近年、離職率の低下・生産性の向上などを実現するために、従業員満足度を高めようとする企業が増えています。
では、従業員満足度を高めることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
満足度を調査し、高める方法についてもわかりやすく紹介します。自社の従業員満足度を高めるために何から取り組めるか、どうぞご検討ください。
目次
従業員満足度とは、福利厚生や職場環境、人間関係、仕事へのやりがいなどで計測される、従業員の企業に対する満足度を表す指標のことです。英語では「Employee Satisfaction」と呼ばれることから、頭文字を取って「ES」と表すこともあります。
満足度に関わる理論としてはハーズバーグの二要因理論が用いられます。人の仕事における満足度は「満足」に関わる要因(動機付け要因)と「不満足」に関わる要因(衛星要因)によって構成されているという考え方です。
●満足に関わる要因の例
「達成感」「仕事内容」「責任と権限」「成長実感」「昇進」
●不満足に関わる要因の例
「労働条件・労働時間」「給与」「人間関係」「健康状態」「企業の方針」
従業員満足度を高めるためには、まずは不満足に関わる要因を解消し、満足度を高める動機付け要因を満たすことが企業には求められます。
従業員満足度と似たような意味で使われやすいのは、「ロイヤルティ」「モチベーション」「従業員エンゲージメント」などです。これらはどれも働き方改革や職場環境改善などでよく見られる言葉ですが、従業員満足度とは意味が異なるので注意しましょう。
モチベーションは、組織の従業員が与えられた職務の遂行や目標の達成に向けて精力的に行動し続けている状態を示しています。「動機付け」と訳されるため、何かを行う際の「やる気」や「意欲」といった意味で用いられる概念です。
つまり、従業員が仕事に対してどの程度力を入れているかの指標になります。
モチベーションは従業員満足度とも関係性があり、従業員満足度が高い場合、モチベーション高く業務に取り組んでいることが想定されます。
関連記事:従業員のモチベーションを向上させるポイントと取り組み事例
エンゲージメント(engagemant)とは直訳すると「約束」「契約」「婚約」などを意味する言葉ですが、人事・組織開発における「従業員エンゲージメント」とは、従業員が会社の向かっている方向性に共感し、企業と従業員が双方向の関与によって結びつきを強めていきながら従業員が自発的に組織に貢献したいと思う意欲のことを指します。
従業員エンゲージメントが高まっている状態では、企業の方向性やビジョンに共感し、積極的にモチベーション高く仕事に取り組んでいるため、従業員の生産性向上が期待できます。
また、従業員エンゲージメントが高い状態は仕事中の過度なストレスや疲労を感じる度合いを低下させる可能性があるため、ストレスに強い組織づくりに寄与できると期待されています。
従業員エンゲージメントは自発的に企業への貢献を行う姿勢や意欲になるため、まずは従業員満足度を優先して高める必要があります。
関連記事:従業員エンゲージメントとは?測定方法と高める方法を解説
従業員満足度は、企業の生産性や人材確保、顧客満足度などを左右する重要なポイントです。ここでは、従業員満足度が高い場合と低い場合を比較しながら、企業に与える影響をまとめました。
厚生労働省の調査によると、「従業員と顧客満足度の両方を重視する」企業のほうが、 「顧客満足度のみを重視する」企業よりも、売上高営業利益率と売上高が増加傾向にある割合が高い、という結果が見られました。
参照元:厚生労働省 取り組みませんか?「魅力ある職場づくり」で生産性向上と人材確保 2ページ
顧客満足度だけでなく従業員の満足度も重視することが、生産性及び企業の成長にもつながっているのです。
従業員満足度が高い場合、従業員は企業のビジョンを深く共感・理解した上で、主体的に業務に取り組みます。
メンバー間のコミュニケーションも活発なため、部署を超えたコラボレーションや新しいアイデアなども生まれやすいでしょう。
万が一、無駄な業務が発生しても自ら改善策を提案したり、業務効率をアップするツールを導入したりと、よりよい働き方を実現するために尽力します。
一方、従業員満足度が低い場合、従業員は必要最低限の業務をこなすだけになります。
「もっと成績を上げて会社に貢献したい」という気持ちが生まれづらいため、頼まれたことしか行わなかったり、新しい意見や方法を取り入れなかったりと、従業員の成長意欲も希薄になりがちです。
ネガティブな感情で働いていると従業員間のコミュニケーションも生まれづらく、活気のない職場になってしまいます。
従業員満足度の高い企業と低い企業とでは、環境や従業員の意識に差が生まれ、それらが企業の生産性や成長の差も生じさせていると考えることができます。
従業員満足度が高い場合、人材の定着率が高く、優秀な人材が流出してしまうリスクを軽減できます。
従業員が「ここで長く働きたい」と感じる職場環境であれば、企業へのロイヤルティが向上し、優秀な人材が長期間にわたって活躍できる企業になるでしょう。
また、採用や育成にかかるコストを抑えられるため、今いる従業員にさらに投資できるメリットもあります。
従業員満足度が低いと離職率が上がり、求人や新人教育に時間やコストを割かなければなりません。社内で優秀な人材が育ちづらいため、なかなか業務内容が改善されなかったり、成績がふるわなかったりと、悪循環になりかねません。
前述の厚生労働省の調査で、過去5年間の正社員の人材確保についても尋ねたところ、「従業員と顧客満足度の両方を重視する」企業のほうが「量(人数)・質ともに確保できている」割合が高いとの結果になりました。
参照元:厚生労働省 取り組みませんか?「魅力ある職場づくり」で生産性向上と人材確保 2ページ
従業員満足度が高い場合、従業員は自社の商品・サービスの魅力を深く理解しようと努めます。自社製品に対して愛情を持って業務を行うことで、商品開発や顧客対応、営業などさまざまな分野でクオリティの向上が期待できるでしょう。
従業員それぞれが商品・サービスの質を高めようと主体的に行動することで、顧客にもそのよさが伝わりやすくなります。
従業員満足度が低い場合、顧客対応の質が低下しやすく、イレギュラーの対応や顧客に合った商品の提案などが不十分になりがちです。
「どのようにしたら魅力をもっと伝えられるのか」などを試行錯誤する雰囲気が生まれづらく、マニュアル通りの対応を淡々と行う人が多くなるでしょう。顧客のなかにはそのような対応にがっかりして、もう利用したくないとさえ思う人もいるかもしれません。
従業員満足度の調査はES調査とも呼ばれ、従業員満足度の向上に欠かせません。従業員満足度を向上させるには、現在の従業員の状態を正しく理解することが大切です。
従業員満足度調査の目的は、社員の自社に対する満足度を把握するだけでなく、社員が会社に対して意見ができる機会を提供していることも含まれます。その結果、組織の課題や問題点に気づくことができ、正しい施策の実施・効果検証が可能になります。
調査する時は、以下の項目に注意するとよいでしょう。
単に現在の満足度を把握するだけでなく、「従業員がどのような項目を重要視しているのか」といった価値観まで探るようにすると、具体的な対策方法を検討しやすくなります。
調査する際には調査目的を明確にし、回答させる内容を複雑にし過ぎないことが大切です。従業員満足度の調査は、1回行うだけでは職場環境の改善に役立てられません。同じ調査方法で定期的に調査することで、従業員満足度がどのように変化したかを調べる必要があります。
調査項目は、「企業について」「評価・待遇について」「業務について」「管理職について」「組織風土について」の5項目です。それぞれの項目で以下のような内容を質問し、必要に応じて独自の内容を加えるとよいでしょう。
【企業への意識】愛着度、経営理念、ビジョン、将来性など
「企業理念や目標を理解していますか?」
「会社への参加感はありますか?」
【評価や待遇】人事評価、給与、福利厚生
「仕事を評価され、正当な報酬を得られていると感じられますか?」
「人材配置が適正になされ、昇進も公平だと感じられますか?」
【業務内容】やりがい、業務量、裁量権など
「現在の仕事は自分の成長に繋がっていますか?」
「現在のやるべき仕事がいくつもありますか?」
【管理職】業務の割り振り、部下の指導や育成など
「部署の上司は適切なフィードバックを行ってくれますか?」
「上司は仕事に関わる決断を下す機会を与えてくれますか?」
【組織風土】コミュニケーション、チームワーク、柔軟な働き方など
「困難な状況の場合、部署のメンバーのフォローは期待できますか?」
「部署全員でチームとなって働いている実感はありますか?」
1on1ミーティングは1on1とも略されます。一般的に上司と部下の1対1の会議をさし、現在の仕事の状況だけでなく広いテーマでコミュニケーションできることが特徴です。
仕事の内容にとどまらずプライベートの状況も含めた仕事への取り組み状況について配慮できるよう、従業員の本音を引き出すコミュニケーションを実施していくことが重要です。
退職者ヒアリングは、職場を離れることが決まった従業員から退職の理由やきっかけについて聞き出すことで、自社の職場環境における問題点を客観視し、それに対する改善策を講じるためのプロセスです。
従業員の満足度を把握するにあたり、「退職につながるきっかけ」につながる不満足要因を把握しておくことは大きな意味を持ちます。できるだけ本音を聞き取ることに努め、在籍している従業員への施策に活かしていきましょう。
現在の従業員満足度を把握できたら、具体的な対策を検討していきます。
ここでは、従業員満足度を向上させるために注意すべきポイントを、5つの要素別に紹介します。
報酬や処遇、福利厚生を見直す上で重要なのは、「従業員にとって、目に見える利益を納得できるレベルで享受できているか」ということです。特に、評価の仕方が不公平だ、成果を出しても報酬や評価につながらない、と感じたりすると、業務へのモチベーションが下がってしまいます。
報酬や処遇を決める時は、以下の2つのポイントに注意するとよいでしょう。
また、福利厚生は、「働きやすさに加えて、生活しやすさを会社がサポートできているか」も重要です。各種手当や特別休暇制度など、福利厚生が充実している企業は従業員の定着率も高いといわれています。
報酬や福利厚生の面で従業員満足度を向上させる取り組み例として、以下のものが挙げられます。
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業務内容は、「従業員が社会への貢献や影響度・業務のやりがいを感じているか」が大切なポイントです。
現在行っている業務が企業全体や社会の中でどのような役割を果たしているのかがわかると、目的意識をもって仕事に取り組めるようになります。その点を経営層が従業員全体に積極的に伝えることが必要でしょう。
自社で必要とされるスキルを身に付けるよう、従業員を促すことも必要です。企業にとってもより多くの仕事を任せられるようになりますし、当人も仕事にやりがいを感じやすくなるでしょう。
以下の項目に着目するとよいでしょう。
また、業務の進め方や手続きに無駄が多いと、従業員のやる気を削ぐことになりかねません。仕事がしやすいように業務フローを見直すことも検討できます。
業務内容に関して従業員満足度向上をするために以下のような取り組みを行えます。
人間関係は、従業員満足度に影響を与えやすい重要な項目です。「同僚や上司・部下との関係性はどうか」「マネジメントへの納得度はどうか」などに注目し、以下の内容を確認するとよいでしょう。
人間関係を向上させる取り組みの例は、以下のものが挙げられます。
ビジョンに共感を抱いている従業員は、企業の一員であることに誇りを持って業務を遂行します。
「職場の雰囲気に一体感を感じられない」「企業に期待感を抱いている従業員が少ない」などと感じるのであれば、自社のビジョンやゴールを改めて従業員に共有しましょう。
ただし、無理に共感させたり、ただのスローガンで終わらせたりしないようにします。ビジョンを達成することはなぜ大切なのか、そのためには日頃の業務で何を行い考えるべきなのか、具体的に説明して納得させることが大切です。
また、ビジョンへの共感を促すには、チーム内での目標やそれぞれの果たすべき役割などを、上司が部下にきちんと共有しなければなりません。
「こまめにコミュニケーションを取り進捗や状態を把握する」「具体的で実践しやすい目標を立て、一定の期間ごとに見直しを行う」など、チームの目線合わせを行う環境・ルールを整えましょう。
職場環境を考える上で大切なのは、ワークライフバランスの充実度です。業務を行いやすい環境のほか、居心地のよいリフレッシュスペースや取得しやすい休暇制度、状況に合わせて働き方を選べる仕組みを取り入れましょう。
フレックスタイム制やテレワークといったワークスタイルを確立できれば、育児や介護といった事情を抱える従業員の雇用継続につながります。離職率を下げることで、人材育成にかかるコストも軽減でき、かつ育てた人材を失わずに済みます。柔軟な働き方を実現する取り組みの例として、以下のものが挙げられます。
従業員の満足度を構成する5つの要素と相性がよく、施策を検討する上で役立つのが「健康経営」という考え方です。
健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で行い、企業の業績アップを目指すものです。健康経営は、アメリカで生まれた「ヘルシーカンパニー」という考えがもとになっています。
企業が従業員の健康に気遣った取り組みを行うことで、生活習慣の改善や業務のメリハリ、企業への信頼などが生まれ、結果として業務成績の向上が期待できます。
健康経営を行うことで従業員が得られるメリットとして、以下のものが挙げられます。
健康経営と聞くと、取り組みが難しいのでは?と思う方もいるかもしれません。ここでは、4つのステップに分け、健康経営の取り組み方を解説していきます。
健康経営に取り組むために、まずは自社の「健康課題」の把握をする必要があります。また、課題を解決することで、会社・従業員がどのような姿になることがゴールなのか「目標設定」。本格的に健康経営を行うことを告知するための「健康宣言」。実際に実行するための「社内体制の構築」が準備として必要となります。
ステップ1. で抽出した健康課題や、健康経営の認定要件から、取り組む項目を選定していきます。
開始時に定めた目標に対して、現状を評価し、次の施策に向けて改善を継続的に実施していく事が重要になります。
健康経営の最終的な目的である企業業績アップにどうつなげられるのか、健康投資の見える化を進めるため、2021年3月、経産省により「健康経営管理会計ガイドライン」が作成されました。PDCAサイクルを確立させるためにも、参考になるガイドラインとなります。
振り返り評価のあとは改善のステップになります。健康施策の単純な結果だけを見るのではなく、従業員がどのような反応を示しているのか考察し、短期的・長期的な改善施策を練りましょう。
関連記事:【徹底解説】健康経営
健康経営の一環として、従業員に健康セミナーの受講を勧める方法もあります。
健康セミナーには従業員の健康増進だけでなく、さまざまなメリットがあります。
健康増進を目的とした健康セミナーには、従業員のメンタルヘルスを良好にし、人間関係をスムーズにするメリットがあります。
健康増進は共通性のあるテーマなので、年齢や業種、役職などの垣根を超えた会話を楽しめるでしょう。
また、チームで取り組み、⽬標に向かって⾼め合ううちに、互いの関係性を深めていけるメリットもあります。
健康セミナーで健康の重要性を学ぶことで、生活習慣の改善が期待できます。生活リズムを気にするようになると、自然と働く時間を調整し、無理な長時間労働などを減らすようになります。
そのために、個人でも業務効率化を図って生産性の高い働き方ができるようになるでしょう。
また、健康セミナーの実施により、健康的な生活スタイルを経営陣が推奨している姿勢を明確に打ち出せます。従業員としても、ワークライフバランスを重視した生活スタイルを一層取り入れやすくなり、職場環境が改善されるでしょう。
従業員満足度を向上させるには、企業のビジョンへの共感や福利厚生の充実など5つの要素を満たす必要があります。これらの要素を満たすのに効果的な方法が、「健康経営」という考え方です。まずは、健康情報の定期的な発信や、健康セミナーを実施し、従業員の生活習慣改善を目指してみてはいかがでしょうか。