メンタルヘルス不調とは? 症状や原因について解説

身体と同じようにこころの健康も大切なものです。
この記事では、メンタルヘルスに着目し、不調のサインや原因、進行した症状について解説します。また、おすすめの対策も、本人と企業それぞれの切り口から解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

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目次

 

メンタルヘルスとは

健康は、何も身体だけの問題ではありません。
メンタル、つまりこころの健康のことを「メンタルヘルス」と呼び、昨今さまざまなシーンでよく耳にするようになっています。
身体と異なり、メンタルの不調は周囲から気づかれにくく、本人もなかなか伝えにくいのが特徴です。その分、悪化しやすいのがやっかいです。

やる気が起きない、気分が沈む、といった状態は普段の生活でもよく見られますが、ストレス負荷の高い状態が続くと、生活面や仕事面で支障が起きます。企業の健康経営が重要視されている昨今、メンタル不調を抱えた従業員が増えれば、休職者や退職者が増加し、事業運営が滞ってしまいかねません。

従業員自身はもとより、雇用している企業にとっても、メンタルヘルスの状態は定期的に把握し、適切に対応していかなければならない重要な課題です。

メンタルヘルス不調のサイン

メンタルヘルスの変化は気づきにくいものであるものの、不調の状態にあると、さまざまなサインが表れます。
ここでは自分自身が気づくものと、周囲の人が気づくものに分けて解説します。

自分が気づくメンタル不調のサイン

働いていれば、仕事でミスをすることも、うまくいかないこともあります。気分が沈むこともあるでしょう。
ただ、メンタルが良好なときは、ミスしたことでも前向きにとらえ、「またがんばろう」と思い、再度チャレンジする気力もわいてきます。

一方、メンタルが不調になると、以下のような状態が継続するようになるのが特徴です

  • 気分が上向きにならない
  • 夜眠れない
  • 食欲がない
  • イライラしたり不安になったりする
  • 好きなことも楽しいと思えない、など

精神的な不調が身体的な状態へ悪影響を与えることもあります。
そのため、メンタル不調の兆候を逃さないように、身体面と精神面の観点から自身の健康状態に気を配る必要があります。

周りが気づくメンタル不調のサイン

本人が不調を自覚しても、なかなか周囲に言い出せないこともよくあります。
周りの人が気づきやすい状態としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 遅刻や欠勤が増える
  • 身だしなみが整っていない
  • かんたんなミスが増える
  • 急に体重が増えたり減ったりしている
  • 感情の起伏が激しい


以前はとくに問題を感じられなかったのにもかかわらず、急にこうした状態が見られるようになった人がいたならば、もしかするとメンタル不調を抱えているかも知れません。
「どうしてこんなこともできないの」といきなり注意したり、怒ったりすると状況が悪化してしまうおそれもあるため、慎重な対応が必要です。

メンタルヘルス不調が進行した症状

メンタルヘルスの不調が悪化すると、生活や仕事を普段通りに進めるのも難しい状態になることがあります。ここでは代表的な3つの症状について解説します。

うつ病

うつ病は、気分が落ち込んで何をしても楽しいと思えない、イライラするといったこころの不調のみならず、夜何度も目が覚めたり食欲がなくなったりといった身体の不調も見られる症状が特徴です。
原因は、過度のストレス、疲労の蓄積、環境の変化、本人の性格や遺伝、神経伝達物質のバランスなどが複合的に絡み合ったものと考えられるものの、検査による客観的な判断は難しいのが現状です。
うつ病は、誰でも発症する可能性があります。もし2週間以上症状が続いているときには、心療内科などの受診を検討するのも重要です。

適応障害

適応障害の症状は、ゆううつな気分や、不眠、食欲不振などうつ病と酷似しています。社会生活を続けるのが難しくなることもあります。
ただ、原因が特定されやすく、それを取り除けば症状が改善しやすい点が適応障害の特徴です。
何らかの環境変化があり、それにうまく対応できない場合、大きなストレスがかかります。
適応障害は、ストレス原因に対し過剰に反応してしまうことで起きるため、その原因をなくす、あるいは軽減させ、崩れた心身のバランスを元に戻すような治療が行われます。

パニック障害

パニック障害は、突然理由なく、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといったパニック的な発作が生じるのが特徴です。
電車に乗ったり多くの人がいるところに行ったりすると、「発作が起きたらどうしよう」と不安に思うことで、余計に悪化するケースもあります。
症状が頻繁に起きるようになると、生活や仕事をスムーズに続けられなくなるため、十分注意が必要です。
本人も周囲の人も焦りは禁物で、まずどういった場所が苦手なのかなどを把握していきます。
その後は薬物治療や、避けていた苦手な場所に少しずつ慣れる行動療法で、改善に向けて進めていくのがおすすめです。

メンタルヘルス不調の原因

メンタルヘルスが不調になる原因は、人によって異なります。
ここではよくある例を3つ取り上げます。

キャパシティを超えた業務量

日本は少子化の影響もあり、人手不足に悩む企業が少なくありません。
業務を遂行するのに必要な人員を集められなければ、従業員一人ひとりの業務負担は当然増えます。
就業時間内に終えられない場合は残業することになり、長時間労働につながりがちです。
このように、労働時間や業務量がキャパシティを超えると、焦りや不安、失望などが重なり、心身の健康バランスを崩してしまうことになりかねません。

人間関係の問題

職場では上司やほかの従業員とともに、協力しながら業務を進めていく必要があります。
仕事をスムーズに進めようとすれば、よい人間関係を築いていくことは不可欠といっても過言ではありません。
しかし現実は、うまくいかないこともあります。
ときには、パワハラやセクハラといったハラスメントが見られたり、ささいなことで人間関係が悪化したりすることもあるかも知れません。
そうした職場に身を置いていると、自分でも気がつかない間に、メンタル不調の症状が現れやすくなります。

異動・昇進など環境の変化

多くの企業では、数年に1度などのスパンで人事異動や昇進をするタイミングがあります。
とくに昇進は、本来なら喜ぶべきことですが、本人にとってはストレスになっていることもあります。
いずれも、これまで慣れてきた仕事の環境から離れ、新しい環境に身を置くことになるのが共通点です。「うまくできるだろうか」「早く慣れないといけない」といったプレッシャーや焦り、不安は誰でも持つ感情ではあるものの、より強く感じてしまうと、メンタル不調へとつながってしまいます

メンタルの不調を改善するための個人の対策

メンタル不調は、いつ、誰にでも起こりうることです。
もし普段の自分と比べて少し違和感を持ったり、明確に症状を感じたりしたときには、改善に向けて対策を取ることが大切です。

ここでは、本人ができる改善策について、3つ紹介します。

十分な休息、休養を取る

メンタル不調が表れる原因のひとつに、日々の疲れの蓄積があります。
そのため、仕事の合間にリフレッシュしたり、夜は睡眠時間をできるだけ確保したりするなど、脳と身体を休めることが大切です。仕事で行き詰まることがあっても、いったん離れて休んでみると、新しいアイデアや解決策がひらめくかも知れません。

趣味などレクレーションの時間をとる

メンタル不調を改善するためには、メリハリを付けて生活することも大切です。
就業時間は集中して仕事に取り組まなければなりませんが、それ以外では、自分の好きなことや趣味、レクリエーションにあてる時間を持つのもおすすめです。
自分なりにストレス発散できる機会を持てれば、また心機一転、仕事に取り組めるようになります。

ストレッチなどリラックスできる状況をつくる

同じ姿勢で仕事を続けていると、肩こりや腰痛に悩まされることも増えがちです。また、長時間同じ姿勢が続くと、横隔膜や肋骨を適切に使用した呼吸が出来なくなってしまい、自律神経の乱れを引き起こす可能性があります。
自律神経の乱れは精神的な不調の原因となりかねません。
デスクワークが一段落すれば、立ち上がって、軽く歩いたり、ストレッチをしたりすることで、身体のこりがほぐれてすっきりします。

食生活、栄養状態を改善する

メンタルは、食事からも影響を受けます。
栄養状態を適正に保ち、健やかな食生活を維持することも、メンタルヘルスにおいて重要です。
極端な例ですが、空腹や飢餓状態が続くことで情緒不安定になるケースもあります。また、特定の栄養素の欠如が関係していることもあります。
そのため、バランス良くさまざまな栄養素を日常的に摂取することが重要です。

メンタルヘルスやストレスと関係する栄養素としては、以下のようなものが挙げられます。

  • ビタミンB群
  • ビタミンC
  • ビタミンD
  • マグネシウム
  • 亜鉛
  • カルシウム

関連記事:【食事セミナー一覧】健康増進・食生活改善の企業向け取り組み例

企業としてメンタルヘルス不調のためにできる取り組み

ここまでは本人ができる取り組みについて解説しました。
一方、雇用している企業としては、経営のリスクマネジメントといった観点からも、どのような対策を取ればよいのでしょうか。

代表的な3つの方法について紹介します。

ストレスチェックの実施

「ストレスチェック」とは、労働者の心の健康を増進するため、厚生労働省が主体となって2015年に始められた制度です。
ストレスに関する選択肢式質問に回答すると、その結果が集計、分析され、労働者自身がどのようなストレス状態にあるのかを簡単に確認できます。

50人以上の労働者が働く事業所においては義務化されており、それ未満の事業所では努力義務となっています。
メンタル不調に陥った従業員が増えると、思わぬ事故が増えたり、生産性低下を招いたりしかねません。まず従業人本人が不調を自覚するための対策としても、ストレスチェックは有効です。

ストレスチェックで高ストレス者が出た場合、企業はどう対処すればよいのでしょうか?
いつ、だれが、どうやって面談を行うのか。またその際に気を付けるポイント、その後のフォローアップなど、企業が取るべき対処方法や根本的な改善策など、押さえておきたい知識があります。あわせてお読みください。
関連記事:ストレスチェックにおける高ストレス者の判定基準、対応、面談

研修の実施

メンタルヘルスに関する知識を従業員としっかり共有し、また周知することも、セルフケアの観点から大切なことです。
一般的には、社内研修といった形でよく行われています。
ただ注意すべきなのは、管理職やチームリーダーなど、役職や立場に合わせた研修内容にしなければならない点です。
自社でノウハウを持っていない場合は、メンタルヘルス研修プログラムを実施している社外の研修機関へ委託するのもおすすめです。

相談窓口の設置

従業員がメンタルヘルスの不調を自覚しても、なかなか周囲に話しづらいことはよくあります。我慢して仕事を続けているうちに症状が悪化してしまうと、症状改善までに時間がかかったり、休職や退職せざるを得ない状況になったりしかねません。
そこで、従業員が気軽に相談できる窓口を設置するのも効果的な方法です。相談窓口があれば、メンタルヘルスに関する有効な方法を教えたり、改善方法をアドバイスできたりするなど、従業員にとって大きなメリットが生じます。
万一休職となったとしても、復職に向けたスムーズなサポートが可能です。

まとめ

従業員のメンタル不調を放置していると、事故が発生しやすくなるほか、生産性も落ちるおそれがあります。
昨今、企業にとって重要な命題とされている「健康経営」の一環として、メンタルヘルスの知識を身に付け、従業員本人と連携しながら適切に対応していくことが大切です。

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