企業で働く従業員のメンタルヘルス対策は重要な課題です。この記事では、4項目のメンタルヘルスケアのうち、特に「セルフケア」をピックアップして解説します。
「セルフケア」は、従業員が自分自身で行うメンタルヘルス対策を指します。
セルフケアは最も基本的なメンタルヘルス対策で、こころの健康に関する知識身に着け従業員自身に意識して気を付けてもらうことで、早期のケアを促したり、自発的な相談を促す効果が期待できます。
目次
「セルフケア」は従業員が自分自身で行うメンタルヘルス対策で、従業員一人ひとりが自らのストレスを予防し、気付いた時に適切に対処することを指します。簡単そうですが実は正しい知識がないと適切に対処できません。
例えば、体や気持ちに異変が生じていても「今の自分は、うつ病かもしれない」と、自発的に気付いて対応できる従業員ばかりではありません。また異変の度合いや、生じる症状や頻度は、人によってそれぞれであるため、判断が難しい場合があります。
ストレスの認知や、その反応に自ら気付くためには、従業員一人ひとりがストレス要因に対する反応や、心の健康について理解するとともに、気付こうとする姿勢が必要です。自ら気付き、対応する「セルフケア」を適切にできるようになるには、教育研修の機会を設けて、意識を高めていくことが重要です。
このセルフケアが十分にできれば、不調を未然に防いだり、重度に至る前に対処でき、組織全体でストレスへの対応力が強化されることとなります。
このセルフケアは、厚生労働省がメンタル不調と向き合うための有効策として発表した「4つのケア」の一つです。セルフケアのほか、「ラインケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」が推奨されています。
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厚生労働省は、地域医療の基本方針となる医療計画に盛り込むべき疾病として、従来より「がん」「脳卒中」「急性心筋梗塞」「糖尿病」の4つの疾病を位置付けていましたが、2011年から「精神疾患」も加わり、これら5つの疾病対策に注力しています。
厚生労働省が毎年実施している「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事の質や量に対する不安やストレスを抱える労働者の割合は、2012年から2018年にかけておおむね約60%近くで推移しています。
実際、仕事のストレスのため「うつ病」などの精神障害を発症し、労災と認定された件数は2021年に過去最多となりました。※1
このような中で、心の健康問題が従業員、その家族、事業場及び社会に与える影響はますます大きくなっており、事業場においてより積極的に従業員の心の健康の保持増進を図ることは非常に重要な課題となっています。
今やメンタルヘルスは日本が抱える社会的課題となってきています。
※1 厚生労働省2021年6月23日発表 令和2年度「過労死等の労災補償状況」 表2-1 精神障害の労災補償状況
また、「精神障害に関する事案の労災補償状況」の調査においても、精神障害による労災を申請する件数が年々増加傾向にあることが明らかになっています。従業員が心身に不調をきたすと、従業員の生産性が落ちたり、更には休職・退職につながりかねません。健全な企業活動を維持するには、従業員がセルフケアを実施することが重要なのです。
従業員のメンタルヘルスを考える中で最も重要なのがセルフケアです。自らがストレスを認知し、適切に対処できれば、不調を防ぐことができるためです。また不調を感じた場合も重症化することなく改善できれば、企業にとってのダメージも軽減できます。
従業員のセルフケアを推進する企業が増えているのは、企業を支える従業員が活力を持って健康的かつ長期的に働き続けることを可能にするための施策として「メンタルヘルス対策に投資」する必要があるからです。
この投資によって企業が得られるメリットとしては、主に以下の点が挙げられます。
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ストレスを過度にためず、適度なストレスとうまくつきあっていくコツのひとつは、「自分のストレスに気づく」ことです。ここでは、ストレスへの気づきのポイントについてご紹介します。
まず1つ目は、こころの不調としてのストレスサインへの気づきです。「なかなか眠れないなぁ」、「最近なぜかイライラしているなぁ」などの変化は、こころの不調としてのストレスサインのひとつです。このようなサインを放っておくと、ストレス性の疾患など治療が必要なレベルに移行する可能性があります。サインに気づいたときは、早めに相談する、対処するなどの対応をとることが大切です。
こころの不調としてのストレスサインの主なものは以下のとおりです。以下のような症状が2週間以上続く場合は「うつ」が疑われますので、専門家(精神科、心療内科)に早めに相談することをおすすめします。
引用:厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳
セルフケアの必要性とメンタルヘルスについて対策を考える際、ストレス要因を理解することが重要です。
ストレス要因となるようなきっかけや出来事が複数重なった場合や、長く続いた場合など、こころの不調につながることがあります。ストレスの原因となりうる要因として、自分がどのような出来事を体験しているのかに気づくことは、とても大切なことです。
医学や心理学の領域では、心身にかかる外部からの刺激を「ストレッサー」と言い、働くなかでのストレッサーには3種類あります。
出典:厚生労働省 働く人のメンタルヘルスポータルサイト「こころの耳」「1 ストレスとは」
上記の心理・社会的ストレッサーについて、ストレスの原因になりやすい出来事の例として以下のようなことが考えられます。
《生活上の出来事》
《職場での出来事》
このような出来事があった場合には、ストレスの原因として体調の変化につながる場合もあることを理解し、自分自身や同僚、スタッフ間などでお互いを気にして体調に配慮しあうなどすることで変化に気づきやすくなります。
体調で気になる点がある場合には、家族や、職場の上司や同僚、産業保健スタッフなど、相談しやすい人に相談してみるのもよいでしょう。
個人でできるセルフケアは、基本的には従業員自身が行うものです。そのため企業は、従業員に対してセルフケアの重要性や、具体的な方法をセミナーや研修を通じて伝える必要があります。
毎年の健康診断で自分自身の健康状態を把握することはとても大切です。
健康状態を正確に把握することで、自分自身にどのようなセルフケアを実施したらよいのかというスタート地点に立つことができます。「問題ない」「大丈夫」「何もしなくてもよい」と思い込むと、気が付いたころにはすでに健康状態が悪化しているということになりかねません。
1年に一回、半年に1回でも健康状態は刻々と変わっていきます。体調管理の一歩目として、まずは健康診断を受診していくことからはじめましょう。
長時間にわたって座ったままや同じ姿勢を取りつづけていると、血流が悪くなり、身体に悪影響を及ぼす原因になります。定期的に立ち上がって歩いたり、ストレッチをしたりして適度に身体を動かすことで、凝り固まった身体をほぐし、気分転換にもなります。
運動を行うことで集中力や創造力の向上など、仕事へ良い影響を与えることもありますので、ぜひ取り入れたい習慣になります。
睡眠の間に脳や身体がリセットされ、翌日への英気が養われます。そのため、睡眠の質はメンタルヘルスにとっても非常に重要です。
睡眠負債という言葉をよく最近耳にしませんか。睡眠負債とは睡眠の借金であり、毎日少しずつ積み重なる睡眠不足のことです。十分な睡眠がとれていない場合、脳のパフォーマンスは日に日に落ちて仕事の生産性も低下します。
1日6時間の睡眠を2週間続けた場合、2日徹夜した後と同程度に脳のパフォーマンスが落ちるといった研究結果もあります。
快適に睡眠が取れるよう、室温や湿度、照明などを調整することが望ましいです。また、寝る直前はスマートフォンやPCをできるだけ見ないようにし、落ち着いて眠れる環境づくりを心がけましょう。
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食事をしっかり取ることも大切なことです。忙しいからといってランチを抜いたり、食事を適当に取ったりしていると、身体の不調を招いてしまいます。できるだけ栄養のバランスを考え、好き嫌いせずに楽しみながら食事することで、心も身体も満たされるでしょう。
また、食事はコミュニケーションの機会にもなります。誰かと食事をとることでメンタルヘルスにも好影響が期待できます。
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プレゼンティーイズムの原因の一つとして、運動器・感覚器障害(腰痛・肩こり、頭痛、眼精疲労)があげられます。心身の状態を活性化するために運動は必要ですが、肩こりや腰痛を直らないものとして慢性化させてしまうことでプレゼンティーイズムの原因になるため、放置せずに対策することが必要です。
特にテレワークの普及に伴い、環境が変化したことで腰痛になる人が増えています。腰痛・肩こりの主な原因としては床や椅子への座り方や生活習慣によるものが大きいといわれています。
これらの要因を解消するために、姿勢の見直しや運動習慣の実践、ストレスマネジメントといった対策をぜひ取り入れましょう。
家族や同僚、地域のコミュニケーションなど対面で得られる情報だけでなく、テレビや本、インターネットが普及している今、さまざまな情報があふれている現代。健康の情報一つとっても、「正しいか正しくないか」だけでなく「自分に合っている」情報を見つけ出し、使いこなす能力を高めることは非常に難しい状況といえるでしょう。
健康や疾病について、情報の入手から活用までの一連の行動は健康を守るために非常に重要でありながら、その能力を身に着けるにはそれなりの技量が必要です。
「自分にあった健康情報を探して、わかって(理解し、評価した上で)、使える力」である健康リテラシーを身につけていきましょう。
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親しい人と話すことで気持ちが自然に落ち着くものです。一人で抱えていた悩みを共有することで、新たな解決策のヒントが見えてくるかもしれません。
また、笑うこともストレス発散方法として有効です。もし気分が少し落ち込んだり、体調が思わしくないと感じた場合は、適度なコミュニケーションを取ってみるのがよいでしょう。
仕事や家庭のことで思うようにいかないと、イライラや不安が募ります。意味もなく自責の念にとらわれたり、攻撃的な言動に走ったりすると、仕事に集中できなくなってしまいます。
そのような時は、気持ちを落ち着けて、少し離れた場所から自分自身を見つめ直すことが重要です。一時的に仕事から離れて休む時間をとったり、好きな音楽を聴いたりしてリラックスすることで心の平静を取り戻しましょう。
自分の好きなことに没頭する時間は、セルフケアとしても有益です。読書や映画鑑賞、ショッピング、カラオケなど、自分が楽しいと思える時間を過ごすように心がけてみましょう。まとまった休暇を利用して旅行に出かけるのも気分転換になります。
従業員が不調に陥らないようにするため、企業は従業員のセルフケアを行いやすくする施策を整備することが求められているのです。では、実際にどのような対策を実施すればよいのでしょうか。
効果的なメンタルヘルス対策を実施するためには、まずはどこに問題があるのかを特定することから始めます。ストレスチェックや従業員サーベイなどを活用すると、解決すべき課題を客観的に見つけることが可能です。
メンタル不調のリスクは若手が多いと思われがちですが、その考えは誤りです。心の病を抱えているのは10~20代と、30代、40代はほぼ同じ割合になるため、幅広い層を対象に実施することが望ましいです。そのため、健康診断の結果分析だけでなく、全従業員を対象としたアンケートを実施し、その結果を活用し現状把握を正しく行う必要があります。
労働安全衛生法に基づき、常時50名以上の従業員がいる事業場に1年間に1回、従業員のストレス度合いを調べるストレスチェックの実施が義務付けられています。ストレスチェックでは、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」といった項目を調査します。
ストレスチェック調査票において「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が高い者は「高ストレス者」となります。「疲れがずっと抜けない」「休日でも仕事のことが気になって落ち着かない」など、メンタルヘルス不調を示すサインを多く持つ人が該当します。
ただし、それほど極端な自覚症状がなくても、担当業務の責任が重い、業務量が過度に多いなどストレス要因の多い仕事を抱えている人や、上司や同僚からのサポートが乏しい人も、今後メンタルヘルス不調に陥ることが懸念される対象として高ストレス者に分類される場合もあります。
こうしたストレスチェックの結果を活用し、どのようなメンタルヘルス対策を実施していくのか、どうやって参加率を高めていくのか検討することで施策の効果が向上します。
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組織の環境や風土、コミュニケーションでカバーしていも、それらはあくまで定性的なものであって、人の状態を定量的に説明することは難しいものです。ストレスチェック等に代表される従業員へのヒアリング機会もありますが、年に1回では課題の早期発見ができず、スピーディーな対応は難しいものです。
ではどうすればよいでしょうか?
昨今では、年1回のストレスチェックだけでなく、もっと高頻度で細かく状況を把握する従業員サーベイが注目を集めています。近年では、「パルスサーベイ」と呼ぶケースもあります。
パルス(pulse)とは脈拍のことです。組織と個人の関係性の健全度合いを測ることを目的とした定量評価の手段です。脈を図るように、刻々と変わる組織状態を把握することで課題の早期発見につながるという考えからこのように呼ばれています。
以下が従業員サーベイの項目例になります。
・業務の量や負担の満足度
・企業方針への理解と共感
・評価への納得
・上司とのコミュニケーション満足度
設問をある程度固定化することで、推移を把握でき、比較しやすくなるため有効です。
従業員サーベイの結果と、健康診断等のデータ等を一元管理して分析できるDXツールも昨今多く出てきているので、従業員の状況把握として活用すると良いでしょう。
企業や組織は、従業員に健康診断を受診させなくてはなりません。
従業員の健康課題を探るためでなく、従業員の健康に対する取り組みの中で健康診断受診率を100%にするということはそれだけで従業員の健康への取り組みの一つとなります。労働安全衛生法第44条では、企業や組織はそこで働く従業員に健康診断を実施しなくてはならないと定められています。
企業や組織は健全な運営を行う必要があり、健康診断はその健全な運営を支える従業員の健康を守るための根幹となります。
従業員に健康的な生活習慣を送ることの重要性を伝えるため、健康施策を定期的に開催することが有効です。上記で抽出した健康課題をもとに具体的に何をすれば良いかを理解し実施することで、業務への効果が表れやすくなります。
セルフケアスキルを高めるには、一人ひとりに気づきを与える教育研修を定期的に開催することが重要です。
何より、健康であることの重要性は日頃から意識しないため、動機づけの機会として有効になります。
また、講師が一方的に伝える形式だけでなく、ディスカッションなどを導入して双方向のコミュニケーションを取れるようにすることで、従業員のモチベーションアップも期待できます。
メンタルヘルスセミナーにも様々な種類があります。
メンタルヘルスセミナーは年に1~2回、夏と冬など定例的に時期を決めて開催するというように、自社でのルールを作って実践するのが良いでしょう。
内容はセルフケアセミナーが最もメジャーになりますが、自社の課題傾向を掴んだうえで選定をすることで実施効果を高めることができます。
また、メンタルヘルスという内容に対して一人だと参加しずらいことや、参加していることを他の人にばれたくない従業員もいるかもしれません。その場合は、対面形式だけでなく、オンライン形式で実施することで参加ハードルを下げることが可能になります。
運動にはさまざまな良い効果があり、メンタルヘルス対策にも効果的です。
少し古いデータになりますが、運動がうつ病に与える影響について、1999年 アメリカのデューク大学医学部のブルメンタール教授らの研究が有名です。
うつ病患者156人を、薬(抗うつ剤)と運動、運動のみ、薬のみの3グループに分けて、4か月後と10か月後の経過を見るという研究がありました。
4か月後には、薬のみのグループは改善率68.8%で最も改善が見られましたが、10か月後は38.0%が再発しています。
一方、運動のみを見ると、4か月後は改善率60.4%であり、有意な改善が得られましたが、10か月後の再発率はさらに顕著であり、わずか8%の再発率だったという結果が得られています。
こうした研究からもわかるように、運動はメンタルに良い効果をもたらし、運動を継続することは、さらに効果的です。
運動は一時的に行えばよいわけでなく、習慣化させなければ意味がありません。従業員が一定時間以上の運動を長期的に行っていくには、オフィスの環境や制度を整える必要があります。
身体活動・運動の促進は運動の習慣定着をサポートするだけでなく、プレゼンティーイズムの改善にもつながります。
プレゼンティーイズムによる一人当たりの年間損失額の1位は頸部通・肩こり、3位は腰痛となっています。これらの症状に対して、デスクワーク環境の改善に加えて、定期的な身体活動が役立つと考えられます。
運動機会の促進と習慣化に向けて、下記のような施策を検討していきましょう。
適切な量とバランスの良い食事は運動習慣と並んで従業員の心身を活性化し、業務のパフォーマンスをあげる取り組みとして欠かせません。職場において、従業員が自ら正しい食事を選べるように、継続的な情報提供や実践活動、サポートが必要になります。
▼実施施策例
従業員にセルフケアを進めるためには、従業員自身の「健康意識を高めること」が必要です。従業員の健康意識を高めるためには、健康リテラシーを高めることが効果的です。健康リテラシーを身につけ、セルフケアを従業員自身がすすめられることで健康状態が改善されアブセンティーイズムやプレゼンティーイズムの改善につながり、結果的には労働生産性の向上にもつながります。
高い健康リテラシーを身に着け、適切な行動ができる従業員が増えることで、社内全体の健康レベルは底上げされます。そして健康リテラシーを身に着けるためには、従業員一人ひとりの意識に働きかけ、行動変容を促す、まさに草の根運動のような取り組みになります。
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従業員が1日の多くの時間を過ごす職場環境が悪いと従業員に大きな負担がかかり、企業の生産性低下にもつながりかねません。上記の点で改善を図り、従業員が働きやすい快適な職場環境を形成する配慮義務が事業主にあると定められているのです。
職場環境とは、単に作業をする場所そのものに限られません。作業方法や疲労回復するための設備なども、職場環境に含まれています。
とてもシンプルなことですが、働く環境が整うことで、従業員一人ひとりがパフォーマンスを最大限発揮できるようになります。
職場における人間関係は、メンタルヘルスに大きな影響を与えます。そのため、組織内でのコミュニケーションを活性化することが求められるのです。テレワークを導入している組織においても、チャットツールやオンライン会議ツールなどを活用することで互いに意思疎通を図りやすくなるでしょう。
また、マネジメント層に向けて研修を行い、心理的安全性の高い職場を目指すことも有効な施策です。
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心理的安全性とは、職場などの組織やチームの中で、意見や質問、違和感の指摘が、いつでも誰でも気兼ねなく発言できる状態のことです。自分の言動が上司の叱責を招いたり、同僚の不信を買ったりすることがないという「心理的安全性」がなければ、いくらコミュニケーションの機会を設けても従業員は本音で交流することはできません。
まずは職場内の「心理的安全性」を確認しましょう。もし十分な「心理的安全性」が確保できていないようであれば、個別のヒアリングや配置換えなどを検討する必要があるかもしれません。
心理的安全性を高めるには、以下のような取り組みがよいでしょう。
関連記事:心理的安全性とは?測り方、作り方、マネジメントの役割を解説
受動喫煙によってさまざまな病気のリスクが高くなることから、健康増進法にて必要な措置を講ずるよう努めるべき旨が定められております。厚生労働省は、事業者における受動喫煙防止対策を推進しています。
▼実施施策例
長時間労働は過労死やメンタルヘルス不調につながります。企業はリスクマネジメントの視点からも、長時間労働によって従業員の健康が損なわれないように、時間外労働の削減や、有給休暇の取得促進を行う必要があります。
▼実施施策例
職場におけるメンタルヘルスケア対策としては、相談窓口の設置が考えられます。
不調を感じた従業員がいつでも気軽に相談できるように、事業場内はもちろん、外にも設置することを検討する必要があるでしょう。事業場外に設置する場合は、委託先に個人情報保護についての規定や連携方法をあらかじめしっかりと定めておくことが不可欠です。
ここまで見てきたようなメンタルヘルス対策に加え、より効果的に対策を実施するために近年重視されている「健康経営」の視点を取り入れることも大いに役立ちます。
健康経営とは、『従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法』です。
あくまで企業が用いる経営手法ですので、従業員の健康を促進することは手段であり、目的は組織の活性化・生産性の向上であり、最終的には業績向上、企業価値の向上を目指します。
健康経営として健康プログラムの推進やメンタルヘルス対策を練ることで、事故や傷病予防だけでなく、ストレスの要因への対処や適切なワークライフバランスの達成が可能になります。
関連記事:【徹底解説】健康経営とは?
2015年(平成27)に経済産業省の健康寿命延伸産業創出推進事業から発表されている「健康経営オフィスレポート」という資料があります。
その中で、生産性を上げる取り組みとして「健康経営オフィス」という考えが紹介されています。
これは、従業員が快適で清潔でコミュニケーションが取れる環境が整えば、プレゼンティーイズム、アブセンティーイズムが解消し、生産性アップにつながるという考えです。
「健康経営オフィスレポート」によると、オフィス環境において従業員の健康を保持・増進する行動は、大きく分類すると7つあるとされています。
従業員の心身の調和と活力が向上を図るためには、これらの行動をオフィス内で日常的に誘発させることが重要と言われています。
そして、オフィス環境(空間・設備・情報・運用)を整備し、健康の保持・増進に繋がる7つの行動を誘発することで、最終的にはプレゼンティー ズムやアブセン ティーズムの解消に結び付くと言われています。
働きやすい職場であるかどうかを判断する材料として、福利厚生が挙げられます。特に休暇制度の充実は、従業員のワークライフバランスを確保する観点において重要です。年次休暇や育児休暇、介護休暇、生理休暇、代休などの制度が整っており、またそれらが必要な時に取得しやすい環境であれば、メンタルヘルス対策としても有効でしょう。
これらは、個人でできるセルフケアの強化にもつながります。
厚生労働省が掲げる4つのメンタルヘルスケアのひとつが「セルフケア」です。従業員自身が実施するものですが、企業としてもさまざまな施策を整備することで支援することが求められます。