企業が健康経営に取り組むことで、企業イメージの向上や業績の向上などが期待できます。
この記事では健康経営の基本的な取り組みや、健康経営に取り組む際のステップ、さらに実際に企業で導入されている健康経営の事例を紹介します。
これから健康経営に取り組むことを検討しているのであれば、ぜひ参考にしてみてください。
目次
健康経営とは、企業が従業員の健康を管理・促進して、生産性の向上や労働者の満足度向上、健康保険料の削減などの経済的なメリットを実現するための経営手法です。健康経営のメリットは下記のようなものがあります。
健康支援プログラムを導入したり、働き方改革を行ったり、食生活改善を支援したりと、健康増進を実現するためのさまざまな取り組みを通じて、従業員の健康状態を向上させます。
健康経営に企業が取り組み始めた背景には、企業間の競争激化と共に従業員が抱えるストレスが増大し、心身の不調を原因とする生産力低下や、人材定着率の低下がありました。
さらに、企業に求められる社会的責任が年々高まっていることも、企業が健康経営を重視するようになった理由のひとつです。
健康経営に取り組むことで、企業イメージが向上するというメリットがあります。
健康経営に取り組んでいる企業の証である「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」として認定されれば顧客や社会からの信頼度は高まりますし、就職志願者からの信頼も高まるので優秀な人材を確保しやすくなります。
また、従業員の健康状態が向上して企業への帰属意識が高まれば、離職率の低下も見込めます。
健康経営に取り組む際に、何から手を付ければよいのか分からないという方もいらっしゃると思います。
そこで、一般的に導入されている健康経営の基本的な取り組みを紹介します。
取り組みの内容と期待される効果を理解して、自社が抱える健康課題を解決できるようなら導入を検討しましょう。
従業員50人以上の企業に義務付けられているのが、従業員のストレスチェックです。
従業員のストレスを早期発見することで休職や病欠を減らし、生産性の低下を防ぐことができます。
また、従業員のストレス軽減に取り組むことで「働きやすい企業」というイメージを従業員が持つようになるため、人材の定着につながります。
さらに、外部に向けてPRすれば、「人を大切にする会社」として認識され企業イメージアップにつながり、優秀な人材の確保もしやすくなります。
健康経営の取り組みとして産業医を導入することで、従業員の健康管理・予防への取り組みを強化できます。
産業医とは医学的な視点から従業員の健康サポートを行う医者で、健康診断や職場のメンタルヘルスケアが主な業務です。
産業医の配置によって病気の早期発見や労働災害の予防につながるだけでなく、従業員の健康管理に対する意識が高まることで、欠勤・病欠による生産力低下も防げます。
従業員の健康問題を早期発見するために定期健診は重要です。
健康診断を通じて従業員の健康課題を把握することが健康経営への取り組みを始める際にも効果的となります。
例えば、業務時間内に定期健診を行うようにすることで、受診率を高めるなどの取り組みもあります。
次に、企業が健康経営に取り組む際のステップについて解説します。
健康経営に取り組む際には優先順位をつけて取り組むことで、効果が上がりやすくなります。
健康経営の効果を最大化するために取り組むべき事項を整理しておきましょう。
まずは「なぜ」健康経営に取り組むのか目的を明確にするために、企業が抱える健康課題をまとめましょう。
健康診断の結果を分析したり、ストレスチェックやアンケート調査を実施したりして、従業員の健康状態やストレス要因など、一人一人が抱える健康課題を明らかにすることが重要です。
例えば、肥満率が高いのであれば食生活の改善や運動機会を増加させるための取り組みが必要ですし、ストレス数値が高いのであればメンタルクリニックの受診費用の補助や、相談窓口の設置が必要になります。
また、休職率や離職率の高さも健康経営における課題として挙げられます。
従業員の心身の課題を解決してモチベーションや企業への帰属意識を高め、離職率の改善を目指すことができます。
健康経営に取り組むことは、明文化して社内外に実施を宣言することが重要です。
健康経営への取り組みを経営陣から発信することで、本気であることが社内外に伝わります。従業員にとっても、勤めている会社が健康経営に取り組む姿勢は心強く感じます。
経営者から全社朝礼やミーティングなどで通達する他、社内報やプレスリリースなどのツールで発信し、健康経営に取り組むことを公式に表明しましょう。
また、発信する際には、健康経営を目指す目的や方針、取り組む内容・目標・計画・評価基準などを明文化することが重要です。
健康経営を明文化・宣言することで、従業員や社会からの信頼性が高まり、さらなるイメージアップが期待できます。
経済産業省が健康経営で実績を挙げた企業を表彰する「健康経営優良法人」に選ばれることを目指すのも良いでしょう。
健康経営に取り組む際には、社内に専門部署や専任者を設けるなどの体制づくりが重要です。
専門部署を設置することで、健康経営の推進に向けた戦略的な企画の実行や評価が可能になり、従業員の健康維持・増進につながる取り組みを継続的に行えます。
従業員の健康管理も含めた労働環境に関連する部署である人事部や総務部を専門部署として任命して「健康経営アドバイザー」を取得させるか、外部から専門家を招くという手段もあります。
外部から招く際には「健康経営アドバイザー」の上位資格である「健康経営エキスパートアドバイザー」の有資格者がおすすめです。
健康経営エキスパートアドバイザーは医療・保健関連以外にも経営に関する資格を併せて有しているので、健康経営を進めるために有効なアドバイスを受けることができます。
健康経営に取り組む際には、綿密な計画を立てて実行することが大切です。
健康経営の専門部署や担当者が主導して、健康経営に取り組む目的(ゴール)を設定し、逆算して取り組む内容の立案や予算の確保、そして実行という順番で進めていきます。
健康経営で取り組む具体的なアクションには以下のようなものが挙げられます。
ノー残業デー実施などの社内で取り組める施策からスタートし、徐々に外部講師を招いた講習会の開催や産業医の導入といったコストが掛かる施策へと移行していきます。
健康課題を改善するための取り組みを実施したら、その成果を評価することが必要です。
定期的に健康診断やストレスチェックなどを実施して改善策の効果を検証し、評価結果をもとに改善策の見直しや新たな施策を検討します。
1ヶ月に一度など、定期的に評価するタイミングを決めておき、設定した最終ゴールから逆算してテコ入れや改善を行いましょう。
途中経過は社内に共有することで参画意識の向上につながります。
また、健康経営には継続的な取り組みが必要です。健康経営の取り組みを社内で定着させ、従業員の健康管理を継続的に行うことで少しずつゴールへと近づけていきます。
経済産業省では、さまざまな企業が健康経営に取り組んでいる事例を紹介しています。
ここでは経済産業省の資料から抜粋した、3社の健康経営への取り組み事例を解説します。ぜひ健康経営に取り組む際の参考にしてみてください。
関連リンク:令和2年3月 経済産業省|健康経営優良法人取り組み事例集
社会福祉法人大洲育成園では、運動機会増加や健康増進に向けた取り組みをしています。
平日の昼食後のウォーキングやグラウンドでの運動などに20年以上取り組んでいる他、受動喫煙防止のために敷地内を全面禁煙にしています。
そうした健康経営への取り組みを社内外に発信するために玄関前に宣言書を掲示したり、施設の入り口から良く見える箇所に「健康経営優良法人」認定の看板等を掲げています。
健康経営への取り組みは徐々に実を結びつつあり、以前は約30%だった有給消化率が50%にアップするなど、ワークライフバランスを実現している企業として学生からの興味も集めています。
関連リンク:社会福祉法人大洲育成園 Webサイト
岡山県のネッツトヨタでは運動機会の増進に向けた取り組みをしています。
従業員に電子万歩計を携行してもらい、歩数を個人別・部署別で公表したり、ウォーキングコンテストを実施したりするなど、楽しみながら運動を継続する仕組みを構築しました。
また、社員食堂での健康意識向上にも取り組んでおり、カロリー別のおかずを選べるようにしたり、ヘルシーな仕出し弁当を提供したりしています。
そうした健康経営への取り組みが評価されて、岡山県の「おかやま健康づくりアワード」で入賞した他、地元新聞やディーラー業界から数多く取材を受けました。
採用面でプラスに働くなど実際の経営効果も出ており、健康経営の模範例として同業他社から注目を集めています。
関連リンク:ネッツトヨタ岡山 Webサイト
ナガオ株式会社では、社長が従業員の健康年齢寿命を延ばしたいとの想いから、セルフチェックシステムを導入しました。
健康状態のWeb問診や測定データの分析結果と個別アドバイスから、肥満傾向の人には食生活に関するアドバイスが送られます。
運動機会の増進にも取り組んでおり、マラソンやソフトボールのクラブ活動の費用を会社が負担したり社内でスポーツ大会を開催したりするなど手厚くサポートしています。
健康経営への取り組みを続けた結果、10年間の離職率が0.5%と低い水準で推移しているだけでなく、ワークライフバランスを重視する就職志願者からの人気を獲得しています。
関連リンク:ナガオ Webサイト
健康経営に的確に取り組めば、企業イメージのアップや生産性向上、人材の定着率向上などの効果が期待できます。
また、健康経営には専門部署や担当者を任命して全社的に取り組み、社内外に発信することで企業イメージアップにもつながります。健康経営はすぐに結果が出るとは限らないので、長期的視野を持って改善を繰り返しながら粘り強く取り組んでいきましょう。