コロナ禍の健康施策 ❘ 運動はメンタルヘルス対策になるのか

従業員のメンタルヘルスが悪化している場合、その一因として運動不足が考えられます。

運動とメンタルヘルスは密接な関係があり、また近年では新型コロナウイルス感染症の影響で従業員の運動不足によるメンタルヘルス不調が問題視されています。

この記事では、コロナ禍における運動不足やメンタルヘルスの実情、職場でできる具体的なメンタルヘルス対策を、各種調査結果を踏まえて解説します。

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目次

運動とメンタルヘルスの関係性

厚生労働省が身体活動・運動分野における国民の健康づくりについてまとめた「健康づくりのための身体活動基準2013」では、運動に取り組むことが気分転換やストレス解消などメンタルヘルス不調の一次予防として有効であることが示されています。

運動の具体的な効果としては、睡眠の質の向上や不安の解消、集中力や判断力の向上などが挙げられ、これらの効果を得るためには運動を継続的に実施する必要があります。運動がメンタルヘルス対策にどのように有効であるかを具体的に理解し、企業の実情に合わせた施策に取り組んでいきましょう。

うつ病への運動習慣の有効性

近年では、運動習慣はうつ病にも有効であるという研究結果が出ています。

健康科学を専門とする永松俊哉氏は、2013年に「運動と抑うつ改善の関係に関する先行研究を整理・要約し、運動の効用について概説」した論文を発表しています。それによると、抑うつの軽減やうつ病の症状改善に運動は有効であり、うつ病や不安障害の治療として運動が薬物療法と同等の効果を有し、抑うつ改善に及ぼす運動介入に一定の有効性があることが示唆されています。

運動することでセロトニンの分泌が増加し、興奮やイライラを鎮めることで心の安定につながります。また、睡眠の質を向上させるメラトニンも分泌されるため、運動の継続はメンタルヘルス対策に効果をもたらすことが期待されるのです。

職場で行うウェルネスプログラムの有効性

RIZAPが2018年11月から筑波大学の水上研究室と共同で実施した「トレーニングプログラム参加者の心理的変化」に関する研究では、トレーナー出張型の運動プログラムが身体面だけでなくメンタルヘルス対策にも有効であることが示唆されました。

筑波大共同研究20191015

298名の男女を対象に実施したこの研究では、「RIZAPウェルネスプログラム」の開始前と開始3ヶ月後で自己効力感や健康感、うつ尺度、ストレス対処力の変化を観察しました。その結果、いずれの項目でもプログラム後に大きく改善された結果となりました。これにより、職場などでのストレスを感じた際に、ポジティブに対応する能力が増したことが分かりました。

企業内で集団的に実施する運動プログラムは、従業員のメンタルに良い影響を与えることが期待できるのです。

運動不足による健康二次被害

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛やリモートワーク普及などの影響で、運動不足による心身の健康への二次被害が大きな問題となっています。

成長期の子供に対する発育・発達への影響や、リモートワークやデスクワークが多い社会人の運動量低下などが健康二次被害として挙げられます。中高年齢者においては、免疫力の低下や筋力の低下なども危惧されているのです。

身体を動かせないことのストレスによってネガティブな気分になることで、メンタルヘルスに悪影響を及ぼすことも考えられます。コロナ禍で蓄積したストレスによる健康二次被害を防ぐためにも、従業員の運動不足を解消する必要があるのです。

運動の効果とは

運動不足による影響は、健康リスクから経営リスクまで広範囲に及びます。では、運動がもたらす効果にはどのようなものがあるのでしょうか。ここからは、運動が企業にもたらす効果を詳しく紹介します。

従業員の健康状態の改善

まず、運動によって従業員の健康状態が改善されることで、従業員の心身を守れます。従業員の健康を保持・増進することは、安全配慮義務を果たし、仕事のパフォーマンスを向上させるためにも大切です。

平成24年に武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科の内藤義彦氏が提出した「疾病予防および健康に対する身体活動・運動の効用と実効性に影響する要因」によると、運動の効用は16あるとされています。

身体面と精神面それぞれの効果を正しく理解し、対策の参考にしてみてください。

身体的な効果

「疾病予防および健康に対する身体活動・運動の効用と実効性に影響する要因」で記載されている身体的な効果は11あります。

  • 動脈硬化性の病気、特に心筋梗塞の危険性を減少
  • 体脂肪を減らし体重のコントロールに有効
  • 脂質異常症(低HDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症)の予防・改善に有効
  • 高血圧の予防・改善に有効
  • 糖尿病やメタボリックシンドロームの予防・改善に有効
  • 骨粗鬆症による骨折の危険性を減少
  • 筋力を増し、色々な身体活動の予備力が向上
  • 筋力とバランス力を増やし、転倒の危険性を減少
  • 乳がんと結腸がんの危険性を減少
  • 認知症の予防・改善に有効
  • 睡眠障害の改善

このように、運動は生活習慣病の改善に役立つ効果が多く期待できます。運動によって身体活動量が増えると、エネルギーがたくさん消費されます。エネルギー消費量の増加は代謝量アップや血流の改善をもたらし、肥満の予防・改善のほか、血糖値や脂質、血圧の状態の改善も期待できるのです。

精神的な効果

運動で体を動かすことは、精神的ストレスの発散にもつながります。「疾病予防および健康に対する身体活動・運動の効用と実効性に影響する要因」で記載されている身体的な効果は2つあります。

  • ストレスの解消、うつ病の予防・改善に有効
  • シェイプアップし、自己イメージが改善

運動によってストレス発散やセルフイメージ・自信の向上ができると、仕事面においても、集中力や目標達成能力の向上といった良い影響を及ぼします。また、従業員同士で運動不足解消に取り組むことは、従業員同士のメンタルヘルス維持やコミュニケーション促進にも効果的です。

楽しく生き生きと働く従業員が増えることは、外部へ良いイメージを与え、社会的信頼の獲得や企業価値の向上にもつながります。

企業の経営リスクの低下

次に、従業員の運動不足を解消することで、企業の経営リスクが低下します。

業績の向上に従業員の貢献は必要不可欠です。運動増進によって従業員の健康を守り、ひとり一人のパフォーマンスが向上することで、貢献度が増して業績が向上しやすくなります。

プレゼンティーイズム予防・解消

健康問題によって従業員の生産性が低下する状態である「プレゼンティーイズム」の悪化は、最終的に従業員の欠勤といったアブセンティーイズムにつながってしまいます。

プレゼンティーイズムを招く原因例として、不眠やうつ病などのメンタル不調や、頭痛、腰痛、肩こりなどが挙げられます。従業員の生産性を上げるためには、このような健康問題を改善することで、プレゼンティーイズムを解消していくことが重要です。

厚生労働省が平成29年7月に発表した「コラボヘルスガイドライン」では、国内3企業の健康関連総コストのうち、プレゼンティーイズムによるものが77.9%と、企業に大きな影響を与えていることがわかりました。

運動によるプレゼンティーイズムの解消は、従業員のパフォーマンス向上や、労働力確保、コスト削減など、企業の経営リスクの低下に効果的です。

コミュニケーションの活性化

従業員同士で運動をすることでコミュニケーションが活発になり、仕事がしやすくなる効果も期待できます。

大規模な企業では、部署間や支店間でのコミュニケーションが少ないケースも多いでしょう。従業員が参加できる運動セミナーの開催やトレーニングスペースの設置をすれば、仕事以外でのコミュニケーションを取るきっかけになります。社内コミュニケーションが促進されて仕事が進めやすくなれば、パフォーマンスが向上し、企業の業績にも良い影響を及ぼすでしょう。

テレワークの普及等でコミュニケーション不足が問題視されている今こそ、従業員同士で運動をしたり、運動という共通の話題を持ったりすることによる社内コミュニケーション促進が必要とされています。

メンタルヘルス対策

運動は従業員へ精神的な安定をもたらす効果があるだけでなく、従業員同士のコミュニケーションを活発化させることでメンタルヘルス対策にもなります。

運動は気分転換やストレス発散に有効です。仕事のストレスで気分が落ち込んでいるときに効果的なだけでなく、自律神経が整うことで不安やイライラを感じにくくなる効果も期待できます。さらに、社内コミュニケーションが活性化されれば、職場の雰囲気や人間関係が良好になり、安定したメンタルヘルスを保てるでしょう。

リモートワークで進むメンタルヘルス対策

新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛やリモートワークの急速な普及による影響で、1日あたりの歩数減少をはじめとする日常的な運動不足が生じています。

RIZAPが2022年に実施した「ニューノーマル時代の従業員の心と体の健康管理アンケート」では、コロナ禍によって運動不足や精神的なストレスなどの健康課題が発生・増加していることが明らかになりました。

一方で、従業員に対する健康対策を「何もしていない」と回答した企業が30.0%と最多になっており、メンタルヘルス対策はこれからの課題であることが分かります。

これらの調査結果を踏まえ、運動不足解消やメンタルヘルス対策の必要性について解説します。

3人に1人が精神的なストレスが増えた

「コロナ前と比較して、新たに出てきた・増えた従業員の健康面での課題、または相談を受けた項目」では、約半数の回答があった「運動不足」を筆頭に、上位3項目は運動不足とメンタルに関わる項目でした。

この結果をテレワーク実施の有無で比較すると、テレワークを実施している企業の方が、実施していない企業に比べて健康課題を多く抱える傾向にあることが分かりました。

テレワーク実施有無での比較

特に「運動不足」「精神的なストレス」ではそれぞれの差が15ポイント以上と、大きな乖離が見られます。

「精神的なストレス」がテレワークを実施している企業で多くなる原因として、コミュニケーション不足や、残業の増加が考えられます。

コロナ前と比較して、新たに出てきた・増えた人事・労務、健康管理面での課題

テレワークの場合、出社時と比べると人と会話する機会が少なくなるケースが多く、気軽なコミュニケーションも取りづらくなる傾向があります。また、コミュニケーション機会が少ないことから各々の業務状況も確認しづらくなるでしょう。

その結果、隠れ残業などが増え、ワークライフバランスが乱れることでメンタルヘルス不調へ繋がることが考えられます。

各社の注力項目「メンタルヘルス対策」最多

「人事・労務・健康管理部門が注力している項目はどれですか?」の質問に対しては、メンタルヘルス対策の回答が最も多く、企業にとっての重要課題であることがうかがえます。

人事・労務・健康管理部門が注力している項目

一方で、メンタルヘルス対策を実施した企業に対する「メンタルヘルス対策を実施したことで、どのような効果や変化がありましたか?」という質問では、「分からない」「効果も変化もない」の回答が約半数に及び、効果が見えないことが浮き彫りとなっています。

また、「メンタルヘルス研修は、本当に対策をして欲しい人に受けてもらえていますか?」の質問では、「いいえ」「どちらとも言えない」の回答が半数を超える結果でした。その理由としては、「自分は大丈夫だと思っているため」「業務が忙しいため」「関心がないため」などが挙げられています。

メンタルヘルス対策を本当に受けて欲しい人に受けてもらっているか

このように、メンタルヘルス対策を重要課題として捉えている企業は多いにもかかわらず、効果的な実施にはさまざまな課題があることが分かります。その原因には、従業員の関心の低さや業務との兼ね合いといったことが考えられます。

そのため、具体的な施策に取り組む前に、まずはメンタルヘルス対策を行うことの重要性を従業員に理解してもらったり、業務に支障の出ないよう配慮しながら対策することが必要となるでしょう。

「メンタルヘルスに運動は効果的だと思う」約8割

メンタルヘルス研修が本当に対策をしてほしい人に受けてもらえないのはなぜでしょうか。

対策を実施している企業に研修内容を聞くと、座学形式とコラムや資料の共有形式が半数以上を占めていました。主催者側が一方的に情報を発信する形式が多いことが、参加率や効果の実感を低下させていると考えられます。

一方で、「メンタルヘルス対策に運動は効果的だと思いますか?」の質問では、約8割が「はい」と回答しています。

そのため、座学中心の研修形式ではなく、従業員が主体的に取り組めるようなプログラムを策定することが求められます。運動やヨガを取り入れた身体を動かす形式の研修を行うなど、形式を変えることで有効性の改善に期待ができるのです。

職場でできる対策

運動とメンタルヘルスの関係性やコロナ禍での現状を踏まえたうえで、企業の実情に合わせた対策を行うことが成功のカギです。ここからは、職場でできる対策をいくつか紹介するので、ぜひ参考にしてください。

メンタルヘルス研修の実施

従業員の自己管理能力を高めるために有効なのが、メンタルヘルス研修です。メンタルヘルスは日常的にケアすることで、不調を防げます。そのため、研修を通じて従業員に気付きを与え、さらに継続するきっかけを作ることが重要です。

メンタルヘルス研修には、ディスカッション形式や運動を取り入れた実践形式など、さまざまなやり方があります。ポイントは、知識を習得する座学形式だけでなく、運動やヨガを取り入れた体を動かす形式や、参加しやすいオンライン形式なども取り入れ、選択肢を増やすことです。

研修の参加率を上げて参加後に運動を習慣づけてもらうためにも、工夫しながら実施しましょう。また、一度実施したら終わりではなく、定期的に開催して運動習慣を啓蒙していくことでメンタルヘルスのさらなる向上につながります。

健康セミナーの実施

健康セミナーの実施もメンタルヘルス対策に効果的です。セミナー形式で実施するメリットとしては、従業員全体を対象にすることで平等にアプローチできることが挙げられます。また、セミナー参加者同士でコミュニケーションが活性化するほか、健康増進の行動に対して積極的な意識を持つようになるといった副次的効果が得られるでしょう。

セミナーの種類には、初心者向けの運動スタート&定着セミナーや体力チェックなどの実践的なものから、食事・栄養バランス改善セミナーや睡眠改善セミナーといった意識改善を促すものまで、多岐にわたります。また、女性向けやシニア世代向けといったターゲット別のセミナー開催も効果的です。

従来のメンタルヘルス対策であまり効果が得られていない企業や、従業員の参加率が上がらないと悩んでいる企業には特に導入することが推奨されます。

健康経営オフィスの導入

健康経営オフィスを導入して働きやすい職場環境を整えることも、メンタルヘルスの改善につながります。

健康経営オフィスは、経済産業省の委託事業である「健康経営オフィス普及啓発委員会」が2015年に発表した「健康経営オフィスレポート」において、「健康を保持・増進する行動を誘発することで、働く人の心身の調和と活力の向上を図り、ひとりひとりがパフォーマンスを最大限に発揮できる場」と定義されています。

具体的な施策としては、オフィス内に体を動かす器具の設置や休憩・気分転換する場の整備、社員食堂での健康メニューの提供等が挙げられます。これらの施策を導入することで、運動の習慣化を促したり社内コミュニケーションを活性化したりすることにつながります。

良好な人間関係はメンタルヘルスに良い影響を与えるため、ぜひ取り入れましょう。

運動からメンタル改善を目指した事例

ここからは、職場復帰支援に運動プログラムを取り入れてメンタル改善を目指した企業の事例を紹介します。

株式会社Rodina様では、うつ病などのメンタル不調によって休職した従業員の職場復帰を支援しています。「就労は健康の上に成り立っている」という前提のもと、心身の健康バランスを整えるために運動を取り入れる必要があることを重視し、その一環としてRIZAPの運動プログラムを導入しました。

具体的なプログラム内容としては、生活習慣(運動・食事)に関係する健康セミナーを定期的に開催しているほか、運動実践が取り入れられたメンタルヘルス研修、さらに健康に関する各種コラムを入れたタブレットを配布するなどの施策を行っています。

コロナ禍の影響もありセミナーはオンラインで開催し、約140名の支援対象者が参加しました。参加者や従業員から「受けて良かった」という声が寄せられるほど好評だったとのことです。

まとめ

メンタルヘルス対策には、精神的なストレスを軽減させるなどの効果が期待できる「運動」が有効です。従業員の現状のメンタルヘルスを正しく理解し、実情に合わせて取り組むことが重要です。

一方的に情報を伝える座学形式だけではなく、運動を取り入れた研修やセミナーの実施、日常的に運動できる環境の整備など、従業員が主体的に取り組める工夫をすることが成果につながります。まずは自社の課題を明確にした上で、従業員全員に寄り添った対策を検討しましょう。

サービス紹介資料
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