ラインケアとは?管理職の役割、メンタル不調の対応、目的

ラインケアとは職場のメンタルヘルスケアの1つで、管理監督者が部下の状態変化にいち早く気付き、解決を支援することです。

適切なラインケアにより、企業のメンタルヘルス状況は改善・強化できます。

そこで本記事では、ラインケアの基礎知識や重要性と、管理監督者の取り組み方の具体策企業としてラインケアを強化する取り組み方法をご紹介します。
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目次

ラインケアとは? 

ラインケアとは、職場でのメンタルヘルスの取り組みのなかでも、マネジメント層と呼ばれる部長や課長などの管理監督者が、部下の「いつもと違う」という変化に気付き、対策とケアを行うことを指します。

管理監督者としてはラインケアを行わなくても直接的な罰則はありませんが、部下がメンタルヘルス疾患を発症した場合、労災や訴訟に発展する可能性もあります。部下がどんなことにストレスを抱えているのか、管理監督者は「仕事の要求度」「仕事の自由度」「周囲からの支援」の3つの側面から考えることが必要になります。

また、職場環境には作業環境や作業方法、人間関係、組織形態など様々なものが含まれているので、管理監督者はストレス要因を勝手に決めつけず、部下の話をよく聞いたうえで判断する必要があります。

安全配慮義務に基づくケア

ラインケアの推進は、法令遵守につながり安全配慮義務の観点で重要な役割を担っています。

平成20年3月に施行された労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と安全配慮義務(健康配慮義務)に関する項目が明文化されています。

例えば、「うつ」を発症し業務軽減を訴えたものの受け入れられず、解雇されたため、解雇は無効であるとして、地位の確認と解雇後の賃金、慰謝料等を求めて提訴された「東芝事件」(平成26.03.24最二小判)があります。

このように業務や職場環境の影響を受けてメンタルヘルス不調に陥った場合には、安全配慮義務の法令違反を指摘され、訴訟に至るケースもあります。

メンタルヘルス対策の基本: 4つのケアの1つ

ラインケアは厚生労働省が定める「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に示される、メンタルヘルス4つの予防の対策の一つです。4つのケアとは下記の4つをさします。

  • ラインケア
  • セルフケア
  • 事業場内産業保健スタッフ等によるケア
  • 事業場外資源によるケア

これら厚生労働省が定めるメンタルヘルスの「4つの予防」のそれぞれとラインケアがどう違うのか、下記で解説していきます。

関連記事:メンタルヘルス対策の具体例|基本対策と有効な取り組み・効果

従業員自身で行う「セルフケア」との違い

セルフケアは従業員自身でストレスを予防し、気付いた時に適切に対処することです。

朝起きて体がしんどい、思考の鈍って思うように働けない、気持ちが深く落ちこんで、何もやる気が起きない、など自分の変化を「異変だ」と認知し、その対策を行うことを言います。

このセルフケアが十分にできれば、不調を未然に防いだり、重度に至る前に対処でき、組織全体でストレスへの対応力が強化されることとなります。

ラインケアは「管理監督者が気付く」のに対して、セルフケアは「自分が気付く」という点が大きな違いです。

関連記事:企業で実践するセルフケアとは?個人・職場での取り組み例

事業場内産業保健スタッフ等によるケアとの関係

事業場内産業保健スタッフ等によるケアとは、産業医や衛生管理者、保健師、心理職、精神科医など社内の産業保健スタッフ等による支援のことです。

ラインケアやセルフケアが効果的に実施されるよう、産業医や保健師などの専門職や、産業医などの助言や指導のもと従業員や管理監督者に対する支援を行います。またメンタルヘルス対策の立案や、事業所外の専門医療機関等との連携を行うこともあります。

事業場外資源によるケアとの関係

事業場外資源によるケアとは、事業所外の専門機関や医療機関など、メンタルヘルスケアの専門知識を有する外部機関からの支援を受けるメンタルヘルス対策のことです。

例えば、本人と管理監督者間での適切なラインケアが実施されていない場合、本人にとっては管理監督者も事業場の保健スタッフも、所属組織全体への信頼度が薄らいでしまっていることがあります。そういった場合、外部の専門機関と連携を取って対応に当たるようなことがこれに該当します。

またメンタルヘルスの課題解決として、カウンセリングや従業員への教育研修、復職支援、情報提供等、事業場外の第三者として介入することもあります。

事業場外資源の例としては、産業保健総合支援センターや、労働衛生コンサルタント、公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラー、臨床心理士などの専門職、精神科、心療内科の医療機関が挙げられます。

参照:厚生労働省 「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」
   厚生労働省「労働者の心の健康の保持推進のための指針」(改正)(平成27年11月)

管理者が実施するラインケアの具体策

ラインケアの具体策|部下の状態把握でいち早く気付く

組織の管理監督者によるラインケアとは、どういった取り組みなのでしょうか。大きく下記の2つのポイントがあります。

部下の不調に早く気づく

労務管理上、管理監督者による日常的な接点の中で「いつもと違う」という部下の様子に気付くことが重要です。

不調の兆候は千差万別で、度合いや異変は人によって異なりますが、一例として下記のようなことが挙げられます。

  • 勤怠の異変
  • 元気がない
  • 口数が少ない
  • 服装や髪形などの身だしなみが乱れている
  • 表情が乏しい
  • 著しく集中力がない
  • 業務量や納期、クオリティの異変
  • 言動の異変

一時的に上記のような異変が表れることは誰にでもあります。
しかし管理監督者は普段から接しているからこそ些細な異変に気付くことができます。

しかし、上記のような兆候の背後には、メンタルに関する不調ではなく、病気が隠れていることもあるので、状況によっては病院等で検査した方が良いケースもあります。

病気の有無の診断は産業医もしくは医師の仕事です。
そのためには管理監督者が部下の話を聞き、産業医のところに行かせる、あるいは管理監督者自身が産業医のところに相談に行く仕組みを職場内に作っておくことが望まれます。

上記の兆候の例の中でも、顕在化しやすい異変を下記にご紹介します。

勤怠の異変

心身の不調によりプレゼンティーイズムやアブセンティーイズムに陥っている場合は、勤怠へその状態が顕在化しやすいため、最も把握しやすい指標の一つです。
テレワークで出社しない勤務スタイルの企業や、交代勤務によるすれ違い、あるいは、外出が多い勤務スタイルなど、さまざまな働き方があるため、管理監督者であっても、顔を合わせる機会が少ないケースもあります。「実は頻繁に遅刻欠席していたが管理監督者が見ていなかった」などということのないように普段から心がけておきましょう。
顕在化しやすい勤怠の異変として下記が挙げられます。

  • 遅刻、早退、欠勤が増える
  • 残業、休日出勤が不釣り合いに増える
  • 休みの連絡がない(無断欠勤がある)

例えば遅刻が頻発している場合、なぜ?と理由を問い詰めるのではなく、いつもと違う様子がないかを確認しましょう。また遅刻や、当日欠勤はメンタル面で疲れている可能性もあります。酷くなるとある日突然、仕事に行けなくなる出社拒否の症状を訴えるケースもあります。

関連記事:プレゼンティーイズムとは?測定方法と予防・改善する具体策

業務量や納期、クオリティの異変

過剰なストレスによって、業務に遅れが出たり、普段よりも結果が出せないといったパフォーマンス低下が起きることがあります。

またその後ろめたさ等から日報や週報などの定期報告や、状況相談が滞ることがあります。

職場での会話量や内容にも注意が必要で、以前よりも極端に喋らなくなったり、その逆、多弁になるという変化にも注目です。そういった変化はストレスにさらされているサインかもしれません。

  • 仕事の能率が悪くなる
  • 業務の結果がなかなかでてこない
  • ミスや事故が目立つ

言動の異変

表情や挨拶、服装等はメンタルヘルスによる変化が表れやすい項目です。

ストレスや体調不良があると、服装や身だしなみに意識が行き届かないことがあります。そのため、何日も洗濯しておらず匂いが気になるシャツを着たり、髪形やひげやメイクなどにもそういった変化が現れることがあります。

また言動の中でも挙動がおかしく落ち着きがないということや、逆に、活気がなくうつむいているという状態変化、ミス・事故が目立つようになるという変化にも要注意です。

  • 表情に活気がなく動作にも元気がない
  • 不自然な言動が目立つ
  • 報告や相談、職場での会話がなくなる
  • 服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする

出典:厚生労働省 「こころの耳 15分でわかるラインによるケア」

診断を勧めるかどうかの見極め

異変に気付いても、「あれ?変だな。でも気のせいかな」あるいは「診てもらった方が良さそう」などの判断は難しいところです。では何を基準に判断すれば良いでしょうか。

それは、以前との比較です。管理監督者、あるいは周りが見たり接したりする中で、「いつもと違う」という気付きが重要です。

  • 今まで欠勤しなかった人なのに、当日欠勤が増えてきた
  • 穏やかな人だったのに、怒りっぽい、当たりちらしている
  • 人前で堂々と話す人だったのに、どもりが出たり、話せなくなった
  • 以前からやっていた業務なのに、何度も同じことを聞いたり確認するようになった

上記のような、「今までそうではなかったのに違ってきた」という場合には、診断が必要なケースがあります。一時的な兆候だけでの判断だけでは、なかなか判断できないこともあるため、従来と比較して明らかな異変の場合は1on1ミーティング等で話を聴き、診断を勧めましょう。

部下からの相談または異変発見後の対応をする

ラインケアにおいて、早期発見と同等に重要なのが、対応・対策です。

部下の異変に気付いた場合、あるいは部下自らの異変の相談を受けた場合、管理監督者にはどういった対応が求められるでしょうか。対応のポイントを紹介します。

相談しやすい環境をつくる

日常的に相談しやすい環境であり、「困ったことがあったら話そう」、「伝えたら適切なアドバイスや対応をしてもらえる」という、信頼に基づいた上司部下の関係であることがラインケアにおいて不可欠な前提条件となります。

一朝一夕に理想的な状態が築けるものではありませんが、常日頃のやり取りや行いからそういった環境ができていきます。心がけていきましょう。

傾聴する

管理監督者は、日常的に、部下からの自発的な相談に対応する役割を担っています。そのためには、部下の話をじっくりと聴くことがとても重要です。

日頃からこのような話の聴き方ができれば、上司と部下の関係は良い状態で維持されやすくなります。

傾聴のポイント

1.相手を受け止める

相手に対して関心を持ち、関心を持っていることを表情や態度で相手に伝える。
2.相手の立場に立つ
もしも自分が相手と同じような立場に置かれていたら、相手と同じようなことを言ったり、したりするんだろうなぁと考えながら、話を聞く。

そうすることが話の聞き方が批判的になることを防ぎ、相手に話を聴いてもらっているという気持ちを持たせる。

引用:厚生労働省 「こころの耳 15分でわかるラインによるケア」 P8

部下の状態によっては産業医や専門医等への相談を勧めることも有効です。

しかし中には、人に悩みを相談することに抵抗がある方や、大仰にしたくない、周囲から変な見られになるんじゃないか、などといった考えや不安から、部下本人が産業医等に相談することに心理的な抵抗を示す場合もあります。

そういった場合は、「産業医に話せ」「医者に行け」と強制したり、聞いた悩みを拒否するようなことはせず、「あなたの代わりに私が相談に行ってくるよ」と本人に伝え、合意を得た上で、管理監督者自身が産業医や人事、専門家等の第三者に相談し、その内容をフィードバックするなどの対応をしてみましょう。

自己流の対応をしない

「メンタル不調者を自分の部署から一人も出したくない」、管理監督者はそう考えるのが当然です。その実現に向けて、日々、部下と接している管理監督者の心得として3つのNG例を挙げます。

1.比較や押し付け言動に注意

「私が20代の頃は」「営業たるもの」など自身の経験や価値観と比較したり、押し付ける言動はNGです。同様にして、「最近の若い子は」「うちの会社は」などの大きな主語を使う点にも注意が必要です。
なぜなら、その価値観や括りに共感しない(できない)人が一定数いるからです。

押し付けられた、大きな括りに入れられた、という感情は反発を買い、共感されることなく次第に信頼を失っていきます。

2.適当な取りつくろいに注意

うわべを取りつくろっただけの言動は部下に着実に伝わります。
「適当に話を合わせただけ」「ちゃんと見てくれていない」「ちゃんと聞かずに頷いているだけ」という想いが募っていくと、信頼を失い、部下のモチベーションを下げることとなります。精神誠意、部下と向き合うことが本質です。

3.「ついうっかり」やる気を削ぐ一言に注意

「この仕事向いてないんじゃないか」、「もっと頑張ってよ」などの言葉は要注意です。励ます意図で口にした場合でも、些細な一言がモチベーションを下げたり、反感を買うことがあります。
気にかかる一言を言われた側は、長期にわたって忘れることができず、場合によってはトラウマに発展するようなこともあります。そういった「気付かない内の、ついうっかり」の言動で部下を追い込むことがあることを認識しましょう。

個人情報、人権へ配慮する

相談を受けた場合に重要なのは個人情報や人権への配慮です。

管理監督者は、部下の健康情報や個人情報の保護、また人権の保護や本人の意思尊重に努めなければなりません。これは人道的な観点からだけでなく、法令としても遵守する必要があります。

人事に相談したり、第三者に相談するなど、情報の収集・管理・使用に際しては、なんらかの方法で本人の同意を得ることが原則とされています。

このように、関連する法令や、社内規則を遵守し、コミュニケーションのなかで得た部下の情報を正当な理由なく他に漏らさないようにしましょう。

管理監督者も一人で抱え込まない

相談を受けた場合に、親身になって考え、何とかしてあげたいという想いや責任感の強さから、管理監督者が過剰なストレスを抱え込み、メンタル不調に陥ってしまうというケースがあります。

管理監督者も一人で抱え込まず、適切に産業医や外部機関、人事部門に相談をすることが重要です。

心理的安全性を高める

心理的安全性とは、職場などの組織やチームの中で、意見や質問、違和感の指摘が、いつでも誰でも気兼ねなく発言できる状態のことです。自分の言動が上司の叱責を招いたり、同僚の不信を買ったりすることがないという「心理的安全性」がなければ、いくらコミュニケーションの機会を設けても従業員は本音で交流することはできません。

まずは職場内の「心理的安全性」を確認しましょう。もし十分な「心理的安全性」が確保できていないようであれば、個別のヒアリングや配置換えなどを検討する必要があるかもしれません。

心理的安全性を高めるには、以下のような取り組みが考えられます。

  • 発言する機会を均等に作る
  • ポジティブな思考と言動を意識する
  • 1on1ミーティングの価値を高める
  • 一人一人をチームでサポートする

関連記事:心理的安全性とは?測り方、作り方、マネジメントの役割を解説

部下の職場復帰への支援をする

メンタル不調で部下が一定期間休んで復職した場合、管理監督者の役割は非常に重要です。

管理監督者も周りも「早く慣れて、十分な仕事をして欲しい」と思ってしまうのは、気持ちとしては自然です。しかし一定期間休職していた人に、いきなり発病前と同等のパフォーマンスを期待するのは難しいことが多いです。

働くことに慣れる必要があるため、就業時間や業務量などへの配慮しながら、本人や人事と相談の上で徐々に復帰を進めていきましょう。

ラインケアの推進で得られるメリット

前述のとおりラインケアは、組織のメンタルヘルスを良好に保つために重要な役割であることが分かりました。

しかしなぜ実施する必要があるのでしょうか?うまく実施されている場合のメリットと、もし実施していない場合にどういったリスクがあるのかをご紹介します。

従業員のメンタルヘルスの維持向上

ラインケアの実施は従業員のメンタルヘルスの維持向上を実現し、健全な企業経営につながります。メンタルヘルスの不調は本人も気づかぬうちに進行している場合もあり、ラインケアはとても重要です。

ラインケアが機能すれば管理監督者を通じて課題に応じた適切な対処が動き出すため、従業員のメンタルヘルス課題解消に大きな前進が期待できます。

厚生労働省は、地域医療の基本方針となる医療計画に盛り込むべき疾病として、従来より「がん」「脳卒中」「急性心筋梗塞」「糖尿病」の4つの疾病を位置付けていましたが、2011年から「精神疾患」も加わり、これら5つの疾病対策に注力しています。

近年従業員の受けるストレスは拡大する傾向にあります。令和2年の調査では仕事に関して強い不安やストレスを感じている従業員が54.2%という結果を受けて、国民に広く関わる疾患として重点的な対策が必要と判断しています。

参照:厚生労働省 令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況

実際、仕事のストレスのため「うつ病」などの精神障害を発症し、労災と認定された件数は2021年に過去最多となりました。※3

このような中で、心の健康問題が従業員、その家族、事業場及び社会に与える影響はますます大きくなっており、事業場においてより積極的に従業員の心の健康の保持増進を図ることは非常に重要な課題となっています。今やメンタルヘルスは日本が抱える社会的課題となってきています。

※3 厚生労働省2021年6月23日発表 令和2年度「過労死等の労災補償状況」 表2-1 精神障害の労災補償状況

アブセンティーイズム・プレゼンティーイズムの解消

ラインケアを行うことはプレゼンティーイズム・アブセンティーイズムの予防改善となり、仕事のパフォーマンスの向上につながります。

プレゼンティーイズム(presenteeism)とは、欠勤には至っていないものの「健康問題が理由で生産性が低下している状態」を指します。言い換えると、心身の不調によって、パフォーマンスが思うように出せない状況のことです。また、アブセンティーイズム(absenteeism)とは、「健康問題による仕事の欠勤」を指します。いわゆる「病欠」を指します。

健康状態が悪く、生産性が低くなったり、そもそも病欠してしまうことは仕事に大きな影響を及ぼします。

従業員が十分なパフォーマンスを出せない状態が続くことで、業務効率は落ちます。それがやがて、あらゆる面で損失となって表れてきます。軽度の不調であっても、不調の状態のまま仕事を続けることで症状を悪化させてしまうこともあり、長期化するリスクもはらんでいます。

関連記事:プレゼンティーイズムとは?測定方法と予防・改善する具体策

離職率の改善

ラインケアに取り組むことで、健康上の理由による欠勤や離職を減少させる効果が見込めます。人員の頻繁な離脱は他の従業員の業務負担を増やし、さらなる離職を招くかもしれません。

離職率の高さから、世間に「ブラック企業」とみなされれば、次の人員を確保するのにも苦労することになるでしょう。健康経営の実施は、こうした悪循環の原因を根本から断ち切ることに寄与します。

関連記事:定着率とは?低い原因と効果的な取り組み

エンゲージメントの改善

ラインケア等のメンタルヘルス対策によって、従業員がより前向きな気持ちで生き生きと働くことも期待できます。従業員の健康に配慮した施策を実施することで、従業員は会社へのエンゲージメントを高めることになるでしょう。

また、ラインケアによって従業員が守られ心身ともに余裕を持って働けるようになれば、職場の雰囲気が改善することも期待できます。

関連記事:従業員エンゲージメントを高める方法|具体的な施策と成功例

職場の活性化

ラインケアによって、職場が活性化する効果が期待できます。

職場が活性化されていない状態とは、「従業員が何を考えているかわからない」「従業員全体の心身の状態が好調ではない」「言ったことが伝わらない」「意見がでてこない」「無駄な会議が多い」などの状況を指します。

ラインケアを実施し職場の活性化が進むことで、従業員は心身ともにのびのびと仕事をし活躍します。一人一人のコンディションが保たれ、人の話をよく聴き自分の考えを積極的に発信し、主体的に行動し、人を巻き込み、相互に助け合う状態を作り出すことができるでしょう。

関連記事:職場活性化のポイントとは|具体的なアイデアと取り組み方

生産性の維持向上

ラインケアは健やかな組織運営と直結しているため、良好に保たれていると、生産性向上が見込めます。

理由は、ラインケアそのものが管理監督者と部下、つまり上司部下のコミュニケーションによって成り立っている点にあります。

ストレスや悩みを抱えて、ネガティブなメンタルヘルス状態が続けば、該当者本人だけでなくその周囲の部署の生産性にも悪影響が及ぶためです。ラインケアによって管理監督者が部下の不調にいち早く気付き、適切に対応することができれば、生産性低下はミニマムに抑えられることが考えられます。

それだけでなく、ラインケア、つまり管理監督者と部下のコミュニケーションが良好であれば、心理的にも安心し、意欲的に業務に取り組むことができます。

ラインケアを強化するために企業ができる対策

企業としての対策|管理職向けメンタルヘルスの教育研修

管理監督者は部下を、さまざまな側面から見て聞いて感じ取りながら業務を進めていくものですが、ラインケアはその職務の一部となります。そのような職務であることを意識させ、適切に行っていくためには、企業が積極的にラインケアを強化するための対策を実施する必要があります。対策例は以下の通りです。

メンタルヘルスセミナーを実施する

従業員の心身の健康増進には、企業(人事や総務、健康管理担当者)が従業員に対して健康情報に触れる機会をなるべく多く提供し、健康の維持増進を計ることが重要です。

「今は関係ない」「自分のことではない」と思ってしまうと、一度聞いた内容でも関心が薄れてしまい、あまり重要視できないことがあります。まさに、「対岸の火事」のことわざの通り、向こう岸の火事は自分に災いをもたらす心配のないという意味です。

メンタルヘルス対策や健康増進に関しても同様です。健康な時に疾病や薬のことを聞いても、なかなか自分事としてとらえにくいものです。このことを踏まえ、長期的に複数回、テーマを変えてセミナー機会を設けることが重要です。

「昨年セミナーをやったから今年はもういいだろう」と考えるのではなく、テーマをや登壇者(話し手)を変えて年に数回セミナー機会を作るなど、健康情報に高頻度で触れる機会を作りましょう。

そうすることで着実に健康意欲は高まり、健康風土が醸成されていきます。セミナーや健康増進のプログラムを検討し、定期的に実施していきましょう。

メンタルヘルスの課題に対して、多くの企業がポピュレーションアプローチとして対面やオンラインでの研修・セミナーを導入しています。

  •  運動実践付きメンタルヘルスセミナー
  • セルフケアセミナー
  • ラインケアセミナー
  • 心理的安全性を高めるセミナー
  • アンガーマネジメントセミナー
  • ハラスメント防止セミナー

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関連記事:【最新】メンタルヘルスセミナーの種類と効果|目的・事例

解決すべき課題を特定・目標設定・実施計画を練る

効果的なメンタルヘルス対策を実施するためには、まずはどこに問題があるのかを特定することから始めます。ストレスチェックや従業員サーベイなどを活用すると、解決すべき課題を客観的に見つけることが可能です。課題を特定したら終わりではなく、課題を踏まえて目標設定・実施計画まで行い対策を実施しましょう。

課題を特定

課題を特定する方法としては、ストレスチェックや従業員サーベイ等が考えられます。

メンタル不調のリスクは若手が多いと思われがちですが、その考えは誤りです。心の病を抱えているのは10~20代と、30代、40代はほぼ同じ割合になるため、幅広い層を対象に実施することが望ましいです。
そのため、健康診断の結果分析だけでなく、全従業員を対象としたアンケートを実施し、その結果を活用し現状把握を正しく行う必要があります。

【ストレスチェックの実施】

労働安全衛生法に基づき、常時50名以上の従業員がいる事業場に1年間に1回、従業員のストレス度合いを調べるストレスチェックの実施が義務付けられています。ストレスチェックでは、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」といった項目を調査します。

ストレスチェック調査票において「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が高い者は「高ストレス者」となります。「疲れがずっと抜けない」「休日でも仕事のことが気になって落ち着かない」など、メンタルヘルス不調を示すサインを多く持つ人が該当します。

ただし、それほど極端な自覚症状がなくても、担当業務の責任が重い、業務量が過度に多いなどストレス要因の多い仕事を抱えている人や、上司や同僚からのサポートが乏しい人も、今後メンタルヘルス不調に陥ることが懸念される対象として高ストレス者に分類される場合もあります。

こうしたストレスチェックの結果を活用し、どのようなメンタルヘルス対策を実施していくのか、どうやって参加率を高めていくのか検討することで施策の効果が向上します。

関連記事:ストレスチェックで高ストレス者が。対応と根本的な改善策とは?

健康計画・目標設定

メンタルヘルス対策は、中長期的視点に立って、継続的かつ計画的に行われるようにすることが重要でその推進に当たっては、事業者が従業員の意見を聞きつつ事業場の実態に則した取り組みを行うことが必要です。

事業場内産業保健スタッフ等が一次予防~三次予防まで気を配り、中心的な役割をしながら実施していくために、衛生委員会等において十分調査審議を行い、「心の健康づくり計画」を策定することが必要です。

心の健康づくり計画に盛り込む事項は、次に掲げるとおりです。

  1. 事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること
  2. 事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること
  3. 事業場における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施に関すること
  4. メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保及び事業場外資源の活用に関すること
  5. 労働者の健康情報の保護に関すること
  6. 心の健康づくり計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関すること
  7. その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること

参考:厚生労働省 職場における心の健康づくり

運動習慣を根付かせる

運動にはさまざまな良い効果があり、メンタルヘルス対策にも効果的です。

  • セロトニン分泌が促進され、睡眠の質が上がる
  • エンドルフィンによるストレス解消効果
  • ドーパミンの分泌によりポジティブになる など

少し古いデータになりますが、運動がうつ病に与える影響について、1999年 アメリカのデューク大学医学部のブルメンタール教授らの研究が有名です。

うつ病患者156人を、薬(抗うつ剤)と運動、運動のみ、薬のみの3グループに分けて、4か月後と10か月後の経過を見るという研究がありました。

4か月後には、薬のみのグループは改善率68.8%で最も改善が見られましたが、10か月後は38.0%が再発しています。

一方、運動のみを見ると、4か月後は改善率60.4%であり、有意な改善が得られましたが、10か月後の再発率はさらに顕著であり、わずか8%の再発率だったという結果が得られています。

メンタルヘルスと運動の関係性

こうした研究からもわかるように、運動はメンタルに良い効果をもたらし、運動を継続することは、さらに効果的です。したがって、座学中心のものと思われがちなメンタルヘルスセミナーですが、RIZAPでは運動を取り入れることが効果的と考えて、運動実践も取り入れています。

メンタルヘルスの対策として、運動を推進するだけでなく定着するように推進していきましょう。

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関連記事:デスクワークの運動不足を解消!健康問題を解決する3ステップ

セルフケアを強化する

従業員のメンタルヘルスを考える中で最も重要なのがセルフケアです。「セルフケア」は、従業員が自分自身で行うメンタルヘルス対策を指します。

セルフケアは従業員一人ひとりが自らのストレスを予防し、気付いた時に適切に対処することです。簡単そうですが実は正しい知識がないと適切に対処できません。

例えば、体や気持ちに異変が生じていても「今の自分は、うつ病かもしれない」と、自発的に気付いて対応できる従業員ばかりではありません。また異変の度合いや、生じる症状や頻度は、人によってそれぞれであるため、判断が難しい場合があります。

このセルフケアが十分にできれば、不調を未然に防いだり、重度に至る前に対処でき、組織全体でストレスへの対応力が強化されることとなります。また不調を感じた場合も重症化することなく改善できれば、企業にとってのダメージも軽減できます。

ストレスの認知や、その反応に自ら気付くためには、従業員一人ひとりがストレス要因に対する反応や、心の健康について理解するとともに、気付こうとする姿勢が必要です。自ら気付き、対応する「セルフケア」を適切にできるようになるには、教育研修の機会を設けて、意識を高めていくことが重要です。

関連記事:企業で実践するセルフケアとは?個人・職場での取り組み例

健康リテラシーを高める

全ての健康問題に影響すると考えられている「健康意識を高めること」を実施する方法の一つとして、健康リテラシーを高めることが効果的です。メンタルヘルス対策を実施する際にも、健康リテラシーの高い従業員に対して施策を実施することで効果が最大限に高まります。

健康リテラシーを身につけ、健康状態が改善されることでアブセンティーイズムやプレゼンティーイズムの改善につながり、結果的には労働生産性の向上にもつながります。

健康リテラシーとは、「自分に必要な健康情報を入手し活用する能力のこと」です。健康リテラシーが高いと正しい情報を理解でき、自身の健康状態に応じて活用することができます。

例えば、健康診断などで疾病の早期発見や、重症化する前に軽症の段階で治療できることもあるでしょう。あるいは健康な方の場合は、維持増進のために、積極的な取り組みを行うなどの工夫ができます。

高い健康リテラシーを身に着け、適切な行動ができる従業員が増えることで、社内全体の健康レベルは底上げされます。

関連記事:従業員の健康リテラシー向上策を知ろう

職場環境を整備する

メンタルヘルスの対策を行う上で、職場環境の整備は欠かせません。

コミュニケーション不足などが原因で人間関係に問題が生じている場合には、従業員にメンタルストレスが溜まりやすくなります。改善策や対策をとらないと、従業員がうつ病にかかる恐れがあります。職場環境の改善により従業員の心身のストレスを減らすことは、従業員の健康維持に役立ちます。

現状の職場環境の確認は、ストレスチェック従業員アンケ―トから行います。
ストレスチェックの集団分析を職場、各部署などの単位で行うことで、職場環境が整っておらず、高ストレスの従業員が多い職場を特定できます。
働きやすい職場環境は以下の3つの要素で構成されています。

  • 人間関係:コミュニケーションなど
  • 業務環境:空調照明など~設備レイアウトなど
  • 業務内容:裁量権、負荷の量、労働時間

一つの要素だけを改善するだけでは不十分で、どの要素も疎かにはできません。
人間関係が良好であり、物理的な環境が整っており、作業時間を減らすために業務の分担をするなど配慮された職場では、働く人が自己充足感や達成感が得られます。

それだけではなく、企業から見れば企業の人的資本が効率的に活用されている状態とも言え、生産性やパフォーマンスにもポジティブな影響がでることが想定されます。

関連記事:職場環境の改善アイデア|組織向上への取り組みと成功事例

健康経営を推進する

ここまで見てきたようなメンタルヘルス対策に加え、より効果的に対策を実施するために、近年重視されている「健康経営」の視点を取り入れることも大いに役立ちます。

健康経営とは、『従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法』です。

あくまで企業が用いる経営手法ですので、従業員の健康を促進することは手段であり、目的は組織の活性化・生産性の向上であり、最終的には業績向上、企業価値の向上を目指します。

職場で健康プログラムを実施することで従業員の行動変容をもたらします。最も効果を発揮するのは各施策の単発での実施ではなくに提供されるのではなく、組織の戦略の中心に位置づけられ継続的に実施されているときです。

健康経営として健康プログラムの推進やメンタルヘルス対策を練ることで、事故や傷病予防だけでなく、ストレスの要因への対処や適切なワークライフバランスの達成が可能になります。

健康経営の取組みとして、「メンタルヘルス不調者への対応」や「特定保健指導の推進」など従業員の健康増進につながる項目が含まれています。そのため、健康経営と併せてメンタルヘルス対策を推進することで、より効率的に従業員の健康を保持・増進ができ、生産性の向上へ取り組み効果を最大化することができます。

関連記事:【徹底解説】健康経営とは?

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相談窓口を設置する

従業員がメンタルヘルス不調について気軽に相談できる窓口を設置することは重要なメンタルヘルス対策です。

2020年6月に施行された改正労働施策総合推進法によって設置が義務化されています。中小企業については2022年3月31日までは努力義務となっていますが、2022年4月1日には、大企業と同様に義務化が適用されるため、全ての企業において体制整備が必要となってきます。

こうした観点からも、相談窓口を設置し、社内に周知して従業員の利用を促すことはリスクヘッジにもつながります。

社内に設置する方法と、社外に設置する方法の2つがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

社内の場合は体制を作り、メールや電話、面談等の相談方法を決めることで設置できるという手軽さがあります。

しかし社内に不信感や疑念を抱いている従業員は相談しづらい側面もあるため、社外に相談窓口を設置することも有効です。必要に応じて検討すると良いでしょう。

産業医の協力体制をつくる

休職した従業員は、症状の回復への不安だけでなく、回復後に社会復帰できるかどうかの不安も抱えています。復職については、休職時と同様に、医師の診断結果や見解に基づく判断と、本人とも相談の上、慎重に時期や受け入れポジションを決めていくことが重要です。

産業医との協力体制を構築し、無理のないように勧めていく必要があります。

また一度復帰しても、一定期間をおいて再度不調に陥ることもあります。そのため、定期的に産業医や担当スタッフとの面談機会を設けたり、慌てることなく療養するよう促すことも必要です。

復帰支援制度をつくる

復職後すぐは業務量や、納期の厳しい業務については注意を払ったり、短時間での勤務形態にするなど、受け入れ体制の構築も三次予防に有効です。

まとめ

管理職のラインケアを理解し計画的に実践し、企業全体のメンタルヘルス対策を効果的に実施していきましょう。

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