【ストレスチェック】義務化と概要│目的やメリットを解説

企業においては昨今、特にメンタルヘルス対策が重要だと言われていています。

メンタルヘルスの不調は集中力や判断力を鈍らせてしまうため、業務上のミスや生産性の低下、ひどい場合は長期休職や離職につながるおそれがあります。そのような従業員が増えてしまえば、企業にとっては新たな従業員の雇用によるコスト増加生産性低下による業績の悪化といった事態にもなりかねません。

ストレスチェックは、メンタルヘルス不調を未然に防ぐために、自分のストレスがどのような状態なのかを可視化する検査です。これによってストレスを溜めすぎないように注意したり、専門の医師に相談したり、業務の軽減を事業場に行ってもらったりするなどの対応を行えます。

ストレスチェックの担当者になった場合、実際にどのように運用したらいいのでしょうか。本記事では、ストレスチェックとはそもそも何なのか、法律で実施義務があるのはどのような企業かなどの基本的情報をはじめ、実施の際の手順やコツ、注意点などについて解説していきます。

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目次

ストレスチェックとは

ストレスチェックとは、従業員のストレス状態を調べるための簡易的な検査のことです。ストレスチェックは基本的にセルフチェック方式で行われ、従業員は選択式の調査票を通して、自身のストレス状態を回答していきます。

回収された調査票は集計・評価・分析され、メンタルヘルス不調の兆候がある従業員(高ストレス者)に産業医との面談を促したり、職場環境を改善するための参考にしたりするために活用されます。

このようなメンタルヘルス対策が必要とされる背景には、精神障害を事由とした労災認定が近年ますます増加していることが挙げられます。世の中の急速な変化に伴う仕事量や質の変化、長時間労働、過重な責任によるストレス、さらにはパワーハラスメントやいじめ、セクシャルハラスメント、悲惨な事故や災害の体験などが主な理由です。

そのため、労働者の心身の安全と健康を守るためには、肉体面だけでなく精神面へのフォローも欠かせません。ストレスチェックの定期的な実施は、そうした問題への気づきとして重要なのです。

実施義務はあるのか

ストレスチェックは「労働安全衛生法」が改正されて、常時50人以上の従業員がいる事業所において、2015 年12月から毎年1回、この検査を全ての従業員に対して実施することが義務付けられました。ただし、ストレスチェックを実施しないことによる罰則は規定されていません。

なお、従業員が50人未満の事業場に関しては実施義務も報告義務もありません。当分のあいだは努力義務に留まるとされています。また、契約期間が1年未満の従業員労働時間が通常の従業員の所定労働時間の4分の3未満の短時間勤務の従業員は義務の対象外です。

とはいえ、労働安全衛生法では、ストレスチェックの実施状況について年に1回労働基準監督署に報告することが義務づけられています。たとえ実施しなかった場合でも、この報告は必須であり、これを怠った場合は50万円以下の罰金が科せられます。

ストレスチェックの目的は「一次予防」

メンタルヘルスケアは、一次予防、二次予防、三次予防に区分されます。

①一次予防
メンタルヘルス不調になることを未然に防止する
②二次予防
メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な対応を行う
③三次予防
メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援する

ストレスチェックは、上記のうち一次予防である「メンタルヘルス不調となることを未然に防止する」ことを目的としています。つまり、従業員が自分の現在の精神状態を見直し、メンタルヘルスの不調の発見や改善にいち早く取り組めるようにすることにその本質的な目的と意義があるのです。

メンタルヘルスの一次予防としてこのストレスチェックだけでなく、従業員が自分で行うストレス緩和ケアのほか、業務環境の改善がこの段階に含まれます。

実施することの効果

ストレスチェックを実施し、メンタルヘルス対策に取り組むことには、事業者と従業員の双方にポジティブな効果をもたらします。以下に挙げる利点をよく理解し、前向きに取り組むことが大事です。

事業者のメリット

事業者側のメリットとしては、ストレスチェックを実施することで従業員のメンタルヘルス不調を未然に防いだり、早期対応をしたりできることが挙げられます。高ストレス者の多い職場は人間関係もギスギスしやすく、不注意などによるヒューマンエラーも起きやすくなります。高ストレス者のメンタルケアをすると共に、職場に内在するストレス要因を見つけて事前に対策を打つことで、職場環境の改善や労働生産性の向上を期待できるでしょう。

従業員のメリット

従業員側のメリットとしては、自らのストレス状態を正確に知ることで、セルフケアのきっかけになることが挙げられます。ストレスチェックを通してストレスの状態や原因など、自分を見つめ直す機会を得られます。それによって、働き方を見直したり、ストレスへの対処を行えます。また、ストレスチェックに協力することで、より働きやすい職場づくりに貢献できます。

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そもそも、ストレスとは?

ストレス【stress】という言葉は日常的によく使われています。
しんどい時、辛い時、イライラする時、悲しい時など、いろいろなシーンでよく使われていますが、その語源や定義はあまり知られていません。そこで、「ストレス」の定義をまずはおさらいしましょう。

厚生労働省のe-ヘルスネットによると、ストレスとはこのように定義されています。

外部からの刺激などによって体の内部に生じる反応のこと。その原因となる外的刺激(ストレッサー)とそれに対する私たちの心身の反応(ストレス反応)とを合わせてストレスと呼ばれることもある。
物体の外側からかけられた圧力によって歪みが生じた状態を「ストレス」

ストレスの語源は物理学の用語

「ストレス」はもともと物理学の分野で使われていた用語で、物体の外側からかけられた圧力によって歪みが生じた状態を「ストレス」と言います。

ストレスを風船に例えてみると、風船を指で押さえる力をストレッサーと言い、ストレッサーによって風船が歪んだ状態をストレス反応と言います。

ストレスを風船やボールに例えると、ふくらみや凹みなどの形、堅さ、大きさなどからストレスの度合いが見て取れます。
しかし風船やボールではなく、人の心や脳に置き換えるとどうでしょう?目に見えるものではないので、分かりませんね。普段、職場で何気なく接していても、内面では大きなストレスを抱えている場合もあります。

そこで、ストレスチェックによって、状態や度合いを把握し、適正に対応することが重要になるのです。

ストレスチェックの実施方法

ストレスチェックは大まかに、下記のように実施していきます。

参照)厚生労働省「ストレ スチェック制度 導入マニュアル」

以下では、それぞれの手順の具体的内容を解説します。

事前準備

事前準備には、実施方法と実施体制の検討があります。

実施方法の検討

事前準備においては、事業所の衛生委員会で以下に挙げる事柄を議論し、実施方法の検討をすることが必要です。ここで話し合った結論は社内ルールとして明文化し、全ての従業員に周知しましょう。

  1. ストレスチェックは誰に実施させるのか
  2. ストレスチェックはいつ実施するのか
  3. どんな質問票を使ってストレスチェックを実施するのか
  4. どんな基準でストレスの高い人を選ぶのか
  5. 面接指導の申し出は誰にすればいいのか
  6. 面接指導はどの医師に依頼して実施するのか
  7. 集団分析はどんな方法で行うのか
  8. ストレスチェックの結果は誰が、どこに保存するのか

実施体制(実施者や実施事務従事者)の検討

検討後は、その方針に基づいて具体的な実施体制の検討及び構築をしていきます。ここにおいては、医師や保健師などの「実施者」や、データ入力などの事務作業に従事する「実施事務従事者」を選定します。医師や保健師等が社内にいない場合には、ストレスチェックの実施は外部機関に委託することができます。

ストレスチェックは、人事部などで人事権がある従業員は実施者にはなれません

実施者はなるべく普段から事業所の内情を把握している産業医などであることが望ましいとされます。機微な個人情報を取り扱うことから、実施者となれるのは法令で定められた医師(産業医)、歯科医師、保健師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師等の資格者に限られています。

実施事務従事者は調査票の回収や実施者との連携などの事務作業を行う役割を担っており、企業の人事権を持たない衛生管理者やシステム部門の事務職員が行います。ストレスチェックの結果などの個人情報の扱いは大変重要なため、人選は慎重に行う必要があります。

実施

まずは質問票作成と配布を行い、次にそれらを集計して評価、通知を行います。

質問票の作成・配布

実施に際しては、まず質問票の作成と配布を行います。質問票は以下に挙げる3つの事項に関する質問が含まれていなければなりません。

  1. ストレスの原因
  2. ストレスに由来する心身の自覚症
  3. 周囲からのサポート状況

また、厚生労働省は以下の57項目の質問票を推奨例として示しています。 

ストレスチェック_57項目の質問票

参照)厚生労働省「ストレ スチェック制度 導入マニュアル」

集計・評価・通知

回答が返ってきたら、今度はデータの集計作業と各従業員ないしは従業員全体のストレス評価を行い、その結果(ストレスプロフィール)を本人に通知します。

評価を通知する際には、従業員が自分のストレス状態を分かりやすく把握できるように、チャートやグラフなどを活用するのがおすすめです。なお、回答内容や評価内容は重要な個人情報に当たります。第三者の目に触れぬように封書や電子メールなどを使用して、個人単位で通知するようにしてください。

【高ストレス者の判定基準】

高ストレス者の選定方法としては、ストレスへの自覚が強い人はもちろん、担当業務がどれほどストレス要因の強いものか、上司や同僚などの周囲からどれほどサポートを受けられているかといった要素も加味して総合的に判断する必要があります。

ストレスチェック調査票において「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が高い者が当てはまります。

「疲れがずっと抜けない」「休日でも仕事のことが気になって落ち着かない」など、メンタルヘルス不調を示すサインを多く持つ人がまずは高ストレス者に該当します。

ただし、それほど極端な自覚症状がなくても、担当業務の責任が重い、業務量が過度に多いなどストレス要因の多い仕事を抱えている人や、上司や同僚からのサポートが乏しい人も、今後メンタルヘルス不調に陥ることが懸念される対象として高ストレス者に分類される場合もあります。

そういった場合は、「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が一定以上であり、「職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目」及び「職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目」の評価点数の合計が著しく高い場合が基準になります。

公益社団法人 全国労働衛生団体連合会 メンタルヘルス専門委員会 によるストレスチェックの報告書(2019年)によると、受検した 1,514,572 人のうち、 高ストレス者は 218,462 人で、受検者の 14.4%でした。これをひとつの目安と考えると、約15%を大幅に超える比率の高ストレス者がいる事業場は早期の対策が望まれます。
参照:平成30年 全衛連ストレスチェックサービス実施結果報告書

実施後のフォロー

実施後のフォローとして、高ストレス者へは面接指導を行ったり、職場改善の目的で集団分析の実施(努力義務)などを行います。

面接指導(高ストレス者への対策)

高ストレス者に対しては産業医などとの面接指導を勧奨し実施することで、ストレス状態やその要因をより正確に理解でき、労働時間を短縮するなど就業上の便宜も図りやすくなります。

ただし、面接指導はあくまで従業員が自分自身で受けるかどうか決めるものです。そのため、該当者に面接指導を勧める際には強制のニュアンスが出ないように注意し、面接日を柔軟に設定するなどして、本人が自発的に申し出をしやすい体制を整えることが重要です。

また、該当者が高ストレス者であることが周囲に知られないように、申出勧奨の方法は電子メールや封書で郵送するといった配慮を行いましょう。面接指導の申出勧奨はストレスプロフィールを通知してから概ね1ヶ月以内、面接指導は本人からの申し出があってから1ヶ月以内に行うこととされています。

関連記事:高ストレス者への対策について

集団分析(職場環境の改善)

面接指導と併せて重要なのが集団分析による職場環境の改善です。集団分析は法的には努力義務にすぎませんが、職場に潜在するストレス要因を特定し、それらを組織的に改善していくことで、ストレス負荷の低い職場環境の構築が可能です。集団分析における課題や対策案としては、主に下記のような例が挙げられます。

ストレスチェック_集団分析結果例

参照:厚生労働省「これからはじめる職場環境改善」

職場環境の改善にあたり、オープンで快適なオフィス環境を作ることが重要になります。従業員が一人で抱え込まず情報を共有し、相談できる環境を整備することで職場の活発なコミュニケーションを促します。

環境環境の改善ポイントとしては、人間関係の活性化を優先して進めることを推奨します。業務環境の整備や業務内容の見直しも必要になりますが、まずは気軽に相談できる環境を整え、効果的な改善ができるように従業員の意見を吸い上げることを優先しましょう。

人間関係を活性化するためには以下のようなアクションを検討するとよいでしょう。

  1. お互いを知る機会をつくる
  2. 心理的安全性を高める確保する
  3. 業務に関わらない環境を設ける
  4. ワークエンゲージメントを高める

関連記事:職場環境の改善アイデアについて

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労働基準監督署への報告

ストレスチェックの実施後には、管轄の労働基準監督署に所定の実施報告書を提出します。ストレスチェックの実施状況については、年に1回労働基準監督署に報告することが義務づけられています。提出時期は基本的に事業場の裁量に任されており、事業年度の終了後など自由に設定できます。また、ストレスチェックを複数回に分けて実施した場合や、長期に渡って実施した場合は、直近の日を実施日として報告します。

ストレスチェックの費用

ストレスチェックには費用がかかります。その大半は人件費です。

従業員1人あたり300円〜1,500円程度、また面接指導は30分〜60分で15,000円〜50,000円程度が相場と言われています。

費用項目

ストレスチェック制度の実施費用は、事業者が請け負うものとなっています。費用項目としては、以下が挙げられます。

1.ストレスチェック実施体制を作る人件費

前述の事前準備にある、衛生委員会などにおけるストレスチェックの実施方法・体制についての審議とその社内周知にかかる費用です。この部分は社内体制に関わる部分ですから、外部委託が難しく、内製で担当者が整えることが多いでしょう。

2.実際に質問票を作りストレスチェックの受検を依頼する費用

前述の実施にあるストレスチェック質問票などの書類を作り、従業員に回答依頼をする、この一連の工程で発生する費用です。
受検方式は、インターネットや事業所内のイントラネットなどを使用して行うWeb受検方式と、調査票に直接記入するマークシート方式があります。
この際、
ストレスチェックで使用したデータや資料は、適切な方法で管理する義務があります。つまり、マークシート等の紙を使って実施した場合は、適切に保管されるよう管理方法にも配慮が必要です。そうした紛失等のリスクを考慮すると、Webで実施する受検方式が一般的となっています。

3.高ストレス者への面接指導にかかる費用

ストレスチェックの結果、高ストレス者が見つかった場合は、産業医などによる面接指導が行われます。高ストレス者が面接を受けるかどうかは強制ではなく、自身で判断することとなっています。
しかし面接を受けさせる場合、面接指導は、原則として産業医が担当します。
面接指導は1人あたり10分~20分程度を見込みましょう。この場合の費用は事業者負担となります。また、保険診療の範囲で行うものではないことを理解しておきましょう。

4.集団分析および職場改善にかかる費用

部署別、職種別、年代別、性別など、ストレスチェックの結果を分析し、その結果を改善に役立てるためのコストです。
外部委託した場合、属性が増えるごとに費用が発生することもあるため、調査する属性が増えるごとに追加費用が発生する可能性もあるため、事前に費用詳細を把握しておきましょう

出典:厚生労働省|労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(平成 27 年5月 改訂 平成 28 年4月)

どこを内製し、どこを外部委託するのか

ストレスチェックの実施にあたり、予算や方針によってやり方は異なります。自社で内製する部分、外部委託する部分を切り分けて考えても良いでしょう。

例えば下記のような進め方があります。

  • ストレスチェックの実施の部分のみ外部委託し、その後の集団分析やデータの運用に関しては事業所内で内製するケース
  • 一連の業務をすべて代行してもらうケース

ストレスチェックの外部委託を検討している場合は、事業所内で内製して対応予定の業務と、外部委託を希望する業務を分けて、整理しておきましょう。

ストレスチェックに関する助成金

50名未満の事業場の場合、ストレスチェックの助成対象となります。
また、高ストレス者に面接指導等の活動を受けさせる場合の費用も助成が受けることができます。

【助成金を受ける6つの要件】

助成金を受けるためには、6つの要件をすべてクリアし申請書類、証明書類を送付し支給申請することで、助成金を受けることができます。

  1. 労働者を雇用している法人・個人事業主であること
  2. 労働保険の適用事業場であること
  3. 常時使用する従業員が派遣従業員を含めて50人未満であること
  4. ストレスチェックの実施者が決まっていること
  5. 事業者が医師と契約し、ストレスチェックにかかわる医師による活動の全部または一部を行わせること
  6. ストレスチェックの実施及び面接指導等を行う者は、自社の使用者・従業員以外の者であること

また、助成金の対象と金額にも決まりがあります。

ストレスチェックの助成金

ストレスチェックを実施した従業員一人につき最大500円(税込)の助成金を受けることができます。またストレスチェックで医師による面接指導等の活動が1事業場あたり1回の活動につき21,500円、上限回数が3回まで受けることができます。
ストレスチェック実施が義務化されていない、従業員数50人未満の事業場でも、助成金を受けることも出来るため、専門の外部サービスを活用して、ストレスチェックを実施しましょう。

出典:独立行政法人労働者健康安全機構 勤労者医療・産業保健部|令和 3 年度版「ストレスチェック」実施促進のための助成金の手引 

●福利厚生費として計上し「損金」として会計処理

ストレスチェックは健康診断と同様に、会計処理する際は「福利厚生費」として計上することができます。条件を満たした福利厚生費は全額を経費に計上することができ、法人税計算からは「損金」として除外されます。

福利厚生費として認められるためには下記の条件を満たすことが必要です。

  • 従業員等全員に支出されるものであること
  • 社内規定で一定の基準が明記されていること
  • 社会通念上、妥当な金額の範囲であること

注意すべきポイント

ストレスチェックを実施する際には、以下の点に注意する必要があります。

プライバシーの保護

ストレスチェックの回答内容や評価内容は重要な個人情報です。プライバシー保護の観点から、その情報に触れるのは原則として実施者と実施事務従事者、あるいは面接指導の担当者に限定してください。これらの担当者には法的にも守秘義務が課せられ、違反者は刑罰を受ける可能性があります。そのため、保管方法や通知方法には細心の注意を払う必要があります。

不利益取扱いの防止

ストレスチェックやその後の面接指導を受けたかどうか、あるいはそこでの結果によって、従業員が就業上の不利益を被るようなことがあってはいけません。これに関連して、法律ではストレスチェックに関連して得た従業員の情報を事業者が濫用しないように、実施事務従事者に人事権を持つ者を担当者に置くことが禁じられています。

実施時期

ストレス状態は、繁忙期か閑散期かといった時期的な影響も強く受けます。そのため、自社のメンタルヘルス対策が効果を挙げているかどうか正確に判断するためには、毎年実施するタイミングを揃えることが大事です。

目指すべき実施率

厚生労働省は、実施義務のある事業場が実際にどれほどストレスチェックを行っているのかその実施率を調査し公表しています。以下では、2017年に公表されたその調査結果を紹介します。他社の実施状況を確認し、どれくらいの数の従業員に受検してもらうことを目指せばよいのか考える際の参考にしてください。

事業場の実施状況

2017年の厚生労働省労働衛生課の調査結果によれば、ストレスチェックの実施義務のある事業場のうち、82.9%が労働基準監督署に実施報告を提出しています。

【事業規模別の実施率】
・事業規模50~99人 78.9%
・事業規模100~299人 86.0%
・事業規模309~999人 93.0%
・事業規模1,000人以上 99.5%

事業規模が大きくなればなるほど実施率が高いことがわかります。検査を実施するには担当部署や担当者の設置、費用もかかることから、人員と予算の確保ができる大企業のほうが実施率が高いと考えられます。

【業種別の実施率】
・製造業 86.0%
・建設業 81.1%
・運輸交通業 80.9%
・貨物取扱業 76.6%
・商業  79.9%
・金融・広告業 93.2%
・通信業 92.0%
・教育・研究業 86.2%
・保険・衛生業 83.7%
・接客娯楽業 68.2%
・清掃・と畜業 67.0%

多くの業種は80~90%台の高い実施率でしたが、現場業務が多い接客娯楽業、清掃・と畜業は60%台と低い数字に留まっています。実施率が低い業種は実施時間や予算の確保など、受検環境整備が課題と言えそうです。

労働者の受検状況

同調査では、実施義務のある事業場に所属する従業員の78.0%がストレスチェックを受検しているという結果が出ています。

従業員規模別の大きさ差はないものの、どれも80%に満たない受検状況になっています。ストレスチェックを受検しない従業員ほどストレスを受けている可能性もあるため、全従業員が受検するように取り組む必要があります。

【ストレスチェックの受検状況】
・50~99人 77.0%
・100~299人 78.3%
・300~999人 79.1%
・1,000人 77.1%

出典元:ストレスチェック制度の実施状況 厚生労働省労働衛生課調べ(2017年7月)

実施効果をあげるポイント

ストレスチェックで従業員のストレスを少しでも軽減し、メンタルヘルスケア対策を効果的に実施するためには、実施にあたっていくつかのポイントを理解しておく必要があります。

実施のポイント

結果を分析して職場環境の改善に役立てるには、受検者数が多ければ多いほど望ましいといえます。集団分析を行う場合60%程度の受検者を確保する必要があります。受検率を上げるための工夫ポイントとしては下記のようなことが挙げられます。

  • ストレスチェック制度の目的やメリットを分かりやすい言葉や例で従業員に説明する
  • 個人情報の保護をはじめ、安心して回答できる環境をつくり、周知する
  • 従業員意識調査など、すでに実施していた取組みの枠組みや、定期健康診断の機会を活用する
  • 自席に居るタイミングを見計らってリマインダーメールを送ったり、受検を促す掲示をしたりする
  • 受検メリット(職場改善のきっかけになること)を伝える

分析・改善のポイント

結果分析や職場環境の改善に取り組む際には、職場の悪い点にばかり目がいきがちです。しかし、より良い職場環境をつくるためには、いまの職場の欠点ばかりを探すのではなく、良い点も見つけ、その強みを伸ばしたり波及させたりしていくことも同じくらい重要です。

運用のポイント

職場におけるストレスはさまざまな要因が絡み合って生じる複合的なものです。そのため、集団分析をして職場環境の改善に取り組んでも、すぐにその効果が現れてくるとは限りません。たとえ翌年のストレスチェックですぐに良い結果が出なくてもあまり気にしすぎないことが大切です。試行錯誤の連続だとしても、「職場環境を改善するためのアイデアを出しやすくなった」など、過程も重視して長期的に取り組みましょう。

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従業員のメンタルヘルス不調の未然防止につながる取り組み

ストレスチェックの究極的な目的は従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことです。そのために有効な取り組みとしては、下記のようなことが挙げられます。

職場環境の改善

抜本的な対策は、やはり職場環境を改善することです。特定の部署や担当者に負担が偏っていないかを確認し、大きな負担になっている業務を効率化できないかなど改善策を検討しましょう。

また、2022年4月からは、中小企業においても社内相談窓口の設置が義務付けられます。

安心して働くことのできる職場環境を作る土台として、社内相談窓口を設置し適切に運用することは大切です。特に身近に相談できる人がいない人や、テレワークのように孤立した環境で仕事をしている人にとって、気兼ねなく相談できる場所があるかどうかは非常に重要です。

こうした窓口の利用を積極的に推奨したり、社外にも相談窓口を設置したりして、メンタルケアを受けやすい環境づくりをすることも重要です。

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メンタルヘルス対策

メンタルヘルスは昨今、非常に重要視されています。従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐ2つの重要な施策を解説します。

マネジメント層に対して定期的なラインケアの研修を実施する

マネジメント層に対して定期的なラインケアに関する研修を実施することは有効な施策です。ラインケアとは、管理者層による部下のメンタルケアを意味します。従業員にとって身近な上司がメンタルヘルス対策の重要性を理解し、日頃から相談に乗ったり、ストレス要因の把握と改善に当たったりすることで、大きなメンタルヘルスケア効果が期待できます。

従業員のセルフケアスキルを向上させる

従業員のセルフケアスキルの向上も重要です。セルフケアとはその名の通り、自分のストレス状態を客観的に把握し、メンタルヘルス不調に陥らないように適切に予防することを意味します。社会人とはいっても、常に自分の精神状態を把握し、適切にコントロールできるとは限りません。そのため、メンタルヘルスの重要性やケアの方法を社内研修などで啓蒙していくことが非常に重要です。

その一つの方法として、「セルフケアセミナー」の開催が考えられます。言葉の通り自身をケアするための知識、スキルを身に着けるセミナーで、メンタルヘルスセミナーの中で最もメジャーで、重要なセミナーです。
セルフケアを身に着けることが大切な理由は、「私はうつ病かもしれない」など自ら気付くことは難しく、知識ややり方を身に着けている必要があるからです。

セルフケアは、メンタル不調と向き合うための有効策として、厚生労働省から「労働者の心の健康の保持推進のための指針」(改正)(平成27年11月)が発表されている4つのケアのひとつです。RIZAPのセミナーコース「メンタルヘルス編」の中では、自身のストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解を促し、セルフコントロール力を高める方法などをお伝えしています。

 

まとめ

ストレスチェック制度は、50人以上の事業場において1年に1回実施することが義務付けられています。ストレスチェックやメンタルヘルス対策は、従業員の健康を守るだけでなく、職場環境改善や労働生産性の向上など企業にとっても利益のあるものです。実施の際には、プライバシーの保護など、従業員ファーストの姿勢で行うことが大切です。

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