二次予防は、心身の不調を早い段階で発見し、適切な措置を行う「早期発見」です。重度な体調不良に至る前に、早い段階で不調を把握・発見し、対処するための取り組みのことを指します。
具体的には、心身不調者本人・上司・同僚への気づきの支援や検診、相談窓口などの体制整備があります。
SOSを上げたり、気兼ねなく相談できる風土醸成により、二次予防が効果的に働きます。ストレスチェックはメンタルヘルス対策の一次予防に用いられるものですが、副次的な効果として体調の早期発見(二次予防)にもなります。
不調に気付いた時に、ためらわずに相談できる相談窓口を社内外に設置したり、産業医との面談機会を設けることも重要です。
≪二次予防の具体例≫
- 健康診断の100%実施する
- ラインケアを強化する
- 高ストレス者の面談を実施する
- 若年層も含めた特定保健指導を実施する
- 相談窓口を設置する
三次予防対策の具体例:従業員の復帰支援の取り組み
三次予防は、心身の不調を発症してしまった従業員の治療と、休職後の職場復帰・再発予防の取り組みです。
メンタルヘルス不調は再発しやすいことに特徴があります。職場復帰のプロセスで症状が悪化してしまえば、その従業員は今度こそ離職してしまうかもしれません。
そのため、三次予防を行う際には、該当の従業員の主治医と連携し、従業員の精神状態を適宜チェック・フォローしながら職場復帰支援プログラムを実施していきます。その従業員の上司に対しても、メンタルヘルス不調者が復帰する際の対応について研修などを行うことが重要です。なお厚生労働省が「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」という資料を公表しているので、こうした資料を参照することもおすすめします。
≪三次予防の具体例≫
まとめ
従業員の運動不足を解消するために企業がサポートできることは多くあります。ウォーキングのように低コストの方法を選べば予算が少なくても実施可能です。
施策により、健康増進はもちろん、企業内のコミュニケーションが活性化されるメリットも享受できます。まずは従業員の健康課題を把握し、企業の特徴に適した施策を検討してください。
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