福利厚生とは
福利厚生とは、「給与や賞与とは別に、企業が従業員やその家族に提供するサービス」を指します。まずは、その目的や対象者について知り、福利厚生について基本的な理解を深めましょう。
福利厚生の目的
福利厚生の主な目的は、就業・生活環境を整えることで従業員に自社で働くメリットを実感してもらい、離職を防ぐことです。また福利厚生の充実は、新たな人材の確保にも役立ちます。多くの求職者は、ワークライフバランスへの意識の高まりから、業務内容だけではなく「いかに満足できる人生が送れるか」という点を重要視する傾向にあります。
ハタラクエール2022福利厚生事例集での調査によると、多くの企業に共有されている目的は「モチベーションを高めたい」でした。
全体で91.6%、製造業の88.2%、非製造業の92.4%が福利厚生によって実現したい目的としていました。非製造業では「モチベーション」が最大の目的でしたが、製造業では「新卒社員を採用したい」が94.1%と最も多く、「モチベーション」は88.2%で2番目に多い結果となっています。その他、非製造業では「社員への安心感の提供」(75.8%)「女性社員を採用・活用したい」(74.2%)「社員の疾病予防・健康増進したい」(74.2%)という結果となりました。
製造業では「社員への安心感の提供」(77.1%)「新卒社員を採用したい」(74.7%)「社員の疾病予防・健康増進したい」(74.7%)「女性社員を採用・活用したい」(73.5%)「メンタルヘルス」(70.6%)となっています。
参照:ハタラクエール2022福利厚生事例集
経済の低迷や人材不足が慢性化しつつあるなかで、従業員をつなぎ止め、優秀な人材を確保するために、福利厚生の充実は不可欠です。
福利厚生の対象者
福利厚生の対象者には、下記のような正社員に準ずる業務を担う従業員が該当します。
- 正社員
- 契約社員
- 派遣社員
- パートタイマー
- アルバイト
2020年の法改正により、有期雇用労働者やパートタイマーなどに対する不条理な待遇が禁止され、正社員と同様の扱いが義務付けられています。
福利厚生の種類は大きく分けて2種類に分けられる
福利厚生は2種類に分けられ、それぞれ「法定福利厚生」「法定外福利厚生」と呼びます。ここでは、トラブルを回避し自社に合った制度を取り入れるために、両者の違いや特徴、費用の相場などを把握しておきましょう。
関連記事:法定外福利厚生とは?❘法定福利厚生との違いや種類を解説

法定福利厚生
法定福利厚生とは、従業員に対し企業が提供することが義務付けられている福利厚生のことです。違反すると法律違反とみなされ、罰金が発生することもあります。
法定福利厚生には以下の6項目が含まれます。
- 雇用保険
- 健康保険
- 介護保険
- 労災保険
- 厚生年金保険
- 子ども・子ども拠出金
一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)が行った「第64回福利厚生費調査」によると、2019年に企業が負担した法定福利厚生費の平均は84,392円です。ただし項目や業種などによって、企業が負担する割合は異なります。
厚生年金保険
厚生年金保険とは、国民年金保険に上乗せして支払う年金保険です。対象となる企業の会社員が加入し、労働者と雇用主が折半で年金保険料を負担することによって、労働者が65歳以上になったときに、年金を受け取ることができます。老後の年金以外にも、けがや病気で障害が残ったときの障害年金、受給者が亡くなった遺族へ支給される遺族年金など、働けなくなったり収入を得ることが困難になった場合に生活を守ってくれます。
企業の負担率は1/2です。令和5年度3月分からの厚生年金保険料率は令和2年9月分から据え置きで18.3%なので、厚生年金保険料率は9.15%となります。
健康保険
健康保険とは、従業員の病気やケガなどによる金銭的負担をサポートする公的医療保険制度です。健康保険はサラリーマンをはじめとした企業勤めの人に向けて作られている制度であり、「国民健康保険」とは異なります。国民健康保険の場合は個人事業主が加入している場合が多く、加入者本人が全額保険料を負担します。医療費の負担を軽減するだけでなく、健康診断や病気・ケガによる休職をサポートする給付金制度(傷病手当金)などもあります。
健康保険には大企業が独自に設立して運営する組合健保と、組合健保を持たない企業が所属する協会けんぽの2種類があります。どちらの健康保険も企業の負担率は1/2です。協会けんぽの場合には、令和5年度3月分からの健康保険料率は9.33%~10.51%で、企業の負担率は半分の4.665%~5.255%となり、都道府県ごとに異なります。東京都を例にとると、健康保険料率はちょうど10%なので企業の負担は5%です。
介護保険
介護保険とは、介護が必要となった高齢者やその家族を皆で支えていくための保険です。2000年から新たに導入が義務付けられた比較的新しい福利厚生で、高齢化が進むなかで増していく家族の負担を軽減し、社会全体で介護を支えるために設けられました。
40歳以上の従業員は、健康保険に加えて介護保険に加入する必要があります。ただし、40~64歳までの人(第2号被保険者)は、末期がんや関節リウマチ等の16種の特定疾病が原因で要介護(要支援)認定を受けた場合のみ介護保険のサービスを受けることができ、65歳以上の場合は要介護(要支援)認定を受けることで介護サービスが利用できます。
企業の負担率は1/2です。令和5年度3月分からの介護保険料率は1.82%なので、企業が負担する介護保険料率は0.91%となります。
子ども・子育て拠出金
子ども・子育て拠出金(旧:児童手当拠出金)は、子育て支援のために充てられる税金のことで子育てや育児を支援する目的の制度です。会社や事業主から「社会全体で子育て支援にかかる費用を負担する」という考えのもと、従業員の厚生年金と一緒に徴収されます。
従業員に子どもがいるかどうかは関係なく、従業員が独身で子どもがいない場合でも厚生年金に加入している方全員が対象です。
従業員は子ども・子育て拠出金を負担する必要はなく、その従業員を雇っている会社や事業主が納付することになっています。令和5年4月分からの拠出金率は0.36%です。
雇用保険
雇用保険は、従業員の生活や雇用の安定を図るための保険制度です。
雇用保険には失業手当や育児休業給付金などがあり、倒産やリストラなど会社都合で職を失った場合はもちろん、自らの意志で退職したが就職先が見つからない場合などにも給付を受けることができます。それ以外にも能力アップやキャリアアップのための学習に対して給付される教育訓練給付制度など様々な給付制度があります。
「1週間の所定労働時間が20時間以上」で、「31日以上の雇用見込がある人を雇い入れた」事業所は雇用保険への加入義務があります。雇用保険の適用事業所で働く従業員は原則として加入者となります。そのため雇用保険は正社員に限らず、所定の労働時間や雇用期間など条件を満たしたパート・アルバイトも加入対象です。
雇用保険料は事業主と従業員の双方が支払う必要があり業種によって負担率が異なります。事業主の負担部分が福利厚生にあたります。令和5年度に企業が負担する労災保険は平成30年4月から据え置きで0.25%~8.8%です。
労災保険
労災保険は、業務中に病気やケガをした場合に保障を受けられる保険です。健康保険でも病気・ケガに対するサポートはありますが、労災保険は勤務時間中や通勤途中の病気・ケガに限定される点が異なります。怪我だけでなく病気なども対象なり、それらにより後遺症が残った場合や死亡した場合などに給付を受けることができます。
労働者を1人でも雇っている事業主は、原則として、労災保険に加入する義務があります。
労災保険の保険料に関して労働者の負担はなく、全額事業主が負担します。労災保険は業種によって負担率が異なります。令和5年度に企業が負担する雇用保険料率は0.95%~1.15%です。
法定外福利厚生
法定外福利厚生とは、法定福利厚生以外に企業がオリジナルで追加する福利厚生のことです。導入義務がないため、全く採用していない企業もあります。
具体例としては、以下が挙げられます。
- 住宅手当/家賃補助/社宅
- 健康診断/人間ドック/メンタルヘルス相談
- 退職金/企業確定拠出年金(401K)
- 慶弔金
- 通勤費
- 資格取得補助
経団連の「第64回福利厚生費調査」によると、2019年に企業が負担した法定外福利厚生費の平均は24,125円でした。そのうち13.2%が医療・健康費用と、健康投資に力を入れている企業が多い傾向にあります。
このほかにも、最近では軽食やドリンクの無料サービスや、オフィス内でのマッサージサービスなども人気を集めています。
下記の福利厚生とヘルスケア調査レポートでは、様々な福利厚生のランキングや従業員の皆様が福利厚生に求めているものなどを2000名に調査した結果を公表しています。

福利厚生を充実させるメリット
福利厚生を充実させると、企業にとってはさまざまなメリットが生じます。

- 人材採用力の強化
- 人材の定着
- 生産性の向上
- 法人税の節約につながる
人材採用力の強化
求職者が職場を決める際の重要な要素のひとつに福利厚生があります。新卒者に就活時に福利厚生について確認したことがあるかを質問したアンケートでは回答者の52.3%「ある」と回答をしています。他の企業にはない独自の福利厚生サービスがあれば、求職者の関心を集められるでしょう。
また「福利厚生に力を入れている企業=従業員を大切にする企業」というイメージが定着すると、企業の社会的な信頼度もアップします。社会的にも福利厚生は注目されているため、SNSで紹介されるなどして優良企業としての知名度が上がります。
さらに、福利厚生に資金をまわせるということは経営基盤が安定していることの証でもあります。健康経営・従業員重視の経営スタンスは会社の好感度を高めるとともに、ひいては経営者の評価も高めるでしょう。
参考:https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2019/09/monitor2020_7-1.pdf
人材の定着
福利厚生が充実していると従業員満足度が向上し、仕事へのモチベーションアップが期待できます。さらに、従業員自身の自己肯定感の高まりにも影響を与え、結果的には会社へのエンゲージメント(組織への愛着心)が芽生え、組織に所属して貢献しているという意識が強くなり、職場への定着率が上がります。
また十分な福利厚生があることにより、私生活とのワークライフバランスが充実できることで、さらに人材の定着は見込めます。
生産性の向上
福利厚生の中で注目されているのが従業員の健康促進を行う取り組みです。デスクワークなどが主な業務の場合は、日常的に十分な運動を行えていないという人も多いのではないでしょうか。また、リモートワークが普及したことで運動不足がより深刻な問題になっています。
そこで、健康促進の福利厚生を設けることで、従業員の心身面での健康を支援することができます。身体的にも運動習慣をつけることで日頃の業務の集中力が高まり、より主体的な働きやコミュニケーションの活発化も期待できます。
法人税の節約につながる
福利厚生にかかる費用は非課税になる場合があります。ただし以下の条件を満たしていなくてはなりません。
法人契約を行ったものでそのサービスを全従業員が利用できる必要があります。役員など特定の人物のみ利用できるといった場合は経費として認められないため注意が必要です。
利用規約を作成して従業員に周知することも必要です。規約に組み込んでおくことで福利厚生として明確な目的をもって取り組んでいることを示すことができます。経費として税務署に認められる条件などを確認しましょう。
また、福利厚生費として計上できるものとしては、健康診断費用、通勤費、社宅・家賃補助費など多数あります。社員旅行や忘年会・新年会も一定の条件下で福利厚生費として認められます。
(※一般的な福利厚生の解釈に基づく情報です。職種や業務内容等により異なる場合があります。詳細は税理士等にご確認ください。)
デメリットやその解消法について詳しく確認するには、下記の記事をご参照ください。
関連記事:福利厚生充実のメリット・デメリットとは
福利厚生の導入効果が見られた企業事例
企業はどのような目的を持って、どのような福利厚生制度を導入しているのでしょうか。
ここでは、福利厚生導入の成功事例を目的別に紹介します。自社の目的に近い事例を見つけてみてください。
離職率3%前後で推移|ソフトバンク株式会社
ソフトバンク株式会社は福利厚生法人表彰・認証制度「ハタラクエール2022」にて優良福利厚生法人(総合)として表彰されています。
福利厚生充実の背景には、「従業員が常に元気で活力に溢れていることが事業の継続的な成長や成功の実現につながる」とする考え方が根底にあります。チャレンジを後押しする風土を推進するためには、チャレンジを行う従業員の元気や活力が欠かせないという考えから、福利厚生を元気や活力を支える手段として充実させてきました。
従業員やその家族に対して、レジャーやライフステージに応じたイベント、さらには将来設計に至るまで幅広く福利厚生メニューを提供し、従業員自身に合ったメニューを選択できるようにすることで元気に安心して力を発揮できる環境を整えています。
そのメニュー選定においても現状の制度施策の継続だけでなく、従業員ニーズの把握も定期的に行っています。従業員満足度調査(ESサーベイ)にて福利厚生についても設問を設けたり、そこで得た回答から仮説を立て、追加の調査を実施して課題点やニーズを洗い出しています。
また、グループ各社との人事部門の定例会議において福利厚生の情報交換・共有を行い良いものを取り入れています。
こうした好待遇もあってか自発的な退職率は3%前後で推移しています。
参照:福利厚生法人表彰・認証制度「ハタラクエール2022」事例集
離職率3%に改善|株式会社サイボウズ
2005年に過去最高の離職率28%を記録したことをきっかけに、従業員のワークライフバランスや社内コミュニケーションの改善に着手しました。2018年には「働き方宣言制度」を発案し、育児や介護だけでなく、通学や副(複)業など個人の生活スタイルにあわせて勤務時間や勤務場所を決められるようになりました。こうした取り組みが実を結び、2022年の離職率は3%と、大幅な改善に成功しています。
参照元:株式会社サイボウズ
ウォーキングポイントをレジャーや薬代に|株式会社富士通ゼネラル
もともと健康増進のためにウォーキングイベントを自社で開催していましたが、さらなる活性化を目指して福利厚生制度を活用しました。具体的にはウォーキングすることでポイントが貯まり、そのポイントをレジャーや常備薬の購入費用に充てられる制度があります。制度が浸透してウォーキングイベントの参加者も増え、当初の目標参加人数を達成しています。
参照元:株式会社富士通ゼネラル
健康状況予測システムで健康促進|ナガオ株式会社
従業員の健康増進や健康寿命の伸長を目的に、将来的な健康状況を予測するシステムを導入しています。特に、食生活の改善に力を入れているのが特徴です。肥満傾向などが明らかになった従業員がいれば、アドバイスを行い将来的な不調を未然に防ぐ努力をしています。また、ランニングやスポーツ大会への参加なども積極的に行い、従業員の健康促進に一役買っています。
参照元:ナガオ株式会社
生産性向上につなげる施策|株式会社Eyes,JAPAN
ユニークな福利厚生サービスが多く導入されているこちらの企業では、生産性向上のためにもさまざまな施策が講じられています。例えば「フリービタミン制度」として、朝食を抜いて血糖値が低下している従業員が簡単に食べられるように、フルーツを常備。また、15~30分の睡眠を認める「シエスタ制度」は、疲労回復し、午後以降の集中力持続に役立っています。どちらの制度も頭をすっきりさせ、生産性の向上につなげる施策です。
参照元:株式会社Eyes,JAPAN
採用力強化に手ごたえ|From One’s Heart株式会社
求職者にとっても魅力的な制度の構築を目指し、従業員一人ひとりのニーズに合った働き方が選べる制度を考案しました。従業員のスキルアップや子育てと仕事の両立を可能にしたり、2年以上勤務した従業員は無期限採用になる点などを求職者にアピールしたりするなど工夫を重ねています。その結果、自社の福利厚生制度が面接で話題となるなど、手ごたえを感じているとのことです。
参照元:From One’s Heart株式会社
採用に関する問い合わせが増加|株式会社ユーソナー
若手社員のライフスタイルに課題を感じていたことが起因となり、飲食系のサービスを充実させることでより魅力的な企業としてステップアップを図っています。例えば、昼食・夜食無料サービスや自販機ほぼ無料など、ひとり暮らしの従業員には嬉しいサービスを取り入れた結果、採用に関する問い合わせが増加しています。
参照元:株式会社ユーソナー
消化率80%以上|アコム株式会社
アコム株式会社は福利厚生法人表彰・認証制度「ハタラクエール2022」にて優良福利厚生法人(総合)として表彰されています。
アコム株式会社では「仕事に誇りと満足を感じ、働きがいを持った従業員ほどお客さまのニーズに敏感になれる」という従業員満足度の観点を大切にしています。過去に業績の悪化から満足に福利厚生サービスを展開できない時期もあったことから、現在では非常に豊富な制度が提供されています。
様々な制度中でも満足度が高いのが、カフェテリアプランです。アコム株式会社の福利厚生の柱の一つになっています。20年10月から導入し毎年3万ポイント(1ポイント1円)を役職や勤続年数に関係なく全従業員に公平に付与しています。数多くのメニューから自身や家族に必要なメニューを選ぶことができます。
結婚や出産、就学などライフイベントの機会がない従業員も利用できるという点では年代や家族状況に関係なく自身に必要なサービスを選べるため、カフェテリアプランに対する満足度は高くなっています。
導入するだけでなく、利用率を高めるために従業員への制度の周知、浸透にも精力的に取り組んでいます。例えば毎月のメルマガで担当者が実際に使ってみて良さを体感したサービスを紹介するなど利用者目線でカフェテリアプランのサービス内容を従業員に伝えています。サービスの詳しい説明だけでなく、利用画面へのログイン方法も説明するなど初めての従業員にもわかりやすく伝えています。
このような活動の結果、カフェテリアポイントの消化率は80%を大きく上回っています。
参照:福利厚生法人表彰・認証制度「ハタラクエール2022」事例集
自社に合った福利厚生サービスを導入するためのポイント
福利厚生サービスの導入の際には、押さえておきたいポイントがあります。
自社の従業員や企業にとって満足度の高いサービスとなるよう、以下で述べる点には注意しましょう。
福利厚生の目的を明確にする
福利厚生の目的を明確にすると、必要な予算内で満足できるサービスを導入できます。
目的をはっきりと示さずにピックアップすると、必要でないものを選んでしまったり、後々プランを追加しなければならなくなったりと、手間も費用も余計にかかってしまう恐れがあります。
例えば、採用強化や従業員満足度の向上、生産性の向上など「何のために導入するのか」という点をはっきりさせましょう。
従業員のニーズを確認する
従業員のニーズを把握するためには、導入前にはアンケートやヒアリングを実施し、意見を収集します。
福利厚生にはさまざまなプランやサービスがあり、他社の導入事例を見ていると、良さそうなものが数多く見つかるでしょう。しかし、前述の通り、従業員のニーズは企業によってそれぞれです。そのため、他企業で喜ばれたものが必ずしも自社で歓迎されるとは限りません。
実際に働く従業員の声を聞くことで、「自社に必要なものは何か」を見極めることができます。
目的とニーズを達成するためのサービスを導入する
目的とニーズを明確にし、それらを達成できるサービスは何かを検討しましょう。
サービス内容や運用方法、料金体系などはさまざまです。自社に合ったサービスを選ぶには「目的を達成し、従業員のニーズを満たすものはどれか」という視点で選定することが大切です。
定期的な見直しをする
サービス導入後も、従業員のライフスタイルや価値観は移り変わります。そのため、定期的に今のニーズにマッチしているかをチェックし、必要に応じてプランを見直しましょう。
特に注意すべきは、サービスの利用率です。数値が高いことは、満足のいくサービスが提供できていることを意味するため、問題ないでしょう。しかし、低い場合は再度ヒアリングを行うなどしてニーズをブラッシュアップすることが重要です。
より良い制度にするための改善策を講じ続けることで、従業員の満足度の向上を図れます。
目的別・課題別の福利厚生サービスの種類
福利厚生を充実させて従業員が必要だと感じているものを提供することは、企業が抱える課題の解決につながり、それが福利厚生を導入する目的となります。ここからは、企業が福利厚生を導入する目的や解決を目指す課題ごとに、効果が期待できるサービスを紹介します。
従業員満足度向上・採用強化・生産性向上につながるサービス
従業員満足度と職場の働きやすさが向上すると、従業員の働く意欲がアップし、離職率の低下に期待できます。中長期的に見ると、必要な人材の確保に役立ちます。従業員満足度の向上に特に効果があるサービスは、以下の3種類です。
健康管理
健康管理は従業員からのニーズが高い福利厚生です。従業員満足度の向上が福利厚生導入の目的なら、健康管理を自社の制度に盛り込むことが欠かせません。従業員の健康管理を行い、健康状態を良好に保つことは生産性の向上というメリットにもつながります。
日本経済団体連合会「2019年度福利厚生費調査結果の概要」を見ても、健康・医療関連費の占める割合が多く、健康管理に力を入れている企業が多いことがうかがえます。
健康管理の例として挙げられるのは、以下のようなものです。
- 人間ドックの費用補助
- 健康管理室の設置
- スポーツジムや運動施設の無料または割引での利用 など
休暇制度
十分に休暇が取れる職場環境は、従業員が心身ともに元気な状態で働くために欠かせません。休暇によって従業員はプライベートな時間を充実して過ごせるようになり、仕事ではやる気やモチベーションがアップするという好循環が生まれます。その結果、従業員満足度や企業全体の生産性向上が期待できます。有給休暇は法律で企業に義務付けられている休暇のため、それ以外の休暇を法定外福利厚生として用意しましょう。
休暇制度の例として挙げられるのは、以下のようなものです。
- 病気休暇
- 慶弔休暇
- 法定日数よりも多い有給休暇
- リフレッシュ休暇
- ボランティア休暇
- 年末年始や夏季の特別休暇
- アニバーサリー休暇 など
働き方の多様化に対応するもの
勤務時間や勤務場所に関する自由度が高く、多様な働き方ができる職場を実現できれば、より多くの従業員に働く機会を与えられます。たとえば育児や介護で出社やフルタイム勤務が困難な従業員に、キャリアを途絶えさせずに働いてもらえば、優秀な人材の離職を回避できます。
多様な働き方への対応例とて挙げられるのは、以下のような制度です。
- テレワーク制度
- フレックスタイム制度
- 定時退社を推進する制度
- 時短勤務制度 など
住宅関連
住宅費は生活関連支出の中でも特に負担が大きいため、求職者が就職先を選ぶ際に重視するポイントのひとつです。したがって、採用強化を目的としている場合には軽視できません。住宅補助に関する制度としては、下記のようなものがあります。
- 住宅手当
- 家賃補助
- 住宅ローン補助
- 社員寮や社宅の提供など
食事関連
食事に関する補助は、大抵の人が恩恵にあずかれるものであり、また食費の軽減や健康維持などにもつながるため、求職者からも従業員からも好まれやすい福利厚生です。食事補助に関する制度には、下記のようなものがあります。
- 社員食堂の設置
- 総菜やご飯が安価で買える自動販売機の設置
- 朝食・昼食・夕食の補助、食事券の配布など
キャリア支援
キャリアアップしたいと考えている求職者に向けて、キャリア支援を福利厚生制度に含めることも効果的です。求職者から選ばれやすくなるだけでなく、人材育成上の課題解決にもつながります。キャリア支援に関する制度には、下記のようなものがあります。
- 資格取得の支援
- キャリア形成に役立つ書籍購入費用の補助
- セミナー・講演会の開催など
育児・介護・治療等の両立支援
育児・介護・治療などを理由に退職を希望している従業員がいても、企業が仕事との両立を支援できれば、退職せずに働き続けられる可能性があります。これまで企業の戦力として貢献してくれた従業員の力を今後も借り、生産性の向上を目指すのが両立支援です。両立支援によって従業員が安心して働き続けられる環境を整備することで、生産性の向上につながります。
両立支援には、下記のようなものがあります。
- テレワーク制度
- 時短勤務制度
- 託児・保育施設の設置
- ベビーシッター費用の補助
- 両立支援コーディネーターの設置
- 法定よりも手厚い育児休暇
- 法定よりも手厚い介護休暇など
社員交流に関しての制度
従業員同士の親睦を深めて、円滑に意思疎通をはかれるようにすることも、生産性の向上に大きく関わります。交流を通じて協力体制を築き、お互いの知識やアイデアを共有することなどが、生産性向上に寄与します。社員交流に関する制度には、下記のようなものがあります。
- 社員旅行の開催
- 社内サークル活動の補助
- 親睦会費用の補助など
自己啓発
個々の従業員が自己啓発を行い、各自の能力を高めることは企業の生産性アップにつながります。自己啓発関連の制度としては、下記のようなものがあります。
- eラーニングや通信教育費用の補助
- 語学やデジタル技術を身につけられるレッスンの開催
- 海外研修制度など
従業員の健康増進に役立つサービス
従業員の健康増進は企業の生産性を向上させるだけでなく、医療費の負担を減らすことにもつながります。従業員の健康増進が目的で福利厚生を充実させるのならば、以下の3つに力を入れましょう。
食事補助
食の観点から従業員の健康を増進するために、食事補助を導入する方法があります。
- 栄養バランスのとれた食事を提供する社員食堂の設置
- 管理栄養士による栄養指導など
運動促進
運動不足は体調不良を引き起こすため、従業員の運動を促進して運動不足を解消するようなサービスが求められます。運動促進制度の例としては、下記のようなものがあります。
- 運動することでポイントを貯めて景品などと交換できる運動インセンティブの付与
- スポーツイベントの開催
- スポーツジムの優待利用など
メンタルヘルス予防・改善
肉体だけでなく、心も健康でなければ元気に働くことはできません。したがって、メンタルヘルス対策を行って、病気の予防やストレスの軽減をはかることも重要です。メンタルヘルス関連の予防・改善制度の例としては、下記のようなものがあります。
- カウンセラーや産業医による無料相談
- ストレスチェックなど
福利厚生の導入方法
福利厚生を導入するには、自社で制度を作る方法と、社外のサービスを活用する方法があります。それぞれのメリット・デメリットを把握し、自社に合った導入方法を探りましょう。
自社で制度を作る
自社で制度を考案し、運用すればオリジナリティーのあるものが自由に作れます。特に各種手当や退職金制度など、お金のやり取り で完結するものであれば、比較的簡単に導入できます。
一方、社員寮や利用優待など外部とのやり取りが必要なものは、場所の確保や事務手続きなどで多大な費用や工数がかかってしまうことがあります。
福利厚生代行サービス(アウトソーシング)を活用する
福利厚生代行サービスを利用すると、企業に代わって福利厚生の管理・運用を代行してくれます。これまで経理や総務にかかっていた負担を軽減できます。
現在、福利厚生のサービス内容は多岐に亘るため、その全ての管理や運用を自社で行うことが難しくなっています。特にサービス内容を充実させようとすると、多方面とのやり取りや複雑な手続きに人的コストがかかりすぎてしまい、なかなか改善が進まないケースも見られます。
福利厚生代行サービスはこうした煩雑な事務作業や管理にかかる手間を削減するので、コア業務に注力でき、生産性向上にも役立つでしょう。
関連記事:おすすめの福利厚生代行サービス ❘ 選定のポイントは?
福利厚生のアウトソーシング方法
福利厚生をアウトソーシングする場合、その運用方法には「パッケージプラン」と「カフェテリアプラン」の2種類があります。
ここでは、2つの方法の特徴や、メリット・デメリットを紹介します。
パッケージプラン
定額料金を支払うことであらかじめパッケージ化された福利厚生サービスが利用できるようになるプランのことです。
バランスよくパッケージされているものが多いので、幅広いサービスが受けられるのが特徴です。また、カスタマイズの必要がないので導入までの手間が少ないことや、比較的低いコストで運用できるのもメリットに挙げられます。
一方、すでに出来上がったプランを利用するので、企業ごとのオリジナリティーが出しにくい、従業員の細かなニーズに応えづらいといったデメリットがあります。
カフェテリアプラン
従業員が好きなサービスを選んで利用できるのが、カフェテリアプランです。従業員には一定のポイントが付与され、所有するポイント内で好きなサービスを選択できます。
希望のサービスを受けられるので、福利厚生サービスの利用に対する公平性や、従業員の満足度の向上が見込めるのがメリットです。利用率改善の施策として導入されるケースも見られます。
しかし、パッケージプランと比較すると費用が割高になったり、一部のメニューは課税対象になったりするので、注意が必要です。
関連記事:カフェテリアプランとは?メリット、導入の流れ、注意点を解説
おすすめの福利厚生代行サービス
従業員の満足度アップにつなげられる、おすすめの福利厚生代行サービスを紹介します。
RIZAP

引用元:RIZAP法人会員
RIZAP(ライザップ)は特に健康増進に力を入れたい企業におすすめの福利厚生代行サービスです。RIZAPではスポーツジムの利用のほか、料理や英語の教育サービスなども受けられます。料金は無料のレギュラープランと、有料のゴールドプランの2種類あり、ゴールドプランは月額最低1,500円(従業員1人あたり)から利用可能です。
- RIZAPだけでなくRIZAP ENGLISHやRIZAP GOLFなどRIZAP関連ブランドをお得に利用可能
- ゴールドプランでは「chocoZAP」を全従業員が使い放題、体組成計・ヘルスウォッチの支給や、データ分析・レポート機能等が充実
- 400以上の直営店舗がすべて利用可能
- chocoZAPは24時間利用可能
- 女性専用のサービスが充実
参照元:RIZAP法人会員
RIZAP法人会員の詳細資料(無料)はこちら
福利厚生倶楽部

引用元:株式会社リロクラブ 福利厚生倶楽部
福利厚生倶楽部は、“中小企業にも大企業並みの福利厚生を”をモットーに株式会社リロクラブが運営する福利厚生アウトソーシングサービスで、地域密着型の安価なサービスが特長です。ワークライフバランスの支援、自己啓発の支援、健康増進の支援など、多彩なサービス内容がそろっています。月額料金は従業員1人当たり最低800円から利用できます。
- 契約社数18,200で業界シェアNo.1※1
- 契約社の73.5%が従業員数100名未満の中小企業
- 全国の事業拠点で、各地域に密着した豊富な福利厚生サービスを提供
- 提供サービス約10万種類
- 7言語に対応
※1 ㈱労務研究所発行「旬刊福利厚生」 2022.06月下旬号掲載データより株式会社リロクラブにて算出
参照元:株式会社リロクラブ 福利厚生倶楽部
ベネフィット・ステーション

引用元:株式会社ベネフィット・ワン
ベネフィット・ステーションは株式会社ベネフィット・ワンが運営する、各種施設の優待や健康増進、自己啓発など多彩なサービスが強みの福利厚生代行サービスです。導入時の相談サポートなども充実しており、カフェテリアプラン形式で利用できます。従業員1人当たり月額1,000円の得々プランと月額1,200円の学得プランがあります。
- 法人会員1,548万人で会員数No.1(2022年4月時点)
- 約140万件以上のグルメやレジャーだけでなくeラーニングや介護など幅広いメニュー
- 導入企業16,103社(2022年4月時点)
- 全国47都道府県で利用可能
- 担当者様向けに各種フォローアップセミナーなど万全のサポート体制を用意
参照元:株式会社ベネフィット・ワン
ライフサポート倶楽部

引用元:リソルライフサポート株式会社
ライフサポート倶楽部はリソルライフサポート株式会社が運営する、安価で多彩なサービスを利用したい企業におすすめの福利厚生代行サービスです。余暇支援や健康増進をはじめ、育児や介護、教育などさまざまなサービスを提供しています。月額料金は従業員数100人以上の場合は最低350円からと非常に安価ですが、100人未満の企業の場合は年会費2万円の5年契約になります。
- 契約社数2,000社以上
- 宿泊施設5,000施設以上、生活メニュー2,000種類以上の全てのメニューがご優待で利用可能
- 全国に広がるリソルグループの直営施設を優待価格で利用可能
- 少ない手間とコストで福利厚生制度を充実させることが可能となる総合的なパッケージサービス
- 地域や世代の格差はなく、多様化するニーズに応えられる充実のラインナップ
参照元:リソルライフサポート株式会社 ライフサポート倶楽部とは
WELBOX

引用元:株式会社イーウェル
WELBOXは、株式会社イーウェルが提供するパッケージ型福利厚生アウトソーシングサービスです。高齢者支援、介護支援、女性支援などに力を入れており、ユーザー企業は多彩なサービスを受けることが可能です。料金については現在一般公開されていないので、個別にお問い合わせください。
- 予算に応じて補強するサービスや施設、期間、回数などもカスタマイズ可能
- 20代~60代まで、ライフステージに応じた幅広いメニューが利用可能
- 多彩な告知媒体(冊子やWeb、メールマガジン等)で情報がしっかり届く
- 業界最長の受付時間のセンター、利用率を向上させるプログラム等安心の運用体制
- 便利で使いやすいスマートフォン向けアプリがある
参照元:株式会社イーウェル WELBOXサービス紹介
まとめ
福利厚生は、従業員がより充実した労働・生活環境で過ごせるように、企業が提供するサービスのことです。昨今の従業員や求職者は、業務内容以外にも福利厚生にどのような内容があるのかにも注視している傾向があります。自社で働くことに魅力を感じてもらうためにも、目的やニーズに合った福利厚生を選ぶことが重要です。
