ポピュレーションアプローチとは?
ポピュレーションアプローチとは、集団全体を対象として働きかけを行い、全体としてリスクを下げる取り組み方法を指しており、一次予防の役割になります。
大人数の集団に対して健康増進を行う際の方法として、大きく分けてポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチという2つ方法が考えられます。特徴は以下の通りです。
ハイリスクアプローチ:健康リスクが高い人を対象とした取り組み方法
ポピュレーションアプローチ:それぞれ個人のリスクとは関係なく、集団全体に対して潜在的な健康リスクに対して行う取り組み方法
下記のような分布図で考えてみると、ポピュレーションアプローチは分布全体を低リスクに少しずつシフトさせるような働きかけで、ハイリスクアプローチは、ハイリスクの人の人数を減らすような働きかけとなります。
参考: 社団法人日本看護協会『やってみよう‼ポピュレーションアプローチ』
ポピュレーションアプローチの対象が集団でハイリスクアプローチの対象は個人という捉え方ではないので注意しましょう。
取り組みの具体例として、運動促進や食生活改善、たばこなどの分野でさまざまな取り組みがなされています。
リスクを全体的に下げる働きかけ ❘ ポピュレーションアプローチ
ポピュレーションアプローチは、健康リスクに対する取り組みの一つです。集団全体を対象として働きかけを行い、全体としてリスクを下げる取り組み方法を指しており、一次予防の役割になります。そのため、予防活動や公衆衛生活動など低リスク・潜在的な健康課題に対しての取り組みが多くなります。
健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health : SDH)という言葉があり、健康への影響は、遺伝や個人の生活習慣だけなく、家庭・職場・地域などの個人を取り巻く環境や、職業・学歴・所得などの社会的経済状態などからも大きく受けることを意味しています。
ポピュレーションアプローチは、この社会的決定要因への取り組みであり、健康を支援する環境づくりとしての役割も担います。
ポピュレーションアプローチの効果・意義
ポピュレーションアプローチのメリットとしては以下が挙げられます。
・集団全体に効果が及ぶ
・集団全体としての発症者の減少効果が大きい
・集団からハイリスク者を選ぶ手間が省ける
反対に、デメリット・リスクとしては以下が挙げられます。
・個人への効果が低い
・不十分な介入の場合、健康格差が拡大する可能性がある
・漫然と実施した場合、費用対効果が低い
参考:公衆衛生がみえる2020~2021、一部改変
■人々の関係性への効果
ポピュレーションアプローチでは全従業員を対象にした取り組みを行いますが、従業員の家族や、取引先の顧客を巻き込んだ施策を実施することもあります。
そうすることで、コミュニケーションも活性化され、組織内外で様々な形で関係を構築することができます。健康文化の醸成には健康に無関心な人(健康無関心層)も含めていかに多くの人を巻き込めるかが重要であり、ポピュレーションアプローチは大きな役割を担っています。
関連記事:健康無関心層を動かすアプローチ ❘ 特徴別の施策とポイント
■個人の選択が変わる
健康増進にあたり、健康的な生活習慣を身につけることが重要となります。
生活習慣は属している環境に大きく影響を受けます。例えば、喫煙に関して禁煙促進など会社がしない場合、従業員が禁煙をするきっかけは少なくなります。
ですが、会社でルールとして全面禁煙にせずとも、『喫煙することは自身の健康障害を引き起こすだけでなく、周囲の健康被害の要因にもなります。』といった禁煙を促す啓蒙活動をするだけでも、禁煙を推進したり、新たに喫煙を開始する人を減らすことができるでしょう。
実際に従業員が健康増進に対して消極的な場合でも、ポピュレーションアプローチを通し、健康的な選択をすることが自分だけでなく周囲にも影響を与えることを理解することにも大きな意義があります。
健康リスクの高い人への働きかけ ❘ ハイリスクアプローチ
潜在リスクへの取り組みとしてポピュレーションアプローチとあわせ、顕在リスクへの取り組みとしてハイリスクアプローチという方法があります。
一般的にハイリスクアプローチは、健康リスクの高い人を対象とした取り組み方法を指しており、個別もしくは集団での生活指導や治療といった二次予防の役割になります。
保険者に実施義務が課されている「特定保健指導」がハイリスクアプローチの一例となります。
特定健診の対象者が40歳~74歳となっており、受診結果から生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善によりメタボリックシンドロームなどの解消や予防効果が高く期待できる方に対してのみ専門スタッフ(保健師や管理栄養士)が行う保健指導になります。
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ハイリスクアプローチの効果・意義
ハイリスクアプローチのメリットとしては以下が挙げられます。
・個人への効果が高い
・対象を絞ることができる
・効果的に健康リスクを予防・抑制することが可能
反対に、デメリット・リスクとしては以下が挙げられます。
・集団全体にリスクが広く分布する場合には有効に機能しない
・成果は一時的、限局的なことが多い(事業終了後、維持するのが難しい)
・集団全体への波及効果が小さい
どちらから取り組むべき?
ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチは、どちらかだけを取り組むといったことは推奨されません。対象となる健康問題や集団によって、いずれかを選択、あるいは組み合わせて実践・展開することが必要です。
ハイリスクアプローチがあることでポピュレーションアプローチがより効果的になり、ポピュレーションアプローチがあることでハイリスクアプローチがより効果的になると言われています。
健康問題を解決するためには、ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチをうまく組み合わせ、相乗的に効果を最大化することが望ましいです。
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ポピュレーションアプローチの具体例
ポピュレーションアプローチとして健康施策を検討する場合のプラン例を、健康課題ごとに解説していきます。
運動促進
ポピュレーションアプローチとして身体活動・運動の促進のための施策を行うことは、従業員の運動習慣の改善だけでなく、プレゼンティーイズムの改善にもつながります。
プレゼンティーイズム(presenteeism)とは、WHO(世界保健機関)によって提唱された、健康問題に起因するパフォーマンスの損失を表す指標です。欠勤には至っていないものの「健康問題が理由で生産性が低下している状態」を指します。言い換えると、心身の不調によって、パフォーマンスが思うように出せない状況のことです。
プレゼンティーイズムによる一人当たりの年間損失額の1位は頸部通・肩こり、3位は腰痛となっています。これらの症状に対して、デスクワーク環境の改善に加えて、定期的な身体活動が役立つと考えられます。
関連記事:【まとめ】プレゼンティーイズムとは?測定と改善対策の具体例
すでに疾病を抱えている従業員やハイリスクな従業員に対して運動促進を集中的に行うことも必要ですが、プレゼンティーイズムの状態やまだ健康リスクのない従業員に対してポピュレーションアプローチとして運動施策を行うことは、組織全体の活性化に直結するでしょう。
一人でも多くの従業員に運動機会を提供するポピュレーションアプローチとして、運動を行える環境整備としての【福利厚生での運動機会の創出】をすすめる企業も多くなってきています。
その他従業員の健康行動へのキッカケを作る役割として、健康イベントの開催も推奨されます。健康増進を全面に押し出すのではなく、あくまで従業員が興味関心をもって積極的に取り組めるような施策を実施すると、多くの参加者が見込めます。
- ウォーキングイベントへの参加
- 運動会などのスポーツイベントの実施
- 運動セミナーの実施
- 朝礼でのラジオ体操の実施
- 運動サークルの運営
- 徒歩や自転車での通勤環境の整備
- スポーツクラブへの補助金、福利厚生の整備
運動施策のポピュレーションアプローチ例
多くの従業員に対して運動を行える環境整備ができる、福利厚生での運動機会創出!スポーツジムの法人会員を利用して、運動のポピュレーションアプローチが実施できます。
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関連記事:【福利厚生】スポーツジムの法人会員|おすすめ8選、導入メリット
食生活の改善
ポピュレーションアプローチとして従業員の食生活改善を定期的に行うことで、知識の定着や行動への後押しをサポートすることができます。適切な量とバランスの良い食事は運動習慣と並んで生活習慣病予防の基本となります。職場において、従業員が自ら正しい食事を選べるようにサポートが必要になります。
従業員がバランスの良い食事を選べるような食環境整備と併せて、情報提供や動機付けのための食事セミナーを行うことで、従業員が無理することなく食事についての取り組みを行うベースを組み立てることができます。従業員が自分の食事を振り返るきっかけとなり、食事や健康に関心を持ってもらう後押しを定期的に実施することで、健康リテラシーを高めることができます。
従業員の健康リテラシーの向上や健康への興味関心を高めるために、食事施策のポピュレーションアプローチは重要な取り組みの一つとなります。
- 社食などで健康づくり支援メニューを提供
- 健康的な商品を購入できる自販機の導入
- 社食等での栄養素・カロリー等の表示
- 健康に配慮した食事・飲料の提供や補助
- 食生活改善アプリ提供等のサポートの実施
- 毎月メールで健康コラムの配信
- 食事セミナーの定期開催
- 社内ポータルに健康情報を掲載
食事施策のポピュレーションアプローチ例
定期的な食事・健康セミナーの開催は、健康への関心や健康リテラシーの向上に役立ちます。RIZAPの食事セミナーは情報提供だけでなく行動変容に導くセミナーとして、多くの企業でポピュレーションアプローチとして取り入れられています。
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関連記事:【企業向け食事セミナー一覧】健康増進・食生活改善の取組例
メンタルヘルス対策
厚生労働省の実施している労働安全衛生調査によると、仕事で強いストレスを感じている従業員の割合は約6割となっています。
メンタルヘルス不調は脳の機能低下をもたらし、集中力や判断力を鈍らせます。その状況が深刻化すると生産性の低下につながります。また、一緒に働いている身近な仲間が2人、3人とメンタル不調によって業務効率が下がったり、体調不良になっていくと、不穏な空気感がひろがります。そして不調ではない従業員に対しても、不安感をもたらしたり、モチベーション低下を招くことがあります。
また、プレゼンティーイズムの原因は腰痛や肩こりのような運動器の障害だけでなくメンタルヘルス不調も原因となります。メンタルヘルスの対策として「運動」を取り入れることが有効というデータもあり、RIZAPではメンタルヘルスセミナーに運動を取り入れています。
RIZAPが2018年11月から開始した筑波大学 水上研究室との共同研究「企業向け健康増進プログラムによる心理的変化の検討」においても、運動を取り入れる効果が実証されています。298名(男性195名、女性103名)にRIZAPウェルネスプログラムを実施し、プログラム前後でのメンタル面での変化を比較したところ、参加者のBMIが最適化されたことに加えて、メンタルヘルスに好影響がありました。
- 職場環境の改善
- 早期発見のための体制整備(相談窓口の設置など)
- ストレス緩和ケア、セルフケア研修の実施
- ラインケアに関する教育・研修の実施
- 運動を取り入れたメンタルヘルスセミナーの実施
メンタルヘルス施策のポピュレーションアプローチ例
運動を取り入れたRIZAPのメンタルヘルスセミナーは、メンタルヘルスに好影響をもたらします。対策が必要な一部の従業員だけでなく、ポピュレーションアプローチとしてすべての従業員のメンタルヘルス対策として最適です。
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関連記事:メンタルヘルス対策とは?企業の事例と取り組みの具体例
働き方・休養
長時間労働は過労死やメンタルヘルス不調につながります。企業はリスクマネジメントの視点からも、長時間労働によって従業員の健康が損なわれないように、時間外労働の削減や、有給休暇の取得促進を行う必要があります。
- 一定の時間になった際のPCの強制シャットダウン
- 時間外労働の事前申請制の導入
- ノー残業デーの導入
- 有給休暇取得目標の設定、計画的付与制度の導入
- 在宅勤務制度などテレワークの導入
- フレックスタイム制、裁量労働制などの導入
関連記事:働き方改革のカギは健康経営|関係性と生産性向上のポイント
たばこ
受動喫煙によってさまざまな病気のリスクが高くなることから、健康増進法にて必要な措置を講ずるよう努めるべき旨が定められております。
職場では25%が受動喫煙を受けている現状です。厚生労働省は、事業者における受動喫煙防止対策を推進するため、「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」を策定しています。
- 受動喫煙対策の教育・啓発の推奨
- 禁煙インセンティブの導入
- 喫煙所の廃止、建物内完全分煙
インセンティブやペナルティの効果
インセンティブとは、健康増進の取り組みや、健康改善の状況に対してポイントを付与し、ポイントを利用して好きな商品と交換できるような仕組みになります。
このようなインセンティブの場合、ただ景品を渡すだけではなく、営業成績などの表彰と並べて大々的に表彰にするのもおすすめです。理由としては、『個人の健康は会社にとっても重要視していること』ということを間接的に伝えることが出来るからです。
一方ペナルティとして、健康リスクを抱えていると昇進ができなかったり海外転勤ができないような会社も存在します。
ポピュレーションアプローチを実施するためのステップ
漫然と実施した場合、うまく効果を得られないことがポピュレーションアプローチの欠点となります。そのため、効果的なポピュレーションアプローチの実施にはプランがとても重要になります。
プランが重要な理由として2点挙げられます。
1つは課題解決につなげるためです。ポピュレーションアプローチの実施のために「正しい課題の抽出」を行うことで、正しい施策の実施、そして評価につなげることができます。
2つ目は評価の見える化につなげるためです。目的が曖昧なまま実施してしまった場合、評価も曖昧になります。ですが、健康課題の抽出や、課題の背景・要因をしっかりと見極めてから実施した場合、明確な指標があるため評価もしやすくなります。
【プラン作成の手順】
- 現状の把握
- 健康課題の抽出
- 背景や要因の分析
- 健康課題・対象の明確化
- 優先課題・順位の決定
- 目的と方法の決定(実施計画、評価指標、評価計画の設定)
引用し一部改変:公益社団法人 日本看護協会「保健師のためのポピュレーションアプローチ必携」平成30年3月
以下でそれぞれの内容について詳しく説明していきます。
現状の把握~健康課題の抽出
自社の健康課題は日頃の従業員同士のコミュニケーションから「最近は運動不足の人が増えたな」「リモートワークの影響で肩こり腰痛がひどい」など、何となく思いつくものがあると思います。そういった従業員の生の声を聞くことから仮説をたて、根拠に基づいて抽出した健康課題をしっかりと把握し、優先順位をつけて決定することが必要になります。
健康課題を抽出するための根拠あるデータソースとして、「定期健康診断」「ストレスチェック」の結果が活用できます。定量的に現状を把握することができ、経年変化や他社と比べた際の自社の立ち位置が確認できるので非常に有効なデータとなります。
健康課題抽出に活用できるデータの例として以下が参考になるのでぜひご確認ください。
※参考:経済産業省 令和2年度 健康経営度調査
その他、自社で取得している従業員サーベイ(パルスサーベイ)や健康施策実施の参加者アンケートも活用できます。
近年ではコラボヘルスやデータヘルスといった保険者や産業医・保健師など産業スタッフと協力して行う健康増進も注目されており、企業だけで行う場合よりもより深く・的確に健康課題を抽出できるでしょう。
定期健康診断やストレスチェックはすでに顕在化したものですが、なぜその結果(=健康課題)が抽出されているのか原因を突き止めることも同時に重要となります。
例えば、従業員アンケートや勤怠データが挙げられます。健康状態と職場要因と関連性がどの程度あるのか、実際のアンケート結果や勤退状況を照らし合わせて考えることで、より具体的な課題把握が可能となります。
全社共通の健康課題かどうか見極める必要はありますが、より因果関係や改善のヒントが得られる産業医や保健師との面談結果も重要な定性情報になります。
■定期健診や特定健診等からわかること
定期健診の受診率が低い、生活習慣病の治療中・未治療者が多い、再検査・精密検査の受診率が低い、肥満者率が高い、高血圧率が高い、糖尿病率が高い、やせ・肥満(BMI18~25以外)率が高い、脂質異常症率が高い など
■問診や面談からわかること
運動習慣化比率が低い、喫煙率が高い、飲酒習慣比率が高い、不規則な生活、食生活の乱れ、腰痛、肩こり、睡眠不足どうして食事の乱れや運動不足、体の痛み等に至ってしまうのかの理由 など
■就業状況やストレスチェック、従業員調査からわかること
ストレスレベル(ストレスの内容や心身のストレス反応など)、活気がない、従業員エンゲージメントが低い、心の病が多い、アブセンティーイズム、プレゼンティーイズム など
■職場環境データや労働時間データ等からわかること
従業員の高齢化、長時間労働、休日労働 など
背景や要因の分析
上記のようなデータから抽出した健康課題について、「なぜ、そうなったのか」という、健康課題の発生に至る企業・従業員のの背景や要因の分析を行っていきます。
健康課題の原因は複数ある場合が多いため、データを分析するとともに面談や問診の結果などを用いてリスク因子の背景にある生活習慣等の状況を確認することが重要です。実際に従業員から確認した「生の声」をデータ化し、アセスメントにつなげていきましょう。
健康課題・対象の明確化
今までの結果を踏まえ、理想の状態と現実との差を意識しながら企業や事業所単位で取り組む必要のある健康課題や対象を明確にしていきます。
優先課題・順位の決定
上記にて明確にした課題の中から、優先的に取り組む必要のある課題を検討し、優先課題や順位を決定していきます。
優先度を決めるにあたっては、問題の重大さや緊急性、実現可能性、取り組みやすさ、従業員の関心の高さや企業課題との関連性、予算等を考慮して検討します。
目的と方法の決定
上記を通して優先された健康課題の解決方法としてアプローチを実施していきます。
課題の解決方法として、ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチのどちらかで必ず皆生することを目指すのではなく、集団全体を対象として働きかけを行い、全体としてリスクを下げることを期待する場合はポピュレーションアプローチを選択し、健康リスクの高い人を対象として個別に支援することが有効な場合にはハイリスクアプローチを選択するなど組み合わせて行うことを視野に入れて検討するとよいでしょう。
目的・目標・目標が達成できたかの評価方法・活動内容がここで決まります。
実施内容の計画立案の段階で、評価計画を検討しておくことも重要です。プランの段階からしっかりと指標を見据えることで、取り組むことで定量的に(数字で)効果検証を行えるようになります。評価計画とは、評価をするためには、どのデータをどのように収集し、いつ、誰が、どの予算を使って分析評価し、どのような形で誰に報告するのかということをさします。
データの中には、評価を意図して事業開始前から収集をしなければ手に入らないものもあります。せっかくの取組みの成果が出たとしても、比較検討できなくなることのないよう、予めの評価計画は忘れずに行うことが大切です。
評価方法としては下記のものが考えられます。
・ストラクチャー(構造)評価:仕組みや体制を評価(人・予算・設備・連携等)
・プロセス(過程)評価:結果に至るまでの過程を評価(活動の質・対象者の反応等)
・アウトプット評価:事業実施量を評価(プログラム参加率・プログラム実施回数等)
・アウトカム(結果)評価:事業の目的・目標の達成度や成果の 数値目標に対する評価(生活習慣病の有病者・予備群、死亡率、要介護率、医療費の変化等)
プランの段階からしっかりと指標を見据え、取り組むことで定量的に(数字で)効果検証を行えるようになります。
効果的なポピュレーションアプローチのためのポイント
下記の点に考慮することでより効果的なポピュレーションアプローチにつながります。
行動変容ステージに分けたアプローチ
ポピュレーションアプローチでよくある取り組み方法として、一つの施策を従業員に対して同じ呼びかけ方をしている場合があります。
従業員全体での健康状態、興味関心の度合いは違うため、参加モチベーションを少しでも上げるためには、集団をいくつかに分け、呼びかけ方を工夫する必要があります。
その中で行動変容ステージに分けたアプローチも効果的です。行動変容とは、健康保持・増進のために行動や生活習慣、ライフスタイルを望ましいものに改善することを指します。
健康状態や健康意識によって無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期の5つのステージに分けられています。
これを行動変容ステージモデルといい、1980年代に禁煙の研究から導かれたモデルですが、運動・食事など健康に関する様々な行動について幅広く研究と実践が行われています。
行動変容ステージのそれぞれの特徴を把握することで、より効果的な働きかけが可能になります。自社の従業員がどのステージに多いのかを把握し、特徴に合わせた働きかけを行いましょう。
関連記事:行動変容とは?意味や行動レベル別のアプローチ方法を解説
健康無関心層への配慮
特に健康無関心層は行動を変えることが難しいとされており、現状維持バイアスから古い健康習慣との決別ができない人が多くいます。
また、説得的に正論を言われるとつい反発してしまう習性がある人の割合が多いなど、アプローチをする上で気をつけなければなりません。
将来の健康リスクより、現在満足している健康習慣を重視する傾向があるため、健康になることを強制するのではなく、健康改善ではなく、楽しいイベントであることを強めて呼びかけるなど、工夫を行いましょう。
その他、健康イベントの参加により保険料の割引率が変わったり、参加インセンティブを付与することで、参加勧奨をすることも有効な選択肢の一つとなります。
周囲の環境からのアプローチ
より効果的な取り組みをするためには、周囲の環境へのアプローチが重要になります。
部署単位でまとまって取り組むような仕組みにしたり、家族を巻き込んだ施策を行うことで、健康に無関心だとしても「みんながやってるから自分もやらないと」と思い行動する人も増えてくると想定されます。
特に日本人には同調効果が強く働く傾向があるため、部署単位で参加し、競い合ったり協力して推進できる仕組みを用いて、優秀だった部署へインセンティブを与えるなどすることで効果がより見込めると考えられます。
関連記事:職場環境とは|改善するアイデアと具体例、取り組み事例
介入のはしごを用いてレベルごとにアプローチ
ポピュレーションアプローチの実施戦略を考える中で、下記の「介入のはしご」を用いて効果的に介入する内容を検討することができます。プランのフェーズにて、自社の健康レベルを把握し、どの程度の介入効果を得たいかにより施策のレベルを考えるとより効果がでる取り組みになると考えます。
参考:中村正和「地域づくりにおけるポピュレーション戦略の重要性と国際的動向」地域医学:2016
ただ単に教育として情報を提供する状況は「レベル7」に相当します。一本的なポピュレーションアプローチはレベル7にとどまっていることが多いかもしれません。
その場合、ポピュレーションアプローチの介入効果を上げるためにレベル6・レベル5の段階に進むことが効果的ですが、そこで有効なのが「ナッジ」です。
ナッジとは行動経済学の知見の活用で、人々が自分自身にとってより良い選択を自発的に取れるように手助けする手法です。ナッジはコミュニケーションの取り方の工夫になるので、多額の費用をかけずに効果を発揮することができるため費用対効果の高いことが特徴です。
2017年にセイラー教授がこの「ナッジ理論」でノーベル経済学賞を受賞したことを皮切りに実社会の様々なシーンでの利用が始まっています。国内では2018年に初めて成長戦略や骨太方針などにナッジの活用を位置付けられており、現在はがん検診受診勧奨事業等にも活用されています。
例えば、企業で従業員に「野菜・海藻を積極的に食べましょう」と教育・啓発するアプローチは「レベル7」となり、社員食堂などでメニューに含まれる野菜や海藻の量などを表示するのは「レベル6」、メニュー自体の野菜・海藻量を増やすのは「レベル5」となります。
社会的には、たばこ対策に関してはすでに「レベル3」にあたるたばこ税の引き上げ、「レベル2」の公共の場所での喫煙の規制などと組み合わせなければナッジによる行動変容の効果は十分に発揮されないものと考えられています。しかし栄養・食生活の場合は、たばこと異なり食物そのものが人間の生存や健康維持に不可欠なものであるなどそれぞれの分野の背景が異なります。
そのため、それぞれの分野ごとにどのレベルのナッジを設定するとどれだけの効果が見込めるのかを検討していく必要があります。
RIZAP健康セミナーでポピュレーションアプローチを実施した事例
多くの企業では、ポピュレーションアプローチとして健康セミナーを開催しています。健康セミナーは導入ハードルが低く、健康増進以外にも様々なメリットがあります。
関連記事:健康課題に合わせたセミナーを ❘ 企画~効果検証までを解説
【人間関係を良好にさせる効果】
健康増進を目的とした健康セミナーには、従業員のメンタルヘルスを良好にし、人間関係をスムーズにするメリットがあります。健康増進は共通性のあるテーマなので、年齢や業種、役職などの垣根を超えた会話を楽しめるでしょう。
また、チームで取り組み、⽬標に向かって⾼め合ううちに、互いの関係性を深めていけるメリットもあります。
【職場環境を改善させる効果】
健康セミナーで健康の重要性を学ぶことで、生活習慣の改善が期待できます。生活リズムを気にするようになると、自然と働く時間を調整し、無理な長時間労働などを減らすようになります。そのために、個人でも業務効率化を図って生産性の高い働き方ができるようになるでしょう。
また、健康セミナーの実施により、健康的な生活スタイルを経営陣が推奨している姿勢を明確に打ち出せます。従業員としても、ワークライフバランスを重視した生活スタイルを一層取り入れやすくなり、職場環境が改善されるでしょう。
健康無関心層にも波及する強いポピュレーションアプローチ│トヨタ自動車九州株式会社様
トヨタ自動車九州株式会社では健康セミナー、卒煙施策など一般的なポピュレーションアプローチは既に実施されていましたが、疾病休業日数の低減・トヨタグループBMIワースト3からの脱却・高齢化対応のために一歩踏み込んだ健康施策を検討されていました。
健康無関心層にも波及する強いポピュレーションアプローチとしてRIZAP法人ウェルネスプログラム「結果にコミット®コース」を導入し下記のような結果が現れました。まずは厳選したメンバーが生活習慣を改めて見た目を変え、追随するメンバーを増やそうと実施した50名において心身ともに変化が見られた好事例です。
- 体重平均6.1kg減(最大21.4kg減)
- BMI 平均 2.1減(最大7.0減)
- 腹囲平均8.8cm減(最大20.4cm減)
- 体脂肪率平均4.2%減(最大12.8%減)
- 健康管理についての意識変化: 100%
- 健康意識が高まった: 100%
- ポジティブになった: 89%
- 自分に自信がついた: 79%
プログラム後には参加者から自発的な健康アクションが増えてくるとともに、参加してない方からも高い関心が寄せられ 「自分も参加したい」「体を変えたい」という声も上がっているとのことです。
トヨタ自動車九州株式会社の詳しい事例はこちら
運動習慣者割合が2年で9倍に │ 株式会社ベネッセホールディングス様
ベネッセホールディングスは、比較的若い従業員が多く、病気の人が多いわけではありませんが、生活習慣病予備軍については気を付ける必要があり、過去に生活習慣病の予防としてポピュレーションアプローチをいろいろ実施してきました。
しかし、健康無関心層が集まらず毎回関心のあるメンバーしか集まらないなど健康施策に関して苦戦を強いられている現状を変えるため、集客に好影響がありそうだと判断してRIZAPの健康セミナーを導入しました。
参加満足度は97.5%と高く、2019年度以降、参加申込人数は翌年に4倍、翌々年には9倍もの推移を遂げる結果となりました。2020年度より運動不足に悩む企業が増えている中、上記の取り組みの末「運動習慣がある」と回答した割合が毎年向上しています。
参加者アンケートにおいて「セミナーを通して、健康改善や運動習慣に関する知識や姿勢は向上しましたか」という質問に対して、参加者の85%が向上したと回答があり好結果が得られています。
その他にも、半数以上の従業員から「運動不足の解消・運動習慣の改善」につながった声や、「リフレッシュできた」「気持ちがポジティブになった」と前向きな回答が多く挙がりました。
※RIZAPウェルネスプログラム導入による直接的な効果を実証するものではありません。
参照:https://benesse-hd.disclosure.site/ja/themes/154
株式会社ベネッセホールディングスの詳しい事例はこちら
従業員全員の健康につながる施策|株式会社シマキュウ様
株式会社シマキュウでは、健康経営の取り組みとして以下を実施しています。
- 自動販売機にカロリー表示
- 階段に消費カロリー表示
- 健康診断の意義、必要性を全社員に通知
- 特定保健指導の利用
- 体組成計、血圧計、視力測定の設置
- 全社員へ体組成計の配布
- 全社員へRIZAP補助職の配布
- 禁煙推進ポスターの掲示 など
健康経営の取り組みとして、健康リスクで線引きせず社員全員にRIZAPウェルネスプログラムを導入しました。
社長が率先して健康経営を推進し、RIZAPウェルネスプログラムを3ヶ月間実施した結果、1年後の健康診断の結果では運動習慣者比率が2倍以上に向上しました。
【RIZAPウェルネスプログラム導入結果】
約8割の従業員が健康数値に何らかの問題がある有所見者であり、メタボ、高血圧症、糖尿病などの生活習慣病を抱える従業員が多い状況でした。
そこで、社長が従業員一人ひとりと面談し、「健康を気遣った生活に変えて欲しい。大病せずいきいきと働いて欲しい」と想いを伝え、最終的には健康施策への参加率は100%になりました。
導入したRIZAPウェルネスプログラム「結果にコミット®コース」では、3ヶ月間RIZAPトレーナーが一人ひとりに合った生活習慣の定着をサポートしています。
業務時間内に実施し、健康意識の向上だけでなく、体重が平均6.2kg減、体脂肪率平均4.3%減と従業員全員が健康を手に入れる結果となりました。
実施後も、健康をテーマにする日常会話がうまれたり、運動習慣が定着し、富山マラソンに参加する従業員が初めて出てくるなど、健康文化が醸成されていることが分かります。
株式会社シマキュウの詳しい事例はこちら
ポピュレーションアプローチで健康リテラシー向上│地方職員共済組合和歌山県支部様
2020年度、地方職員共済組合和歌山県支部様でRIZAPのセミナーを3回にわたり実施いただいた結果、参加者の健康リテラシー向上と行動変容につながりました。
- 1回目のセミナーで「健康に対して、「必要性は理解しているが行動に移せていない」という回答者が17名いたが、開催後には17名全員の意識変容が見られた
- 1回目のセミナーから2か月後、「すでに健康行動をしている」人の割合が20.7%から53.1%に増加した
このことから
・短期的ではなく長期的に捉えて研修機会を設ける
・様々なテーマでアプローチする
などの要素がうまく奏功し、参加者の意識変容から行動変容にシフトさせ、更に習慣化にも繋がったということが数値で表れています。
どのようなセミナーだったかという詳細は以下の通りです。
「若年層の肥満率増加」「集客力を強めたい」「40歳以上の生活習慣病の増加」「対面開催が難しい状況」「家族の健康意識も向上させたい」という課題をお持ちの中、3回に分けてRIZAPのセミナーを開催したところ、延べ535名にご参加いただきました。
オンラインセミナーにすることで参加ハードルを下げるだけでなく家族参加も可能となり、知名度のあるRIZAPがコラボレーションすることで集客力アップをサポートしました。
また、個人個人が好きなテーマを選んで参加できるよう、導入編、運動編、食事編の3回で知識の習得が幅広く行える構成にしたり、単発参加も可能とし、各回でより深い知識が得られることで継続参加を促進することができました。
地方職員共済組合和歌山県支部様の詳しい事例はこちら
このような開催アンケートはRIZAPウェルネスプログラムのオプションではなく標準サービスとしてご用意しています。セミナーラインナップや価格、他社の事例など、気になる点がありましたらご相談ください。
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