ストレスチェックとは?対象者、目的、メリット、実施方法

企業においては昨今、特にメンタルヘルス対策が重要だと言われていています。

メンタルヘルスの不調は集中力や判断力を鈍らせてしまうため、業務上のミスや生産性の低下、ひどい場合は長期休職や離職につながるおそれがあります。そのような従業員が増えてしまえば、企業にとっては新たな従業員の雇用によるコスト増加生産性低下による業績の悪化といった事態にもなりかねません。

ストレスチェックは、メンタルヘルス不調を未然に防ぐために、自分のストレスがどのような状態なのかを可視化する検査です。これによってストレスを溜めすぎないように注意したり、専門の医師に相談したり、業務の軽減を事業場に行ってもらったりするなどの対応を行えます。

ストレスチェックの担当者になった場合、実際にどのように運用したらいいのでしょうか。本記事では、ストレスチェックとはそもそも何なのか、法律で実施義務があるのはどのような企業かなどの基本的情報をはじめ、実施の際の手順やコツ、注意点などについて解説していきます。

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目次

ストレスチェックとは

ストレスチェックとは、従業員のストレス状態を調べるための簡易的な検査のことです。ストレスチェックは基本的にセルフチェック方式で行われ、従業員は選択式の調査票を通して、自身のストレス状態を回答していきます。

労働者の心身の安全と健康を守るためには、肉体面だけでなく精神面へのフォローも欠かせません。ストレスチェックの定期的な実施は、そうした問題への気づきとして重要なのです。

目的

メンタルヘルスケアは、一次予防、二次予防、三次予防に区分されます。

①一次予防
メンタルヘルス不調になることを未然に防止する
②二次予防
メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な対応を行う
③三次予防
メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援する

ストレスチェックは、上記のうち一次予防である「メンタルヘルス不調となることを未然に防止する」ことを目的としています。つまり、従業員が自分の現在の精神状態を見直し、メンタルヘルスの不調の発見や改善にいち早く取り組めるようにすることにその本質的な目的と意義があるのです。

メンタルヘルスの一次予防としてこのストレスチェックだけでなく、従業員が自分で行うストレス緩和ケアのほか、業務環境の改善がこの段階に含まれます。

実施義務と罰則

ストレスチェックは「労働安全衛生法」が改正されて、常時50人以上の従業員がいる事業所において、2015 年12月から毎年1回、この検査を全ての従業員に対して実施することが義務付けられました。ただし、ストレスチェックを実施しないことによる罰則は規定されていません。

なお、従業員が50人未満の事業場に関しては実施義務も報告義務もありません。当分のあいだは努力義務に留まるとされています。また、契約期間が1年未満の従業員労働時間が通常の従業員の所定労働時間の4分の3未満の短時間勤務の従業員は義務の対象外です。

とはいえ、労働安全衛生法では、ストレスチェックの実施状況について年に1回労働基準監督署に報告することが義務づけられています。たとえ実施しなかった場合でも、この報告は必須であり、これを怠った場合は50万円以下の罰金が科せられます。

制度が義務化された背景

平成21年度以降、精神障害の労災認定件数が3年連続で過去最高を更新するなど増加していきました。

  • 平成21年度: 234
  • 平成22年度: 308 
  • 平成23年度: 325 
  • 平成24年度: 475

世の中の急速な変化に伴う仕事量や質の変化、長時間労働、過重な責任によるストレス、さらにはパワーハラスメントやいじめ、セクシャルハラスメント、悲惨な事故や災害の体験などが主な理由です。

このような背景から労働者の安全と健康の確保対策を一層充実するため、「労働安全衛生法の一部を改正する法律」(平成26年法律第82号)が平成26年6月25日に公布され、平成27年12月以降、一定規模以上の事業場で ストレスチェック制度の実施が義務づけられました。

国はストレスチェックを行う医師、保健師等に対する研修の充実・強化、労働者に対する相談・情報提供体制の整備に努めるとしています。

対象者

ストレスチェックの受検対象者は下記の通りです。

  • 契約期間に定めのないフルタイムの正社員
  • パート・アルバイトで、労働時間が通常の労働者の4分の3以上ある従業員

契約期間に定めのある従業員でも、その期間が1年以上、または1年以上働いている場合はストレスチェックの実施対象者になります。

実施時期・頻度

ストレスチェックは、年に1回実施する必要があります。しかし、その実施時期や頻度に関しての指定はなく、事業者が決定することになっています。

従業員のストレス状態は、繁忙期か閑散期かといった時期的な影響も強く受けます。そのため毎年同じ時期に実施することで、自社のメンタルヘルス対策が効果を挙げているかどうか正確に判断することができます。実施時期の違いによって正しい分析ができなくなることを防ぐために、実施時期は分散しないほうがよいでしょう。

ストレスチェックは以下の時期を避けて実施することがおすすめです。

  • 繁忙期
  • 決算時期
  • 異動の多い時期

ストレスチェックは、従業員自身がストレス状態を把握してストレスに対処するきっかけづくりが目的です。そのため、上記のようにストレスが多いとわかっている時期に実施してもストレスへの対処が難しいだけでなく、受検率が落ちる可能性もあります。

費用

ストレスチェックには費用がかかります。その大半は人件費です。従業員1人あたり300円〜1,500円程度、また面接指導は30分〜60分で15,000円〜50,000円程度が相場と言われています。

費用項目

ストレスチェック制度の実施費用は、事業者が請け負うものとなっています。費用項目としては、以下が挙げられます。

1.ストレスチェック実施体制を作る人件費

前述の事前準備にある、衛生委員会などにおけるストレスチェックの実施方法・体制についての審議とその社内周知にかかる費用です。この部分は社内体制に関わる部分ですから、外部委託が難しく、内製で担当者が整えることが多いでしょう。

2.実際に質問票を作りストレスチェックの受検を依頼する費用

前述の実施にあるストレスチェック質問票などの書類を作り、従業員に回答依頼をする、この一連の工程で発生する費用です。
受検方式は、インターネットや事業所内のイントラネットなどを使用して行うWeb受検方式と、調査票に直接記入するマークシート方式があります。
この際、
ストレスチェックで使用したデータや資料は、適切な方法で管理する義務があります。つまり、マークシート等の紙を使って実施した場合は、適切に保管されるよう管理方法にも配慮が必要です。そうした紛失等のリスクを考慮すると、Webで実施する受検方式が一般的となっています。

3.高ストレス者への面接指導にかかる費用

ストレスチェックの結果、高ストレス者が見つかった場合は、産業医などによる面接指導が行われます。高ストレス者が面接を受けるかどうかは強制ではなく、自身で判断することとなっています。
しかし面接を受けさせる場合、面接指導は、原則として産業医が担当します。
面接指導は1人あたり10分~20分程度を見込みましょう。この場合の費用は事業者負担となります。また、保険診療の範囲で行うものではないことを理解しておきましょう。

4.集団分析および職場改善にかかる費用

部署別、職種別、年代別、性別など、ストレスチェックの結果を分析し、その結果を改善に役立てるためのコストです。
外部委託した場合、属性が増えるごとに費用が発生することもあるため、調査する属性が増えるごとに追加費用が発生する可能性もあるため、事前に費用詳細を把握しておきましょう

出典:厚生労働省|労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(平成 27 年5月 改訂 平成 28 年4月)

どこを内製し、どこを外部委託するのか

ストレスチェックの実施にあたり、予算や方針によってやり方は異なります。自社で内製する部分、外部委託する部分を切り分けて考えても良いでしょう。

例えば下記のような進め方があります。

  • ストレスチェックの実施の部分のみ外部委託し、その後の集団分析やデータの運用に関しては事業所内で内製するケース
  • 一連の業務をすべて代行してもらうケース

ストレスチェックの外部委託を検討している場合は、事業所内で内製して対応予定の業務と、外部委託を希望する業務を分けて、整理しておきましょう。

ストレスチェックに関する助成金

50名未満の事業場の場合、ストレスチェックの助成対象となります。
また、高ストレス者に面接指導等の活動を受けさせる場合の費用も助成が受けることができます。

【助成金を受ける6つの要件】

助成金を受けるためには、6つの要件をすべてクリアし申請書類、証明書類を送付し支給申請することで、助成金を受けることができます。

  1. 労働者を雇用している法人・個人事業主であること
  2. 労働保険の適用事業場であること
  3. 常時使用する従業員が派遣従業員を含めて50人未満であること
  4. ストレスチェックの実施者が決まっていること
  5. 事業者が医師と契約し、ストレスチェックにかかわる医師による活動の全部または一部を行わせること
  6. ストレスチェックの実施及び面接指導等を行う者は、自社の使用者・従業員以外の者であること

また、助成金の対象と金額にも決まりがあります。

ストレスチェックの助成金

ストレスチェックを実施した従業員一人につき最大500円(税込)の助成金を受けることができます。またストレスチェックで医師による面接指導等の活動が1事業場あたり1回の活動につき21,500円、上限回数が3回まで受けることができます。
ストレスチェック実施が義務化されていない、従業員数50人未満の事業場でも、助成金を受けることも出来るため、専門の外部サービスを活用して、ストレスチェックを実施しましょう。

出典:独立行政法人労働者健康安全機構 勤労者医療・産業保健部|令和 3 年度版「ストレスチェック」実施促進のための助成金の手引 

●福利厚生費として計上し「損金」として会計処理

ストレスチェックは健康診断と同様に、会計処理する際は「福利厚生費」として計上することができます。条件を満たした福利厚生費は全額を経費に計上することができ、法人税計算からは「損金」として除外されます。

福利厚生費として認められるためには下記の条件を満たすことが必要です。

  • 従業員等全員に支出されるものであること
  • 社内規定で一定の基準が明記されていること
  • 社会通念上、妥当な金額の範囲であること

実施状況・受検状況

厚生労働省は、実施義務のある事業場が実際にどれほどストレスチェックを行っているのかその実施率を調査し公表しています。以下では、2017年に公表されたその調査結果を紹介します。他社の実施状況を確認し、どれくらいの数の従業員に受検してもらうことを目指せばよいのか考える際の参考にしてください。

事業場の実施状況

2017年の厚生労働省労働衛生課の調査結果によれば、ストレスチェックの実施義務のある事業場のうち、82.9%が労働基準監督署に実施報告を提出しています。

【事業規模別の実施率】
・事業規模50~99人 78.9%
・事業規模100~299人 86.0%
・事業規模309~999人 93.0%
・事業規模1,000人以上 99.5%

事業規模が大きくなればなるほど実施率が高いことがわかります。検査を実施するには担当部署や担当者の設置、費用もかかることから、人員と予算の確保ができる大企業のほうが実施率が高いと考えられます。

【業種別の実施率】
・製造業 86.0%
・建設業 81.1%
・運輸交通業 80.9%
・貨物取扱業 76.6%
・商業  79.9%
・金融・広告業 93.2%
・通信業 92.0%
・教育・研究業 86.2%
・保険・衛生業 83.7%
・接客娯楽業 68.2%
・清掃・と畜業 67.0%

多くの業種は80~90%台の高い実施率でしたが、現場業務が多い接客娯楽業、清掃・と畜業は60%台と低い数字に留まっています。実施率が低い業種は実施時間や予算の確保など、受検環境整備が課題と言えそうです。

労働者の受検状況

同調査では、実施義務のある事業場に所属する従業員の78.0%がストレスチェックを受検しているという結果が出ています。

従業員規模別の大きさ差はないものの、どれも80%に満たない受検状況になっています。ストレスチェックを受検しない従業員ほどストレスを受けている可能性もあるため、全従業員が受検するように取り組む必要があります。

【ストレスチェックの受検状況】
・50~99人 77.0%
・100~299人 78.3%
・300~999人 79.1%
・1,000人 77.1%

出典元:ストレスチェック制度の実施状況 厚生労働省労働衛生課調べ(2017年7月)

ストレスチェックのメリット・効果

ストレスチェックを実施し、メンタルヘルス対策に取り組むことには、事業者と従業員の双方にポジティブな効果をもたらします。以下に挙げる利点をよく理解し、前向きに取り組むことが大事です。

事業者のメリット

事業者側のメリットとしては、ストレスチェックを実施することで従業員のメンタルヘルス不調を未然に防いだり、早期対応をしたりできることが挙げられます。高ストレス者の多い職場は人間関係もギスギスしやすく、不注意などによるヒューマンエラーも起きやすくなります。高ストレス者のメンタルケアをすると共に、職場に内在するストレス要因を見つけて事前に対策を打つことで、職場環境の改善や労働生産性の向上を期待できるでしょう。

従業員のメリット

従業員側のメリットとしては、自らのストレス状態を正確に知ることで、セルフケアのきっかけになることが挙げられます。ストレスチェックを通してストレスの状態や原因など、自分を見つめ直す機会を得られます。それによって、働き方を見直したり、ストレスへの対処を行えます。また、ストレスチェックに協力することで、より働きやすい職場づくりに貢献できます。

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ストレスチェックの内容・項目

ストレスチェックの質問票は自社で選択することができます。内容については、ストレスチェックの実施者の提案や助言、衛生委員会の調査審議を経て、事業者が決定します。質問票の中には含まれていなければいけない項目があります。

必要な質問項目

質問票は以下に挙げる3つの事項に関する質問が含まれていなければなりません。

  1. 仕事のストレスの原因
  2. ストレスに由来する心身の自覚症状(ストレス反応)
  3. 周囲からのサポート状況(緩衝要因)

仕事のストレス要因によるストレス反応が続くと健康障害につながります。アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の ストレスの職業性ストレスモデルによるとストレス反応は仕事のストレス要因だけでなく仕事外の要因、個人要因、緩衝要因によって修飾されるといわれています。

特に緩衝要因である周りのサポートの有無はストレス反応の軽減に影響します。

参照:ストレスに気づこう|厚生労働省

ストレスチェック調査票の例

法に基づくストレスチェックの項目として厚生労働省は以下の57項目の質問票を推奨例として示しています。

ストレスチェック_57項目の質問票

これは職業性ストレス簡易調査票(57項目)といい、「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(厚生労働省)内で推奨されている調査票となっており多くの事業所で利用されています。

このほか、職業性ストレス簡易調査票(57項目)を簡略化した職業性ストレス簡易調査票(簡略版23項目)もあり、回答の負荷を軽減しています。

また近年では「新職業性ストレス簡易調査票」、いわゆる「80項目版」のストレスチェック調査票も登場し、エンゲージメントを把握することも可能になりました。

一般的なストレスチェック調査票(57項目版)との違いは、個人のストレス反応だけでなく、仕事に対する「エンゲージメント」や、「職場環境」「ハラスメント」についても測定できる内容になっています。

受検にかかる時間は10分程度と、57項目版と比べて長くなりますが、職場環境改善への効果が期待できることから、健康経営を推進している企業ではこの「80項目版」ストレスチェック調査票を導入している例も多いようです。

関連記事:エンゲージメントを高める取り組みとは?具体例、効果、事例

ストレスチェック実施の流れとポイント

ストレスチェックは大まかに、下記のように実施していきます。

ストレスチェック制度の流れ

以下では、それぞれの手順の具体的内容を解説します。

事前準備

事前準備には、実施方法と実施体制の検討があります。

実施方法の検討

事前準備においては、事業所の衛生委員会で以下に挙げる事柄を議論し、実施方法の検討をすることが必要です。ここで話し合った結論は社内ルールとして明文化し、全ての従業員に周知しましょう。

  1. ストレスチェックは誰に実施させるのか
  2. ストレスチェックはいつ実施するのか
  3. どんな質問票を使ってストレスチェックを実施するのか
  4. どんな基準でストレスの高い人を選ぶのか
  5. 面接指導の申し出は誰にすればいいのか
  6. 面接指導はどの医師に依頼して実施するのか
  7. 集団分析はどんな方法で行うのか
  8. ストレスチェックの結果は誰が、どこに保存するのか

実施体制(実施者や実施事務従事者)の検討

検討後は、その方針に基づいて具体的な実施体制の検討及び構築をしていきます。ここにおいては、医師や保健師などの「実施者」や、データ入力などの事務作業に従事する「実施事務従事者」を選定します。医師や保健師等が社内にいない場合には、ストレスチェックの実施は外部機関に委託することができます。

ストレスチェックは、人事部などで人事権がある従業員は実施者にはなれません

実施者はなるべく普段から事業所の内情を把握している産業医などであることが望ましいとされます。機微な個人情報を取り扱うことから、実施者となれるのは法令で定められた医師(産業医)、歯科医師、保健師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師等の資格者に限られています。

実施事務従事者は調査票の回収や実施者との連携などの事務作業を行う役割を担っており、企業の人事権を持たない衛生管理者やシステム部門の事務職員が行います。ストレスチェックの結果などの個人情報の扱いは大変重要なため、人選は慎重に行う必要があります。

実施

まずは質問票作成と配布を行い、次にそれらを集計して評価、通知を行います。

回答が返ってきたら、今度はデータの集計作業と各従業員ないしは従業員全体のストレス評価を行い、その結果(ストレスプロフィール)を本人に通知します。

評価を通知する際には、従業員が自分のストレス状態を分かりやすく把握できるように、チャートやグラフなどを活用するのがおすすめです。なお、回答内容や評価内容は重要な個人情報に当たります。第三者の目に触れぬように封書や電子メールなどを使用して、個人単位で通知するようにしてください。

実施後のフォロー

実施後のフォローとして、高ストレス者へは面接指導を行ったり、職場改善の目的で集団分析の実施(努力義務)などを行います。

面接指導(高ストレス者への対策)

高ストレス者に対しては産業医などとの面接指導を勧奨し実施することで、ストレス状態やその要因をより正確に理解でき、労働時間を短縮するなど就業上の便宜も図りやすくなります。

ただし、面接指導はあくまで従業員が自分自身で受けるかどうか決めるものです。そのため、該当者に面接指導を勧める際には強制のニュアンスが出ないように注意し、面接日を柔軟に設定するなどして、本人が自発的に申し出をしやすい体制を整えることが重要です。

また、該当者が高ストレス者であることが周囲に知られないように、申出勧奨の方法は電子メールや封書で郵送するといった配慮を行いましょう。面接指導の申出勧奨はストレスプロフィールを通知してから概ね1ヶ月以内、面接指導は本人からの申し出があってから1ヶ月以内に行うこととされています。

関連記事:高ストレス者への対策について

集団分析(職場環境の改善)

面接指導と併せて重要なのが集団分析による職場環境の改善です。集団分析は法的には努力義務にすぎませんが、職場に潜在するストレス要因を特定し、それらを組織的に改善していくことで、ストレス負荷の低い職場環境の構築が可能です。集団分析における課題や対策案としては、主に下記のような例が挙げられます。

ストレスチェック_集団分析結果例

参照:厚生労働省「これからはじめる職場環境改善」

職場環境の改善にあたり、オープンで快適なオフィス環境を作ることが重要になります。従業員が一人で抱え込まず情報を共有し、相談できる環境を整備することで職場の活発なコミュニケーションを促します。

環境環境の改善ポイントとしては、人間関係の活性化を優先して進めることを推奨します。業務環境の整備や業務内容の見直しも必要になりますが、まずは気軽に相談できる環境を整え、効果的な改善ができるように従業員の意見を吸い上げることを優先しましょう。

人間関係を活性化するためには以下のようなアクションを検討するとよいでしょう。

  1. お互いを知る機会をつくる
  2. 心理的安全性を高める確保する
  3. 業務に関わらない環境を設ける
  4. ワークエンゲージメントを高める

関連記事:職場環境の改善アイデアについて

労働基準監督署への報告

ストレスチェックの実施後には、管轄の労働基準監督署に所定の実施報告書を提出します。ストレスチェックの実施状況については、年に1回労働基準監督署に報告することが義務づけられています。提出時期は基本的に事業場の裁量に任されており、事業年度の終了後など自由に設定できます。また、ストレスチェックを複数回に分けて実施した場合や、長期に渡って実施した場合は、直近の日を実施日として報告します。

ストレスチェックの実施効果をあげるポイント

ストレスチェックで従業員のストレスを少しでも軽減し、メンタルヘルスケア対策を効果的に実施するためには、実施にあたっていくつかのポイントを理解しておく必要があります。

実施のポイント

結果を分析して職場環境の改善に役立てるには、受検者数が多ければ多いほど望ましいといえます。集団分析を行う場合60%程度の受検者を確保する必要があります。受検率を上げるための工夫ポイントとしては下記のようなことが挙げられます。

  • ストレスチェック制度の目的やメリットを分かりやすい言葉や例で従業員に説明する
  • 個人情報の保護をはじめ、安心して回答できる環境をつくり、周知する
  • 従業員意識調査など、すでに実施していた取組みの枠組みや、定期健康診断の機会を活用する
  • 自席に居るタイミングを見計らってリマインダーメールを送ったり、受検を促す掲示をしたりする
  • 受検メリット(職場改善のきっかけになること)を伝える

分析・改善のポイント

結果分析や職場環境の改善に取り組む際には、職場の悪い点にばかり目がいきがちです。しかし、より良い職場環境をつくるためには、いまの職場の欠点ばかりを探すのではなく、良い点も見つけ、その強みを伸ばしたり波及させたりしていくことも同じくらい重要です。

運用のポイント

職場におけるストレスはさまざまな要因が絡み合って生じる複合的なものです。そのため、集団分析をして職場環境の改善に取り組んでも、すぐにその効果が現れてくるとは限りません。たとえ翌年のストレスチェックですぐに良い結果が出なくてもあまり気にしすぎないことが大切です。試行錯誤の連続だとしても、「職場環境を改善するためのアイデアを出しやすくなった」など、過程も重視して長期的に取り組みましょう。

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ストレスチェックで注意すべきポイント

ストレスチェックを実施する際には、以下の点に注意する必要があります。

プライバシーの保護

ストレスチェックの回答内容や評価内容は重要な個人情報です。プライバシー保護の観点から、その情報に触れるのは原則として実施者と実施事務従事者、あるいは面接指導の担当者に限定してください。これらの担当者には法的にも守秘義務が課せられ、違反者は刑罰を受ける可能性があります。そのため、保管方法や通知方法には細心の注意を払う必要があります。

不利益取扱いの防止

ストレスチェックやその後の面接指導を受けたかどうか、あるいはそこでの結果によって、従業員が就業上の不利益を被るようなことがあってはいけません。これに関連して、法律ではストレスチェックに関連して得た従業員の情報を事業者が濫用しないように、実施事務従事者に人事権を持つ者を担当者に置くことが禁じられています。

高ストレス者の対応

高ストレス者とは、ストレスチェックによってメンタルヘルス不調の兆候が強く確認された人を指します。深刻な場合は集中力の低下を引き起こしたり、他者と良い人間関係を保つ余裕を失わせたりするため、高ストレス者の多い職場は労働生産性や組織力が低くなりやすく、離職率も高くなってしまいます。 

関連記事:【ストレスチェック】高ストレス者の対応|面談・職場の施策

高ストレス者の判定基準

高ストレス者の選定方法としては、ストレスへの自覚が強い人はもちろん、担当業務がどれほどストレス要因の強いものか、上司や同僚などの周囲からどれほどサポートを受けられているかといった要素も加味して総合的に判断する必要があります。

ストレスチェック調査票において「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が高い者が当てはまります。

「疲れがずっと抜けない」「休日でも仕事のことが気になって落ち着かない」など、メンタルヘルス不調を示すサインを多く持つ人がまずは高ストレス者に該当します。

ただし、それほど極端な自覚症状がなくても、担当業務の責任が重い、業務量が過度に多いなどストレス要因の多い仕事を抱えている人や、上司や同僚からのサポートが乏しい人も、今後メンタルヘルス不調に陥ることが懸念される対象として高ストレス者に分類される場合もあります。

そういった場合は、「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が一定以上であり、「職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目」及び「職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目」の評価点数の合計が著しく高い場合が基準になります。

公益社団法人 全国労働衛生団体連合会 メンタルヘルス専門委員会 によるストレスチェックの報告書(2019年)によると、受検した 1,514,572 人のうち、 高ストレス者は 218,462 人で、受検者の 14.4%でした。これをひとつの目安と考えると、約15%を大幅に超える比率の高ストレス者がいる事業場は早期の対策が望まれます。

参照:平成30年 全衛連ストレスチェックサービス実施結果報告書

面談の進め方・内容

高ストレス者の面談をどのように進めていったらいいのか、その手順について解説します。面談には、事業者、ストレスチェック担当者、実施者(産業医)、人事担当者が関わります。

面談者(高ストレス者)から面談の申し込みがあった場合、事業者が医師に面接指導実施を依頼します。ストレスチェック担当者は、高ストレス者と医師の面談前に、人事担当者や高ストレス者本人から必要な情報を収集し、それを医師に提供します。医師は面談結果を報告書にまとめ、事業者に意見を述べることになっています。

面談の実施率を上げるためには、日時に複数の選択肢を持たせたり、なるべくリラックスできる場所を選んだりするなどの配慮が大切です。人目につかない場所を選ぶことも大事ですが、あまりに閉鎖的な場所はトラブルにつながる可能性もあるのでご注意ください。

高ストレス者への面接指導申出のポイント

面談指導を受けるかどうかは従業員本人の自由意思に委ねられており、その申出率は一般にとても低い数字に留まります。しかし、従業員のメンタルヘルス不調を予防するためには、やはりできるだけ面談を受けてほしいものです。そこで以下では、面談希望率を上げるためには下記のような点に配慮して勧奨する必要があります。

  • 面談を受けるメリットを伝達する
  • 面談しても不当な措置や不利益がないことを伝える
  • 情報の取扱いを明確にする
  • オンラインでも実施可能にする

従業員のメンタルヘルス不調の未然防止につながる取り組み

ストレスチェックの究極的な目的は従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことです。そのために有効な取り組みとしては、下記のようなことが挙げられます。

メンタルヘルス対策の基本: 4つのケア

メンタル不調と向き合うための有効策として、厚生労働省から「労働者の心の健康保持増進のための指針」(改正)(平成27年11月)が発表されています。

関連記事:メンタルヘルス対策の具体例|基本対策と有効な取り組み・効果

従業員自身で行う「セルフケア」

セルフケアは従業員自身でストレスを予防し、気付いた時に適切に対処することです。事業者は従業員に対して、次に示すセルフケアが行えるように教育研修、情報提供を行うなどの支援をすることが重要です。また、管理監督者にとってもセルフケアは重要であり、事業者はセルフケアの対象として管理監督者も含めましょう。

関連記事:セルフケアとは?すぐに実践可能な方法と企業での取り組み例

組織の管理監督者によるラインケア

ラインケアとは、組織の管理監督者による部下のストレスケアのことです。管理監督者が従業員の具体的なストレス要因を把握し、相談に乗ったり、必要に応じて環境を改善したり、配置転換等の策を講じることを指します。

適切なラインケアにより、企業のメンタルヘルス状況は改善・強化できます。

関連記事:ラインケアとは?職場で重要な管理職によるメンタルケアの具体策

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

事業場内産業保健スタッフ等によるケアとは、産業医や衛生管理者、保健師、心理職、精神科医など社内の産業保健スタッフ等による支援のことです。

セルフケアやラインによるケアが効果的に実施されるよう、従業員や管理監督者に対する支援を行うとともに、次に示す心の健康づくり計画の実施にあたって、中心的な役割を担います。

事業場外資源によるケア

事業場外資源によるケアとは、メンタルヘルスケアの専門知識を有する外部の機関やサービスを活用することです。

企業が行うべきメンタルヘルス対策

メンタルヘルスが良好に保たれ、従業員皆が健康な状態で企業が運営されている状態が望ましいものです。そのためにはどうすれば良いでしょうか。

メンタルヘルスには、未然の防止と、職場復帰まで含めた3段階の予防方法があります。下記のように一次予防・二次予防・三次予防に分けて対策が必要なほか、具体的な対策例についてはより詳しく下記で説明しています。
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関連記事:メンタルヘルス対策の具体例|基本対策と有効な取り組み・効果

一次予防:不調を未然に防止する「予防」

一次策はメンタルヘルス不調を未然に防止する「予防」です。メンタルヘルスに不調をきたすことのないよう、職場や業務に起因するストレスを未然に防止する段階です。従業員が自分で行うストレス緩和ケアのほか、ストレスチェック、業務環境の改善がこの段階に含まれます。

企業が従業員の業務環境を改善し、ストレスが低減された状態となれば、必然的にメンタルヘルス不調に陥る数を減らすことができます。

二次予防:早期発見

二次策は、メンタルヘルス不調を早い段階で発見し、適切な措置を行う「早期発見」です。重度な精神疾病に至る前に、早い段階で不調を把握・発見し、対処するための取り組みのことを指します。

メンタルヘルスケアにおいては、ストレス要因をなくしたり軽減したりするなどの予防策が重要ですが、メンタルヘルス不調に陥る労働者が発生した場合に、その早期発見と適切な対応を図ることが必要です。このため、次の体制を整備していきましょう。その際従業員の個人情報の保護に十分留意しましょう。

  • 労働者による自発的な相談とセルフチェック
  • 管理監督者、事業場内産業保健スタッフ等による相談対応
  • 労働者の家族による気付きや支援 等

SOSを上げたり、気兼ねなく相談できる風土醸成により、二次予防が効果的に働きます。また不調に気付いた時に、ためらわずに相談できる相談窓口を社内外に設置したり、産業医との面談機会を設けることも重要です。

三次予防:復帰支援

三次予防は、メンタル不調を発症してしまった従業員の治療と、休職後の職場復帰・再発予防の取り組みです。おろそかにすると、再発したり離職につながることもあるため、慎重に取り組む必要があります。

休職した従業員は、症状の回復への不安だけでなく、回復後に社会復帰できるかどうかの不安も抱えています。

復職については、休職時と同様に、医師の診断結果や見解に基づく判断と、本人とも相談の上、慎重に時期や受け入れポジションを決めていくことが重要です。また一度復帰しても、一定期間をおいて再度不調に陥ることもあります。そのため、定期的に面談機会を設けたり、慌てることなく療養するよう促すことも必要です。

並行して、復職後すぐは業務量が多かったり、納期の厳しい業務については注意を払ったり、短時間での勤務形態にするなど、受け入れ体制の構築も三次予防に有効です。

まとめ

ストレスチェック制度は、50人以上の事業場において1年に1回実施することが義務付けられています。ストレスチェックやメンタルヘルス対策は、従業員の健康を守るだけでなく、職場環境改善や労働生産性の向上など企業にとっても利益のあるものです。実施の際には、プライバシーの保護など、従業員ファーストの姿勢で行うことが大切です。

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