従業員エンゲージメントとは?要素、メリット、高める方法

近年、海外や日本で従業員エンゲージメントを高めることの重要性が増しています。

従業員エンゲージメントとは「会社に貢献したい」という従業員の自発的な気持ちを指し、会社への愛着心や会社との信頼関係のような意味合いも含まれます。

従業員エンゲージメントを高めることが、これからの企業経営のさらなる成熟や、従業員の最高のパフォーマンスを引き出すことにつながり、双方にとってより良い信頼関係の構築のために欠かせないとの認識が広がっています。

会社から一方的に与えられた各種待遇や制度の充実は従業員満足度を高めることには繋がりますが、従業員の成長や企業の業績アップに必ずしも結び付くとは限りません。

双方の信頼関係構築を目指した従業員エンゲージメントの向上こそ、企業の生産性向上や業績アップに影響を与えるのです。

そこで今回は、

  • 従業員エンゲージメントとは?
  • 従業員エンゲージメント向上のメリット
  • 従業員エンゲージメントの測定・評価方法
  • 従業員エンゲージメントを高める方法
  • エンゲージメントを高めるための取り組み事例

について解説します。

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目次

従業員エンゲージメントとは

近年の人事領域では「従業員エンゲージメント」という言葉を耳にする機会が多くなっています。

エンゲージメント(engagemant)とは直訳すると「約束」「契約」「婚約」などを意味する言葉ですが、人事・組織開発における「従業員エンゲージメント」とは、従業員が会社の向かっている方向性に共感し、企業と従業員が双方向の関与によって結びつきを強めていきながら従業員が自発的に組織に貢献したいと思う意欲のことを指します。

米ギャラップ社の調査(2017年)によると、日本は従業員エンゲージメントの高い社員の割合が6%で、調査対象139カ国中132位という結果となっており、今後より国際競争力を高めていくためにも日本の企業にとって従業員エンゲージメントの問題は看過できない課題となっていることから、注目度が高まってきました。

参照:令和2年7月 経済産業省産業人材政策室参考資料集別添1スライド42より

日本企業は今後、価値観や契約形態がどんどん変化し従業員の多様なニーズに応えるためにも従業員エンゲージメントに注目し、離職率の低下や企業運営の向上につながる環境の実現にむけて歩んでいく必要があります。

このように従業員エンゲージメントが注目される中、従業員エンゲージメントは簡単に表すなら「従業員の企業に対する信頼の度合い」といえますが、わかりやすいようで実は定義があいまいです。

このため従業員エンゲージメントに注目する場合、エンゲージメントという概念にどのような期待を抱いているのか、またどの組織の定義するエンゲージメントに近いのかを考え、企業がそれぞれ独自の「従業員エンゲージメント」を定義する必要があります

従業員エンゲージメントの定義の具体例

従業員エンゲージメントは、「従業員の会社や商品への愛着心」「従業員が所属する会社に貢献したいという気持ち」「会社と従業員の結びつきや信頼関係」「従業員と組織の心的なつながり」「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係」というように様々な定め方をすることが可能です。

どのように決めるかは、企業ごとにエンゲージメント・サーベイなどを活用して、定義や取り組む課題を決定していく必要があります。

従業員エンゲージメントを構成する要素

従業員エンゲージメントを構成する要素は、下記の3種類あります。

  • 理解度
  • 共感度
  • 行動意欲

理解度

理解度とは、従業員が会社の進む方向性・組織のビジョン・理念を具体的に理解している度合いを示しています。

従業員エンゲージメントを高めるためには、従業員に対して企業側の意図や方向性を発信し理解してもらう必要があります。従業員自身がもつ理想と企業がかなえたい理想がマッチしていれば、自分は何ができるのかを考え、行動するようになる可能性が高くなります。理解度を高めるためには、企業は明確な経営方針を作り、従業員に対して説明を繰り返すことが求められます。

共感度

共感度とは、従業員が組織やその仲間に対して、帰属意識や誇り、愛着のある状態を示しています。共感度が高いことで、仲間をサポートしたりコミュニケーションを活性化させるといった、職場の活性化にもつながります。

従業員が会社の方向性や理念に対して共感しているかどうかは、エンゲージメントを高めるために欠かせません。理解だけでなく、共感することで組織の一員としての自覚が高まります。従業員の共感度を高めるためには、従業員と積極的なコミュニケーションを行い、話し合いや意見交換を重ねる必要があります。

行動意欲

行動意欲とは、企業の成功のために自分にできることを進んで取り組もうとする意欲のある状態を示しています。

自分の行動が、業績向上や企業の成長につながっていると感じるほど、自発的に行動する意欲が高まります。さらに、企業の理念やビジョンを理解し、共感しているからこそ、従業員は「会社が成功するために積極的に動こう」という意思を持つことにつながります。

行動意欲を高めていくには、成果に対する周りからの適切な評価や、社会に貢献できているといったやりがいが必要です。従業員の行動意欲を高めるために、会社も従業員を大切にし、「従業員のためにできること」を積極的に行う必要があります。

従業員エンゲージメントに似ている概念・キーワード

似た言葉にロイヤリティや従業員満足度、モチベーションがありますが、企業と従業員との関係性において従業員エンゲージメントとは意味合いに大きな違いがあります。

従業員エンゲージメントと類似する用語

ロイヤリティ :企業に対する忠誠心を指し、企業の方が上の立場にあります。
従業員満足度 :従業員が企業から与えられた労働環境や処遇に対して下す評価です。
モチベーション:自分の中の感情から生じる仕事に取り組む動機付けを指します。

前に挙げた3つが、企業や従業員いずれかからの一方的な評価・繋がりであるのに対し、従業員エンゲージメントは企業と従業員が相互的に影響する関係性であることを指します。そのためエンゲージメントを高めれば、企業の経営にプラスの効果が期待できます。

従業員満足度やモチベーションなどを高めても、気持ち的な面において一時的に従業員を高揚させるに留まり、業務をより改善していこうといった持続的な行動につながる保証はありません。

一方、従業員エンゲージメントが向上すれば、従業員が会社の理念に賛同・共感しているため、業務における自発的な行動につながることが期待でき、業績にもダイレクトに関わってくるのです。

関連記事】
従業員満足度向上のメリットと取り組み
モチベーションを向上させるポイントと取り組み

従業員エンゲージメント向上させる
健康施策をご紹介

健康プログラムは従業員エンゲージメント向上につながります。
仕事で忙しい従業員が継続的にプログラムに参加するためには、「興味」「楽しさ」「モチベーション」が欠かせません。
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従業員エンゲージメント向上のメリット

従業員エンゲージメントが高い状態

従業員エンゲージメントが世界だけでなく日本でも注目されている理由としては、従業員が「働きがい」をもって働くことができる環境を整えることで従業員だけでなく、企業や顧客にもプラスの影響がでるためです。

では具体的に、従業員のエンゲージメントを高めると組織はどのように変わるのでしょうか。

生産性が向上する

従業員エンゲージメントの調査として、民間企業と大学による国内企業を対象にした調査では、従業員エンゲージメント(ES)は労働生産性にプラスの影響を与えるという結果がでています。

参照:令和2年7月 経済産業省産業人材政策室参考資料集別添1スライド43より

これまで指標とされてくることの多かった福利厚生の充実や労働環境の整備などの施策は従業員満足度を高めることには繋がりますが、従業員の成長や企業の業績アップに必ずしも結び付くとは限りません。

エンゲージメントを指標とした場合、企業の方向性やビジョンに共感している状態が高いことで、事業課題に対して積極的に取り組む姿勢が数値に表れます。こうした結果から従業員エンゲージメントが高いことは生産性向上をもたらすことが予想されます。

関連記事:生産性向上とは | 目的や効果、具体的な取り組み方を解説

従業員のモチベーションが高まる

従業員エンゲージメントの向上は、従業員本人のモチベーションアップにもつながります。自分が現在働いている企業に対しての愛着や信頼が高まると、仕事に対する自発性や他の従業員に対する役割外のパフォーマンスの向上につながります。

企業の方向性やビジョンを理解しているため、より質の高い製品やサービスを提供をできないか自発的に考え行動するようになります。その結果、顧客満足度の向上にもつながるだけでなく、顧客からすると熱意や愛着をもって従業員が仕事をしている姿から企業イメージの向上が期待できます。

関連記事:従業員のモチベーションを向上させるポイントと取り組み事例

企業イメージが向上する

エンゲージメントが向上すると、従業員が積極的に業務に参加するようになり顧客満足度も向上します。顧客が求める質の高い製品やサービスを提供できる企業に対して、顧客側は良い感情を持つようになり、企業のイメージも上がるでしょう。

エンゲージメントの高い従業員が集まる職場は雰囲気も良くなり、職場の雰囲気が良い企業は評判となり、人材も集まりやすくなります。

関連記事:企業イメージ向上のための3つの方法

離職率を低下させる

エンゲージメントの高い従業員は、離職率が低い傾向にあります。

従業員のエンゲージメントを高められるように、仕事の在り方や職場環境を改善させるなど様々な工夫を重ねることによって、従業員がやりがいをもって働ける環境へ改善することが求められています。

そういった職場環境を整えることで、企業イメージの向上にもつながりますので、離職率の低下だけでなく、採用にも好影響をもたらします。

また、採用コストを抑えられることで、従業員や職場環境へのさらなる投資が可能になり好循環を生みます。

関連記事:定着率とは?低い原因、向上のための効果的な取り組み

心身の健康意識が高まる

従業員エンゲージメントを高めると、仕事中の過度なストレスや疲労を感じる度合いを低下させる可能性があります。

従業員エンゲージメントが向上することで、従業員は仕事に誇りとやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て生き生きとしている状態になります。

そのため、仕事中の過度のストレスや疲労を減少させている可能性があると考えられています。感じるストレスが減れば睡眠の質も上がり、身体の健康増進にも寄与することとなります。

従業員のストレスマネジメントが注目される今、エンゲージメント向上によるストレス耐性はメンタル疾患などの予防効果も期待でき、ストレスに強い組織づくりに寄与できると期待されています。

関連記事:【健康増進対策】従業員の健康課題に合わせた取り組みとは

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自社の従業員エンゲージメントの測定・評価方法

エンゲージメント向上を目指すためには、定期的に現状を把握することが大切です。

会社全体はもちろん、部署ごと、地域ごと、個人ごとのエンゲージメントの状況を把握していきましょう。現状を把握せずに施策を行ってしまうと、あまり効果が出なかったり、施策の効果が把握できなかったり、逆効果となるケースもあります。

従業員エンゲージメントは人間関係・成長・仕事内容・職場環境などいくつかの項目が重なり形成されています。そのためエンゲージメントに対する取り組みは、何をどうしたいのか、何が主要な要因となって現状になっているのかを把握し、要因を突き止めることが大切です。

また、測定結果を適切に分析し、具体的な施策に反映することが求められます。これらの結果から自社のエンゲージメントの定義を考えていくことができるでしょう。

実際に施策を実行した場合の効果検証をすることもできます。会社全体/部署ごとの結果も表せるため、オフィス環境・人材配置・人事制度・研修や教育などの見直しや改善に役立たせることが可能です。

従業員エンゲージメントを測定する一般的な手法は、インターネットによるアンケート調査です。アンケートであれば手軽に実施できるため、月に1回から半年に1回の頻度で行われている企業が多いようです。

主な質問内容は以下のようなものです。

  • あなたが勤めている会社を、家族や友人にどのくらい勧めたいですか?
  • 職場で自分の意思や意見が尊重されていると感じる
  • 自分が何を期待されているのかを知っている
  • この1年間で、仕事を通して成長できた
  • 自分の仕事に価値や誇りを見出しているか

このようなサーベイを通して、従業員エンゲージメントの3つの指標を測定します。

エンゲージメント総合指標

エンゲージメント総合指標は、従業員が会社に対してどのような印象を抱いているかについて、総合的な評価を示すものと言えます。具体的な項目として、以下のようなものが挙げられます。

  • eNPS(employee Net Promoter Score):会社を他人に勧めたいかどうか
  • 総合満足度:会社に対して総合的にどのくらい満足しているか
  • 継続勤務意向:現在勤めている会社で継続して働きたいと思っているか
<具体的な質問例>
・仕事を探している知人や親族に自社を勧めたいか、影響する要因はなにか
・仕事を通して成長を実感できる機会があるか
・将来的に達成したい具体的な目標があるか

エンゲージメントレベル指標

エンゲージメントレベル指標とは従業員の精神的な健康度であるワークエンゲージメント(仕事に対してどれくらい熱意を持って取り組んでいるのか)を知るためのものです。

  • 熱意:仕事に対してやりがいを感じる
  • 没頭:熱心に仕事に取り組むことができる
  • 活力:仕事を楽しみ生き生きと働くことができる

この3要素に焦点を当てたUWES(ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度)という調査項目が確立されています。

3要素が揃っている従業員は、仕事にやりがいを感じているため自身の業務に熱心に取り組みます。それが仕事の質の向上につながるため、周囲からの評価も高くなり、仕事から活力が得られいきいきとした状態になります。

反対に、ワークエンゲージメントの対極であるバーンアウトとは「燃え尽き症候群」という言葉で知られているように、献身的に仕事に取り組んだにもかかわず、成果が得られず不満や疲労感で労働意欲を失った場合に陥る状態です。

<各項目での質問例>
熱意自分の仕事に意義や価値を大いに感じる、自分の仕事に誇りを感じるなど
没頭仕事をしていると時間がたつのが速い、仕事に没頭しているとき幸せだと感じるなど
活力:仕事をしていると活力がみなぎるように感じる、職場では元気が出て精力的になるように感じるなど

エンゲージメントドライバー指標

エンゲージメントドライバー指標は、今後”の従業員エンゲージメントを向上させる要因を示すものです。具体的には以下の項目によって測られます。

  • 組織ドライバー:職場の人間関係や職場環境などの会社と従業員の状態
  • 職務ドライバー:職務の満足度や難易度など
  • 個人ドライバー:個人的資質が業務にどのような影響を及ぼすか
<具体的な質問例>
・自分の仕事を褒められたり認められたりする機会はあるか
・自分が所属している部署や会社全体の目標や戦略を理解しているか
・仕事において自分の意見が考慮されていると感じるか
・自分の仕事が会社の使命や目標のために重要であると感じているか

ストレスチェック

ストレスチェックとは、従業員のストレス状態を調べるための簡易的な検査のことです。ストレスチェックは基本的にセルフチェック方式で行われ、従業員は選択式の調査票を通して、自身のストレス状態を回答していきます。

ストレスチェックは、2015年に改正された労働安全衛生法に基づいて、常時50人以上の従業員を使用する事業場において1年間に1回実施することが義務づけられています。ただし、ストレスチェックを実施しないことによる罰則は規定されていません。

ストレスチェック制度の目的は「メンタルヘルス不調を未然に防ぐこと」であり、職場の弱みを見つけ出して改善することを目指す視点であるため、エンゲージメントを高めていくためにそのまま活用するものではありませんでした。
しかし近年、企業から注目を集めているのが「新職業性ストレス簡易調査票」、いわゆる「80項目版」のストレスチェック調査票です。

一般的なストレスチェック調査票(57項目版)との違いは、個人のストレス反応だけでなく、仕事に対する「エンゲージメント」や、「職場環境」「ハラスメント」についても測定できる内容になっています。

受検にかかる時間は10分程度と、57項目版と比べて長くなりますが、職場環境改善への効果が期待できることから、健康経営を推進している企業ではこの「80項目版」ストレスチェック調査票を導入している例も多いようです。

関連記事:ストレスチェック制度について

従業員エンゲージメント向上させる
健康施策をご紹介

健康プログラムは従業員エンゲージメント向上につながります。
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従業員エンゲージメントを高める取り組み

従業員エンゲージメントを高める5つの方法

従業員エンゲージメントを高めるためには、さまざまな方法があります。

企業ごとに社風や地域性などによって最適な方法は異なるので、エンゲージメント測定・評価した結果をもとに課題を見極めながら自社にあったやり方を模索し将来のための施策を考えていきましょう。

定期的にエンゲージメントを測定する

エンゲージメント向上のためには、定期的にエンゲージメントを測定して把握と分析をおこなう必要があります。それは、エンゲージメント向上のためには長期間にわたって取り組みを継続して実施する必要があるためです。

取り組みを長期間にわたって継続し、その都度エンゲージメントを低下させる原因を特定して改善していきましょう。

企業のビジョンを共有する

会社のビジョンやミッションを従業員と共有し同じ目標に向かい一体感を持って仕事ができるようになると、従業員のエンゲージメントは向上します。

企業の理念や方向性を共有する場や機会をを多岐にわたって設け、ビジョンやミッションへの「共感」を広めていきましょう。そうすることで、従業員は自分が勤めている企業に誇りを持ち、業務に参画できることに誇りを感じられるようになり、自主的に先を見据えて仕事をすることにつながっていきます。

ビジョンの浸透には、時間と労力が必要です。定期的かつ継続的に伝え、話し合える場を設けることが大切です。従業員の共感度をアップさせるためには、企業は従業員とのコミュニケーションを大切にし、互いの思い・考えを常に理解し合うことをめざしていきましょう。

働きやすい環境をつくる

従業員に働く意欲がどれだけあっても、あまりに多い労働負荷や長時間労働が存在するような環境では個人のエンゲージメント維持は難しくなります。

そのため、働きやすい職場環境の整備はエンゲージメントの観点においても重要視されています。

現状の職場環境の確認は、ストレスチェックや従業員アンケ―トから行うことができます。

法に基づくストレスチェックは以下の3領域を含むことが必要になります。

  • 仕事のストレス要因:職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
  • 心身のストレス反応:心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
  • 周囲のサポート:職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目

ストレスチェックの集団分析を職場、各部署などの単位で行うことで、職場環境が整っておらず、高ストレスの従業員が多い職場を特定できます。

働きやすい職場環境は以下の3つの要素で構成されています。

  • 人間関係:コミュニケーションなど
  • 業務環境:空調照明など~設備レイアウトなど
  • 業務内容:裁量権、負荷の量、労働時間

一つの要素だけを改善するだけでは不十分で、どの要素も疎かにはできません。

人間関係が良好であり、物理的な環境が整っており、作業時間を減らすために業務の分担をしたり、労働時間削減のために業務マニュアル等が用意されるなどワーク・ライフバランスが整えられた職場では、働く人が自己充足感や達成感が得られます。

それだけではなく、企業から見れば企業の人的資本が効率的に活用されている状態とも言え、生産性やパフォーマンスにもポジティブな影響が出ることが想定されます。

関連記事:職場環境の改善アイデア|組織向上への取り組みと成功事例

社員間のコミュニケーション活性化

職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化など、これらの雇用管理の実施を推進することは従業員エンゲージメントを高めます。日常的に上司と部下のコミュニケーションが活発で、自発的に意見を言い合い相談しあう環境では仕事へのモチベーションも上がり、会社に貢献したいという気持ちは高まりやすいでしょう。

企業ビジョンに共感していても、社内の人間関係が良好でなければ、従業員エンゲージメントは低下してしまいます。

職場の社内コミュニケーションを活性化させるにはいくつかのポイントがあります。

まずは、社内報や1on1ミーティングを通して、お互いを知る機会をつくりましょう。どんな社員がいて、どんな仕事をしているのかを知ることで、コミュニケーションを持つ第一歩とすることができます。

また、コミュニケーションの質を高めるためには心理的安全性を確保することが必要になります。心理的安全性がなければ、いくらコミュニケーションの機会を設けても従業員は本音で交流することはできません。十分確保できていない場合は、個別のヒアリングや配置換えなどを検討する必要があるかもしれません。

コミュニケーションを活性化させるためには、交流を促進する環境作りや、業務に関わらない環境を企業が従業員に対して提供することが重要になります。

業務時間内であれば、フリーアドレス制の導入やリフレッシュスペースを確保したり、業務時間外であれば、社内サークルやイベントなどを実施することも有効な手段になります。

ワークエンゲージメントの高い従業員は、業務やほかの従業員との関わりも積極的で、役割以外の仕事への取り組みや、部下への指導など、リーダーシップを発揮した行動を取れます。そのため、社内コミュニケーションを活性化させるために積極的に協力を依頼しましょう。

関連記事:社内コミュニケーションを活性化させるメリットやポイントとは?

成長実感を向上させる

従業員ひとりひとりの成長を大切にすることもエンゲージメントを高めることにつながります。自分のキャリアの見通しがつかないような会社に対してエンゲージメントを高めることは難しいからです。

従業員ひとりひとりが理想のキャリアを築けるよう、今後のステップアップについて明らかにしたり、スキルアップを促すような制度を作ることが大切です。単に報酬を得る場ではなく自身のスキルアップにつながる職場は、従業員の意欲を高めていきます。

新しいプロジェクトに挑戦できたり、別の分野で新しい経験を積んだり、またはこれまでのスキルを活かせる仕事を任されることで、従業員の自信を育てることができます。特にテレワークはコミュニケーションが希薄になるほか、周囲に会社関係の目が届かない場所で黙々と業務に取り組むため、従業員エンゲージメントが低下しやすい傾向にもあります。

どの従業員も自分の仕事ぶりが認められずフィードバックも得られない状況が続けば、徐々に従業員エンゲージメントは低下していきます。

また、上司からのフィードバックの頻度と働きやすさの関係を みると、フィードバックが全く実施されない場合は働きにくいと感じている者が働きやすいと 感じている者より多く、半年に1度よりも高い頻度でフィードバックが行われる場合は、働き やすいと感じている者の割合は横ばいとなっています(令和元年版労働経済の分析)。

今後の行動に関するアドバイスや、行動した内容の重要性や意義に ついての説明など、よりきめ細やかに充実した内容のフィードバックを行うことにより働きやすさが向上する可能性が示唆されています。

適正な人材配置をする

従業員エンゲージメントを高めるためには、適切な人材配置が必要です。人材配置が最適化されていることで、従業員が知識・能力を存分に発揮することにつながり組織の活性化や業績の向上に結びつきます。

また適材適所の人材配置は、従業員が上司に正しく評価・理解されていると実感できるので、仕事へのモチベーション向上にもつながります。人事評価や上司・部下とのコミュニケーションを通じて従業員の能力や将来的なキャリアプランを把握することで、最適な人員配置につなげることができます。

公平性のある人事制度を整える

従業員エンゲージメントを向上させるには、基準を明確にした公平な人事制度の採用が欠かせません。会社に公正に評価されていないと感じると、従業員の会社に貢献する気持ちは薄れてしまいます。

人事制度を通じて社内の評価制度を整えるだけでなく、適切な人事配置や貢献度に応じたボーナスや報奨金を与えることにもつながります。そうすることで従業員は正しい努力が報われると感じるようになり、従業員エンゲージメントが高まることが期待できます。

着実に従業員エンゲージメントを高めるためには、抜本的な改革が必要です。人事評価制度の整備は、その最たるものとして挙げられます。

どのような人事評価制度がベストかは企業規模、社風、事業内容によっても異なります。ただし、企業が従業員に対して人事評価制度の方針を明確に示すこと、透明性、公平性があることなどは、どの制度においても極めて重要です。

健康経営を実践する

健康経営とは、『従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法』です。

あくまで企業が用いる経営手法ですので、従業員の健康を促進することは手段であり、目的は組織の活性化・生産性の向上であり、最終的には業績向上、企業価値の向上を目指します。

従業員一人一人の健康度は働き方と密接に関係しています。心身ともに健康で生き生きと長く働けることは、従業員のみならず家族や周りの人間関係等にも、豊かな人生を作り出すメリットをもたらします。そうしたメリットの実感は、従業員が所属する企業や経営陣への信頼を築いていくことにつながります。

そして健康度が高く心が充実している従業員は、自分の能力やスキルを十分に発揮し、新しいことや困難な状況に挑戦する余裕も生まれます。毎日の仕事におけるこれらの積み重ねが、生活習慣病やメンタルヘルス不調の予防に加え、エンゲージメントの向上にもつながります。

また企業としても健康経営に取り組むことは、公私にわたり従業員のQOLに配慮していることを目に見える形にし、従業員自身が実感できる形で示す機会にもなります。

健康経営では、実践に向けて従業員一人ひとりが働きやすい取り組みが必須になります。健康であることはもちろん、いきいきと仕事に取り組むことが重要になっており、その取り組みはワークエンゲージメントに結び付くとされています。

主な健康経営における取り組みは以下になります。

  • ヘルスリテラシー向上のための教育機会の設定
  • 適切な働き方の実現
  • 職場の活性化
  • 職場の環境整備
  • コミュニケーションを促進する取り組み
  • 病気の治療と仕事の両立の促進

健康経営においてもワークエンゲージメントは健康増進と生産性向上に欠かせない、メンタルヘルス対策としても注目されています。

ヘルスリテラシー向上の為の教育機会の設定に関する取り組みとしては、健康セミナーの実施や社内での継続的な健康情報の発信が考えられます。

ワークエンゲージメントが高い従業員は心身の健康が良好である傾向があるため、こうした健康増進の取り組みも有効です。

【関連記事】
健康経営への取り組みのポイント
健康セミナーの取り組みのポイント
健康経営スタートガイド_バナー

福利厚生を充実させる

従業員が心身ともに健康を維持することで仕事とプライベートを充実させることができると、業務のやりがいを感じられることにもつながります。高いパフォーマンスを保つためには上記のような健康経営の充実をはかるとともに、心身のリフレッシュを福利厚生の面からも支えることができます。

意欲的に業務に取り組むというゴールに向けて、社員の健康維持を福利厚生でもささえていきましょう。

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従業員エンゲージメントを高めるための取り組み事例

従業員エンゲージメントを高め、組織の活性化を実現している取り組み事例をご紹介します。

花王株式会社

花王株式会社(以下、花王)は、戦略的にESGに取り組んでいます。
「2030年までに達成したい姿」を「グローバルに存在感のある会社」から「グローバルで存在価値ある企業『Kao』」に改め、その達成に向けた成長戦略として「Kirei Lifestyle Plan」を掲げています。
その「Kirei Lifestyle Plan」の一環で「重要なステークホルダー」として社員を位置付け、社員エンゲージメントについても詳細が設計されています。

一人の生活者として、また社員として「Kirei Lifestyle」 を意識し、推進していくことが、花王のESG戦略Kirei Lifestyle Planに掲げる目標の達成につながると考えています。そのために、継続して社員に情報とインスピレーションを提供し、アクションを引き出すきっかけとなる社員エンゲージメント施策を行なっています。また、ESG視点のよきモノづくりを実践していく上で必要な知識や、グローバルな視点での考え方についての啓発プログラムを開始しました。
引用:Kirei Lifestyle Plan −花王のESG 戦略−

花王の社員エンゲージメントについては、下記のように調査し向上に向けた取り組みをされています。

エンゲージメントサーベイ「Find」を2年に一度、定期的に実施しており、1年目は調査実施、結果分析、およびアクションプラン策定を行ない、2年目はアクションプランを実行、その取り組みの結果を翌年の調査で確認するというRPDCAサイクルを回しています。
引用:Kirei Lifestyle Plan 人財開発

こうしたESG戦略のもと、いろいろな施策が展開されています。

適度な休息・休憩をとるための社内風土の醸成と環境づくり

①リフレッシュタイムの活用

1時間あたり5分~10分の休憩をとるなど、在宅勤務中でもこまめな休憩をとり、より業務に集中できるよう、「リフレッシュタイム」の活用を推奨されています。

②思いやりタイムの推奨

上手に休憩を組み込む方法として、会議予定を送信する際、少しの「思いやり」をもって終了時刻を5~10分程度前倒しで設定するなどの工夫を呼びかけています。

③フレックスタイムの活用拡大

柔軟な始終業で、プライベートや自己啓発、リフレッシュの時間を取り入れてもらい、一人ひとりのワークライフバランスの向上を図る取り組みをされています。

こうした取り組みにより、「社員の健康維持増進と安全」を推進されています。

参照:花王株式会社 2021年09月14日 ニュースリリース 花王、社員に「休み休みWork Style」推奨

ESGとは、環境(E: Environment)、社会(S: Social)、ガバナンス(G: Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉。企業が長期的に成長するためには、経営においてESGの3つの観点が不可欠であるという考え方で世界中で広まっています。
また昨今ではESG投資にも注目が集まっています。
ESG投資とは、ESGに配慮している企業を重視・選別して行なう投資のことです。

 

株式会社じげん

東京都港区虎ノ門に本社を構える「株式会社じげん」は、ライフメディアプラットフォーム事業を主軸とし、人材・不動産・自動車・旅行などの幅広い生活領域において、30以上のサービスを展開しています(従業員は2021年3月時点で772名)。

同社が実施するエフアワー(Fitness Hour)・エヌミニッツ(Napping Minutes)は、急成長する事業を支えるため社員の要望を細かく検討し、組織の成長を最大化する人事制度200の創出を目指す中で創られたものです。

「エフアワー(Fitness Hour)」は事前申請により月2回まで、昼休みを延長してフィットネスクラブを利用できる制度です。昼休みを1時間延長してフィットネスに利用できる制度で、単純に運動してリフレッシュすることで業務効率アップにつながるだけではなく部署や年齢を超えたコミュニケーションの活性化にも繋がっています。

「エヌミニッツ(Napping Minutes)」は20分の昼寝時間を正式に認め、推奨する制度です。エフアワーとともに社員のリフレッシュを図り、健康意識と業務効率を向上させています。

いずれも特徴的なのは、従業員が提案し従業員が主体となって運用していること。社員自ら職場環境を良くするアイデアで会社を変え、実現する土壌ができたことが新しいメンバーにも伝播していくことで、社内がどんどん活性化される。この風土が、躍進を続けるじげんの原動力になっているようです。

参照:株式会社じげん2015/02/05 プレスリリース リクナビNEXTが主催する『グッド・アクション2014』特別賞にノミネートされました。

株式会社ベネッセホールディングス

ベネッセホールディングスでは、健康施策の推進等の効果の指標として、組織風土調査における「社員の働きがい」のスコアを現在の60%から70%への改善を志向しています。

2018年からRIZAPの健康セミナーや運動習慣化プログラムを導入し、健康無関心層を含めて参加者数が2年で9倍にまで増加しました

参加者の満足度も非常に高く、セミナー満足度97.5%、トレーナー満足度96.2%となっています。満足度の高い健康施策を通して、従業員の心身の健康増進だけでなく職場の活性化を実現しています。

2018年~2021年の3年間で、働きがいスコアが64.7%から68.2%に向上していることから、従業員のウェルネスプログラムを推進することは従業員のエンゲージメントの向上にも寄与できてきているものと考えられます。

参照:株式会社ベネッセホールディングス 働きやすく活気ある職場づくり

導入事例
ベネッセホールディングス様の事例資料

健康施策の参加者数が2年で9倍
従業員のエンゲージメントも向上!
RIZAPウェルネスプログラムを利用した健康経営推進とは

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