EAPとは?導入されている理由、効果、気を付けるポイント

企業にとって貴重な人的資源である従業員の価値を最大化するために、近年では「EAP」というメンタルヘルス対策を導入する企業が増えています。この記事では、EAPの概要や必要性、導入メリットなどを解説します。これによりEAPの全体像を把握でき、メンタルヘルス対策として自社に導入する価値があるかどうかの判断も明確化することが可能です。

従業員のメンタルヘルスケアや健全な組織づくりなどに関心のある方に役立つ記事となっています。

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近年労働者の受けるストレスは拡大する傾向にあり、メンタル不調は重点的な対策が必要とされています。不調を訴える人の数が増えれば部署、事業部、企業全体の生産性の低下を招き、業績不振にも繋がっていきます。自社のメンタルヘルスに課題を感じ対策を模索されているご担当者様も多いのではないでしょうか?

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目次

EAPは「メンタルヘルス不調の従業員を支援するプログラム」

EAPはEmployee Assistance Programの略称であり、日本語では「従業員支援プログラム」と訳されます。主に従業員のメンタルヘルスをサポートするための仕組みを指します。

EAPの定義

日本EAP協会では、EAPを以下のように定義しています。

Employee Assistance ProgramまたはEAPは以下の2点を援助するために作られた職場を基盤としたプログラムである。

1.職場組織が生産性に関連する問題を提議する。
2.社員であるクライアントが健康、結婚、家族、家計、アルコール、ドラッグ、法律、情緒、ストレス等の仕事上のパフォーマンスに影響を与えうる個人的問題を見つけ、解決する。

引用:日本EAP協会

この定義に従えば、EAPは職場内だけでなく、私生活の問題も含めて従業員のメンタルヘルスを包括的にサポートする取り組みであると捉えられます。

EAPの2つの種類(内部EAPと外部EAP)

EAPは「内部EAP」と「外部EAP」に大別されます。内部EAPは、企業内に常駐のカウンセラーやEAP専門スタッフを配置し、直接サポートを行う形態です。一方の外部EAPは、企業外の専門機関に委託してメンタルヘルスサポートを行います。

内部EAPには「常駐スタッフが社内の事情などを把握した上で対策を行える」「従業員が気軽に利用しやすい」といったメリットが挙げられます。方の外部EAPは、「社内では話しにくいことでも相談しやすい」「常駐ではないため比較的コストがかからない」などの利点があります。

4つのケアの「事業外支援によるケア」の1つ

厚生労働省が公表している「労働者の心の健康の保持増進のための指針」において、職場のメンタルヘルス対策では以下の「4つのケア」を継続的・計画的に行うことが重要であるとしています。

  1. セルフケア(従業員本人によるケア)
  2. ラインケア(職場の上司などによるケア)
  3. 事業内支援による産業保健スタッフ等によるケア(社内の相談窓口などによるケア)
  4. 事業外資源によるケア(社外の専門機関によるケア)

参照:厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針

このうち、EAPは「4. 事業外資源によるケア」に該当します。従業員は社外の独立した機関に相談でき、企業は自社にはない専門的なノウハウ・知識を有する専門機関を利用できるなど、双方にとってメリットがあります。

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近年労働者の受けるストレスは拡大する傾向にあり、メンタル不調は重点的な対策が必要とされています。不調を訴える人の数が増えれば部署、事業部、企業全体の生産性の低下を招き、業績不振にも繋がっていきます。自社のメンタルヘルスに課題を感じ対策を模索されているご担当者様も多いのではないでしょうか?

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EAPの支援例

EAPではさまざまな支援によるカウンセリングが行われます。以下に、代表的な支援例を紹介します。

ストレスチェック

2015年2月の労働安全衛生法の改正により、従業員数が50名以上の全事業者においてストレスチェックの実施が義務化されました。1年に1回はストレスチェックを行い、従業員側・使用者側ともに自身のメンタルヘルスの状態を把握する必要があります。従業員のストレスレベルを定期的にチェックし、必要に応じてサポートを提供します。ストレスレベルが高いと判明した場合、医者との面談等を実施することで早期発見、解消につながります。

事業所に医師や保健師等が社内にいない場合には、ストレスチェックの実施は外部の専門機関に委託します。委託方法も様々で、ストレスチェックの実施の部分のみ外部委託し、その後の集団分析やデータの運用に関しては事業所内で内製するケースや一連の業務をすべて代行してもらうケースがあります。

予算や内部のリソース等を加味してEAPでの支援を受けるか検討していきましょう。

関連記事:ストレスチェックとは?対象者、目的、メリット、実施方法

カウンセリング

専門のカウンセラーが従業員の抱える問題に対してカウンセリングを行います。従業員が抱えている悩みに関して整理をするきっかけになったり、離職を防ぐためにも効果が見込めます。

専門家の活用

従業員の状況や抱えている悩みやトラブルに応じて、医師や弁護士などの専門家や公的機関と連携します。専門的な観点から問題をクリティカルに解決することができます。

コンサルティング

組織のメンタルヘルスに関する問題を改善するためのコンサルティングを行います。メンタルヘルス不調やハラスメントなどの問題が生じにくい組織体制を構築するために有効です。

セミナー・研修

ストレスマネジメントやメンタルヘルスに関するセミナーや研修を実施します。正しい知識を身につけることでストレスやメンタルの不調への対処法を立てることができるようになります。

関連企業でメンタルヘルス対策を積極的に推進する際、様々なメンタルヘルス対策を効果的に推進するため、多くの企業がポピュレーションアプローチとして対面やオンラインでの研修・セミナーを導入しています。

RIZAPのメンタルヘルスセミナーの特徴

RIZAPメソッドに基づく座学とトレーニングを組み合わせたセミナープログラムを実施することで、メンタルヘルスの課題解決だけでなく健康増進や社内コミュニケーション活性化、リフレッシュを促し、組織力の向上、ひいては企業価値向上を目指します。

  • 特徴1 出張セミナーとオンラインセミナーで全国対応可能
  • 特徴2 運動を交えた効果的なアプローチ
  • 特徴3 セミナー満足度99%

対面でもオンラインでも参加者のセミナー満足度は99%と高い水準を保っており、企業担当者様からも高い評価を得ています。

※セミナー開催後アンケート集計 2021年8月~2022年3月 n=123

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相談窓口

従業員が悩みを相談できる窓口を社内もしくは社外に設けます。相談窓口ではメンタルヘルス不調だけでなく、ハラスメントの問題やプライベートでの悩みなど多種多様な相談を受け付けることが想定されます。

従業員の相談窓口

従業員の相談窓口を外部に設置することで、ハラスメントなどのデリケートな問題に悩む従業員が相談しやすいような環境を作ることができます。それを周知することで利用しやすくなり、ハラスメント問題などに迅速に対処することが可能です。

使用者の相談窓口

安全配慮義務に関するトラブルには、法律の専門家である弁護士に相談することもおすすめです。法律の観点から、責任の所在がどこにあるかの判断ができます。また、労働基準監督署では無料で相談することも可能です。使用者、労働者のどちらも利用できます。

企業で導入されている背景

企業にEAPの導入が求められている背景には、従業員のメンタルヘルスケアや職場環境の改善といった課題だけでなく、近年の社会情勢も関係しています。

従業員のストレス増加

厚生労働省による2021年の調査によれば、仕事に関して強いストレスを感じている労働者は53.3%と半数を超えています

引用:厚生労働省「令和4年版過労死等防止対策白書

ストレスは従業員のメンタルヘルスに悪影響を与え、うつ病や不安障害といった精神的な問題を引き起こすリスク要因です。EAPを導入する企業が増えているのは、現在の従業員を取り巻くストレス状況を察知し、従業員の精神的な健康を守る必要性を意識する経営者が増加しているためと考えられます。

ハラスメント等のリスクマネジメント

セクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントなどのハラスメント問題は、企業のリスクマネジメントにおいて特に重要な課題です。ハラスメント被害に遭った従業員はメンタルヘルスを著しく損ない、休職や退職などに至ることも考えられます。

また、ハラスメントの横行は職場全体の雰囲気を損ない、社外にその事実が露呈した場合は企業イメージに重大な傷を与えかねません。EAPはハラスメント被害の早期発見・早期ケアや、ハラスメントが起きにくい職場環境を構築する目的としても活用されます。

関連記事:メンタルハラスメントとは?種類、防止対策、不調者への対応

メンタル不調等による生産性低下

従業員のメンタルヘルス問題は、企業の生産性にも関連する課題です。メンタルヘルス不調の従業員は、仕事に集中できずに業務効率が低下したり、欠勤が増えたりすることがあります。もしもメンタルヘルス不調が原因で従業員が退職すれば、それは企業にとって手痛い損失です。

そのため、経営戦略的な観点からEAP導入などのメンタルヘルス対策を講じる取る企業が増えています。

関連記事:メンタルヘルス不調とは? 症状や原因について解説

働き方の変化による生産性の低下

近年、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うリモートワークの普及や働き方改革の推進、DX対応といった社会情勢の変化により、働き方の変化や多様化が進んでいます。こうした中で、環境の急激な変化に適応できずに生産性が低下したり、メンタルヘルスが不調になったりする従業員が増加する懸念があり、EAPによるカウンセリングなどの対策により従業員をサポートする企業が増えています。

得られる効果

企業はEAPを導入することで、生産性向上や離職率の改善など、多岐にわたる効果を得ることが可能です。

従業員と組織の生産性向上

EAPの導入によって、従業員のメンタルヘルスをサポートし、心身の健康を維持・向上できます。これにより、従業員の業務に対する集中力やモチベーションが高まり、仕事の能率や生産性が向上することが期待できます。また、従業員全体のメンタルヘルス改善や生産性向上は、組織全体の活性化にもつながります。

アブセンティーイズム・プレゼンティーイズムの解消

アブセンティーイズムは従業員が体調不良やストレスなどで欠勤すること、プレゼンティーイズムは出勤こそしているものの不調によって生産性が低下する現象です。

米国金融関連企業の事例だけでなく、日本でも生産性の測定方法が共通する企業・組織について健康関連コストを推計した結果、プレゼンティーイズムが最大のコスト要因である結果となり注目を集めています。

一時的に生じた軽度の体調不良であれば、特に問題視する必要はないでしょう。しかし、軽度の不調であっても、不調の状態のまま仕事を続けることで症状を悪化させてしまうこともあり、長期化するリスクもはらんでいます。

参考:経済産業省「健康経営オフィスレポート

EAPを実施することで、従業員のストレスやメンタルヘルスの問題を早期発見し、適切なケアやサポートを提供することで、これらの問題を解消できます。

関連記事:【まとめ】プレゼンティーイズムとは?測定と改善対策の具体例

労働災害の予防

多大なストレスや過労は、従業員の心身の健康をむしばみ、労働災害につながりかねません。例えば、うつ病などの心の病気にかかったり、不注意による事故を引き起こしたりすることが考えられます。EAPの導入により、従業員のメンタルヘルス不調をケアしたり、心身に悪影響を与える労働環境を是正したりすることで、労働災害を抑止することが可能です。

業務ミスや企業イメージ悪化のリスク減少

ストレスや過労は、業務中のミスを引き起こすリスクを増加させます。例えば、メールの誤送信などの不注意によって情報漏洩をしてしまうなどの危険性があります。また、職場に起因する従業員のメンタルヘルス問題やハラスメント問題が表面化した場合、自社のブランドイメージに多大な悪影響を及ぼす可能性もあります。EAPによって従業員のメンタルヘルスをケアしたり、健全な職場環境を整備したりすることは、これらのリスクを軽減する効果が期待できます。

関連記事:企業イメージ向上のための3つの方法、取り組み例

離職率の改善

EAPの導入によって、メンタルヘルス不調やハラスメント被害などの原因で離職する従業員を抑制することも期待できます。低い離職率は組織に安定をもたらすほか、優秀な人材へのアピールにつなげることも可能です。

関連記事:定着率を上げる方法とは|計算式と効果的な取り組み

EAPの導入方法

では、EAPを自社に導入するためにはどうすればよいのでしょうか。以下では、内部EAPと外部EAPそれぞれの導入方法を解説します。

内部EAPの導入方法

内部EAPを導入する場合、まずはカウンセラーなどのメンタルヘルスに関する専門的な知識とスキルを持つスタッフを確保することが必要です。その後、社内でカウンセリングやコンサルティングなどを行える体制を構築していきます。

従業員が相談しやすくするためには、人目に付きにくい場所に相談室を設置するなどの工夫を施さなければなりません。専門家に常駐してもらうには基本的に大きなコストが必要であるため、内部EAPを導入する場合はその点も考慮する点に注意が必要です。

外部EAPの導入方法

外部EAPを導入する場合、企業は外部の専門機関と契約し、従業員のメンタルヘルスに関する支援を委託する必要があります。

EAPを専門とする機関は通常、有資格の専門家などで構成されており、24時間365日対応の電話相談、対面でのカウンセリング、Web上の情報提供など、多岐にわたるサービスを提供しています。企業は導入する前に、具体的なサービス内容やコストなどを比較検討し、自社のニーズや予算に合ったEAPサービスを見極めなければなりません。費用面や労力面からいえば、内部EAPよりも外部EAPの方が導入のハードルは低い傾向にあります。

費用対効果を高めるポイント

EAPを導入するには一定の費用がかかりますが、以下のポイントを押さえた上で導入を進めることで、EAPの費用対効果を高めることが可能です。

導入の目的を明確にする

EAPのサービス内容は多岐にわたるため、導入の際には最初にEAPに何を求めるのかをまず明確にすることが求められます。

例えば、従業員のメンタル不調やストレスへの対策をしたい、社外に信頼できる相談先を設けたい、あるいは産業医・保健師との連携を強化して従業員の不調の早期発見につなげたいなど、目的はさまざまに考えられるでしょう。こうした目的に応じて、必要となるサービス内容は異なります。導入の目的を明確化すれば、適切なサービスを選びやすくなります。

導入前に評価指標を決めておく

EAP導入の費用対効果を高めるには、評価指標を導入前に定めておくことも重要です。

「従業員のストレスレベルの低下」「離職率の改善」「生産性の向上」など、企業が直面する課題などに応じた具体的な指標を設定しましょう。評価指標が明確であれば、EAPの導入効果を定量的に測ることが可能になり、効果的な運用や改善策の検討へとつなげられます。

会社のニーズに合うサービス形態のものを導入する

EAPサービスの形態やサービス内容は多種多様です。サポートの対応範囲や時間もサービスごとに異なります。したがって、自社が必要とするサポートや予算を明確にした上で、それらに最も適したサービスを選ぶことが大切です。適切なサービス形態を導入することで、従業員の利用率向上や問題解決に大きく寄与します。

まとめ

EAPは従業員のメンタルヘルスケアやハラスメントの防止など、企業にさまざまなメリットをもたらします。導入を検討する際は、自社の課題や目的、予算などの要件を明確にし、内部EAPと外部EAPのどちらを選ぶかも含めて慎重に検討することが重要です。

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