【ストレスチェック】高ストレス者の対応│面談やその他の対策

一定以上の規模の事業所にはストレスチェックが義務付けられています。

ストレスチェックが義務化された背景には、近年精神障害の労災認定者が増えていることや、働き盛りの自殺者が多いことが挙げられます。社会の著しい変化による仕事量の増加や複雑な人間関係、パワーハラスメントやいじめなどさまざまな要因による高ストレスにより、集中力の低下や情緒不安定などの症状が出たり、ひどい時にはうつ病を招いたりしてしまいます。

テストの結果、高ストレス者が出た場合、企業はどのように対処すればよいのでしょうか。

ストレスは職場の労働生産性や離職率を悪化させるため、早期対応が不可欠です。本記事では、高ストレス者が出た場合に企業が取るべき対処方法や根本的な改善策を解説します。

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目次

高ストレス者とは

高ストレス者とは、ストレスチェックによってメンタルヘルス不調の兆候が強く確認された人を指します。

深刻な場合は集中力の低下を引き起こしたり、他者と良い人間関係を保つ余裕を失わせたりするため、高ストレス者の多い職場は労働生産性や組織力が低くなりやすく、離職率も高くなってしまいます。

ストレスチェックの目的

ストレスチェックとは労働者の心身にどれほどストレス負荷がかかっているか調べるためのテストです。労働安全衛生法に基づき、常時50名以上の従業員がいる事業場に1年間に1回の実施と労働基準監督署への報告が義務付けられています。

目的は言うまでもなく労働者の心身の健康を守ることにありますが、その背景には精神障害による労災認定件数が年々上昇していることが挙げられます。この制度は、各労働者に自分の心身にどれほどストレスが生じているか客観的に把握させ、深刻なメンタルヘルス不調が生じる前に未然に防ぐための一次予防策として効果が期待されています。

過労死等の労災補償状況 厚生労働省 令和3年6月23日発表

出典:令和3年6月23日 厚生労働省「過労死等の労災補償状況」を元にRIZAPでグラフ化
※本表は、労働基準法施行規則別表第1の2第9号に係る精神障害について集計したもの ※決定件数は、当該年度内に業務上又は業務外の決定を行った件数で、当該年度以前に請求があったものを含む ※自殺は、未遂を含む件数

実施することの効果

ストレスチェックを実施し、メンタルヘルス対策に取り組むことには、事業者と従業員の双方にポジティブな効果をもたらします。以下に挙げる利点をよく理解し、前向きに取り組むことが大事です。

【事業者のメリット】

事業者側のメリットとしては、ストレスチェックを実施することで従業員のメンタルヘルス不調を未然に防いだり、早期対応をしたりできることが挙げられます。高ストレス者の多い職場は人間関係もギスギスしやすく、不注意などによるヒューマンエラーも起きやすくなります。高ストレス者のメンタルケアをすると共に、職場に内在するストレス要因を見つけて事前に対策を打つことで、職場環境の改善や労働生産性の向上を期待できるでしょう。

【従業員のメリット】

従業員側のメリットとしては、自らのストレス状態を正確に知ることで、セルフケアのきっかけになることが挙げられます。ストレスチェックを通してストレスの状態や原因など、自分を見つめ直す機会を得られます。それによって、働き方を見直したり、ストレスへの対処を行えます。また、ストレスチェックに協力することで、より働きやすい職場づくりに貢献できます。

高ストレス者の選定

法に基づくストレスチェックは以下の3領域を含むことが必要になります。

  • 仕事のストレス要因:職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
  • 心身のストレス反応:心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
  • 周囲のサポート:職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目

厚生労働省が使用を推奨する「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)を利用することが推奨されており、以下のような項目が例としてあげられます。

【仕事のストレス要因】
・非常にたくさんの仕事をしなければならない
・自分で仕事の順番・やり方を決めることができる
・勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない
・働きがいのある仕事だ

【心身のストレス反応】
・活気がわいてくる
・イライラしている
・気がはりつめている
・仕事が手につかない
・何をするのも面倒だ

【周囲のサポート】
・次の人たちはどのくらい気軽に話ができますか
・あなたが困った時、次の人たちはどのくらい頼りになりますか
・あなたの個人的な問題を相談したら、次の人たちはどのくらいきいてくれますか?

こうした項目に従業員が回答し、その結果をもとに高ストレス者を選定します。

高ストレス者の判定基準

誰が高ストレス者に該当するか判定するのは、産業医などの実施者ですが、そこには一定の基準があります。

高ストレス者を選定する場合には、まず心身の自覚症状があり対応の必要な従業員が含まれている可能性の高い「心身のストレス反応」の評価点数が高い者を選ぶことが必要です。

しかし、「心身のストレス反応」の評価点数の合計が高い者だけを選定すると自覚症状としてはまだそれほど顕著な症状は現れていないものの、仕事の量が非常に多い従業員であったり、周囲のサポートが全くないと感じている従業員など、今後メンタルヘルス不調のリスクがある者を見逃してしまう可能性があります。

このため、ストレスチェックで「心身のストレス反応」の評価点数の合計が一定以上の従業員で、かつ、「仕事のストレス要因」及び「周囲のサポート」の評価点数の合計が著しく高い者についても、高ストレス者として選定する必要があります。

前者と後者どちらかだけを選定するのではなく、心身の自覚症状に関する項目の評価点数の合計が高い者はもちろん、心身の自覚症状についての評価点数がそれほど高くなくても、心理的な負担の要因や周囲の支援の評価点数が著しく高い場合は、メンタルヘルス不調のリスクが高いため、高ストレス者と評価し必要な対応につなげる必要があります。

上記のほか、選定基準に加えて補足的に医師、保健師、歯科医師、看護師若しくは精神保健福祉士又は公認心理師、産業カウンセラー若しくは臨床心理士等の心理職が従業員に面談を行いその結果を参考として選定する方法も考えられます。この場合の面談は、ストレスチェックの実施の一環として位置付けられています。

公益社団法人 全国労働衛生団体連合会 メンタルヘルス専門委員会 によるストレスチェックの報告書(2019年)によると、受検した 1,514,572 人のうち、 高ストレス者は 218,462 人で、受検者の 14.4%でした。

高ストレス者の具体的な判定基準は、用いる質問表などで異なります。
厚生労働省のストレスチェック制度実施マニュアルでは、ストレスチェックを受けた従業員の上位10%を高ストレス者として判定する設計としています。ただし、それぞれの業種や職種によって数値が異なるケースも考えられます。

そのため、10%という数値はあくまでも目安としてそれぞれの事業所の状況により、高ストレス者の割合を変更することが可能です。
1度ストレスチェックを実施して、その結果をもとに次回以降の判定基準を設けるとよいでしょう。

もし高ストレス者率が約15%を大幅に超える場合は、職場環境の早急な改善が望まれます。

参照:平成30年 全衛連ストレスチェックサービス実施結果報告書

高ストレス者への通知方法 ~どうアプローチするのが良いか?~

自身のテスト結果は、基本的にすべての受検者に個別に通知しますが、高ストレス者にはこれに加えて、産業医や保健師などの面談指導を受けることを勧奨する通知も行われます。ただし、ストレス状態はプライバシーにかかわる非常にセンシティブな情報です。

そのため、周囲にその従業員が高ストレス者であることが判明しないように、面談指導の申出勧奨は本人のみに伝わるようにする必要があります。申出勧奨は、テストの結果通知から1ヶ月以内が望ましく、個人宛に電子メールや書面で通知する方法があります。

高ストレス者には産業医の面談を受けるように促す通知を送りますが、これはあくまでも「勧奨」に留まります。つまり、高ストレス者と判定されたからと言って、従業員が面談を受ける義務はなく、実際ほとんどの従業員は面談を希望しません。

厚生労働省労働衛生課調べによると、ストレスチェックを受けた労働者のうち、医師による面接指導を受けた労働者はわずか0.5%でした。

「人の目が気になる」、「上司に知られることで不当な扱いを受けるのではないか」、「根掘り葉掘りプライベートなことを聞かれるのではないか」、といったさまざまな理由で面談を受けない人がほとんどです。

参照:厚生労働省 ストレスチェック制度の実施状況(2017年)

高ストレス者の面談プロセス

高ストレス者の面談をどのように進めていったらいいのか、その手順について解説します。面談には、事業者、ストレスチェック担当者、実施者(産業医)、人事担当者が関わります。

面談の実施は事業場の産業医、事業場の産業保健活動に従事している医師、もしくは産業医資格のある医師に外部委託することが推奨されています。

面談者(高ストレス者)から面談の申し込みがあった場合、事業者が医師に面接指導実施を依頼します。ストレスチェック担当者は、高ストレス者と医師の面談前に、人事担当者や高ストレス者本人から必要な情報を収集し、それを医師に提供します。医師は面談結果を報告書にまとめ、事業者に意見を述べることになっています。

面談の実施率を上げるためには、日時に複数の選択肢を持たせたり、なるべくリラックスできる場所を選んだりするなどの配慮が大切です。人目につかない場所を選ぶことも大事ですが、あまりに閉鎖的な場所はトラブルにつながる可能性もあるのでご注意ください。

人事情報などの準備・面談者への共有

面談に当たって、実施者は面談者についてより詳しい知識を得るために、ストレスチェック担当者を通じて、人事担当者や高ストレス者本人から収集した情報を提供してもらいます。以下のような情報が必要です。

  1. 対象となる労働者の氏名、性別、年齢、所属する事業場名、部署、役職
  2. ストレスチェックの結果(個人のストレスプロフィール等
  3. ストレスチェックを実施する直前 1ヶ月間の労働時間(時間外・休日労働時間を含む)、労働日数、業務内容(特に責任の重さなどを含む)等
  4. 定期健康診断やその他の健康診断の結果
  5. ストレスチェックの実施時期が繁忙期又は比較的閑散期であったかどうかの情報
  6. 職場巡視における職場環境の状況に関する情報

面談によるストレス状況等の確認・評価

面談を担当する医師は、事前に入手した情報やその場で本人から聴取した内容に基づいて、ストレス状況等の確認に努めます。現在の勤務状況やストレス負荷の程度、生活習慣など、業務以外に心身に影響を与える事柄などが主な参考情報になります。

これらの確認を通して、医師は面談者のストレスが業務に起因するのか否かや、心理的負担が心身に与えている悪影響の大きさを評価します。業務に起因する場合はその原因特定に努め、就業上の措置が必要かどうかなどの評価を下します。

面談による評価を踏まえた本人への指導・助言

医師は先の評価を踏まえて、面談者のストレス状態を改善するための指導や助言を行います。抑うつ症状などメンタルヘルス不調の兆候が顕著にみられた面談者に対しては、専門医療機関の受診を推奨する場合もあります。

個人情報の保護と事業者への報告についての同意

面談の冒頭で、医師は面談者に対して、面談で得た個人情報を保護することを伝える一方で、適切な対処を求めるために事業者へ報告することを伝え、同意を得ることが必要です。同意が得られない場合は面談を行うことができません。

フォローアップ

引き続き経過観察が必要と判断された場合、医師は今後も面談や支援等を継続することを面談者に提案することがあります。そのフォローアップを受けるかどうかの判断は、面談者本人が任意で決められます。

面接指導の申出の勧奨ポイント

面談指導の通知を受けた高ストレス者の気持ちの一例面談指導を受けるかどうかは従業員本人の自由意思に委ねられており、その申出率は一般にとても低い数字に留まります。しかし、従業員のメンタルヘルス不調を予防するためには、やはりできるだけ面談を受けてほしいものです。そこで以下では、面談希望率を上げるためにはどのような点に配慮して勧奨すればよいのかを解説します。

面談を受けるメリットを伝達する

面談を受けてもらうには、面談を受けることでどのようなメリットがあるのか、あるいは面談をしないとどのようなリスクがあるのかを分かりやすく伝えることが大切です。面談を受けることで自身のメンタルヘルス不調を未然に防いだり、ストレスに対処するための方法があると分かれば、自発的に面談を受けようと思ってもらえる可能性が高まります。

面談しても不当な措置や不利益がないことを伝える

高ストレス者が面談を避ける理由の一つに、面談することで降格や転属などの不当な措置や不利益を受けることにつながるのではないかという警戒心が考えられます。そのため、テスト結果に関連した情報で事業者が従業員に不当な措置などを取ることはないことを伝え、安心して面談を受けてもらえるようにすることも重要です。

実際、事業者が不利益な取り扱いを行ったり、面接指導の結果を理由として解雇や退職勧奨などを行うことは労働安全衛生法で禁止されています。

情報の取扱いを明確にする

高ストレス者の安心と信頼を得たり、後々のトラブルを避けたりするためには、面接で得た情報を誰にどこまで共有するのか明確に伝えることも大切です。面談の結果、時短勤務など就業上の便宜を図る必要が判明した場合は、経営者や管理者などに高ストレス者の情報を伝える必要もあるでしょう。しかし、そうした場合でも本人の了解を得たうえで知らせることを推奨します。

オンラインでも実施可能にする

面談をオンラインでも実施可能にすることも有効な手法です。実際に足を運ばなくてもよいことでスケジュールの調整がしやすくなる上、周囲に知られないための配慮もしやすくなります。

面談を希望しない高ストレス者への対応

いくら対策を講じたとしても、すべての高ストレス者が面談を希望するかと言えば、やはり難しいのが実情です。しかしだからと言って、何もできないわけではありません。以下では、面談を希望しない高ストレス者への対応策について紹介します。

セルフケアを強化する

メンタルヘルスにおいては、他者からの手助けと同じくらいに本人によるセルフケアも重要です。

セルフケアは従業員一人ひとりが自らのストレスを予防し、気付いた時に適切に対処することです。簡単そうですが実は正しい知識がないと適切に対処できません。

ストレスの認知や、その反応に自ら気付くためには、従業員一人ひとりがストレス要因に対する反応や、心の健康について理解するとともに、気付こうとする姿勢が必要です。

そのため面談を希望しない人には、せめてセルフケアに役立つ資料やチェックシート等を提供し、それを参照するように促すことでも一定の効果が期待できます。

ですが、自ら気付き、対応する「セルフケア」を適切にできるようになるには、教育研修の機会を定期的に設けて、意識を高めていくことが最も重要になります。

メンタルヘルスセミナーは年に1~2回開催している企業が多く、高ストレス者だけでなく予備軍にまでアプローチできることがメリットとなります。

メンタルヘルスという内容に対して一人だと参加しずらいことや、参加していることを他の人にばれたくない従業員もいるかもしれません。その場合は、対面形式だけでなく、オンライン形式で実施することで参加ハードルを下げることが可能になります。

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社外に相談窓口を設置する

社外に相談窓口を設置するのも一つの手です。
2020年6月に施行された改正労働施策総合推進法によって設置が義務化されています。中小企業については2022年3月31日までは努力義務となっていますが、2022年4月1日には、大企業と同様に義務化が適用されるため、全ての企業において体制整備が必要となってきます。
相談窓口は社内・社外いずれかに設置するものです。しかし、高いストレスを感じて深刻に悩んでいる場合などは、相談窓口に相談を持ち掛けたことを周りに知られる不安や、相談によって、知られたくない人(例えばハラスメントの原因となる相手)にまで広まってしまうこと、社内に対する不信感などを抱いている可能性があるため、社外の相談窓口の方が相談しやすくなることが考えられます。
特に事業所内の相談窓口の場合、対応者を知っている場合が多く、それが故に相談しづらいという不安が考えられます。
また高ストレス者は、周囲からの評価や見られ方、噂に敏感であることが多く、知られることを嫌う傾向があります。そこで、気軽に相談できることがプラスに働く可能性があるため、社外に専門相談窓口を設置する方が良いでしょう。

高ストレス者を放置するとどうなる?

ストレスチェックで高ストレス者となった従業員を放置してしまうと様々なリスクが発生します。

メンタル不調に陥る

高ストレス者はメンタル不調に陥る可能性が高いとされています。日本においては厚生労働省が、「メンタルヘルスの不調」についてこのように定義しています。

精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう。
※ 平成27年11月30日 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」P14

メンタル不調になると気分の落ち込みや意欲の低下だけでなく、脳機能の低下をもたらし、集中力や判断力を鈍らせます。結果的には仕事の生産性が低下するだけでなく、重度の場合は休業になる可能性も考えられます。

また、一緒に働いている身近な仲間が2人、3人とメンタル不調によって業務効率が下がったり、体調不良になっていくと、職場内には不穏な空気感がひろがります。そして不調ではない従業員に対しても、不安感をもたらしたり、モチベーション低下を招くことがあります。

このように、メンタル不調者だけでなく、職場全体へ悪影響をもたらすため、高ストレス者への対応はとても重要になります。

参考:メンタルヘルスとは?職場のメンタル不調の予防と対応策

安全配慮義務違反になる

安全配慮義務とは、従業員が安全で健康に働けるように配慮することです。2008年に施行された労働契約法第5条に明文化されています。

<労働契約法 第5条(労働者の安全への配慮) 条文>
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
引用元:労働契約法

安全配慮義務違反となる視点は、予見可能性結果回避性の2点になります。

  • 危険な事態や被害の可能性を事前に予見できたかどうか(予見可能性)
  • 予見できた損害を回避できたかどうか(結果回避性)

この安全配慮義務は工場や建設・工事現場などの危険性をはらむ業務に限ったものではありません。条文の「生命、身体等の安全」には、メンタルヘルスについても含まれています。

したがって、ストレスチェックにおける高ストレス者の放置は安全配慮義務違反となる可能性があります。メンタルヘルス疾患の可能性が高いことが予想できます。しかし企業側が何もしなかったという場合は「予見可能性」に抵触する恐れがあります。
最悪の事態を予想できたにもかかわらず、企業が何の措置も取らなかった場合に問題化しやすいという企業にとってのリスクとなります。

安全配慮義務違反の罰則について、労働契約法の条文には記載はありませんが、訴訟になると、民法上の規定により損害賠償請求が発生する場合があります。このように安全配慮義務の観点からも高ストレス者を放置せず適切な対応が求められることを認識しておきましょう。

従業員のメンタルヘルス不調の未然防止につながる取り組み

最後に、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことにつながる取り組みを紹介します。

職場環境の改善をすすめる

メンタルヘルス不調の未然防止のためには、職場環境の整備は欠かせません。

コミュニケーション不足などが原因で人間関係に問題が生じている場合には、従業員にメンタルストレスが溜まりやすくなります。改善策や対策をとらないと、従業員がうつ病にかかる恐れがあります。職場環境の改善により従業員の心身のストレスを減らすことは、従業員の健康維持に役立ちます。

ストレスチェックの集団分析を職場、各部署などの単位で行うことで、職場環境が整っておらず、高ストレスの従業員が多い職場を特定できます。

ストレスチェックの結果を参考に職場に潜むストレス要因を特定し、それを改善していくことで従業員のストレスを減らすことが期待できます。

関連記事:職場環境の改善アイデア|組織向上への取り組みと成功事例

たとえば、ストレス要因ごとの職場環境改善例は下記のとおりです。

仕事が効率的に進まない

仕事の進め方で悩んだり抱え込んだりすると、ミスやトラブルの原因になったり、その対処に費やす時間が増える可能性が高くなりストレスの一因になります。仕事の進め方が悪いと感じる場合、業務効率を改善するには「段取り」を整える必要があります。
この段取りを個人個人で対策するのではなく、チーム全体で業務内容、業務工程の負担を軽減させるなどの改善策を講じると、業務の効率化につながります。

  • チームミーティングを定期的に開催する
  • 部署内のスケジュールや必要資料の共有の仕組みづくり
  • 会議数や会議時間の見直し
  • 作業の段取りの見直しやマニュアル化
  • 1on1の実施
  • 時間外労働の事前申請制の導入

仕事環境にストレスを感じる

高ストレスにならないよう業務をスムーズに遂行するには、働きやすい作業場・オフィス環境であることも大切です。人と人との交流が活性化されることによって生産性向上のアイデアや想いがブラッシュアップされ、職場のストレス軽減だけでなく活性化されていくことにつながります。

  • 快適な作業環境の確認(音・温度・空調・明るさ等)
  • 快適な共有スペースの確保
  • 動線の確保・レイアウトの見直し
  • リフレッシュスペースやミーティングスペースの確保

人間関係や仕事の支援状況がスムーズではない

人間関係が悪い職場環境では、従業員がメンタルヘルスの不調で悩んだり、心身症(ストレス性内科疾患)にかかったりする恐れがあります。従業員同士が円滑なコミュニケーションを取るためには、共同の作業スペースを設置するなど、コミュニケーションが生まれやすい職場を作ることが大切です。お互いに「気軽に話す、笑う、感謝する、それぞれの業務内容を知る」などのコミュニケーションを取り、理解し合う関係を作ることがストレスのない職場づくりにつながります。

  • フレックスタイムの導入
  • サンクスカードの導入
  • ランチ会の実施
  • 勉強会の開催
  • 心理的安全性の確保
  • コミュニケーションツールの活用

安心して仕事に取り掛かれない

従業員が育児休暇や介護休暇などの制度を利用しやすい環境をつくることも大切です。家庭と仕事を両立できる職場環境がつくられているとストレスを感じづらいだけでなく従業員が長く勤めやすくなり、研修や教育にかかるコストや時間を削減できます。

  • 定期的な全社ミーティングの実施(方向性やビジョンの共有)
  • ハラスメント対応マニュアルの作成
  • 資格取得の後押し
  • 育児休暇の促進
  • キャリア相談窓口の設置

メンタルヘルス対策をする

メンタルヘルス対策の面からも、未然防止につながる取り組みができます。

面談を希望しない高ストレス者の対応でもお伝えした、従業員自身で行う「セルフケア」「社外の相談窓口」だけではなく、下記2つの取り組みも有効です。

組織の管理監督者による「ラインケア」

ラインケアとは、組織の管理監督者による部下のストレスケアのことです。管理監督者が従業員の具体的なストレス要因を把握し、相談に乗ったり、必要に応じて環境を改善したり、配置転換等の策を講じることを指します。

マネジメント層に向けたラインケアに関する研修の実施は有効な手段のひとつです。日頃から上司が部下のメンタルヘルスを重視し、部下の不調の兆候を敏感に察知して適宜相談に乗れるようになれば、従業員のストレス状態は非常に緩和されることが期待できます。

ラインケアに関する詳しい内容はこちら

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

事業場内産業保健スタッフ等によるケアとは、産業医や衛生管理者、保健師、心理職、精神科医など社内の産業保健スタッフ等による支援のことです。

  • 具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
  • 事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口
  • 職場復帰における支援、など

「健康経営」で効果的にメンタルヘルス対策を

ここまで見てきたようなメンタルヘルス対策に加え、より効果的に対策を実施するために近年重視されている「健康経営」の視点を取り入れることも大いに役立ちます。

健康経営とは、『従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法』です。

あくまで企業が用いる経営手法ですので、従業員の健康を促進することは手段であり、目的は組織の活性化・生産性の向上であり、最終的には業績向上、企業価値の向上を目指します。

健康経営として健康プログラムの推進やメンタルヘルス対策を練ることで、事故や傷病予防だけでなく、ストレスの要因への対処や適切なワークライフバランスの達成が可能になります。

健康経営の取組みとして、「メンタルヘルス不調者への対応」や「特定保健指導の推進」など従業員の健康増進につながる項目が含まれています。そのため、健康経営と併せてメンタルヘルス対策を推進することで、より効率的に従業員の健康を保持・増進ができ、生産性の向上へ取り組み効果を最大化することができます。

関連記事:【徹底解説】健康経営とは?

まとめ

労働者が働きやすい職場環境を整え、高ストレス者を出さないようにするためには、日頃からメンタルヘルスケア予防を行ったり、職場改善の取り組みなどを行うことが重要です。

ストレスチェックで高ストレス者が出た場合、実施者は医師の面接指導を受けることを該当者に勧奨します。しかし面接指導を受けるかは従業員が任意で決めるものであり、面談を申し出る人は少ないのが実情です。

面談の実施率を上げ、適切なメンタルヘルスケアを従業員に提供するため、面接を受けやすいようにさまざまな配慮を実施しましょう。

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