生産性とは
「生産性」とは、経営資源の投入量に対して得られた成果を定量化するための指標です。
一般的に企業は資金や人材、情報機器、生産設備などの経営資源を活用し、事業活動を通じて製品やサービスを生産します。その経営資源の投入量に対して、創出した付加価値額や生産物の産出量・産出額を示す割合が生産性です。
生産性の種類
生産性の向上は業績を延ばすために企業にとって重要な経営課題であるため、言葉の意味を抽象的に捉えるのではなく、具体的な数値で定量化して評価しなくてはなりません。
生産性を算出する基本的な計算式は「生産性=産出量÷投入量」で表現できます。この「投入量」の値に「労働量(労働者数や労働時間)」を代入することで、従業員一人あたりの成果を表す「労働生産性」を算出できます。労働生産性は、さらに「付加価値労働生産性」と「物的労働生産性」の2種類に分類されます。
- 生産性 = 産出量÷投入量
- 労働生産性 = 産出量÷労働量(労働者数や労働時間)
付加価値労働生産性
付加価値労働生産性は、従業員1人あたりが生み出した付加価値額を表す指標です。
付加価値額とは事業活動によって創出された価値を数値化したもので、一般的には売上から原価を差し引いた売上総利益の同義語として扱われます。
一人の従業員がどれほど付加価値の高い仕事をしたかを確認できる指標で、利益を最大化したいと考えているときに目安にするべき指標です。
一例として、業務のデジタルシフトによって売上総利益10億円をそのままに、100人いる労働者1人あたりの労働時間を月200時間から150時間まで削減できた場合を考えてみます。下記の式に数字を代入して付加価値労働生産性を計算すると、業務のデジタルシフトによって「1000,000,000円÷(100人×200時間)=50,000」から「1000,000,000円÷(100人×150時間)=約66,600」まで約33%の生産性が向上したことが分かります。
付加価値労働生産性=付加価値額÷労働量(労働者数×労働時間)
物的労働生産性
物的労働生産性は、従業員一人あたりが創出する生産物の産出量・産出額を数値化した指標です。
「生産性=産出量÷投入量」における「産出量」の値に、生産物の重さや個数を表す「生産量」を代入することで算出されます。
単純に労働量に対する売上額を表し、品質管理や設備投資を判断する際の目安となります。
たとえば、教育や研修によって従業員100人のレベルを高めた結果、労働者1人あたりの労働時間が月150時間のまま、前年度30万個を生産していた製品の生産量が10%増加したケースを考えてみます。下記の式に数字を代入して物的労働生産性を計算すると、教育や研修によって「300,000個÷(100人×150時間)=20」から「330,000個÷(100人×150時間)=22」まで10%の生産性が向上したことが分かります。
物的労働生産性=生産量÷労働量(労働者数や労働時間)
業務効率化との違い
業務効率化と生産性の向上は同じ意味合いで扱われがちな用語ですが、厳密には定義が異なる概念です。
業務効率化とは、作業のムダを省く能率化、ペーパーレス化による経費削減、費用対効果の向上による合理化など、業務プロセスの見直しや改善を指します。一方、生産性の向上は業務効率化を実施する目的にあたるので、業務効率化以外の手法でも達成可能です。
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生産性を上げる4つのパターン
冒頭で述べたように、生産性は経営資源の投入量に対して得られた成果を表す指標です。簡単にいえばインプットに対するアウトプットの比率であり、「(売上・成果)÷(コスト・投資額)」と言い換えることもできます。
「(売上・成果)÷(コスト・投資額)」の概念を基軸として生産性向上に取り組む場合、4つのパターンが考えられます。
コスト・投資額の削減:売上の維持
業務プロセスの効率化や省人化、経費削減といった施策によってコストを削減し、生産性の向上を目指すパターンです。「生産性=産出量÷投入量」の数式において、投入量を抑えつつ従来と同等以上の産出量を生み出す施策が求められます。
特に経費削減はどのような事業領域においても即実践できるため、生産性向上を目指す場合はこちらのパターンから取り組むべきでしょう。
コスト・投資額の大幅削減>売上の減少
「生産性=産出量÷投入量」の数式に当てはめると、産出量(売上)の低下を招くものの、投入量を大幅に削減することで生産性を向上するパターンです。
たとえば、不採算部門の縮小・売却、あるいは需要や市場規模の拡大が見込めない事業からの撤退が挙げられます。巨額の赤字や負債を出し続けていて、収益性の改善が見込めない場合に一考すべきパターンです。
コスト・投資額の維持:売上の拡大
「生産性=産出量÷投入量」において既存の経営体制を維持したまま、売上や成果を向上するパターンです。
一例ですが、マーケティング戦略やプロモーション展開の最適化が挙げられます。同じ商品を販売する場合でも、ターゲティングや訴求方法によって売上は大きく変動します。
事業の撤退や大規模な投資を決定する前に取り組みたい施策です。
コスト・投資額の拡大<売上の大幅拡大
新規事業の立ち上げやM&A、大規模な設備投資など、「生産性=産出量÷投入量」における投入量を大幅に拡大し、それを上回るリターンを得る戦略を指します。
たとえば、AIやIoTの導入によるスマートファクトリーの構築や、ITインフラのクラウドマイグレーションなどが挙げられます。
しかし、大規模な投資は相応のリスクを孕んでいるため、資金調達の手段に乏しい企業は容易に実践できる戦略ではありません。
生産性向上の目的・メリット
企業の存在意義は商品やサービスの提供を通じて価値を提供し、健全な成長と発展を通して社会に貢献することにあります。しかし限られた人的資源の中で、現在提供している以上の価値を生み出していくには、今より効率的な生産体制の構築が欠かせません。ここでは生産性の向上がもたらすメリットについて紹介します。
競争力の向上
生産性を高めるメリットの1つが、生産体制の強化による競争力の向上です。より少ない労力で多くの成果を従業員一人ひとりが出せれば、同じ業務時間でもより成果が多くなり業績が上がります。
公益財団法人 日本生産性本部が公表した「労働生産性の国際比較 2021」によると、日本の時間当たりにおける労働生産性はOECD加盟37カ国中で23位となっています。
(注)1.全体の労働生産性は、GDP/就業者数として計算し、購買力平価(PPP)によるUSドル換算している。2.計測に必要な各種データにはOECDの統計データを中心に各国統計局等のデータが補完的に用いられている。
参照:令和3年度(2021)の中小企業の動向 OECD加盟国の労働生産性(2020)資料日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021」
グローバル化が加速する現代市場において国内企業が競争優位性を確立するためには、生産体制の抜本的な改革による生産性向上が不可欠であることを示しています。
参照:労働生産性の国際比較 2021(要約)|公益財団法人 日本生産性本部
人手不足の解消
効率的な生産体制を整備できれば、より少ない人的資源で同等以上の成果を創出できるため、人手不足の解消に寄与します。
国内の総人口は2008年の1億2,808万人をピークに下降の一途を辿っており、生産年齢人口も1992年の69.8%を頂点として減少し続けています。この少子高齢化の進展が原因で、日本はさまざまな産業で人手不足が深刻化しています。
引用:平成27年版 厚生労働白書(p.4・p.25)|厚生労働省
また、将来への不安から大企業志向が強まっており、中小企業は人材の確保が困難になりつつある問題も見過ごせません。生産性の向上は、多くの企業にとって喫緊の課題である人手不足の解消にも関わってくるのです。
コスト削減
生産性向上とコスト削減は密接な関係にある概念です。たとえば、ワークフローシステムの導入によって稟議書の作成や申請のプロセスを効率化できれば、組織全体における生産性向上が期待できます。
さらに紙が不要になるため、ペーパーレス化による経費削減にもつながるでしょう。このように、業務プロセスの見直しや改善に取り組むことで、生産性向上と同時にコスト削減につながるケースは少なくありません。
ワークライフバランスの改善
近年、官民一体となって「ワーク・ライフ・バランス(WLB)」の実現が推進されています。
ワークライフバランスとは「仕事と生活の調和」を意味する概念であり、就労による経済的自立と健康で豊かな生活、そして多様な働き方の実現を目的とします。たとえば、パブリッククラウドをベースとしたデジタルワークプレイスを構築できれば、生産性向上とともに多様かつ柔軟な働き方が可能となりワークライフバランスの実現につながるでしょう。
ワークライフバランスが整うことで、労働時間が適切に管理されます。そうなれば労働時間も適正化され、疲労も軽減されるなど生活習慣も改善するでしょう。その結果、従業員が心身的に良いコンディションで仕事に臨めるので、さらに生産性が高まるといった好循環を生みます。
従業員の健康増進
健康経営の実現も生産性を向上するメリットの1つです。事業活動において人材は最も重要な経営資源であり、従業員が健康的に働ける労働環境の整備は企業の義務と言っても過言ではありません。
従業員の労働時間が長く、残業が増えすぎると、体調を崩して休職するはめになったり、過労死の危険も考えられます。
また、従業員の健康状態が悪くなると、病気で仕事を休まざるを得ない従業員が出てきて、人手不足に陥ります。そうなると、仕事の穴埋めをする他の従業員の負担が増えて、さらに健康状態が悪化するという悪循環が生じる恐れもあります。
深刻な人手不足で残された従業員の疲労がたまれば、仕事上のミスが増えたり、やる気が出なくなったり、良いアイデアが浮かばなくなったりして、さらに労働生産性は下がるでしょう。
生産性向上への取り組みによって人手不足の解消やワークライフバランスを実現することで、従業員は精神的にも肉体的にも健康状態を保てる可能性が高まります。
生産性を向上さる取り組み7選と具体例
ここからは実際企業の生産性を向上させていきたいと考えた時に、とるべきポイントは下記の通りです。
- 現状分析・課題整理
- 従業員の体調管理
- 業務の効率化
- 労働環境の改善
- 長時間労働の是正
- 人材配置の見直し
- 従業員のスキルアップ
具体的なポイントを解説していきます。
1. 現状分析・課題整理
生産性向上における第1ステップは現状の分析と課題の整理です。
まずは業務プロセスの可視化や従業員へのアンケートなどを実施し、俯瞰的な視点から現状を認識しなくてはなりません。抽出された課題や問題点を整理し、優先順位を定めて一つひとつ着実に取り組んでいきましょう。
2. 従業員の体調管理
従業員の健康管理は、生産性に直結します。従業員の健康に気を配り、改善していくことで生産性向上に必ずつながります。
健康増進への取り組み
生活習慣と労働は切り離せない関係にあり、例えば労働時間が長くなると、生活にかける時間が短くなります。健康状態の乱れは生産性低下を招きます。
プレゼンティーイズム(presenteeism)とは、欠勤には至っていないものの「健康問題が理由で生産性が低下している状態」を指します。言い換えると、心身の不調によって、パフォーマンスが思うように出せない状況のことです。また、アブセンティーイズム(absenteeism)とは、「健康問題による仕事の欠勤」を指します。いわゆる「病欠」を指します。
健康状態が悪く、生産性が低くなったり、そもそも病欠してしまうことは仕事に大きな影響を及ぼします。
従業員が十分なパフォーマンスを出せない状態が続くことで、業務効率は落ちます。それがやがて、あらゆる面で損失となって表れてきます。軽度の不調であっても、不調の状態のまま仕事を続けることで症状を悪化させてしまうこともあり、長期化するリスクもはらんでいます。
予防として、「休憩・気分転換する」「体を動かす」「健康意識を高める」などの行動が推奨されており、どれも健康増進対策を行うことで実行を促すことが可能です。
関連記事:プレゼンティーイズムとは?測定方法と予防・改善する具体策
ワークライフバランスの実現する健康経営の推進
従業員のモチベーションやエンゲージメントを高めるためには、ワークライフバランスの実現も不可欠です。福利厚生の充実や健康増進施策の実施によって従業員一人ひとりの労働意欲や貢献意識が高まれば、結果として組織全体における生産性の向上につながります。
【ワークライフバランスを実現させる健康経営】
従業員のワークライフバランスを実現させる取り組みとして、身体・精神的健康を増進する『健康経営』があります。
健康経営とは、『従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法』です。健康施策にかかる支出をコストと考えるのではなく、『投資』としてとらえることが重要になります。
参照:経済産業省「健康経営」
健康経営の推進として、企業が積極的に健康施策を行ったり、福利厚生を充実させると、従業員はそれらを活用して健康的な生活習慣の実現を目指すことができます。
健康経営では以下のような取り組みを行い、ワークライフバランスの実現や生産性の向上を目指します。
- 管理職又は従業員に対する教育機会の設定
- 適切な働き方実現に向けた取り組み
- コミュニケーションの促進に向けた取り組み
- 病気の治療と仕事の両立の促進に向けた取り組み
- 運動機会の増進に向けた取り組み
- 長時間労働者への対応に関する取り組み
健康経営の取り組みの「適切な働き方実現に向けた取り組み」は、まさにワークライフバランスを実現させる取り組みになります。
健康経営の取り組み方については、下記の記事をご確認ください。
関連記事:【徹底解説】健康経営とは?目的や効果~具体的な取り組み方
3. 業務の効率化
現状における課題や問題点を整理できたら、次はその解決と業務効率化に取り組みます。業務効率化を実現する施策として以下の4つが挙げられます。
業務の標準化
業務の標準化とは、特定の人材がもつ専門知識や技術に依存しない生産体制を意味します。
業務から属人化したプロセスを排除することで一部の従業員に仕事が集中する状況を緩和し、組織全体における業務効率化や品質向上を達成します。
業務の標準化を実現させるには、まず属人化している仕事をすべて把握し、優先順位をつけたあと、一つ一つフローを作成したり、マニュアルを整えたりする取り組みが挙げられます。さらにフローやマニュアルのフォーマットを統一しておくことで、誰でも閲覧、追加修正がしやすくなります。
情報共有の仕組みづくり
効率的な生産体制を整備するためには、全社横断的な情報共有や部門を跨いだ業務連携が不可欠です。リアルタイムに情報を共有できる仕組みを構築することで、経営基盤の総合的な強化が期待できます。
具体的には社内で部署間共通のチャットツールを導入して、コミュニケーションを気軽に取れるような環境を構築することが挙げられます。またGoogleドライブを始めとしたクラウド上で情報を広く共有できるツールを使うことで、コミュニケーションコストを削減することもできます。
テクノロジーの導入
業務の標準化や情報共有の仕組みを整備するためには、テクノロジーの活用が欠かせません。コラボレーションツールやグループウェアなど、パブリッククラウドをベースとしたシステム環境の構築がノウハウの共有やリアルタイムな業務連携を可能にします。
アウトソーシング活用
業務効率を改善し、生産性を高めるためには業績向上に直結するコア業務に集中しなくてはなりません。備品管理や受付対応、簡易資料の作成といったノンコア業務をアウトソーシングすることでコア業務に人的資源を集中する方法もあります。
4. 労働環境の改善
生産性向上を目指す上で、従業員の心身のコンディションを保つことにつながる労働環境の改善は欠かせない要素の1つです。とくに注力すべきポイントとして以下の3つが挙げられます。
職場環境の整備
生産性を高めるためには、従業員一人ひとりの労働意欲や貢献意識を高める職場環境が必須です。そのためには適切な雇用環境や評価制度を整え、働き方について従業員が選択できる環境を提供する必要があります。
現在の職場環境を客観的かつ俯瞰的な視点から分析し、長時間労働の是正や作業の導線管理、立場に関係なく意見を述べられる企業風土の構築などに取り組みましょう。
働きやすい職場環境づくりのポイントは大きく以下の3つになります。
人間関係が悪い職場環境では、従業員がメンタルヘルスの不調で悩んだり、心身症(ストレス性内科疾患)にかかったりする恐れがあります。心理的安全性が高い職場づくりを心がけ、お互いに主体的に協力し合える組織体制を目指しましょう。
働きやすい作業場・オフィス環境であることは、業務がスムーズに遂行されることにつながります。IT環境の推進、生活スタイルの変貌とともにその空間自体が働く人のモチベーションに大きく影響することがわかってきました。快適な業務環境を整備し、業務効率の向上を目指しましょう。
仕事の進め方を見直したり、会議数や会議時間など根本的なところを見直すことで業務の質の向上が期待できます。仕組み化・マニュアル化は業務効率を上げるだけでなく、そこに今まで費やしていた時間を他の業務に使えるため、生産性の向上につながります。
関連記事:職場環境改善への取り組みと成功事例
コミュニケーションの活性化
社内コミュニケーションを活性化させることは、従業員にとって快適な職場環境を育むことに繋がります。良好なコミュニケーションが取れている職場では、互いの意見も発信しやすく、さまざまな情報共有を円滑に行えるようになります。従業員のモチベーションアップにも直結し、生産性も上がり、顧客の満足度にも好影響があるでしょう。
関連記事:社内コミュニケーションを活性化させるメリットやポイント
柔軟な働き方の導入
リモートワークやフレックスタイム制といったワークスタイルを確立できれば、育児や介護といった事情を抱える従業員の雇用継続につながります。離職率を下げることで、人材育成にかかるコストも軽減でき、かつ育てた人材を失わずに済みます。
また、クラウドコンピューティングを活用し、柔軟かつ多様な働き方を実現できれば、人材不足の解消とともに生産的な職場環境の整備も達成できます。
人事評価制度の見直し
労働環境の改革に取り組む際は人事評価制度も見直さなくてはなりません。たとえば、リモートワーク環境では従業員の貢献度や勤務態度が不透明になるため、一般的に評価の公正性が低下します。そのため、職場環境の改革に応じて評価項目や評価基準を柔軟に変更し、従業員も納得できる適切な評価体制を構築することが大切です。
正しく評価されていると感じることは、従業員のモチベーションに関わり、メンタル面のコンディションを良好にする上で重要です。
5. 長時間労働の是正
生産性向上にあたって長時間労働(過重労働)の是正が大きなポイントになります。具体的にどのようにして長時間労働がない職場環境を整備していくのか、4つのポイントをご紹介します。自社の現状と照らし合わせながら、不足している部分への対処を行っていきましょう。
現状の把握
労働時間の実態を把握できていないなら、まずは労働時間の見える化を行いましょう。勤怠管理ツールを導入して、客観的に労働時間を可視化できるようにするのがおすすめです。
長時間労働を良しとする企業文化を打破するための意識改革
続いて行うべきなのが、企業における意識改革です。意識改革の方法には、主に以下3点が挙げられます。
- 経営層からの社内外への発信:まず初めに行う
- 評価制度・人事制度の変更:例)部下の長時間労働抑制の取り組みを管理職の人事考課に盛り込む
- 管理職への研修・教育:部下への適切な指示のために特に重要
働き方への取り組み
仕事の進め方を改善する際は、職場風土と業務効率化の2点を意識することが大切です。
職場風土の醸成とは、「従業員が帰りやすい環境の構築」を指します。残業に関して事前承認制やノー残業デーなどの規定を設けたり、朝型勤務を推奨したりするのがおすすめです。業務効率化を進めるには、属人化した業務を作らないよう業務を標準化したり、情報共有の仕組みを再検討するのがおすすめです。
長時間労働是正に関する詳しい内容はこちら
6. 人材配置の見直し
従業員一人ひとりのパフォーマンスを最大化する人材配置も組織全体の生産性向上に寄与します。従業員にはそれぞれ個性や特性があり、得手不得手も異なります。そのため、経営層や管理職には、従業員のもつ能力や特性を見極めて適材適所に配置するマネジメント能力が求められます。
上記「職場環境の整備」の人間関係活性化でも役に立つ「心理的安全性」を高めることは、人材配置の見直しの点でも意識する必要があります。
「心理的安全性(psychological safety)」とは、職場などの組織やチームの中で、意見や質問、違和感の指摘が、いつでも誰でも気兼ねなく発言できる状態のことです。分かりやすい言葉では、「地位や経験にかかわらず、誰もが率直な意見や、素朴な疑問を呈せること」と言われています。
米Google社にて「効果的なチームを可能とする条件は何か」を見つける目的で行った「プロジェクト・アリストテレス」の研究結果として、「心理的安全性が生産性の高いチームづくりに最も重要である」「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」との研究結果を発表したことから、一気に注目を集めるようになりました。
心理的安全性を高めるための方法として、「チームや組織編成の見直し」も視野に入れるひつようがあります。思い切りを要しますが、人が変われば組織が変わるため、新しく人間関係を構築するという点で心理的安全性の面においてもリセットされます。
また、組織やチーム編成を変えることで、新たな姿勢で互いにコミュニケーションをとることができ、心理的安全性を担保しやすくなります。
関連記事:心理的安全性とは?測り方、作り方、マネジメントの役割を解説
7. 従業員のスキルアップ
どれだけテクノロジーが発展してもビジネスの土台にあるのは人間関係であり、企業の発展を担うのは人的資源である従業員です。したがって、IT投資や設備投資と同様に、従業員への投資も生産性向上を目指す上で欠かせない施策と言えます。とくに重要となるのが「学ぶ機会の提供」と「ワークライフバランスの充実」の2つです。
学ぶ機会の提供
積極的に従業員の成長機会を創出していくのも企業の役割の1つです。企業が行う人材育成が生産性を高めるのかという点について、様々な実証研究が行われています。
例えば平均的には 1人当たり人的資本投資額の 1%の増加は、0.6%程度労働生産性を増加させる可能性が示唆されるとの結果がでています。このことから、積極的に人的資本投資をすることは、労働生産性の水準にかかわらず生産性に対しプラスに働く可能性が高いことが示唆されています。
また、厚生労働省が発表した「令和元年版労働経済の分析」によると、ワーク・エンゲイジメント・スコアが高いほど、個人・企業ともに労働生産性が向上していると感じることも多いようです。また、同資料にはワーク・エンゲイジメント・スコアと「企業としての人材育成方針・計画の策定」との間には、統計的有意な正の相関があることが確認されています。
参照:内閣府:「年次経済財政報告」平成30年度
参照:厚生労働省「令和元年版労働経済の分析」
従業員のスキルを高める研修制度を整備したり、社外から講師を招いてセミナーを開催したりといった施策によって従業員1人あたりの生産効率を高めていきましょう。
関連記事:人材育成を進めるには|ステップや階級ごとの育成例を紹介
生産性向上の取り組みにおける注意点
一口に生産性向上といっても、必要な施策は組織体制やビジネスモデルによって異なるため、具体的な取り組みに絶対的な正解はありません。しかし、生産性向上を目指す上で注意すべきポイントにはいくつかの共通点があります。とくに気をつけるべきポイントは以下の3点です。
トップダウンでの実施
生産性向上を急ぐがゆえに陥りがちなのが、トップダウンに偏った変革の実施です。組織を牽引するトップの質がイノベーションの創出に大きく影響します。
しかし、組織の変革をトップダウンで行う場合、指標となる数字だけで判断を下したり、現場の声をヒアリングせずに独断で進めてしまったりすると、従業員からの賛同を得られず離職者が増加する事例も少なくありません。
トップによる迅速かつ的確な意思決定は必要ですが、生産性向上を達成するには現場の声に耳を傾け、従業員の意向を汲み取る柔軟な姿勢も求められます。
個人の労働力への依存
働き方改革への取り組みで陥りがちな失敗例が、人材を削減して労働時間を増加したり、業務範囲を増やしてマルチタスク化を進めたりといった施策です。こうした施策は、長時間労働の是正や公平な待遇の確保といった働き方改革の目的とは真逆のアプローチにあたります。
このような業務体制では従業員のモチベーションやエンゲージメントの低下を招き、結果的には組織全体における生産性の低下につながる可能性があります。
定期的な確認
生産性向上への取り組みは一度の実施で終わりではありません。「計画(Plan)」→「実行(Do)」→「評価(Check)」→「改善(Action)」のPDCAサイクルを回し続ける継続的な改善が成功の鍵です。
PDCAサイクルには、仮説を立てて実行に移し、得られた知見をもとに改善を繰り返すことでノウハウが蓄積されるメリットもあります。より効率的かつ生産的なマネジメントを目指して、PDCAサイクルを定期的に実施することが重要です。
まとめ
少子高齢化に伴って労働力不足が常態化しており、企業では効率的な生産体制の構築が重要な経営課題となっています。生産性は「産出量÷投入量」という数式で算出されるため、いかにして最小のリソースで最大の成果を生み出すかが重要です。ぜひ、本記事を参考にして生産性向上に取り組んでみてください。
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