ワークエンゲージメントとは?定義、高める方法、測定、事例

ワーク・エンゲージメントとは、従業員「個人」の仕事に関連するポジティブで充実した心理状態を指す言葉で、活力・熱意・没頭の3つが揃った状態として定義されています。

参照:厚生労働省「「働きがい」をもって働くことのできる環境の実現に向けて

仕事に対するポジティブな心理状態であるワークエンゲージメントを向上させることで、企業の生産力向上や離職率の低下につながります。

本記事ではワークエンゲージメントの概要や測定の仕方、高める方法などについてご紹介します。

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目次

ワークエンゲージメントとは

日本企業の生産性や競争力が低下しつつある現在、注目されているのがワークエンゲージメントです。

従業員エンゲージメントとの違いや、似たような概念との違いを明確にし、ワークエンゲージメントの意味・概念・定義を詳しくご説明します。

ワークエンゲージメントの意味・定義

ワークエンゲージメントとは、従業員の精神的な健康度をあらわす概念です。具体的には、熱意・没頭・活力の3つが満たされている状態のことを指します。

この3つが揃った人は、仕事にやりがいと誇りを感じているため、自身の業務に熱心に取り組みます。

ワークエンゲージメントの概念

熱意:仕事にやりがいを見出し、興味を持って熱中している状態のこと。挑戦する意欲にあふれているため、新たな商品などの開発やキャリアアップにつながりやすくなります。

没頭:時間を忘れるほど仕事にのめり込み、勤務時間が終わっても気持ちを切り替えるのが難しい状態のこと。仕事に取り組むことに幸福を感じるため、生産性が向上しミスが減りやすくなります。

活力:仕事への意欲が高く、心理的な回復力があり、困難な業務にも粘り強く取り組める状態のこと。仕事でストレスを感じにくく、楽しみながら業務をこなすことができます。

この3つがそろうと仕事の成果や仕事の質の向上につながるため、周囲からの評価も高くなり仕事から活力を得られます。熱意・没頭・活力の3要素が相乗効果をもたらし、仕事の満足度を高め、いきいきとした状態に導いてくれるのです。

令和元年版労働経済の分析」では、日本を 含めた16ヶ国のワークエンゲージメントスコアを比較した論文(Shimazu, Schaufeli, Miyanaka, & Iwata(2010))の一部を紹介したコラムを掲載しており、それによると日本のワークエンゲージメントスコアは、他国と比較して相対的に低い状況にあるそうです。

ワークエンゲージメントと類似する概念

ワークエンゲージメントと類似する概念

ワークエンゲージメントと類似の概念としては、「ワーカホリズム」、「バーンアウト」、「職務満足感」の3つがありますが、仕事への態度や認知、活動水準などに明確な違いがあります。以下にそれぞれの違いを解説します。

  • ワーカホリズム
    ワークエンゲージメントと同じく活動水準は高いのですが、仕事への態度や認知が否定的な状態を指します。ワークエンゲージメントが楽しく仕事をしているのに対し、ワーカホリズムでは仕事をしていないと不安など、動機づけがネガティブなところに違いがあります。
  • バーンアウト
    ワークエンゲージメントと対極にあり、「燃え尽き症候群」という言葉でも知られている概念です。仕事への態度や認知は否定的で、活動水準も低くなります。献身的に仕事に取り組んだにもかかわらず、本人が望んだ成果が得られず、不満や疲労感で労働意欲を失った場合に陥る状態をいいます。
  • 職務満足感
    仕事を評価した結果から生じる、ポジティブな心理状態のことを指します。ワークエンゲージメントは「仕事をしている時の状態」に対する認知ですが、職務満足感は労働条件や職場環境など「仕事そのもの」に対する認知という点が違っています。職務満足感も仕事に対して肯定的な態度ではあるものの、仕事に没頭している状態ではないため、活動水準は低くなります。

従業員エンゲージメントとの違い

ワークエンゲージメントと似た言葉として、従業員エンゲージメントがあります。

人事・組織開発における「従業員エンゲージメント」とは、従業員が会社の向かっている方向性に共感し、企業と従業員が双方向の関与によって結びつきを強めていきながら従業員が自発的に組織に貢献したいと思う意欲のことを指します。従業員エンゲージメントは人間関係・成長・仕事内容・職場環境などいくつかの項目が重なり形成されています。

従業員エンゲージメントとは

一方、ワークエンゲージメントは「仕事」のみを対象としているため、異なる概念として理解しましょう。

関連記事:従業員エンゲイジメントとは?測定方法と高める方法

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ワークエンゲージメント向上が組織に与える効果

では、ワークエンゲージメントを高めることにより、組織にはどのような効果があるのでしょうか。以下に詳しくご説明します。

労働生産性の向上

厚生労働省が発表した「令和元年版労働経済の分析」によると、ワークエンゲージメントのスコアが高いほど、個人・企業ともに労働生産性が向上していると感じることも多いようです。

また、株式会社リンクアンドモチベーションが慶応義塾大学と共同で行った「エンゲージメントと企業業績」に関する研究でも、従業員エンゲージメントの向上は、営業利益率や労働生産性によい影響を与えるという結果が出ています。

労働生産性が高くなる理由としては、企業の方向性やビジョンに共感した状態では、自ら積極的に仕事に取り組めるためと考えられます。労働生産性を向上させるためには、環境を整えるだけでなく、従業員一人ひとりのモチベーションを高めることが大切なのです。

参照元:厚生労働省「令和元年版労働経済の分析」、株式会社リンクアンドモチベーション「エンゲージメントと企業業績

離職率の低下

同じく「令和元年版労働経済の分析」によると、ワークエンゲージメントが高いほど、新入社員(入社3年後)の定着率が高く、従業員の離職率が低いことが示唆されています。

年収とワークエンゲージメントの高さは必ずしも比例しないため、人件費を増やせない企業でも従業員のワークエンゲージメントを高める努力を行えば、優秀な人材の流出を防ぐことが可能と言えるでしょう。

今後も少子高齢化は加速化すると考えられているため、企業は労働力をどのように確保し、自社に定着させるかを考えなくてはなりません。ワークエンゲージメントを高め、従業員の熱意・没頭・活力の3つが満たされている状態をつくることで定着率が向上し離職率を引き下げられます。

従業員同士の絆が強くなれば困ったことが起きたとき、自然と助け合える風土が形成されるため、社内で特定の従業員が孤立するような状況も回避できるでしょう。このような風土を形成できれば、さらに離職率の低下を実現できます。

取り組みにより培った社内風土や低い離職率は、採用の場においても強い武器となるでしょう。

組織の活性化

ワークエンゲージメントの向上は、従業員本人の仕事への積極性・自発性をうながすだけでなく、役割外の業務への積極的なアプローチにもつながると考えられています。

従業員一人ひとりが最大のパフォーマンスを発揮し、さらに役割外のパフォーマンスも向上すれば、組織全体の生産性が底上げされ、労働環境も活性化します。 

それぞれが組織の未来を考え、積極的に意見を出し合える環境は、企業の成長をうながし、結果的に売り上げの向上にも貢献することでしょう。 

企業イメージの向上

最近では、労務問題への社会的関心の高まりやSNSの普及を受けて、職場環境など企業内部の情報も消費者に伝わるようになってきています。それらの情報が企業イメージを大きく左右しており、「ブラック企業」「ホワイト企業」のような言葉も出てきました。

 どんなに良い商品やサービスを提供していても、劣悪な環境で従業員を働かせている企業の商品は消費者から選ばれない時代になっています。

ワークエンゲージメントの向上は、従業員本人の仕事への積極性・自発性をうながすだけでなく、役割外の業務への積極的なアプローチにもつながると考えられています。結果的に顧客が求める質の高い製品やサービスを提供できるようになり、企業のイメージも向上するでしょう。

関連記事:企業イメージ向上のための3つの方法

従業員の健康増進

令和元年版労働経済の分析」によると、ワークエンゲージメントを高めることは、仕事中の過度なストレスや疲労感を軽減する可能性があることが示唆されています。

一方、ワーカホリックの状態でも働きがいを感じることがあるため、企業はやりがいを盾に従業員に過度な労働を強いない配慮も必要です。一定の労働時間の中でいきいきと仕事に取り組める環境づくりの実現を常に考えましょう。

仕事でのストレスや疲労感の軽減は、質のよい睡眠をうながし、従業員一人ひとりの健康増進にもつながります。さらに、ストレスによる精神疾患の予防なども期待でき、ストレス耐性の高い組織づくりに貢献します。

従業員エンゲージメントを向上させる健康施策

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ワークエンゲージメントを高める2つの要因

ワークエンゲージメント(仕事の要求度-資源モデル)

従業員のワークエンゲージメントを高めるため、どのような働きかけを行えばよいのでしょうか。過去の研究によりワークエンゲージメントを高める要因は「仕事の資源」と「個人の資源」とされています。

仕事の資源

仕事の資源とは、仕事へのモチベーションやパフォーマンスを向上させ、ストレス軽減に繋がる要因を指します。

「仕事量などの負担の軽減」「モチベーションを高める」といった役割を果たす要因であり、具体的には下記のようなことが挙げられます。

  • 上司からのパフォーマンス・フィードバック
  • 上司によるコーチング
  • 仕事のコントロール
  • 業務の権限移譲、裁量権の調整、拡大
  • 報酬
  • 承認
  • 研修機会
  • 社風や制度による恩恵
  • 組織のビジョンと個人との価値観観の一致

個人の資源

個人の資源とは、従業員一人ひとりが持っている心理的資源、内的な要因のことであり、心理的ストレスを軽減させたり、モチベーションアップ、仕事や生活への満足の原動力となる、一人ひとりの内的要因などを指します。

「心理的ストレスを軽減させる」「モチベーションをアップさせる」といった役割を果たす、自分自身の内的なものです。具体的には下記のようなことが挙げられます。

  • 自己効力感(できそうだと思う見込みや自信の源)
  • 組織内での自尊心
  • 仕事や職場に対する楽観性
  • 目標設定
  • 動機づけ
  • パフォーマンス
  • 仕事や生活への満足感

「仕事の資源」へのアプローチ方法

まず上で紹介した「仕事の資源」には、上司からのフィードバックや評価、職場の風土、会社の支援体制があります。つまり上司と部下の関係性や職場環境は、ワークエンゲージメントを向上させる上で重要な役割を担うといえます。

組織ができる工夫としては、管理者・職場環境それぞれへのアプローチが考えられます。

以下に具体的にご説明しましょう。

管理者へのアプローチ

従業員が生き生きと働けるかどうかは、管理者がどういったアプローチができる人材であるかにも左右されます。部下のエンゲージメントを高めるために管理者に行えるアプローチとしては、以下のようなものが考えられます。

管理職研修

ワークエンゲージメントの向上につなげるための管理者(上司)と部下のコミュニケーションには、報連相などの業務に関するやり取りだけでなく、やる気を引き出したり、組織への帰属意識を高めるといった、業務を円滑に進行するための要素も重要です。一例として、ポジティブな言葉を使うこと、傾聴すること、承認欲求を満たすこと、ポジティブな目標設定をすること等が挙げられます。こうした管理者にとって重要な考え方やコミュニケーションのスキル向上の研修機会を設けることも重要です。

ラインケア研修

ラインケア研修は、管理監督者が職場のメンタルヘルスを改善・強化するための方法を学ぶ研修です。厚生労働省は、職場におけるメンタルヘルス対策を推進するため「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を策定・公開しました。この指針では、4種類のメンタルヘルスケアとして、「ラインケア」「セルフケア」「事業場外資源によるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」を紹介しています。このように、ラインケアは、労働者の心の健康の保つために必要不可欠なケアのひとつとして認知されています。

メンタルヘルスの「4つのケア」

具体的には、ラインケアとは管理監督者が部下のメンタル不調にいち早く気づき、問題が発生している場合に行うケアのことです。管理監督者には、部下からの相談に対応する、心の問題により休職していた部下の職場復帰を支援する、ストレスの多い職場環境を改善するなど、職場のメンタル不調者の増加防止・予防対策の実施が求められています。

ラインケアで管理職が実施する4つのこと

職場のメンタルヘルス対策では、問題の早期発見と迅速な対応による改善が重要です。ラインケア研修の主な目的は、職場環境を適切に管理して従業員の心の健康を維持するために、管理監督者がメンタルヘルスに関する知識を習得することです。

ラインケア研修では、メンタルヘルスの基礎知識以外にも、部下の小さな変化からメンタル不調を早い時期に発見する方法や、日々のコミュニケーションで気をつけるべき点、部下の相談に対応する際の注意点などについても学べます。このため、研修によりラインケアを効果的に行うための総合的なスキルが習得できます。

ワークエンゲージメントの要素である熱意・没頭・活力の3つが満たされているポジティブな心理状態を作り出すためには、普段からメンタルヘルスケアの基本を理解し実施している管理者の存在が重要になるでしょう。

コーチング力の向上

日々のコミュニケーションの積み重ねにより従業員が生き生きと働ける上司部下の関係性が作られていきます。

コーチングのコミュニケーションは、1on1ミーティングなどと同様に双方向型で実施されるものです。似たような言葉でティーチングがありますが、これは直訳の通り、教えること指します。他方で双方向型で状態を見ながら導いたり引き出したりすることをコーチングと言います。そのプロセスでは、個別に目標を組み立てることや、達成に導くために、執拗にせかし立てたりすることなく根気強く見守ること、そして褒めることなどが重要です。

1on1ミーティングの質の向上

昨今は1on1ミーティングを日常的に取り入れ、従業員の状態把握やキャリアビジョン、業務の進捗把握、人間関係の困りごとなど、多岐にわたる項目を話し合い、上司と部下での有効なコミュニケーション機会として位置付けられています。

上司の向き合い方によって1on1ミーティングの質を高めることも下げることも出来るため、位置づけや重要性、上手な聞き方などを学ぶ研修を設けることも有効でしょう。

部下のワークエンゲージメント傾向を把握

令和元年版労働経済の分析」では、性別で見ると、男性より女性のスコアの方がやや高い傾向があるようです。活力だけは男性より低くなっていますが、熱意と没頭は男性より女性の方が高いスコアを示しています。

また役職別では、職位や職責が上がるに従って、スコアも上がる傾向が見られます。これは職場で高い評価が得られたり、仕事のコントロールがききやすくなったりする立場になることにより満足感が高まることに加え、より大きな仕事に挑戦する機会が増えることも関係していると考えられます。

さらに職種別に見ると、事務職や製造・生産工程職などの定型業務が多い職種より、教育関連やサービス・接客職といった非定型業務の多い職種の方が、スコアが高いことが分かりました。

一方、居住地や職場規模などは、ワークエンゲージメント特に影響は与えないという結果も得られています。総合的に見ると、仕事内容や職場での立場が、よりワークエンゲージメントを左右しやすい傾向があると言えるでしょう。

職場環境へのアプローチ

働きやすい職場の定義は人それぞれですが、一般的には「自分のパフォーマンスを最大限に発揮できるための環境・制度が整っており、心身ともに健康的に働ける職場」を指します。従業員が働きやすいと感じる職場環境には、下記のような特徴があります。

  • 人間関係が円滑でコミュニケーションが活発
  • 教育体制、スキルアップ支援が整備
  • 適切なワーク・ライフ・バランス
  • 福利厚生が充実
  • 従業員の健康管理が適切
  • 人事評価の整備
  • 仕事に集中しやすいオフィス環境
  • 労働環境(働く場所や時間)が整備

労働時間の整備、長時間労働への対処

長時間労働は、過労死や精神疾患などを引き起こすおそれがあり、削減すべきもののひとつです。長時間労働が起きてしまう原因には、主に以下の5つの理由があります。

  • 人事制度や職場風土
  • 人手と業務量のバランス
  • 職場環境
  • 管理職のマネジメント
  • 従業員の意識

長時間労働は、以下の4つのポイントに沿って対処していくのがおすすめです。自社の現状と照らし合わせながら、不足している部分への対処を行っていきましょう。

①現状の把握
労働時間の実態を把握できていないなら、まずは労働時間の見える化を行いましょう。勤怠管理ツールを導入して、客観的に労働時間を可視化できるようにするのがおすすめです。

②長時間労働を良しとする企業文化を打破するための意識改革
続いて行うべきなのが、企業における意識改革です。意識改革の方法には、主に以下3点が挙げられます。

  • 経営層からの社内外への発信
  • 評価制度・人事制度の変更
  • 管理職への研修・教育

③働き方への取り組み
仕事の進め方を改善する際は、職場風土と業務効率化の2点を意識することが大切です。
職場風土の醸成とは、「従業員が帰りやすい環境の構築」を指します。残業に関して事前承認制やノー残業デーなどの規定を設けたり、朝型勤務を推奨したりするのがおすすめです。

業務効率化を進めるには、属人化した業務を作らないよう業務を標準化したり、情報共有の仕組みを再検討するのがおすすめです。

④生活習慣改善への取り組み
生活習慣と労働は切り離せない関係にあり、例えば労働時間が長くなると、生活にかける時間が短くなります。生活習慣の乱れは生産性低下を招く場合もあります。

従業員全体に対してアプローチをかける「ポピュレーションアプローチ」と、特にリスクが高い人に対してアプローチをかける「ハイリスクアプローチ」を組み合わせて実施してくとよいでしょう。

関連記事:長時間労働が引き起こす問題と解決の具体的なステップ

福利厚生の充実

制度による恩恵の一つに「福利厚生の充実」が考えられます。福利厚生が充実していると従業員満足度が向上し、仕事へのモチベーションアップが期待できます。さらに、従業員自身の自己肯定感の高まりにも影響を与え、結果的には会社へのエンゲージメント(組織への愛着心)が芽生え、組織に所属して貢献しているという意識が強くなり、職場への定着率が上がります。

また十分な福利厚生があることにより、私生活とのワークライフバランスが充実できることで、さらに人材の定着は見込めます。

福利厚生を充実させるために、下記のような種類を充実させていくことが考えられます。

  • 健康管理
  • 休暇制度
  • 働き方についての制度
  • 食事補助 等

関連記事:福利厚生の種類一覧|法定福利厚生から法定外福利厚生まで解説

交流を促進する環境を整える

社内コミュニケーションを活性化させるにあたり、環境は非常に大切な要素です。従業員同士の接点が少なかったり、交流できる場や活性化に必要なルールがないようであれば、まずその環境を整えていきましょう。たとえば、以下のような方法を採用できます。

  • コミュニケーションツールの活用
  • フリーアドレス制
  • リフレッシュスペースやミーティングスペースの確保
  • 情報共有ルールの整備
  • 情報共有の重要性の周知

関連記事:社内コミュニケーションを活性化するアイデアと成功事例

適切なワーク・ライフ・バランスのための休暇制度の整備

ワークライフバランスの取り組みを積極的に行っている企業は、育児休暇はもちろん様々な休暇制度が整っています。十分な休暇制度があることによって従業員のリフレッシュが測れ、プライベートとの両立もしやすくなります。

「休むこと=罪悪感」といった観念を払拭するためにも、企業側が休暇制度を積極的に整えるとよいでしょう。従業員へ、信頼感と安心感を与えられます。

関連記事:ワークライフバランスの取り組みとは?効果や施策、事例を紹介

自社の職場環境を把握

職場環境に適切な働きかけを行うためには、まず自社の環境がどのような状態か把握することが重要です。その際、活用できるのが平成30年度「労働生産性の向上に寄与する健康増進手法の開発に関する研究」のマニュアルに収録された「職場の強みチェックリスト」です(下図参照)。

職場の強みチェックリスト

参照)慶應義塾大学 総合政策学部 島津明人研究室「労働生産性の向上に寄与する健康増進手法の開発に関する研究」平成30年度

この集計結果により、自社の強みがどのような点か把握できます。それを踏まえた上で参加型討議により、どのような点を改善するべきかを話し合い、職場の活性化を進めていきましょう。

報酬・処遇を見直す

報酬や処遇を見直す上で重要なのは、「従業員にとって、目に見える利益を納得できるレベルで享受できているか」ということです。特に、評価の仕方が不公平だ、成果を出しても報酬や評価につながらない、と感じたりすると、ワーク・エンゲージメントが下がってしまいます。

適切な評価制度を築くためにはまず評価をされる人に対して、評価基準を伝えておく必要があります。評価基準を明確にしておくことで、評価される側もどの点に注力して業務を行うのかの方向性が定まり、また評価内容に関しての認識の違いも減らすことができます。

評価の内容を決める際には以下の要素を意識すると効果的です。

  • 透明性
  • 公平性
  • 客観性
  • 納得性

適切な評価は業務へのモチベーション向上だけでなく、上司との信頼関係の構築にもつながります。信頼関係が構築されることによって働きやすさの向上にも効果的です。

【具体的な施策例】

  • 何をすればプラスになるのか、評価の基準を明確化して周知する
  • 評価の前提となる達成目標を数値で定める
  • 誰がいつどのように評価しているのかを透明化する
  • 評価の結果を各従業員へ具体的にフィードバックする
  • 金一封の贈呈など、高評価を受けることのメリットを従業員に明示する

成長を実感できる人材育成の仕組みづくり

従業員満足度を高めるために、業務を通じて成長を感じられるような仕組みを作ることは重要です。成長を感じることが仕事のやりがいにもつながり、それがワーク・エンゲージメントにも影響を与えます。成長を実感できるような仕組みづくりを行いましょう。

仕組みづくりをする際に注意すべきなのが成長できるように適切な業務負担をかけるということです。人が成長するためには過度な負担はもちろん、負担がなさすぎるのも効果的ではありません。適切な負担を意識しながら、新しい仕事や少し難易度のある仕事を任せてみたり、定期的に振り返りの機会を設け、業務の評価を行いましょう。成長のための機会を与え、それをフォローしながら正しく評価することが仕組みづくりとして重要となります。

【具体的な施策例】

  • 従業員ごとの適切な業務負担量を調査する
  • 定期的な反省会やミーティングを行う
  • 評価者と従業員本人の観点から、どのような成長ができたかを文書化する
  • OJTや座学、研修などを幅広く実施し、効果測定を行う
  • ジョブローテーションを行い、さまざまな経験をさせる

関連記事:人材育成を進めるには|ステップや階級ごとの育成例を紹介

個々の働き方について柔軟に検討

令和元年版労働経済の分析」では、正社員と限定正社員では、限定正社員(労働時間や勤務地が決まっている正社員)の方がスコアが高く、特に労働時間が限定されている正社員のスコアが高いという結果が得られました。これは希望の職務時間内に業務を効率的に終わらせようという意識によるものと考えられます。

また正規雇用と非正規雇用では、非正規雇用になった理由によってスコアに違いが見られました。正社員になりたいけれどなれなかったという不本意な選択による非正規雇用では、スコアは相対的に低くなりますが、都合のいい時間や体力に合わせて働きたいという不本意以外の選択による非正規雇用では、相対的に正規雇用よりスコアが高い傾向が見られました。

これを見ると、いかに自分の望む形で働くことができるかは、仕事に対するモチベーションや熱意に大きく影響を与えることが分かります。

従業員エンゲージメント向上の健康施策

従業員エンゲージメント向上させる
健康施策をご紹介

健康プログラムは従業員エンゲージメント向上につながります。
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「個人の資源」へのアプローチ方法

ワークエンゲージメントを高めるもう一つの要因である「個人の資源」は、目標設定や動機付けなど自己肯定感に起因する要件となります。これらを満たすためには従業員へ働きかける必要があります。

自己肯定感の向上

ワークエンゲージメントを高める個人の資源として、自己肯定感は大きな影響力を持っています。自己効力感とは、自分が「できる」と感じられる・自信をつけるということです。上司から指示されたことを機械的にこなすだけだと、従業員は仕事に対する意欲を失ってしまいます。新しいプロジェクトへの挑戦やスキルを活かせる場の提供により、従業員が自分に自信をつけていける環境が大切です。

自己肯定感をもって仕事を遂行するためには、セルフケア教育を通じてストレスに対処するスキルを身につけることも必要ですが、仕事を上手に進めるためのスキルの向上も必要になります。タイムマネジメント、目標達成スキル、人間関係を円滑にするコミュニケーションスキルなどが一例です。RIZAPではボディメイクを通じてこのようなスキルを身につけ、自己肯定感が上がっているお客様を多くみてきました。

企業は業務を通じて、または業務外のイベントなどを通じて、いかに従業員が自己肯定感を向上できるかを意識した仕組みづくりをする必要があります。

自己効力感を高める2つのポイントとは

RIZAPではすべての健康施策において、自己効力感を高めることを非常に大切にしています。そのために大切にしていることの一つが「目標設定」です。

ご自身がこうなりたいと思える、輝いている姿を想像してもらい「仕事がデキる上司になりたい」「子供に自慢される父親になりたい」「数年前はできていたあの趣味を再開したい」など、ポジティブな動機から目標設定を行います。その目標に沿ってできることを進めていきます。

自分に合った自分オリジナルのなりたい姿を想像することで、行動変容を前向きに捉えることができ、ポジティブに参加できるようになります。また、実行した際に、想定外の問題に直面したり、思い通りにいかないという壁にぶつかったりしても、前向きに考えて行動変容を維持できます。

企業で実施する健康増進に関しても同様であり、ただ単に従業員に対して「健康になりましょう」と伝えるよりも従業員のなりたい姿にあわせて勧奨するのが良いかもしれません。

そして自己肯定感を高める2つ目のポイントは、「小さな成功体験を積み重ねること」です。

最終的な目標に向かうプロセスで、少し努力すれば達成できそうな小さな目標を段階的に立てて、それをひとつずつクリアしていきます。そうすると、目標を達成するたびに成功体験を積み重ねることで自信がつき、習慣化するモチベーションにつながります。

関連記事:行動変容とは?無関心層の変化を促すアプローチ、具体例を解説

メンタルタフネス

メンタルタフネスとは、困難な状況でも悪い感情に振り回されず、解決に向けて行動できるスキルで心のコンディションを整えるテクニックを指します。

メンタルタフネスが鍛えられると、困難な状況下でも悪い感情に振り回されず解決に向けて行動できるようになります。自分の能力を最大限に発揮するためには、コンディションを調整する力が必要です。メンタルタフネスを鍛えることによって、ストレスに対処できるようになり自己肯定感が高まります。

企業にとっては、従業員のメンタルタフネスを鍛えることで人材の流出を防ぎつつ、企業の健康経営にも役立てることができます。メンタル不調に陥りにくく、万が一不調を感じても回復しやすい体質になるため、メンタルヘルスの一次予防に適しています。

関連記事:メンタル不調を突破するメンタルタフネスとは?企業の取り入れ方

ジョブ・クラフティング

仕事のやりがいはワークエンゲージメントを高める重要な仕事の資源です。

従業員が主体的に行動し、やりがいを感じる働き方ができるよう促すことを「ジョブ・クラフティング」と言います。従業員が自らの仕事を変化させながら、仕事の意義を高めていく主体的なプロセスです。

「仕事の捉え方」、「業務への取り組み方」、「人間関係」の3方向からのアプローチにより、従業員のモチベーションを引き出すことで、組織の生産性向上も期待できます。

パフォーマンス向上

従業員のパフォーマンスを向上させるために、健康経営の推進も方法の一つです。健康経営を推進することで、従業員の心身の健康につながるだけでなく、企業と従業員間の信頼関係が構築できるため、従業員エンゲージメントの向上につながります。

健康経営とは、健康施策にかかる支出をコストと考えるのではなく、『投資』としてとらえ、従業員の健康を促進することで、組織の活性化や生産性の向上、最終的には業績向上、企業価値の向上を目指します。

参照:経済産業省「健康経営

従業員一人一人の健康度は働き方と密接に関係しています。残業が多く帰宅時間がおそければ、睡眠時間の減少や食生活の乱れが慢性化し、生活習慣病やメタボリックシンドロームを生み出すリスクは急激に高まります。

企業全体の取り組みとして帰宅時間を早めることにつながれば、睡眠だけでなく家族との時間が確保できたり趣味が充実するなど、心の充実も図ることができます。健康でいきいきとした状態は顧客やサービスへの高いパフォーマンスの発揮につながります。企業として健康経営に取り組むことは、公私にわたり従業員のQOLに配慮していることを目に見える形にし、従業員自身が実感できる形で示す機会にもなります。心身ともに健康で生き生きと長く働けることは、従業員のみならず家族や周りの人間関係等にも、豊かな人生を作り出すメリットをもたらします。

そうしたメリットの実感は、従業員が所属する企業や経営陣への信頼を築いていくことにつながります。

そして健康度が高く心が充実している従業員は、自分の能力やスキルを十分に発揮し、新しいことや困難な状況に挑戦する余裕も生まれます。毎日の仕事におけるこれらの積み重ねが、生活習慣病やメンタルヘルス不調の予防に加え、エンゲージメントの向上にもつながります。

関連記事:【徹底解説】健康経営とは?もたらす効果、取り組み事例

ワークエンゲージメントの尺度・測定方法

自社の現状を知るためには、実際にワークエンゲージメントを測定することが有効です。

ワークエンゲージメントを測る方法はさまざまありますが、例えば以下のような調査を行うことで、バーンアウトを測定する方法が挙げられます。ワークエンゲージメントはバーンアウトの対極にあるため、点数が低いほどワークエンゲージメントが高いことが考えられます。

ここでは、主な測定方法であるユトレヒト・ワークエンゲージメント尺度(UWES)に加え、その他の測定方法についてもご紹介します。

ユトレヒト・ワークエンゲージメント尺度(UWES)

ワークエンゲージメントの3要素である熱意・没頭・活力を直接測定する方法です。日本語版は、設問数が3、9、17項目の3種類あり、全項目の個人別の平均値をスコアとするのが一般的です。

熱意・没頭・活力の各項目の質問内容は、以下のようなものです。

  • 熱意の質問項目例自分の仕事に意義や価値を大いに感じる、自分の仕事に誇りを感じるなど
  • 没頭の質問項目例仕事をしていると時間がたつのが速い、仕事に没頭しているとき幸せだと感じるなど
  • 活力の質問項目例:仕事をしていると活力がみなぎるように感じる、職場では元気が出て精力的になるように感じるなど

各設問について回答によって0~6点の点数がつき、合計点数が高いほどワークエンゲージメントは高いことになります。

MBIジェネラルサーベイ(MBI-GS)

職場でのバーンアウトを測定する科学的指標で、疲弊感、冷笑的態度、職務効力感の3種類のスコアを算出し、従業員の状態を測定します。

1980年代にMaslach&Jacksonがバーンアウトを”人を相手に働く過程において心的エネルギーを使い切ってしまい、相手に与えるものはもう何もないという情緒的な疲弊が生じ、クライエントに対して否定的で冷淡な態度をとるようになる、またクライエントに対する自己の仕事ぶりに否定的評価を下すようになる現象である”と定義し、バーンアウト測定尺度を開発しました。

最新版の MBI マニュアル (Maslach, Jackson &Leiter, 1996) によればそれぞれの項目は以下のように定義づけられています。

  • 疲労感:仕事を通じて, 情緒的に力を出し尽くし, 消耗してしまった状態
  • 冷笑的態度:クライエントに対する無情で, 非人間的な対応
  • 職務効力感:ヒューマンサービスの職務に関わる有能感, 達成感

以下の質問項目からバーンアウト尺度を抽出します。

・こんな仕事、 もうやめたいと思うことがある。
・われを忘れるほど仕事に熱中することがある。
・こまごまと気くばりすることが面倒に感じることがある。
・この仕事は私の性分に合っていると思うことがある。
・同僚や患者の顔を見るのも嫌になることがある。
・自分の仕事がつまらなく思えてしかたのないことがある。
・1日の仕事が終わると 「やっと終わった」 と感じることがある。
・出勤前、 職場に出るのが嫌になって、 家にいたいと思うことがある。
・仕事を終えて、 今日は気持ちのよい日だったと思うことがある。
・同僚や患者と、 何も話したくなくなることがある。
・仕事の結果はどうでもよいと思うことがある。
・仕事のために心にゆとりがなくなったと感じることがある。
・今の仕事に、 心から喜びを感じることがある。
・今の仕事は、 私にとってあまり意味がないと思うことがある。
・仕事が楽しくて、 知らないうちに時間がすぎることがある。
・体も気持ちも疲れ果てたと思うことがある。
・われながら、 仕事をうまくやり終えたと思うことがある。
引用:久保 真人「バーンアウト(燃え尽き症候群)ーヒューマンサービス職のストレス」

OLBIOldenburg Burnout Inventory

MBI-GS同様、バーンアウトを測定する方法です。「消耗感」、「冷笑的態度」の2つの尺度から質問を行い、スコアを算出します。

本尺度は心身を含むexhaustion(疲弊感)とdisengagement(離脱)の2つの概念で構成されており、OLBIは職種を問わず一般的な対象に使用できることや、また心理測定の点から各因子の質問項目に肯定的・否定的質問が同数設定していることが特徴になります。

回答は各質問に対して「とてもそう思う=4点」から「全くそう思わない=1点」の選択肢で行われます。

【exhaustion(疲弊感)に関する項目】
・仕事も前にすでに疲労感
・長い休息が必要
・仕事を負担に思わない
・精も根も尽き果てた
・余暇を楽しむ余裕
・仕事後、ぐったり疲れ果てている
・仕事量はしっかりこなせる
・やる気にあふれている
【disengagement(離脱)に関する項目】
・新たな面白さの発見
・否定的な語りが多い
・機械的な仕事の仕方
・仕事への思い入れ消失
・仕事にうんざり
・他の職業は考えられない
・仕事にますます打ち込む
・自分にとって仕事は挑戦
引用:
大阪市立大学看護学雑誌第17巻「the Oldenburg Burnout Inventory−German version邦訳の信頼性と妥当性の検討」2021.03

MBI-GS、OLBIはともにバーンアウトを測定するものですが、それを導き出すことにより、対極にあるワークエンゲージメントの状態を推測できます。対概念を測定する方法であるため、点数が低いほどワークエンゲージメントが高いということになります。

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