健康増進の背景
日本では、高齢化や生活習慣の変化などの要因により、生活習慣病やがん、循環器疾患などの疾患が増えています。豊かな食生活に起因するエネルギーの過剰摂取や、テレワークなどの推進による慢性的な運動不足といったアンバランスな生活習慣が、生活習慣病などの疾患を発症させる大きな要因となっています。
ここでは、健康増進の背景として、日本が現在どのような目標を掲げ、どういった取り組みをしているのかについて解説します。
健康日本21
「健康日本21」は、日本政府が国民の健康増進を目的として推進している取り組みです。これは健康増進法の制定に伴い2003年から10年単位で実施されているもので、2013年からの10年は「健康日本 21(第二次)」として進められています。
これは、少子高齢化や疾病構造の変化が進む21世紀の日本において、国民のライフステージごとに心身ともに健康を保てる社会の実現を目指す運動です。寿命の延伸や生活習慣病の発症・重症化予防だけでなく、こころの健康づくりや健康を保つための社会環境整備といった、幅広い分野にわたる目標も掲げられています。
参照:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_01.pdf
健康日本21(第二次)で掲げられてる目標項目
- 健康寿命の延伸と健康格差の縮小の実現に関する目標
- 主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底に関する目標(がん・循環器疾患・糖尿病・COPD)
- 社会生活を営むために必要な機能の維持・向上に関する目標(こころの健康・次世代の健康・高齢者の健康)
- 健康を支え、守るための社会環境の整備に関する目標
- 栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善に関する目標
参考:https://www.nibiohn.go.jp/eiken/kenkounippon21/kenkounippon21/mokuhyou.html
健康経営
企業が従業員の健康を保持・増進する取り組みを表すキーワードが「健康経営」です。これは、企業が従業員の健康管理を戦略的に実践することを指します。
生産年齢人口の減少や従業員の高齢化、人出不足などの社会的課題を背景に、国が主導し健康経営の普及が進んできました。
2013年、国の成長戦略である「日本再興戦略」にて健康経営が本格的にスタートしました。
2014年から2015年には、健康経営に取り組むことが評価されるように体制の構築が行われ、大企業だけでなく中小企業に対しても普及・啓発が積極的に行われるようになりました。
2016年には健康経営優良法人認定制度が経済産業省により開始され、それに伴い健康経営の認知度、取り組みがより一層加速していきました。
2020年からは、世界的に流行している新型コロナウイルス感染症により、多くの従業員のフィジカル・メンタルの健康課題が浮き彫りになっているため、今後は企業経営にとって健康経営の重要度はますます高くなると考えられます。
「日本健康会議2021」では、2025年に健康経営に取り組む企業等を10万社以上、健康でいられる環境整備に取り組む自治体を1,500市町村以上とすると実行宣言が採択されています。
関連記事:【徹底解説】健康経営とは?
「従業員の健康取り組みガイド」をご覧いただけます
近年、日本では企業戦略として従業員の健康について積極的に取り組みを行う企業が増えています。健康施策をどのように施策を組み立てるのか、どのような施策があるのか等お悩みの方も多いのではないでしょうか?
そこで、健康施策に取り組むご担当者様に向けた実践に関する手引書「従業員の健康取り組みガイド」をお届けします。
人気が高くかつ健康経営優良法人の認定取得を意識し、「ヘルスリテラシー」「運動」「食事」3つのテーマに絞って実践的な施策をご紹介しています。
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健康増進のための健康課題別施策
ではここからは、厚生労働省が提供する「健康日本21」関連の資料を基に、代表的な健康課題とその指標、それに対して企業で行うべき健康施策を紹介します。
栄養・食生活
健康で幸福な生活を送るために栄養と食生活は欠かせないものです。食事をとることは栄養的な身体面だけでなく、人と食事をする際にコミュニケーションが取れることからも精神的にも重要なものだといえます。
栄養・食生活に関する健康課題に対しては、以下のような指標と対策が挙げられます。
【指標】
自分の食生活に問題があると思う者のうち、改善意欲のある者の割合の増加
【対策例】
- 従業員に対する定期的な健康教育や健康情報の提供
- 食生活に関する相談窓口の設置
関連記事:法人向け人気・おすすめ食事セミナー|種類・選び方
【指標】
外食や食品を購入する時に栄養成分表示を参考にする者の割合の増加
【対策例】
- 食生活に関するセミナーの実施
- 自動販売機や社員食堂メニューへの栄養成分表示
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【指標】
自分の適正体重を認識し、体重コントロールを実践する者の割合の増加
【対策例】
- 定期的な体重測定と保健指導やモニタリングによる継続支援
- 社員食堂メニューへのカロリー表示、健康メニューの提供
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【指標】
朝食の欠食率の減少
【対策例】
- 社員食堂や弁当による朝食メニューの提供
- 長時間労働の見直しによる生活リズムの改善
身体活動・運動
生活習慣病予防の効果は身体活動量の増加とともに上昇します。長期的な取り組みとしては10分程度の歩行を1日数回行うことでも健康上の効果が見込めます。
身体活動・運動に関する健康課題には、以下のような指標と対策が挙げられます。
【指標】
日頃から健康の維持・増進のために意識的に体を動かすなどの運動をしている人の増加
【対策例】
- 運動不足がもたらす影響と解消方法の指導
- 運動不足解消のための目標設定セミナーの開催
関連記事:企業向け運動セミナーの種類・選び方
【指標】
運動習慣者の増加
【対策例】
- 朝や休憩時間にストレッチ・体操タイムの導入
- 健康セミナーで気軽に始められる運動の指導
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【指標】
日常生活における歩数の増加
【対策例】
- 個人やチームで参加できるウォーキングイベントの実施
- 「ここまで登ると〇カロリー消費」などの掲示で階段利用を促進
休養・こころの健康
こころの健康は自身の精神状況のみならず、他人や社会と建設的でよい関係を築けることも重要です。そのため、企業側から環境を整える取り組みも必要となってきます。
休養や「こころの健康」に関する健康課題に対しては、以下のような指標と対策が挙げられます。
【指標】
「睡眠によって休養が十分にとれていない人」の割合の減少
【対策例】
- アンケートによる実態の把握と、睡眠対策セミナーの実施
- 仮眠制度および仮眠スペースの導入
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【指標】
「最近1カ月間にストレスを感じた人」の割合の減少
【対策例】
- ストレスチェックによるストレス原因の明確化と、労働環境の改善
- 産業医による相談窓口の設置
たばこ
たばこは肺がんをはじめ様々ながんのリスクを上げてしまいます。喫煙者自身の健康だけでなく副流煙など周りの人にも健康被害のリスクが生じます。環境を含めた対策が必要です。
たばこに関する健康課題には、以下のような指標と対策が挙げられます。
【指標】
喫煙が及ぼす健康影響についての十分な知識の普及
【対策例】
- 喫煙が及ぼす健康影響がテーマの健康セミナーの実施
- 禁煙による健康状態の改善事例や禁煙成功体験談の発信
アルコール
アルコールは健康問題のみならず、交通事故など社会的な問題にも関係しています。総合的な対策が必要です。
アルコールに関する健康課題には、以下のような指標と対策が挙げられます。
【指標】
1日に平均純アルコールで約60gを超える多量飲酒する人の減少
【対策例】
- アルコール過剰摂取のリスクをテーマにした健康セミナーの実施
- 産業医による指導やメンタルヘルスケアの実施
関連記事:法人向け人気・おすすめ食事セミナー|種類・選び方
【指標】
「節度ある適度な飲酒」として1日平均に純アルコールで約20g程度である旨の知識の普及
【対策例】
- アルコールとの上手な付き合い方をテーマにした健康セミナーの実施
- 節度ある適度な飲酒がもたらすメリットの周知
歯の健康
歯周病など歯科疾患などは対応が遅れることにより、歯の欠損や最終的には喪失に繋がります。また、高齢者における歯の喪失率も高く、早くからの処置と食生活の見直しが必要です。
歯の健康に関する課題に対しては、以下のような指標と対策が挙げられます。
【指標】
定期的に歯石除去や歯面清掃を受けている者の割合の増加
【対策例】
- 口腔を健康に保つメリットを周知するための口腔ケアセミナーの実施
- 歯石除去や歯面清掃費用の補助
【指標】
定期的に歯科検診を受けている者の割合の増加
【対策例】
- 社内での定期的な出張歯科健診の実施
- 口腔ケアに関する歯科面談や現状チェックの実施
【指標】
間食として甘味食品・飲料を1日3回以上飲食する習慣を持つ者の割合の減少
【対策例】
- ドライフルーツなど健康的なおやつの設置
- ミネラルウォーターや健康茶の設置
健康施策を成功に導くポイント
漫然と取り組みを実施しても、一時的な効果になってしまう可能性があります。
中・長期的な施策として効果のある内容を実行していくためには下記のようなポイントを意識することが大切です。
健康経営を推進する
健康経営は、『従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法』です。健康施策にかかる支出をコストと考えるのではなく、『投資』としてとらえることが重要になります。従業員の健康を増進し、健康課題の改善を行うことで生産性の向上・組織の活性化を図り、最終的には業績の向上・企業価値の向上を目指す取り組みになります。
職場で健康施策を実施することで従業員の行動変容をもたらします。最も効果を発揮するのは各施策の単発での実施ではなくに提供されるのではなく、組織の戦略の中心に位置づけられ継続的に実施されているときです。
健康経営として健康施策を練ることで、事故や傷病予防だけでなく、ストレスの要因への対処や適切なワークライフバランスの達成が可能になります。
そのため、健康経営と併せてメンタルヘルス対策を推進することで、より効率的に従業員の健康を保持・増進ができ、生産性の向上へ取り組み効果を最大化することができます。
関連記事:【徹底解説】健康経営の取り組み方│企業にもたらす効果や事例
従業員の健康課題を把握する
自社の健康課題や働き方、従業員特性をしっかりと把握し、適した健康施策を導入することが効果を最大化するポイントになります。従業員の健康を増進するためにまず必要なのは、従業員の健康課題を把握することです。健康課題に応じて、取り組む内容の優先度が決まってきます。
健康課題を抽出するための根拠あるデータソースとして、「定期健康診断」「ストレスチェック」の結果が活用できます。定量的に現状を把握することができ、経年変化や他社と比べた際の自社の立ち位置が確認できるので非常に有効なデータとなります。
健康課題抽出に活用できるデータの例として以下が参考になるのでぜひご確認ください。
※参考:経済産業省 令和2年度 健康経営度調査
その他、自社で取得している従業員サーベイ(パルスサーベイ)や健康施策実施の参加者アンケートも活用できます。
近年ではコラボヘルスやデータヘルスといった保険者や産業医・保健師など産業スタッフと協力して行う健康増進も注目されており、企業だけで行う場合よりもより深く・的確に健康課題を抽出できるでしょう。
定期健康診断やストレスチェックはすでに顕在化したものですが、なぜその結果(=健康課題)が抽出されているのか原因を突き止めることも同時に重要となります。
例えば、従業員アンケートや勤怠データが挙げられます。健康状態と職場要因と関連性がどの程度あるのか、実際のアンケート結果や勤退状況を照らし合わせて考えることで、より具体的な課題把握が可能となります。
全社共通の健康課題かどうか見極める必要はありますが、より因果関係や改善のヒントが得られる産業医や保健師との面談結果も重要な定性情報になります。
■定期健診や特定健診等からわかること
定期健診の受診率が低い、生活習慣病の治療中・未治療者が多い、再検査・精密検査の受診率が低い、肥満者率が高い、高血圧率が高い、糖尿病率が高い、やせ・肥満(BMI18~25以外)率が高い、脂質異常症率が高い など
■問診や面談からわかること
運動習慣化比率が低い、喫煙率が高い、飲酒習慣比率が高い、不規則な生活、食生活の乱れ、腰痛、肩こり、睡眠不足どうして食事の乱れや運動不足、体の痛み等に至ってしまうのかの理由 など
■就業状況やストレスチェック、従業員調査からわかること
ストレスレベル(ストレスの内容や心身のストレス反応など)、活気がない、従業員エンゲージメントが低い、心の病が多い、アブセンティーイズム、プレゼンティーイズム など
■職場環境データや労働時間データ等からわかること
従業員の高齢化、長時間労働、休日労働 など
関連記事:【2022】企業向け人気・おすすめ健康セミナー|種類、選び方 健康セミナーを導入・開催するステップ
ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチを組み合わせて実施する
大人数の集団に対して健康施策を行う際、ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチという2つの方法があります。
ハイリスクアプローチ:健康リスクが高い人を対象とした取り組み方法
ポピュレーションアプローチ:それぞれ個人のリスクとは関係なく、集団全体に対して潜在的な健康リスクに対して行う取り組み方法
下記のような分布図で考えてみると、ポピュレーションアプローチは分布全体を低リスクに少しずつシフトさせるような働きかけで、ハイリスクアプローチは、ハイリスクの人の人数を減らすような働きかけとなります。
参考: 社団法人日本看護協会『やってみよう‼ポピュレーションアプローチ』
ポピュレーションアプローチとは、集団全体を対象として働きかけを行い、全体としてリスクを下げる取り組み方法を指しており、一次予防の役割になります。そのため、予防活動や公衆衛生活動など低リスク・潜在的な健康課題に対しての取り組みが多くなります。
メリットとしては集団全体に効果が及ぶことや、対象者の家族や取引先の顧客を巻き込んでコミュニケーションを活性化しながら健康増進できる点になります。
実際に従業員が健康増進に対して消極的な場合でも、ポピュレーションアプローチを通し、健康的な選択をすることでどんな利点があるのか、自分だけでなく周囲にも影響を与えることを理解することにも大きな意義があります。
一方ハイリスクアプローチとは、一般的に健康リスクの高い人を対象とした取り組み方法を指しており、個別もしくは集団での生活指導や治療といった二次予防の役割になります。
ハイリスクアプローチは対象を絞ることにより、効果が出やすいことが利点となりますが、同時にその成果を維持できるかが課題となっています。集団全体への波及効果が小さくなることが欠点ではあるものの、効果的に健康リスクを予防・抑制することが可能なため、欠かせないアプローチになります。
ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチをうまく組み合わせ、相乗的に効果を最大化することが重要になります。
関連記事:ポピュレーションアプローチの取り組み方|ポイント・具体例
従業員の運動不足を解消する
従業員が十分なパフォーマンスを発揮するためには、企業が従業員のために運動不足改善に取り組むことが大切です。そのためのステップをご紹介します。
関連記事:デスクワークの運動不足を解消!健康問題を解決する3ステップ
STEP.1 従業員の運動習慣を確認する
まずは従業員の運動習慣について確認する必要があります。主な方法として定期検診とストレスチェックの活用があります。
定期検診は普段行っている健康診断の結果から運動習慣者の割合を把握します。
定期健診で運動を習慣としている者を把握できる質問としては以下が考えられます。
- 1 回 30 分以上の軽く汗をかく運動を週 2 日以上、1 年以上実施していますか?
- 日常生活において歩行又は同等の身体活動を 1 日 1 時間以上実施していますか?
- 運動や食生活等の生活習慣を改善してみようと思いますか?
平成30年に実施された厚生労働省の調査によると、運動習慣のある者の割合は男性で35.9%、女性で28.6%とされています。これと比較すれば自社の従業員の運動習慣の現状を、より具体的に実感できます。
参考:厚生労働省健康局健康課「身体活動・運動を通じた健康増進のための 厚生労働省の取組み」
一方ストレスチェックは、厚生労働省が作成した「職業性ストレス簡易調査票」を活用するといいでしょう。この職業性ストレス簡易調査票は、仕事や心身の状態、満足度などを4段階で評価することで、従業員の心身の不調を確認できます。
運動習慣に関する直接的な質問ではなくとも、
・首筋や肩がこる
・腰が痛い
といった項目で「しばしばあった」や「ほとんどいつもあった」と回答している者が多ければ、解決に向けた運動へのアプローチのきっかけとなるでしょう。
※参照:厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票」
さらに従業員の日々の活動量を可視化したい場合には、活動量が分かるアプリを搭載したスマートデバイスや歩数計などを配布するとよいでしょう。従業員の運動量を正確に把握でき、より従業員のための方策が練れるでしょう。
STEP.2 運動機会のキッカケを作る
運動不足の自覚があり改善する意識がある人は、少しの働きかけで自主的に運動習慣を見直してくれることが期待できます。しかし、自分の健康に無関心な人や、運動不足を体感できていない人などには、企業側から積極的に運動機会を作る必要があります。
例えば、企業主催の運動会やウォーキング大会、ボウリング大会などのスポーツイベントなどです。
これらのイベントでは運動の大切さやスポーツの楽しみなどを知ってもらうことが重要です。特にウォーキングイベントなら運動が苦手な人でも参加しやすく、受け入れやすいでしょう。
しかもこれらのイベントは職場でのコミュニケーションを増やすキッカケにもなり、孤独を感じやすいテレワークを推奨している企業にもおすすめです。
また、定期的に健康情報を発信したり、参加型の健康セミナーを開催したりするなど、さまざまなアプローチで多くの従業員に運動機会のキッカケを作ることが大切です。
関連記事:【テレワーク】健康への影響|運動不足と健康問題の対策・事例
STEP.3 運動習慣定着をサポートする
運動は一時的に行えばよいわけでなく、習慣化させなければ意味がありません。従業員が一定時間以上の運動を長期的に行っていくには、オフィスの環境や制度を整える必要があります。
身体活動・運動の促進は運動の習慣定着をサポートするだけでなく、プレゼンティーイズムの改善にもつながります。
プレゼンティーイズムによる一人当たりの年間損失額の1位は頸部通・肩こり、3位は腰痛となっています。これらの症状に対して、デスクワーク環境の改善に加えて、定期的な身体活動が役立つと考えられます。
運動機会の促進と習慣化に向けて、下記のような施策を検討していきましょう。
- 階段の積極利用の促進
- 会議や研修などで身体活動や運動を取り入れる
- 朝礼の際にラジオ体操を取り入れる
- ウォーキングイベントを継続的に実施する
- 運動会などのスポーツイベントの実施を繰り返す
- 運動サークルの運営
- 徒歩や自転車での通勤環境の整備
- スポーツクラブへの補助金、福利厚生の整備
職場環境を整える
従業員が1日の多くの時間を過ごす職場環境が悪いと従業員に大きな負担がかかり、企業の生産性低下にもつながりかねません。上記の点で改善を図り、従業員が働きやすい快適な職場環境を形成する配慮義務が事業主にあると定められているのです。
職場環境とは、単に作業をする場所そのものに限られません。作業方法や疲労回復するための設備なども、職場環境に含まれています。
- 人間関係:コミュニケーションなど
- 業務環境:空調照明など~設備レイアウトなど
- 業務内容:裁量権、負荷の量、労働時間
とてもシンプルなことですが、働く環境が整うことで、従業員一人ひとりがパフォーマンスを最大限発揮できるようになります。
関連記事:職場環境の改善アイデア|組織向上への取り組みと成功事例
健康経営オフィスを取り入れる
2015年(平成27)に経済産業省の健康寿命延伸産業創出推進事業から発表されている「健康経営オフィスレポート」という資料があります。
その中で、生産性を上げる取り組みとして「健康経営オフィス」という考えが紹介されています。
これは、従業員が快適で清潔でコミュニケーションが取れる環境が整えば、プレゼンティーイズム、アブセンティーイズムが解消し、生産性アップにつながるという考えです。
「健康経営オフィスレポート」によると、オフィス環境において従業員の健康を保持・増進する行動は、大きく分類すると7つあるとされています。
- 快適性を感じる
- コミュニケーションする
- 休憩・気分転換する
- 体を動かす
- 適切な食行動をとる
- 清潔にする
- 健康意識を高める
従業員の心身の調和と活力が向上を図るためには、これらの行動をオフィス内で日常的に誘発させることが重要と言われています。
そして、オフィス環境(空間・設備・情報・運用)を整備し、健康の保持・増進に繋がる7つの行動を誘発することで、最終的にはプレゼンティー ズムやアブセン ティーズムの解消に結び付くと言われています。
健康リテラシーの向上に取り組む
上記の図にあるように、全ての健康問題に影響すると考えられている「健康意識を高めること」を実施する方法の一つとして、健康リテラシーを高めることが効果的です。健康リテラシーを身につけ、健康状態が改善されることでアブセンティーイズムやプレゼンティーイズムの改善につながり、結果的には労働生産性の向上にもつながります。
健康リテラシーとは、「自分に必要な健康情報を入手し活用する能力のこと」です。健康リテラシーが高いと正しい情報を理解でき、自身の健康状態に応じて活用することができます。
例えば、健康診断などで疾病の早期発見や、重症化する前に軽症の段階で治療できることもあるでしょう。あるいは健康な方の場合は、維持増進のために、積極的な取り組みを行うなどの工夫ができます。
高い健康リテラシーを身に着け、適切な行動ができる従業員が増えることで、社内全体の健康レベルは底上げされます。
関連記事:従業員の健康リテラシー向上策を知ろう
「行動変容ステージ」を意識する
健康に関心がない人たちを動かすことはとても難しく、多くの健康施策担当者が頭を抱えています。そこで有効なのが「行動変容ステージ」に沿った工夫を実施することです。
「行動変容ステージモデル」は健康状態や健康意識によって無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期の5つのステージに分けられており、ステージごとにより効果的な働きかけが存在します。自社の従業員がどのステージに多いのかを把握し、特徴に合わせた働きかけを行いましょう。
その中で特に難しいのが、「無関心期」の従業員です。無関心期にある従業員には健康セミナーに参加するよう促すだけでなく、下記記事に紹介しているような取り組みをすすめることで行動変容ステージを変えていくことを検討するとよいでしょう。
関連記事:行動変容とは?変化を促すアプローチと無関心層対策のポイント
健康対策に関連する事例
上記のような対策が考えられる中、RIZAPでは従業員の皆様への健康課題の対策をサポートしています。
健康リテラシーが向上:地方職員共済組合和歌山県支部様の事例
2020年度、地方職員共済組合和歌山県支部様でRIZAPのセミナーを実施いただきました。
「若年層の肥満率増加」「集客力を強めたい」「40歳以上の生活習慣病の増加」「対面開催が難しい状況」「家族の健康意識も向上させたい」という課題をお持ちの中、3回に分けてRIZAPのセミナーを開催したところ、延べ535名にご参加いただきました。
オンラインセミナーにすることで参加ハードルを下げるだけでなく家族参加も可能となり、知名度のあるRIZAPがコラボレーションすることで集客力アップをサポートしました。
また、個人個人が好きなテーマを選んで参加できるよう、導入編、運動編、食事編の3回で知識の習得が幅広く行える構成にしたり、単発参加も可能とし、各回でより深い知識が得られることで継続参加を促進することができました。
各回で参加者アンケートを実施し、「参加前、健康に対する意識はどの程度ありましたか?参加後、健康に対する意識はどの程度ありましたか?」という質問を設けたところ、下記のような回答を頂くことができました。
1回目の開催前に実施したアンケートでは、健康に対して、「必要性は理解しているが行動に移せていない」という回答者が17名がいました。
ですが、開催後には17名全員の意識変容が見られました。「近いうちに行動する」あるいは「明日から実践する」「既に行動しているものにプラスする」にシフトしていました。
そして、最も特筆すべき点は、1回目は健康行動を既に実施している割合が20.7%だったのに対し、その2ヶ月後、2回目セミナーの開催前は「すでに健康行動をしている」人の割合が53.1%にまで増えています。
更にもう2ヶ月後の3回目の開催時にも、48.6%が「すでに健康行動をしている」と回答されています。
このことから
・短期的ではなく長期的に捉えてセミナー機会を設ける
・様々なテーマでアプローチする
などの要素がうまく奏功し、参加者の意識変容から行動変容にシフトさせ、更に習慣化にも繋がったということが数値で表れています。
地方職員共済組合和歌山県支部の詳しい事例はこちら
運動習慣者率20%UP:株式会社シマキュウ様の事例
株式会社シマキュウでは、すでに実践している健康経営の取り組みにプラスして、RIZAPウェルネスプログラムを導入しました。
社長が率先して健康経営を推進し、RIZAPウェルネスプログラムを3ヶ月間実施した結果、1年後の健康診断の結果では運動習慣者比率が2倍以上に向上しました。
【RIZAPウェルネスプログラム導入結果】
約8割の従業員が健康数値に何らかの問題がある有所見者であり、メタボ、高血圧症、糖尿病などの生活習慣病を抱える従業員が多い状況でした。
そこで、社長が従業員一人ひとりと面談し、「健康を気遣った生活に変えて欲しい。大病せずいきいきと働いて欲しい」と想いを伝え、最終的には健康施策への参加率は100%になりました。
導入したRIZAPウェルネスプログラム「結果にコミット®コース」では、3ヶ月間RIZAPトレーナーが一人ひとりに合った生活習慣の定着をサポートしています。
業務時間内に実施し、健康意識の向上だけでなく、体重が平均6.2kg減、体脂肪率平均4.3%減と従業員全員が健康を手に入れる結果となりました。
実施後も、健康をテーマにする日常会話がうまれたり、運動習慣が定着し、富山マラソンに参加する従業員が初めて出てくるなど、健康文化が醸成されていることが分かります。
株式会社シマキュウの詳しい事例はこちら
運動習慣者割合が増加:株式会社ベネッセホールディングス様の事例
運動不足の解消は単に生活習慣改善のためだけに必要なのではなく、従業員のプレゼンティーイズム対策やメンタルヘルス対策や生産性向上にあたっても重要度が高いことがわかっています。
ベネッセホールディングスは、比較的若い従業員が多く、病気の人が多いわけではありませんが、生活習慣病予備軍については気を付ける必要があり、過去に生活習慣病の予防としてポピュレーションアプローチをいろいろ実施してきました。
しかし、健康無関心層が集まらず毎回関心のあるメンバーしか集まらないなど健康施策に関して苦戦を強いられている現状を変えるため、集客に好影響がありそうだと判断してRIZAPの健康セミナーを導入しました。
参加満足度は97.5%と高く、2019年度以降、参加申込人数は翌年に4倍、翌々年には9倍もの推移を遂げる結果となりました。
2020年度より運動不足に悩む企業が増えている中、上記の取り組みの末「運動習慣がある」と回答した割合が毎年向上しています。
導入事例
ベネッセホールディングス様の事例資料
健康施策の参加者数が2年で9倍に!従業員の運動不足の解消に成功!
従業員の働きがいスコアも向上した健康経営推進とは?
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●2019年度
対面形式でのRIZAP健康セミナーを開催●2020年度
コロナ禍につきオンラインでRIZAPの「5minトレーニング」という短時間で運動を行うセミナーを10回連続 (10営業日連続)で開催
●2021年度
毎週金曜日のランチタイムに10週連続でにRIZAPの「5minトレーニング」を開催
および女性向けの健康セミナーの開催
参加者アンケートにおいて「セミナーを通して、健康改善や運動習慣に関する知識や姿勢は向上しましたか」という質問に対して、参加者の85%が向上したと回答があり好結果が得られています。
その他にも、半数以上の従業員から「運動不足の解消・運動習慣の改善」につながった声や、「リフレッシュできた」「気持ちがポジティブになった」と前向きな回答が多く挙がりました。
※RIZAPウェルネスプログラム導入による直接的な効果を実証するものではありません。
参照:https://benesse-hd.disclosure.site/ja/themes/154
健康増進月間で運動不足を解消 : NTTテクノクロス株式会社様の事例
運動不足の解消と同時に、テレワークにより従業員同士もなかなか会えない時期だからこそコミュニケーションの促進を目的に「健康増進月間」を企画しました。
LIVE形式のRIZAP健康セミナーを含め、延べ200名以上が参加し、想定以上の盛り上がりとなりました。
『健康増進月間』ではオフィスに出社している従業員は会議室から参加し、テレワークのためオンラインで参加している従業員とともにセミナーを視聴したり、5minトレーニング動画をみるなどしてイベント形式でトレーニングを行う企画を複数回立てて実施しています。
健康セミナーや5minトレーニングに参加した人も、参加できなかった人もRIZAPの共通話題で盛り上がり、運動不足の解消だけでなく社内コミュニケーションの活性化にも繋がりました。
NTTテクノクロスの詳しい事例はこちら
まとめ
健康施策は、従業員が働きやすい環境づくりや、企業の継続・発展に必要なものです。企業の課題や目的に合わせた中間目標や最終ゴールを定めた上で取り組むことが重要です。
経営層だけで取り組むのではなく、従業員の実態や声も取り入れ、組織全体で取り組むことが成果につながります。まずは自社の健康課題を明確にして、課題に合わせた健康施策を検討していきましょう。
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健康施策を検討する際に、自社にとって最適な健康施策をどのように施策を組み立てるのか、どのような施策が適切なのか等お悩みの方も多いのではないでしょうか?
そこで、健康施策に取り組むご担当者様に向けた実践に関する手引書「従業員の健康取り組みガイド」をお届けします。
2017年の法人事業発足以来人と組織を元気にするお手伝いをしてきたRIZAPが、ご担当者様の一喜一憂に向き合い、寄り添ってきた中で培った健康施策の知恵とノウハウを本書にまとめました。
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