時間外労働の上限は? | 解消に向けた4つのポイント

企業において、決められた時間以上働くことを時間外労働といいます。時間外労働は過労死などを引き起こすとして、法律で上限が設けられました。また健康被害だけでなく、離職率や人件費の増加など、企業にとってデメリットとなるおそれもあります。

そこで今回は、時間外労働を解消するための4つのポイントや過労死ラインに関する概要をご紹介します。

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目次

時間外労働とは

時間外労働とは、「法定労働時間」を超えて働くことをいいます。

法定労働時間は、労働基準法によって「原則として1日8時間、1週間に40時間」と決められています。
引用元:厚生労働省

時間外労働については、⼀般的に考えられている「残業」と法律上の「時間外労働」が異なっている場合があるので注意が必要です。

いわゆる「残業」というと、会社で定めた「所定労働時間」を超える時間のことを指すと思いがちですが、所定労働時間とは企業が決めた勤務時間を指します。例えば始業時間が9時で休憩時間が12~13時、終業時刻が17時30分の場合の場合、所定労働時間は7時間30分となります。

この場合、9時始業で18時に終業した従業員について、いわゆる「残業」は30分になりますが、法律上の「時間外労働」は無しとなります。ただし、残業手当の算定基準を「所定労働時間」を超える時間とするか「法定労働時間」を超える時間とするかは、労使の定めによって決まります。

あくまでも、時間外労働は、法定労働時間を超えた分の労働であることを押さえておきましょう。

また、時間外労働を行った従業員には、1.25倍の割増賃金を支払う必要があります。1ヶ月で時間外労働が60時間を超える場合は、割増賃金は1.5倍(中小企業は2023年4月1日から実施)になります。一方、所定労働時間を超えた場合に割増賃金が支払われるかどうかは、会社の規則によって異なります。
参照元:東京労働局「しっかりマスター 労働基準法」

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36協定による上限規制 

時間外労働は、労働基準法において原則禁止されているため、従業員に時間外労働をさせるには、「時間外労働協定(36協定)」を使用者と従業員の過半数との間で結ぶ必要があります。この協定は、改正される前は残業時間の上限が設けられていませんでしたが、改正後は、原則「月45時間、年360時間以内」と上限が定められました。この上限規制については、⼤企業︓2019年4⽉から、中⼩企業︓2020年4⽉から適用されています。

万が一、上記の上限を超える場合は、下記の条件で時間外労働の超過が認められています。

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
  • 時間外労働と休⽇労働の合計について、「2か⽉平均」「3か⽉平均」「4か⽉平均」「5か⽉平均」「6か⽉平均」が全て1⽉当たり80時間以内
  • 時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6か⽉が限度

引用元:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」

これらの規定に則していない場合、6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦に該当するおそれがあるため注意しましょう。

時間外労働の上限が罰則付きで法律に規定されます

引用元:厚⽣労働省・都道府県労働局・労働基準監督署|時間外労働の上限規制わかりやすい解説P5

上限規制に該当しないケース

時間外労働の上限について、猶予が設けられていたり、除外対象となっている業務もあります。これらの業務に該当する場合は、規定の内容に合わせてルール整備を行いましょう。

  • 自動車運転業務:2024年4月に適用、適用後の上限時間は年960時間
  • 建設事業:2024年4月に適用、災害時における復旧・復興の事業については、適用しない
  • 医師:2024年4月に適用、具体的な上限時間は検討中
  • 鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業:2024年4月に適用
  • 新技術・新商品等の研究開発業務:健康確保措置を設けた上で、適用しない

36協定締結のポイント

36協定を締結する際は、時間外労働や休⽇労働を最小限に留めるということを意識することが大切です。特別な理由があって、「月45時間、年360時間以内」を超える場合も、できる限り時間外労働時間を上限に近づけるようにしましょう。

過労死ライン|労災認定基準改正のポイント

過労死ラインとは、病気や死亡に至るリスクが高まる時間外労働時間のことを指します。時間外労働が増えることにより健康障害が生じて、労働災害と認定の因果関係が判断できるかどうかのために設けてある、時間外労働時間の目安となる時間です。

過労死とは

厚生労働省では過労死等の定義を下記のように定めています。

過労死等とは

過労死ラインとされる時間外労働の目安は80時間

過労死ラインの目安は80時間(月に20日出勤とすると、1日4時間以上の残業、すなわち12時間労働)とされています。これは、健康障害の発症2~6ヶ月間で平均80時間を超える時間外労働をしている場合、健康障害の発症との因果関係を認めやすいとされている目安です。

また、発症1ヶ月前に、100時間を超える時間外労働をしている場合も、同様に健康障害と長時間労働の因果関係を認めやすいとされています。

過労死認定基準の改正

厚生労働省は、2021年9月14日より、脳・心臓疾患の労災認定基準を改正しました。約20年ぶりの改正です。今回の改正における大きな4つのポイントを含め、過労死の認定についてまとめます。

脳・心臓疾患の認定基準とは

脳・心臓疾患の認定基準とは、業務上の疾病と労災認定できる要件を示したものです。
この基本的な考え方には、仕事が特に過重であったために血管病変等が著しく増悪し、その結果、脳・心臓疾患が発症することがあり、その認定の場合には、仕事が発症に当たって、相対的に有力な原因となったものとして、労災補償の対象となる、という考えがあります。
認定要件には、異常な出来事、短期間の過重業務、長期間の過重業務の3つの分類があります。2021年の改定においてアップデートがありました。

脳心臓疾患の認定要件出典:厚生労働省|脳・心臓疾患の労災認定 (令和2年9月改定)

■脳・心臓疾患の労災認定基準の改正ポイント

労災認定基準が改正され、労働時間以外も重要視する傾向に引用:厚生労働省 令和3年9月14日 脳・心臓疾患の労災認定基準の改正概要

長期間の過重業務の評価に当たり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化

従来からの、「発症前1ヵ月間に100時間」「2~6ヵ月平均で月80時間」という過労死ラインとなる時間外労働に達しなくても、これに近い時間外労働があり、かつ「一定の時間以外の業務の負荷」が認められた場合、業務と健康障害発症との関連が強いと評価する旨が明示されました。

長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因を見直し

従来からの「拘束時間が長い業務」「出張の多い業務」に加えて、「勤務時間の不規則性」として「休日のない連続勤務」「勤務間インターバルが短い勤務」、「身体的負荷を伴う業務」などが追加されています。

■過重負荷とは
医学経験則に照らして、脳・心臓疾患の発症の基礎となる血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ得ることが客観的に認められる負荷と定義されています。

「短期間の過重業務」、「異常な出来事」の業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化

短期間の過重業務・異常な出来事として、業務と発症との関連性が強いと判断できるケースとして、下記が明文化されています。

■短期間の過重業務とは

発症に近接した時期において、特に過重な業務に就労したことを言います。
具体的には、
(1)発症直前から前日までの間について
(2)発症前おおむね1週間について

業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同僚等にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断すること。」とされています。

上記の「特に過重な業務」とは、日常業務(通常の所定労働時間内の所定業務内容をいう。)に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務のことを指します。

■具体的な負荷要因

具体的な負荷要因としては下記項目が挙げられています。

  1. 労働時間
  2. 不規則な勤務
  3. 拘束時間の長い勤務
  4. 出張の多い業務
  5. 交替制勤務・深夜勤務
  6. 作業環境(温度環境・騒音・時差)
  7. 精神的緊張を伴う業務
■異常な出来事

異常な出来事とは、発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したことです。下記のような場合は過重負荷と判断されます。

  1. 極度の緊張、興奮、恐怖、驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こす突発的又は予測困難な異常な事態
    「精神的負荷」の具体例
    ・業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与し、著しい精神的負荷を受けた場合など
    ・事故の発生に伴って、救助活動や事故処理に携わり、著しい精神的負荷を受けた場合など
  2. 緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的又は予測困難な異常な事態
    「身体的負荷」の具体例
    事故の発生に伴って、救助活動や事故処理に携わり、著しい精神的負荷を受けた場合など
  3. 急激で著しい作業環境の変化
    作業環境の変化としてのケース
    ・屋外作業中、極めて暑熱な作業環境下で水分補給が著しく阻害される状態
    ・特に温度差のある場所への頻回な出入りなど

時間外労働にあたっての注意点 

従業員に時間外労働をさせる際は、特に下記2点に注意しましょう。

従業員の健康リスク

36協定を結んだからといって、上限時間ぎりぎりまで時間外労働をさせるのはあまり得策ではありません。なぜなら厚生労働省では、月45時間を超える時間外労働において、業務による疲労と脳・心臓疾患との関係が徐々に強まるとしているためです。

また、2〜6ヶ月の平均が80時間を超える労働と脳・心臓疾患との関係は強いとしており、時間外労働によって従業員の健康リスクが上がるおそれがあります。
参照元:厚生労働省発表「脳・心臓疾患の認定基準の改正について」

また、時間外労働ばかりが続くと、疲労によって生産性が落ちます。

生産性が落ちて業務が進まないと、さらに時間外労働が発生するなど、負のスパイラルが起きてしまうおそれもあります。

限度時間を超える労働者の健康福祉の確保

限度時間である「月45時間、年360時間以内」を超えて労働をさせる場合、従業員の健康を確保するために、下記のような措置を取ることが望ましいとされています。

  1. 医師による⾯接指導
  2. 深夜業(22時〜5時)の回数制限
  3. 終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
  4. 代償休⽇・特別な休暇の付与
  5. 健康診断
  6. 連続休暇の取得
  7. 心とからだの相談窓⼝の設置
  8. 配置転換
  9. 産業医等による助言・指導や保健指導

引用元:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」

これらを参考に、時間外労働を行う従業員の健康には特に注意しましょう。

時間外労働の理由が曖昧ではないか

上限を超える時間外労働の場合は、その理由を届け出なければなりません。この際、「業務の都合上」「業務上やむを得ない」などの曖昧な理由では、上限を超える特別な理由とはなりません。また、これらの理由では、長時間労働が定着してしまうおそれがあるため、理由を明確にして時間外労働を行わせるようにしましょう。

長時間労働の5つの原因 

では、何が原因で時間外労働が発生してしまうのでしょうか。ここでは、主な5つの原因をご紹介します。

人事制度や職場風土

残業をしている従業員の方が評価されていたり、上司が残業をしていて帰りづらい空気があったりすると、労働時間が長くなりがちです。特に若い従業員の残業が多い場合、この理由が考えられます。

実際に、長時間労働の原因に対する意識のアンケート結果では「長時間労働を是とする人事制度・職場の風土」や「従業員の意識・取り組み不足」が高い傾向にありました。

長時間労働に対する意識を個人個人が高く持つことはもちろん、職場風土を醸成していく事は重要だと考えられます。
参照:経済産業省委託事業 株式会社日本経済新聞社「働き方改革に関する企業の実態調査」平成28年度

人手と業務量のバランス

業務量が多い場合や人手が足りていない場合も、労働時間が増える原因のひとつとなります。また、上司が部下の能力を把握していないと、不適切な人員配置によって残業が増えるおそれがあります。

職場環境

コミュニケーション不足やモチベーション低下により生産性が低下していると、残業時間の増加につながります。職場全体の生産性を向上するためには、職場環境から改善しなければなりません。

管理職のマネジメント

部下の業務量が多くても、管理する上司が見て見ぬふりをしたり気付いていなければ、残業時間は減りません。

経済産業省の「働き方改革に関する企業の実態調査」では、長時間労働の原因として「管理職の意識・マネジメント不足」(44.2%)が最も多い回答結果となっています。

また、管理職の回答では「長時間労働を是とする人事制度・職場の風土」や「社員の生産性・スキルの低さ」(35.7%)が高い傾向にあることから、環境や部下が原因だと考えており、長時間労働是正への意識が低い可能性も考えられます。

引用:平成28年度産業経済研究委託事業(働き方改革に関する企業の実態調査)報告書

管理職の人間が、残業を減らすために工夫や対策を行う必要があります。

従業員の意識

生活費のためにわざと長時間働いて残業代で稼ごうとしている、そもそも終業時間までに終わらせるつもりがなくダラダラ仕事をしているなど、従業員自身の意識的な問題で時間外労働が増えている可能性もあります。

また単に意識の問題ではなく、生産性を上げるためのスキル不足や、不健康な生活による生産性低下などが原因である場合もあります。

長時間労働による影響 

時間外労働に対して適切な対処をしないままでいると、企業にも従業員にも悪影響があります。ここでは、企業側・従業員側に分けてそれぞれへの影響を解説します。

企業への影響 

時間外労働による企業への影響として考えられるのは、「離職率の向上」「コストの増加」「企業イメージの悪化」の3点です。

離職率の向上

時間外労働が増加すると、残業の少ない企業への転職を検討する従業員が増え、離職率が増加してしまうおそれがあります。また離職率が高まると、在籍している従業員の時間外労働が増え、さらに離職が進むことになりかねません。

平成30年度に発表された「子供・若者白書」の中で、初職の離職理由に「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため」という回答割合が23.4%に及び、全体の3位にランクインしています。
参照:内閣府「平成30年版 子供・若者白書(全体版)」

コストの増加

時間外労働をした従業員には、割増した残業代を支払わなければなりません。また、離職した従業員がいる場合、その分新しい人材の採用・教育をする必要があり、コストがかかります。

企業イメージの悪化

時間外労働による労働災害や過労死などの問題が起きると企業イメージが悪くなり、取引先からの信用を失ったり、新規雇用が難しくなったりするおそれがあります。深刻な労働災害の場合、国からの指導が入るだけでなく、メディアで企業名を取り上げられるおそれもあります。
また、SNSやWEBの書き込みサイト等の充実により、労働環境に関する口コミは広がりやすい傾向にあります。在籍従業員や退職者による悪意を持った書き込みが瞬く間に広がり、優秀な人材雇用の機会損失につながるリスクもあります。
それだけではありません。
昨今はESG投資の視点も高まっています。労務管理は企業ガバナンスの一環でもあるため、労働環境の整備、待遇改善、人材育成等のガバナンスが、株価、ひいては企業価値に直結すると言っても過言ではないでしょう。それほどまでに、企業イメージは軽視できない存在となっています。
関連記事:企業イメージの向上は組織力の向上から | 高める3つの方法

従業員への影響 

一方、時間外労働による従業員への影響には、「健康リスクの増加」「生産性の低下」の2点があります。

健康リスクの増加

時間外労働による疲労が溜まると、うつ病をはじめとした健康被害が起きるおそれがあります。最悪の場合、過労死につながるかもしれません。

実際に、Liu らによる長時間労働と心筋梗塞に関する研究結果によると、過去 1 ヶ月間の週労働時間が 61 時間以上では、週労働 40 時間以下に比べて心筋梗塞リスクが 1.9 倍になるとされています。

生産性の低下

健康面の被害を受け、生産性が低下することをプレゼンティーイズムといいます。欠勤には至っていないものの「健康問題が理由で生産性が低下している状態」を指します。言い換えると、心身の不調によって、パフォーマンスが思うように出せない状況のことです。

「プレゼンティーイズム」に該当する、多少しんどさはあるものの、ちょっと無理をすれば業務が可能なレベルの不調は多数存在します。

例えば、鼻炎、便秘、片頭痛、腰痛や肩こり、軽度のうつなど、いろいろとあります。軽度の不調であっても、不調の状態のまま仕事を続けることで症状を悪化させてしまうこともあり、長期化するリスクもはらんでいます。

従業員が十分なパフォーマンスを出せない状態が続くことで、業務効率は落ちます。それがやがて、生産性の低下として企業の損失につながります。

長時間労働下では、こうした生産性の低下が起きるおそれがあります。

国際的に見てみると、2015年時点のOECD諸国の中で最も一人当たりの労働時間が短いドイツは年間1300時間と日本の8割程度ですが、労働生産性はドイツが日本を50%ほど上回っています。

単純計算すると、労働時間が1時間短縮されれば、生産性は25%高まる計算になります。

また、そのように健康問題が悪化し、働けなくなった状態がアブセンティーイズム(absenteeism)で、病欠などによる「健康問題による仕事の欠勤」を指します。

つい、休業のアブセンティーイズムを重要視しがちですが、厚生労働省の発表資料によると、プレゼンティーイズムの方が企業経営において深刻であると言われています。

関連記事:プレゼンティーイズムから考える従業員の健康管理と対策とは

時間外労働を少なくするための5つのポイント 

では、時間外労働を減らすにはどのように対策をすればよいのでしょうか。ここでは、すぐに導入できる取り組みをご紹介します。

POINT1. 現状の把握

そもそも、従業員がどれほど労働しているのかを把握していなければ、改善することはできません。まずは厚生労働省などが公表しているガイドラインに従って、労働時間を可視化することから始めましょう。
参照元:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」

使用者は従業員の労働日ごとの始業・終業時間を適正に管理し、自ら確認することが望ましいとされています。

そして始業や終業時間について自己申告ではなく客観的な記録となるよう、タイムカードやICカードなどの勤怠管理ツールを使うのがおすすめです。

手書きの勤怠表など、やむを得ず自己申告により労働時間を把握する場合は、その他にパソコンの起動時間や入退場記録を確認し、申告と著しい乖離がある場合は実態調査を行うと良いでしょう。

また申告できる時間に上限を設けるなど、適正な申告を阻害するような環境を作ってはいけません。

労働時間の他にも、労働環境の確認やストレスチェックを行うことで、より課題が明確に見つかります。

ストレスチェックの実施

ストレスチェックは、職場でのメンタルヘルス不調の予防に使われるテストです。改正労働安全衛生法に基づき、常時50 人以上の従業員を雇用する事業所では、ストレスチェックを年 1 回以上実施することが事業者の義務となりました。

ストレスチェックでは、従業員が職場でどのようなストレスをどの程度受けているかを確認することができるため、間接的に従業員の時間外労働の原因を特定することができます。

法に基づくストレスチェックは以下の3領域を含むことが必要になります。

  • 仕事のストレス要因:職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
  • 心身のストレス反応:心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
  • 周囲のサポート:職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目

ストレスチェックは個人だけでなく、結果を集団分析することで高ストレス者の多い職場を特定できるため、労働時間などと照らし合わせることで職場、部署単位の課題もより明確になります。

関連記事:ストレスチェック制度は義務?目的や実施方法を解説

POINT2. 従業員の意識改革

時間外労働を減らすには、従業員の意識改革を行う必要があります。労務担当者や管理職の人間から、従業員に対して時間外労働をしないよう注意換気を行いましょう。

経営者から従業員に対して、時間外労働の削減に協力してほしいと伝えるのも効果的です。ただし、注意喚起だけでは根本的な解決にはならないため、なぜ時間外労働が起きているかの原因を理解し、それに対して取り組みを行うことも大切です。

効率的に仕事ができる人間関係や環境づくり

従業員同士が円滑なコミュニケーションを取ることで、一人で仕事を抱え込まず効率的な段取りで仕事を行うことにつながります。管理職を含めたチーム全体が「気軽に話す、感謝する、それぞれの業務内容を知る」などのコミュニケーションを取り、理解し合う関係を作りましょう。コミュニケーションをすることで時間外労働の偏りや業務量の把握、時間外労働の対策を講じることにつながります。コミュニケーションツールを活用したり、「心理的安全性を確保する」ことなどを意識しましょう。

「心理的安全性」とは、自分がミスをしても非難されることがないという信頼をチームが築いており、対人関係の不安がなく仕事に挑戦ができる状態を指します。心理的安全性がなければ、いくらコミュニケーションの機会を設けても従業員は本音で交流することはできません。詳しくは下記記事をご参照ください。

関連記事:心理的安全性とは?

POINT3. 残業を抑制する取り組み

規則を改訂したり、ツールを新しく導入したりする取り組みも時間外労働の抑制には欠かせません。取り組みを行う際は、以下2つの観点を意識するとよいでしょう。

職場風土の醸成

時間外労働を抑制するには、職場環境を改善する必要があります。職場環境を改善するには、以下のようなルール整備を行うのがおすすめです。

  • 残業を事前承認制にする
  • ノー残業デーを作る
  • 朝型勤務を推奨する
  • 一定の労働時間が過ぎたらPCを強制的にシャットダウンさせる
  • 勤務間インターバル制度を導入する
  • 業務繁閑に応じた営業時間を設定する
  • 有給休暇の取得を促進する
  • テレワーク・フレックスタイムなどの制度を導入する など

業務の効率化

時間外労働を減らすには、生産性の向上が欠かせません。そのために必要なのが、業務の効率化です。業務の効率化を達成するには、以下のような取り組みを行いましょう。

  • 業務の標準化
  • 情報共有の仕組みづくり
  • テクノロジーの導入
  • アウトソーシングの活用
  • 会議数の削減
  • 会議時間の短縮 など

POINT4. 生活習慣改善への取り組み

独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査によると、長時間労働や時間外労働が多い人ほど、疲労やストレスを感じ、飲酒や喫煙をする割合が高まる傾向にあるという結果が出ています。

これにより、生活習慣が乱れて生産性が低くなっている可能性が考えられます。

また、私生活が充実していない場合、早く仕事を終わらせなくてもよいと考えダラダラと仕事をしてしまう従業員もいるようです。

これらの結果から、生活習慣を改善することが、働き方・労働時間の短縮につながるといえます。

生活習慣改善への取り組みには、「ポピュレーションアプローチ」や「ハイリスクアプローチ」などを通して、従業員へ働きかけを行うことがおすすめです。

ポピュレーションアプローチの実施

生活習慣改善におけるポピュレーションアプローチとは、従業員全体に向けて、時間外労働の健康リスクや生活習慣の乱れによる生産性の低下を認識するようアプローチすることをいいます。

私生活の充実や健康的な生活を奨励し、生活習慣を変えることで働き方を変えていく取り組みです。例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 健康情報の定期配信
  • 健康情報の可視化
  • 健康セミナーの実施
  • 福利厚生の充実
  • 有給休暇取得の推奨

ハイリスクアプローチの実施

生活習慣改善におけるハイリスクアプローチとは、特に生活習慣が悪く、健康リスクが高い従業員に対して、集中的にアプローチをかけることをいいます。

ハイリスクな従業員は、早急に手を打たなければ、早退や欠勤などのアブセンティーイズムに発展するおそれがあります。

まずは特定保健指導をうまく活用して生活習慣の見直しを促し、健康状態の向上を目指しましょう。健康状態がよくなれば、従業員の生産性向上も期待できます。

ワークライフバランスのアプローチの実施

「仕事」と「私生活」の時間、どちらか一方を重視し、充実させていくのではなく、「バランス」が重要です。

独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の調査によると、週実労働時間が 60 時間以上ある方は、週実労働60時間未満の人に比べ、健康不安を感じる割合が大きい傾向があるという結果が得られています。

週実労働時間の長さと健康不安

週実労働時間の長さと健康不安の関係

引用:独立行政法人「労働政策研究・研修機構」|「労働時間管理と効率的な働き方に関する調査」結果および「労働時間や働き方のニーズに関する調査」結果 ―より効率的な働き方の実現に向けて、企業の雇用管理はどう変わろうとしているのか― P76

ワークライフバランスの実現には、労働時間や生活環境の見直しがとても重要です。

関連記事:ワークライフバランスとは?従業員の働き方を見直す

POINT5. 働き方改革と健康経営の一環として取り組む

長時間労働の是正は、上記のような取り組みとしてだけでなく、働き方改革や健康経営の取り組みの一環として取り組むこと多くのメリットが生まれます。

各従業員の健康や安全面、ライフスタイルに配慮した職場づくりを心掛けることで、従業員の職場満足度は高まり、離職率の低下が見込めます。その結果、有能な人材の確保が期待でき、人手不足の解消も期待できるでしょう。つまり、働き方改革と健康経営の両面から自社の業務を見直してみることで、相乗効果が期待できるのです。

長時間労働対策は、言うまでもなく従業員の健康にも関わりの深いことです。過酷な時間外労働は従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼし、ときにはうつ病を発症させたり、最悪の場合、過労死を引き起こしたりしてしまうケースもあります。つまり、働き方改革関連法による規制を守り、働き方改革を通して長時間労働を是正することは、従業員の健康状態を向上させるという健康経営のテーマにもかなったことでもあるのです。

また、働き方改革においては、労働生産性の向上を目的とした業務改革も主要課題となってきますが、これも場合によっては健康経営にポジティブな影響を与えます。業務改革の手段としては、ICT技術の活用による業務の自動化や効率化など、いわゆるDXが重要視されています。

上記のように、働き方改革の一環として行った業務改革によって、職場の安全性、ひいては従業員の健康が守られることもあります。あるいは逆に、「従業員がより健康に、より快適に働けるようにするためにはどうしたらいいか」と健康経営の観点から考えていくことが、上記のような働き方改革にもつながる場合もあるでしょう。

関連記事:働き方改革のカギは健康経営

健康経営は人手不足の解消や従業員満足度の向上のほか、様々なメリットがあります。下記記事でぜひ様々なメリットや進め方をご参照ください。

関連記事:【徹底解説】健康経営とは?

まとめ

時間外労働を放置しておくと、企業にとっても従業員にとってもデメリットが発生するおそれがあります。時間外労働に対する取り組みは、業務の改善と生活習慣の見直しという2つの軸で行っていくのがおすすめです。ぜひ本記事を参考に、改善への取り組みを行ってみてはいかがでしょうか。

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