プレゼンティーイズム・アブセンティーイズムとは?
プレゼンティーイズム(presenteeism)とは、WHO(世界保健機関)によって提唱された、健康問題に起因するパフォーマンスの損失を表す指標です。
欠勤には至っていないものの「健康問題が理由で生産性が低下している状態」を指します。言い換えると、心身の不調によって、パフォーマンスが思うように出せない状況のことです。
また、プレゼンティーイズムと一緒に使われることの多いキーワードに「アブセンティーイズム」があります。アブセンティーイズム(absenteeism)とは、「健康問題による仕事の欠勤」を指します。いわゆる「病欠」を指します。
アブセンティーイズムは従業員へのアンケート調査や、欠勤・休職状況、疫病休業者数などからすぐに可視化することができるため、プレゼンティーイズムよりも問題として目につきやすくなります。ただ、企業側で休暇取得の理由を正確に取得できていないことが多く、アブセンティーイズムが過小評価されている可能性もあるため注意が必要になります。
プレゼンティーイズム・アブセンティーイズムの原因
一般的にプレゼンティーイズムの原因として以下が考えられます。
- 運動器・感覚器障害
・腰痛、肩こり
・頭痛
・眼精疲労
- メンタルヘルス不調
・ストレス度
・エンゲージメント
・うつ病
- 心身症(ストレス性内科疾患)
・動機、息切れ
・胃腸の不調
・食欲不振
・便秘、下痢
一般的にアブセンティーイズムの原因として以下が考えられます。
- 生活習慣病
・BMI
・糖尿病
・高血圧、高脂血症
・脳卒中
・心臓病
- 感染症/アレルギー
・風邪
・インフルエンザ など
- 心身症(ストレス性内科疾患)
・動機、息切れ
・胃腸の不調
・食欲不振
・便秘、下痢
これらを見るとわかるように、メンタルヘルス不調が起因になるものからストレスが起因となる内科疾患、運動不足や長時間のデスクワークによる腰痛・肩こりなど、心と体両面から健康管理上の影響でプレゼンティーイズムやアブセンティーイズムが引き起こされていることがわかります。
解消のカギは「健康経営オフィス」
2015年(平成27)に経済産業省の 「健康経営に貢献するオフィス環境の調査事業」では、 20,000 名以上(所属企業 200 社以上)のビジネスパーソンの働き方と健康問題に関する調査を実施しました。
快適で清潔でコミュニケーションが取れる環境が整えば、行動の変化が生まれ、健康保持・増進につながり結果的にプレゼンティーイズム・アブセンティーイズムの解消に結びつくという調査結果がでました。
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従業員の健康リスクは身体的なものにとどまらず、近年メンタルヘルスにおいても様々な人事課題に直結する問題としてお悩みのご担当者様も多いのではないでしょうか?
そこで従業員の心と体の健康課題や、各社の対策動向がどういったものかを調査したレポート「従業員の心と体の健康管理」をお届けします。
調査結果からは以前からの課題である「運動不足」だけでなく「メンタル不調」に対する対策が必要であることが分かります。各社がどのような取り組みをどうアプローチしているのかがわかる、ご担当者様にとって必見の内容となっています。
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プレゼンティーイズムによる損失額と問題点
プレゼンティーズムもアブセンティーズムも共に会社にとっては重大な課題です。
アブセンティーイズムの評価指標をもとに、企業が被る生産性損失のコスト評価を下記のような計算式によって算出することができるとされています。
【アブセンティーイズムの評価指標】
- 従業員へのアンケート調査
「昨年1年間に、自分の病気で何日仕事を休みましたか」という質問項目により把握する
- 欠勤・休職日数(代替指標)
有給休暇取得後の欠勤・休職は疫病理由が主であることから、代替指標として利用し把握する
- 疫病休業者数・日数
疫病休業開始後、有給休暇を除き、暦30日以上の疫病休業の者を把握する
このようなアブセンティーイズムの評価指標をもとに、企業が被る生産性損失のコスト評価を下記のような計算式によって算出することができるとされています。これにより、健康投資の効果が金銭的に評価することが可能になります。
参考:経済産業省「企業の「健康経営ガイドブック」 ~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版:平成28年4月)」P26
健康関連総コストに関して、アブセンティーイズムを従業員アンケ―トで把握し、プレゼンティーイズムをWHO-HPQで評価した場合、プレゼンティーイズムによる損失が77.9%(約56万円)、アブセンティーイズムは4.4%(約3万円)という試算結果になります。
参照:経済産業省「企業の「健康経営ガイドブック」 ~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版:平成28年4月)」P28
また、プレゼンティーイズム、アブセンティーイズムによる労働生産性の損失を推計したデータによると、健康リスクが低い従業員の労働生産性損失コストが年間推計59万円であるのに対して、健康リスクが中の従業員では1.2倍(年間推計69万円)、健康リスクが高い従業員は2.9倍(年間推計172万円)と非常に差があることが示されています。
参照:横浜市経済局ライフイノベーション推進課調べ
「心身の状態が多少は悪くても業務ができるならそれでいいじゃないか」ということで、つい休業のアブセンティーイズムを重要視しがちですが、このようにプレゼンティーイズムの方が企業経営において深刻であると言われています。
参照:厚生労働省保険局 平成29年7月「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」P37
またこの資料のなかでは、ミシガン大学の研究グループにより米国のある金融関連企業における従業員の健康関連コストの全体像が示されています。その中で薬剤費を含む通常の医療費は全体の健康関連コストの一部分を占めているにすぎず、最大の構成項目はプレゼンティーイズムとなっています。
狭い意味での医療費は、企業・組織の従業員に関する健康関連コストの重要な部分を占めているものの総コストの一部にすぎません。医療費だけでなく、プレゼンティーイズムも含めた全体の健康関連コストの問題を考えていく必要があります。それこそが、健康経営の基本的な発想となります。
米国金融関連企業の事例だけでなく、日本でも生産性の測定方法が共通する企業・組織について健康関連コストを推計した結果、プレゼンティーイズムが最大のコスト要因である結果となり注目を集めています。
一時的に生じた軽度の体調不良であれば、特に問題視する必要はないでしょう。しかし、軽度の不調であっても、不調の状態のまま仕事を続けることで症状を悪化させてしまうこともあり、長期化するリスクもはらんでいます。
従業員が十分なパフォーマンスを出せない状態が続くことで、業務効率は落ちます。それがやがて、あらゆる面で損失となって表れてきます。
従業員の生産性向上のために、プレゼンティーイズムを定期的に測定し、どれだけのパフォーマンスを発揮できているのかを把握することが重要になります。
プレゼンティーイズムの測定方法と状況把握の方法
新型コロナウイルス感染症の影響により、新しい働き方が一気に広まりました。在宅での勤務を取り入れたり、都市部から地方へ引っ越しをしてネットワークで繋がりながら業務を進行したり、一定の割合でオフィス勤務と在宅勤務を取り入れているハイブリッド型など、多様性がより一層重視されてきています。
多様化する働き方の中で従業員のプレゼンティーイズムを把握するには以下のような方法が考えられます。
- 経営評価指標をもとに該当者を抽出する
- ストレスチェックを実施する
- 従業員サーベイを実施する
- ラインケアを強化し、課・部単位でキャッチアップする
1. 健康経営評価指標をもとに該当者を抽出する
従業員の生産性が低下することは企業にとっては大きな損失になります。プレゼンティーイズムを測定することで、どの程度の損失額を被ることになるかを算出できるだけでなく、予防や対策につながります。
プレゼンティーイズムを評価する指標はいろいろとありますが、ここでは、経済産業省の「企業の『健康経営』ガイドブック」※2で紹介されている健康経営評価指標【生産性への影響度を評価する指標:プレゼンティーイズム】をご紹介します。
紹介されている指標は次の5つです。
- WHO-HPQ
- 東大1項目版
- WLQ(Work Limitations Questionnaire、タフツ大学医学部作成)の日本語版
- 産業医科大学で開発された、WFun(Wrok Functioning Impairment Scale)
- QQmethod(健康問題の有無を確認した上で、4つの質問で評価する)
参考:経済産業省「企業の「健康経営ガイドブック」 ~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版:平成28年4月)」P26
プレゼンティーイズムの計測は、前段に例示したような質問紙を用いた自己記入形式で回答する指標がほとんどです。この指標は仕事で通常発揮できる業務パフォーマンスのレベルを 100% とした場合に、健康上の問題を理由とする業務パフォーマンスの低下がどの程度かを自己回答方式で把握するタイプの設問で構成されています。
これらは同じプレゼンティーイズムという概念を測定し妥当性や信頼性が検証されている代表的なものです。しかし、測定結果の示す意味が異なるため異なる指標を並べて比較することはできないため注意が必要です。
自社の状態を評価する際には、どの測定方法を用いたか、合わせて公表するようにしましょう。
2. ストレスチェックを実施する
労働安全衛生法に基づき、常時50名以上の従業員がいる事業場に1年間に1回、従業員のストレス度合いを調べるストレスチェックの実施が義務付けられています。ストレスチェックでは、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」といった項目を調査します。
ストレスチェック調査票において「心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」の評価点数の合計が高い者は「高ストレス者」となります。「疲れがずっと抜けない」「休日でも仕事のことが気になって落ち着かない」など、メンタルヘルス不調を示すサインを多く持つ人が該当します。
ただし、それほど極端な自覚症状がなくても、担当業務の責任が重い、業務量が過度に多いなどストレス要因の多い仕事を抱えている人や、上司や同僚からのサポートが乏しい人も、今後メンタルヘルス不調に陥ることが懸念される対象として高ストレス者に分類される場合もあります。
こうしたストレスチェックの結果を活用し、どのようなプレゼンティーイズム対策を実施していくのかなど検討することで施策の効果が向上します。
関連記事:【ストレスチェック】義務化と概要│目的やメリットを解説
3. 従業員サーベイを実施する
組織の環境や風土、コミュニケーションでカバーしていも、それらはあくまで定性的なものであって、人の状態を定量的に説明することは難しいものです。
ストレスチェック等に代表される従業員へのヒアリング機会もありますが、年に1回では課題の早期発見ができず、スピーディーな対応は難しいものです。
ではどうすればよいでしょうか?
定期的に同じ項目でサーベイ(アンケート)を取り、その変化を定点観測しましょう。
従業員サーベイは、従業員や組織(部や課)の機微な変化に気づく有効な手段として、昨今注目を浴びています。近年では、「パルスサーベイ」と呼ぶケースもあります。
パルス(pulse)とは脈拍のことです。組織と個人の関係性の健全度合いを測ることを目的とした定量評価の手段です。脈を図るように、刻々と変わる組織状態を把握することで課題の早期発見につながるという考えからこのように呼ばれています。
4. ラインケアを強化し、課・部単位でキャッチアップする
ラインケアとは、職場のライン上にいる直属の上司が、部下の異常に気付き対応することです。最もベーシックな職場の健康管理方法かもしれません。
部下からの相談に適切に対応したり体調不良等にはやめに気づくには、メンタル疾病に対する偏見を持っていては適切に対応できないことがあります。適切なラインケアの実施は、企業のメンタルヘルス状況を改善・強化させます。管理監督者は日常的に部下と接点があるため、早期発見や問題があった場合のケアにおいて非常に重要な役割を果たします。
働き方の多様化により、異変に気付ける頻度が下がるケースもあるようです。そのため、積極的に1対1の面談機会を作ったり、なるべくコミュニケーション機会を多く設けるなど、工夫や試行錯誤することが必要です。対面でのコミュニケーション機会が減ってきている中で、いかに早期発見するか、また未然にプレゼンティーイズム・アブセンティーイズムを食い止めるかは組織の重要課題の一つとなります。
産業医面談に至る前に人事や課・部単位でキャッチアップできていれば、プレゼンティーイズムやアブセンティーイズムに陥る従業員を未然に食い止めることや、適切な人材配置等の措置が可能となります。
課や部の上長または他のメンバーが異変を早めにキャッチアップすることが、組織にとっても従業員にとっても、よりよい「働く環境」になります。
プレゼンティーイズムを予防・改善するメンタルヘルス対策の基本
メンタル不調と向き合うための有効策として、厚生労働省から「労働者の心の健康の保持推進のための指針」(改正)(平成27年11月)が発表されています。
下記にある4つのケアのほか、メンタルヘルス対策の具体例については下記に詳しく記しています。
関連記事:メンタルヘルス対策の具体例|基本対策と有効な取り組み・効果
従業員自身で行う「セルフケア」
セルフケアは従業員自身でストレスを予防し、気付いた時に適切に対処することです。セルフケアは、簡単そうですが実は正しい知識がないと適切に対処できません。
例えば、体や気持ちに異変が生じていても「今の自分は、うつ病かもしれない」と、自ら気付いて対応できる従業員ばかりではありません。また異変の度合いや、生じる症状や頻度は、人によってそれぞれであるため、判断が難しい場合があります。
ストレスの認知や、その反応に自ら気付くためには、従業員一人ひとりがストレス要因に対する反応や、心の健康について理解するとともに、気付こうとする姿勢が必要です。自ら気付き、対応する「セルフケア」を適切にできるようになるには、研修機会を設けて、従業員一人ひとりの意識を高めていくことが重要です。
このセルフケアが十分にできれば、不調を未然に防いだり、重度に至る前に対処でき、組織全体でストレスへの対応力が強化されることとなります。
関連記事:セルフケアとは?すぐに実践可能な方法と企業での取り組み例
組織の管理監督者によるラインケア
ラインケアとは、組織の管理監督者による部下のストレスケアのことです。管理監督者が従業員の具体的なストレス要因を把握し、相談に乗ったり、必要に応じて環境を改善したり、配置転換等の策を講じることを指します。
ここで重要なことは、管理監督者が適切なケアを実行できるよう、管理監督者に対して定期的にラインケアに関する教育・研修、情報提供を行うことです。
管理監督者が部下の不調を認知できるかどうか、あるいは認知したところで適切に対処できるかどうかは、ラインケアの基盤となるためです。
まずは管理監督者自身に、ラインケアを行う職務であることを認識させましょう。
また、部下の変化に気がついていても、どう対処したら良いか判断がつかず悩むこともあるでしょうし、管理監督者自身が強いストレスを抱えて困っている場合もあります。
そのため、人事担当者やさらに上位監督者による定期的なコミュニケーション、研修機会が重要になります。
関連記事:ラインケアとは?職場のメンタルヘルス対策の具体例
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
事業場内産業保健スタッフ等によるケアとは、産業医や衛生管理者、保健師、心理職、精神科医など社内の産業保健スタッフ等による支援のことです。セルフケアやラインによるケアが効果的に実施されるよう、従業員や管理監督者に対する支援を行うとともに、次に示す心の健康づくり計画の実施にあたって、中心的な役割を担います。
具体的な支援内容は以下になります。
- 具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
- 個人の健康情報の取扱い
- 事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口
- 職場復帰における支援、など
事業場外資源によるケア
事業場外資源によるケアとは、メンタルヘルスケアの専門知識を有する外部の機関やサービスを活用することです。
事業場内での相談を希望しない従業員のケアや、企業が抱えるメンタルヘルスの課題解決のために、カウンセリング、従業員への教育研修、情報提供、復職支援など、専門性や第三者の介入が必要なケースもあります。
そのため、外部の専門的な知識を有する資源の活用が有効です。
必要に応じて外部EAP(Employee Assistance Program)など、適切なサービスを得られるネットワークを整えておきましょう。※外部EAP:身体と精神の両方の健康を支援するプログラムのこと
プレゼンティーイズムを予防・改善する企業の取り組み具体例
プレゼンティーイズムの予防・改善に取り組む際には、人への対策や職場環境への対策など様々な方法が考えられます。
メンタルヘルスセミナーを実施する
従業員の心身の健康増進には、企業(人事や総務、健康管理担当者)が従業員に対して健康情報に触れる機会をなるべく多く提供し、健康の維持増進を計ることが重要です。
「今は関係ない」「自分のことではない」と思ってしまうと、一度聞いた内容でも関心が薄れてしまい、あまり重要視できないことがあります。まさに、「対岸の火事」のことわざの通り、向こう岸の火事は自分に災いをもたらす心配のないという意味です。
メンタルヘルス対策や健康増進に関しても同様です。健康な時に疾病や薬のことを聞いても、なかなか自分事としてとらえにくいものです。このことを踏まえ、長期的に複数回、テーマを変えてセミナー機会を設けることが重要です。
「昨年セミナーをやったから今年はもういいだろう」と考えるのではなく、テーマをや登壇者(話し手)を変えて年に数回セミナー機会を作るなど、健康情報に高頻度で触れる機会を作りましょう。
そうすることで着実に健康意欲は高まり、健康風土が醸成されていきます。セミナーや健康増進のプログラムを検討し、定期的に実施していきましょう。
プレゼンティーイズムを予防・改善する主なセミナー内容としてはセルフケアやメンタルタフネスについて学ぶものや、運動実践を交えたメンタルヘルスケアを軸にしたものなど様々です。
- 運動実践付きメンタルヘルスセミナー
- セルフケアセミナー
- メンタルタフネスセミナー
- 睡眠改善セミナー など
RIZAPの運動実践付きメンタルヘルスセミナー
運動を取り入れたRIZAPのメンタルヘルスセミナーは、メンタルヘルスに好影響をもたらします。対策が必要な一部の従業員だけでなく、すべての従業員のメンタルヘルス対策として最適です。
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関連記事:【最新】メンタルヘルスセミナーの種類と効果|目的・事例
運動を促進する
運動には、さまざまなプレゼンティーイズム解消への好影響があります。
- セロトニン分泌が促進され、睡眠の質が上がる
- エンドルフィンによるストレス解消効果
- ドーパミンの分泌によりポジティブになる
運動不足の解消は単に生活習慣改善のためだけに必要なのではなく、従業員のプレゼンティーイズム対策やメンタルヘルス対策や生産性向上にあたっても重要度が高いことがわかっています。
少し古いデータになりますが、運動がうつ病に与える影響について、1999年 アメリカのデューク大学医学部のブルメンタール教授らの研究が有名です。うつ病患者156人を、薬(抗うつ剤)と運動、運動のみ、薬のみの3グループに分けて、4か月後と10か月後の経過を見るという研究がありました。
4か月後には、薬のみのグループは改善率68.8%で最も改善が見られましたが、10か月後は38.0%が再発しています。
一方、運動のみを見ると、4か月後は改善率60.4%であり、有意な改善が得られましたが、10か月後の再発率はさらに顕著であり、わずか8%の再発率だったという結果が得られています。
こうした研究からもわかるように、運動はメンタルに良い効果をもたらし、それを継続することは、さらに効果的です。加えて、RIZAPのウェルネスプログラムの研究結果からも運動プログラムのメンタルヘルスに対する有効性が示唆されています。
※プログラムの前後で参加者のBMIが最適化されたことに加えて、効果があった項目
- 自己効力感:自分の可能性を認知する
- 主観的健康感:自らの健康状態を評価する
- 処理可能感:ストレスに遭遇した際に”なんとかなる”と前向きに対処できる
- 把握可能感:現在の自分の状況を理解し冷静に捉える
こういったことから、運動不足の解消は単に生活習慣改善のためだけに必要なのではなく、従業員のプレゼンティーイズム対策やメンタルヘルス対策や生産性向上にあたっても重要度が高いことが分かります。
また、運動機会の促進にあたり、研修会内での運動イベントの実施など単発の施策に加えて、運動習慣の定着に向けた継続的な施策も同時に行うことが重要となります。
- ウォーキングイベントへの参加
- 運動会などのスポーツイベントの実施
- ラジオ体操の実施
- 運動サークルの運営
- 徒歩や自転車での通勤環境の整備
- スポーツクラブへの補助金、福利厚生の整備
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肩こり・腰痛を解消する
テレワークの普及に伴い、環境が変化したことで腰痛になる人が増えています。腰痛・肩こりの主な原因としては床や椅子への座り方や生活習慣によるものが大きいといわれています。
テレワークの環境下においては、長期間にわたってデスクワークに適していない環境で働くことは身体に支障をきたしかねません。やがて腰痛・肩こりを引き起こし、思うように仕事が進まず業務効率が下がってしまう恐れもあります。
姿勢の悪さや運動不足、精神的なストレスが腰痛の主な引き金になると考えられます。これらの要因を解消するために、姿勢の見直しや運動習慣の実践、ストレスマネジメントといった対策をぜひ取り入れましょう。
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関連記事:【RIZAP監修】テレワーク中の腰痛対策とは ❘ 生産性を上げる
高ストレス者への面談を実施する
高ストレス者とは、ストレスチェックによってメンタルヘルス不調の兆候が強く確認された人を指します。高ストレス者はプレゼンティーイズムになる可能性が高いとされているため、高ストレス者への対応はとても重要になります。面談へと促すだけでなく、面談を希望しない場合にも様々な方法で対応し放置しないようにしましょう。
メンタル不調になると気分の落ち込みや意欲の低下だけでなく、脳機能の低下をもたらし、集中力や判断力を鈍らせます。結果的には仕事の生産性が低下するだけでなく、重度の場合は休業になる可能性も考えられます。
また、一緒に働いている身近な仲間が2人、3人とプレゼンティーイズムによって業務効率が下がったり、体調不良になっていくと、職場内には不穏な空気感がひろがります。そして不調ではない従業員に対しても、不安感をもたらしたり、モチベーション低下を招くことがあります。
関連記事:【ストレスチェック】高ストレス者の対応|面談・有効な施策
健康リテラシーを高める
全ての健康問題に影響すると考えられている健康リテラシーを高めることは、メンタルヘルス対策にも有効です。健康リテラシーを高めることで「健康意識を高めること」につながるのです。
プレゼンティーイズム対策を実施する際にも健康リテラシーを高める対策をすることで効果が最大限に高まります。
健康リテラシーとは、「自分に必要な健康情報を入手し活用する能力のこと」です。健康リテラシーが高いと正しい情報を理解でき、自身の健康状態に応じて活用することができます。
例えば、健康診断などで疾病の早期発見や、重症化する前に軽症の段階で治療できることもあるでしょう。あるいは健康な方の場合は、維持増進のために、積極的な取り組みを行うなどの工夫ができます。
健康リテラシーを身につけ、セルフケアを従業員自身がすすめられることで健康状態が改善されアブセンティーイズムやプレゼンティーイズムの改善につながり、結果的には労働生産性の向上にもつながります。
高い健康リテラシーを身に着け、適切な行動ができる従業員が増えることで、社内全体の健康レベルは底上げされます。
関連記事:従業員の健康リテラシー向上策を知ろう
心理的安全性を高め、従業員によるSOS自発発信を促進する
新しい働き方として、非対面で業務を遂行するスタイルが普及したなかで、プレゼンティーイズムの該当者を早期発見し対応する、または未然に防ぐには、いかにSOSを上げやすい組織を作り上げるかが重要です。
人は毎日、最高のパフォーマンスを発揮できるとは限りません。さまざまなことが要因となりパフォーマンスが良い日もあれば、そうでない日もあります。
パフォーマンスが伸び悩んだ時に、「失敗した」「できなかった」「想定より時間がかかった」「想定外の事が起きた」というネガティブな情報を発信しやすい環境であれば、企業として大きな問題に至る前に、下部組織(例えば部や課など)でフォローすることができます。
心理的安全性とは、「組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態」のことです。
業務での不安やストレスがかかっている中で、心理的安全性が担保されている環境下であれば、「私は不調です」「少し休みたい」「業務が多い」「納期が早くて困っている」などのSOSを発しやすく、結果としてプレゼンティーイズムを早期に発見し、アブセンティーイズムを未然に防ぐことができるのです。SOSを上げやすい職場環境ために、心理的安全性を高めていきましょう。
心理的安全性を高めるには、以下のような取り組みがよいでしょう。
- 発言する機会を均等に作る
- ポジティブな思考と言動を意識する
- 1on1ミーティングの価値を高める
- 一人一人をチームでサポートする
関連記事:心理的安全性とは?詳細と役割の解説
職場環境を整える
従業員が1日の多くの時間を過ごす職場環境が悪いと従業員に大きな負担がかかり、企業の生産性低下にもつながりかねません。上記の点で改善を図り、従業員が働きやすい快適な職場環境を形成する配慮義務が事業主にあると定められているのです。
職場環境とは、単に作業をする場所そのものに限られません。作業方法や疲労回復するための設備なども、職場環境に含まれています。
- 人間関係:コミュニケーションなど
- 業務環境:空調照明など~設備レイアウトなど
- 業務内容:裁量権、負荷の量、労働時間
とてもシンプルなことですが、働く環境が整うことで、従業員一人ひとりがパフォーマンスを最大限発揮できるようになります。
関連記事:職場環境の改善アイデア|組織向上への取り組みと成功事例
プレゼンティーイズム対策として健康経営を推進する
プレゼンティーイズムの要因となっている心身の不調を改善する手段として健康経営の取組みが考えられます。
健康経営とは、『従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法』です。健康施策にかかる支出をコストと考えるのではなく、『投資』としてとらえることが重要になります。
従業員の健康を増進し、プレゼンティーイズムの改善を行うことで生産性の向上・組織の活性化を図り、最終的には業績の向上・企業価値の向上を目指す取り組みになります。
健康増進を行うことは、リスクマネジメントや労働災害の予防だけでなく、従業員が長く健康で働くことが可能になるため、アブセンティーイズム(欠勤や休業)の予防にもつながります。
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プレゼンティーイズム対策に関連する事例
上記のような対策が考えられる中、RIZAPでは従業員の皆様へのプレゼンティーイズムの予防・改善として健康課題の対策をサポートしています。
健康リテラシーが向上│地方職員共済組合和歌山県支部様
健康リテラシーを身につけ、健康状態が改善されることはアブセンティーイズムやプレゼンティーイズムの改善につながり、結果的には労働生産性の向上にもつながります。
2020年度、地方職員共済組合和歌山県支部様でRIZAPのセミナーを3回にわたり実施いただいた結果、参加者の健康リテラシー向上と行動変容につながりました。
- 1回目のセミナーで「健康に対して、「必要性は理解しているが行動に移せていない」という回答者が17名いたが、開催後には17名全員の意識変容が見られた
- 1回目のセミナーから2か月後、「すでに健康行動をしている」人の割合が20.7%から53.1%に増加した
このことから
・短期的ではなく長期的に捉えて研修機会を設ける
・様々なテーマでアプローチする
などの要素がうまく奏功し、参加者の意識変容から行動変容にシフトさせ、更に習慣化にも繋がったということが数値で表れています。
どのようなセミナーだったかという詳細は以下の通りです。
「若年層の肥満率増加」「集客力を強めたい」「40歳以上の生活習慣病の増加」「対面開催が難しい状況」「家族の健康意識も向上させたい」という課題をお持ちの中、3回に分けてRIZAPのセミナーを開催したところ、延べ535名にご参加いただきました。
オンラインセミナーにすることで参加ハードルを下げるだけでなく家族参加も可能となり、知名度のあるRIZAPがコラボレーションすることで集客力アップをサポートしました。
また、個人個人が好きなテーマを選んで参加できるよう、導入編、運動編、食事編の3回で知識の習得が幅広く行える構成にしたり、単発参加も可能とし、各回でより深い知識が得られることで継続参加を促進することができました。
地方職員共済組合和歌山県支部様の詳しい事例はこちら
運動習慣者割合が増加した事例 │ 株式会社ベネッセホールディングス様
運動不足の解消は単に生活習慣改善のためだけに必要なのではなく、従業員のプレゼンティーイズム対策やメンタルヘルス対策や生産性向上にあたっても重要度が高いことがわかっています。
ベネッセホールディングスは、比較的若い従業員が多く、病気の人が多いわけではありませんが、生活習慣病予備軍については気を付ける必要があり、過去に生活習慣病の予防としてポピュレーションアプローチをいろいろ実施してきました。
しかし、健康無関心層が集まらず毎回関心のあるメンバーしか集まらないなど健康施策に関して苦戦を強いられている現状を変えるため、集客に好影響がありそうだと判断してRIZAPの健康セミナーを導入しました。
参加満足度は97.5%と高く、2019年度以降、参加申込人数は翌年に4倍、翌々年には9倍もの推移を遂げる結果となりました。2020年度より運動不足に悩む企業が増えている中、上記の取り組みの末「運動習慣がある」と回答した割合が毎年向上しています。参加者アンケートにおいて「セミナーを通して、健康改善や運動習慣に関する知識や姿勢は向上しましたか」という質問に対して、参加者の85%が向上したと回答があり好結果が得られています。
その他にも、半数以上の従業員から「運動不足の解消・運動習慣の改善」につながった声や、「リフレッシュできた」「気持ちがポジティブになった」と前向きな回答が多く挙がりました。
※RIZAPウェルネスプログラム導入による直接的な効果を実証するものではありません。
参照:https://benesse-hd.disclosure.site/ja/themes/154
株式会社ベネッセホールディングスの詳しい事例資料はこちら
メンタル面身体面に効果が確認された事例 │トヨタ自動車九州株式会社様
トヨタ自動車九州株式会社では健康セミナー、卒煙施策など一般的なポピュレーションアプローチは既に実施されていましたが、疾病休業日数の低減・トヨタグループBMIワースト3からの脱却・高齢化対応のために一歩踏み込んだ健康施策を検討されていました。
健康無関心層にも波及する強いポピュレーションアプローチとしてRIZAP法人ウェルネスプログラム「結果にコミット®コース」を導入し下記のような結果が現れました。まずは厳選したメンバーが生活習慣を改めて見た目を変え、追随するメンバーを増やそうと実施した50名において心身ともに変化が見られた好事例です。
- 体重平均6.1kg減(最大21.4kg減)
- BMI 平均 2.1減(最大7.0減)
- 腹囲平均8.8cm減(最大20.4cm減)
- 体脂肪率平均4.2%減(最大12.8%減)
- 健康管理についての意識変化: 100%
- 健康意識が高まった: 100%
- ポジティブになった: 89%
- 自分に自信がついた: 79%
プログラム後には参加者から自発的な健康アクションが増えてくるとともに、参加してない方からも高い関心が寄せられ 「自分も参加したい」「体を変えたい」という声も上がっているとのことです。
トヨタ自動車九州株式会社の詳しい事例はこちら
まとめ
プレゼンティーイズムから従業員の健康課題を考えることで問題点を把握し、健康経営の実践につなげていきましょう。
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調査結果からは以前からの課題である「運動不足」だけでなく「メンタル不調」に対する対策が必要であることが分かります。各社がどのような取り組みをどうアプローチしているのかがわかる、ご担当者様にとって必見の内容となっています。
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