職場のメンタルヘルスとは?意味や症状、不調の予防対策

「メンタルヘルス」とは、直訳すると「心の健康」です。メンタルヘルス対策は健康経営優良法人の認定要件にも入っています。

なぜ重要視されているのでしょうか?

それはメンタルヘルス対策の遅れが、従業員の生産性を下げ、その結果、企業の損失や業績悪化の要因となるためです。従業員の皆が心身ともに健康な状態で、高い生産性を維持できる環境を整えたいものですね。

メンタル不調を未然に防ぐために、企業の健康管理担当者はどうすれば良いでしょうか?メンタルヘルスの「3段階の予防対処法」「4つのケア」、この基本の考えを理解して、従業員の心身の健康作りに取り組みましょう。

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近年労働者の受けるストレスは拡大する傾向にあり、メンタル不調は重点的な対策が必要とされています。不調を訴える人の数が増えれば部署、事業部、企業全体の生産性の低下を招き、業績不振にも繋がっていきます。自社のメンタルヘルスに課題を感じ対策を模索されているご担当者様も多いのではないでしょうか?

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目次

メンタルヘルスとは?

メンタルヘルスとは心の健康を指します。

メンタルヘルスとは「心の健康」のことです。世界保健機関(WHO)※1ではメンタルヘルスについて、人が自身の能力を発揮し、日常生活におけるストレスに対処でき、生産的に働くことができ、かつ地域に貢献できるような満たされた状態(a state of well-being)であること、と定義しています。

出典:※1 WHOメンタルヘルスアクションプラン 2013-2020(翻訳)

メンタルヘルス不調の定義

また日本においては厚生労働省が、「メンタルヘルスの不調」※2についてこのように定義しています。

精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう。

※2 平成27年11月30日 厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」P14

メンタルヘルス不調というと、うつや、パニック障害、適応障害、依存症など、日常生活が困難になるような重度な精神疾患をイメージしがちです。

しかし、厚生労働省の定義※2 によると、特別な精神疾患だけを指すものではないことが分かります。

ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの

これはすなわち、疾患ほど重度ではなくても悩みや不安を抱えた状態も指すため、私たちの日常生活でも「メンタルヘルスの不調」は起こりえます。メンタルヘルス不調は特別な人がなるものではなく、誰でもなりうる不調といえるでしょう。

しかし、メンタルヘルス不調になっても多くの場合は治療により回復し、社会の中で安定した生活をおくることができるようになります。最近では、効果が高く副作用の少ない治療薬も出ていますので、以前よりも回復しやすくなっています。

メンタルヘルス不調が起こった場合、体の病気と同じように治療を受けることが何よりも大切です。ただし、早く治そうと焦って無理をすると、回復が遅れることがあります。「焦らず、じっくりと治す」という気持ちで臨むことが回復への近道です。

関連記事:メンタルヘルス不調とは? 症状や原因について解説

メンタルヘルス対策の法的義務

企業は、従業員が生命・身体等の安全を確保しながら労働に従事できるよう必要な配慮をする義務があります。これを「安全配慮義務」といい、労働契約法に規定されています。

労働契約法
(労働者の安全への配慮)5条

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

引用元:労働契約法

これはケガや病気だけでなく、メンタルヘルスにも配慮する必要があります。近年は上記のようにメンタルヘルスを取り巻く社会的背景やハラスメントやいじめなどにより精神疾患を発症するケースも多いため、メンタルヘルス管理はますます重要になるでしょう。企業が安全配慮義務を怠った場合には、従業員に対して損害賠償責任を負う可能性があります。

関連記事:【判例紹介】安全配慮義務とは、基準、対策、違反のない組織づくり

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職場でのメンタルヘルスケアの基本的考え方

職場でのメンタルヘルスケアの必要性は年々高まっており、企業において事業者が従業員の心の健康と保持増進のための措置(メンタルヘルスケア)が有効に実施されるよう労働者の心の健康の保持増進のための指針があります。

事業者はメンタルヘルスケアを積極的に推進することを表明するとともに、その実施方法などに関する規程を策定、実施する必要があります。そして実施に当たっては「一次予防」「二次予防」「三次予防」を円滑を行い、「4つのケア」を効果的に推進するために、教育研修・情報提供を行う必要があります。

基本となる4つのケア

メンタル不調と向き合うための有効策として、厚生労働省から「労働者の心の健康の保持推進のための指針」(改正)(平成27年11月)が発表されています。それがメンタル不調と向き合う4つのケアです。

セルフケアは従業員一人ひとりが自らのストレスを予防し、気付いた時に適切に対処することです。事業者は従業員に対して、次に示すセルフケアが行えるように教育研修、情報提供を行うなどの支援をすることが重要です。

ラインケアとは、組織の管理監督者による部下のストレスケアのことです。管理監督者が従業員の具体的なストレス要因を把握し、相談に乗ったり、必要に応じて環境を改善したり、配置転換等の策を講じることを指します。

事業場内産業保健スタッフ等によるケアとは、産業医や衛生管理者、保健師、心理職、精神科医など社内の産業保健スタッフ等による支援のことです。

事業場外資源によるケアとは、メンタルヘルスケアの専門知識を有する外部の機関やサービスを活用することです。

職場のメンタル不調に関する予防・改善対策

メンタルヘルス対策における3つの段階とは、ストレスに対してどの段階で予防・対処するのかという考えに基づいた枠組みで、一次予防・二次予防・三次予防に分かれています。

一次予防とはメンタルヘルス不調を未然に防止、予防することです。メンタルヘルスに不調をきたすことのないよう、職場や業務に起因するストレスを未然に防止する段階です。従業員が自分で行うストレス緩和ケアのほか、ストレスチェックの実施、業務環境の改善がこの段階に含まれます。

二次予防は、メンタルヘルス不調を早い段階で発見し、適切な措置を行う「早期発見」です。重度な精神疾病に至る前に、早い段階で不調を把握・発見し、対処するための取り組みのことを指します。

三次予防は、メンタル不調を発症してしまった従業員の治療と、休職後の職場復帰・再発予防の取り組みです。おろそかにすると、再発したり離職につながることもあるため、慎重に取り組む必要があります。

関連記事:メンタルヘルス不調の予防策は? セルフケアや企業が講じるべき対策

従業員のメンタルヘルス不調が企業に及ぼす影響

従業員のメンタルヘルス不調は、企業に様々な影響を及ぼします。企業を支える従業員のメンタル不調を防止し健康的かつ長期的に働き続けることは、企業の生産性を高めるだけなく下記のような影響から回避することができます。

アブセンティーイズム・プレゼンティーイズムの増加

メンタルヘルス不調が増加すると、プレゼンティーイズムやアブセンティーイズムの増加につながります。

プレゼンティーイズム(presenteeism)とは、欠勤には至っていないものの「健康問題が理由で生産性が低下している状態」を指します。言い換えると、心身の不調によって、パフォーマンスが思うように出せない状況のことです。また、アブセンティーイズム(absenteeism)とは、「健康問題による仕事の欠勤」を指します。いわゆる「病欠」を指します。

健康状態が悪く、生産性が低くなったり、そもそも病欠してしまうことは仕事に大きな影響を及ぼします。

プレゼンティーイズム、アブセンティーイズムによる労働生産性の損失を推計したデータによると、健康リスクが低い従業員の労働生産性損失コストが年間推計59万円であるのに対して、健康リスクが中の従業員では1.2倍(年間推計69万円)、健康リスクが高い従業員は2.9倍(年間推計172万円)と非常に差があることが示されています。

参照:横浜市経済局ライフイノベーション推進課調べ

従業員が十分なパフォーマンスを出せない状態が続くことで、業務効率は落ちます。それがやがて、あらゆる面で損失となって表れてきます。軽度の不調であっても、不調の状態のまま仕事を続けることで症状を悪化させてしまうこともあり、長期化するリスクもはらんでいます。

予防として、「休憩・気分転換する」「体を動かす」「健康意識を高める」などの行動が推奨されており、どれもメンタルヘルス対策を行うことで実行を促すことが可能です。

関連記事:プレゼンティーイズムとは?測定方法と予防・改善する具体策

従業員の離職増加

メンタルヘルス不調が増えることで、健康上の理由による欠勤や離職が増加します。人員の頻繁な離脱は他の従業員の業務負担を増やし、さらなる離職を招くかもしれません。

離職率の高さから、世間に「ブラック企業」とみなされれば、次の人員を確保するのにも苦労することになるでしょう。メンタル不調の予防対策は、こうした悪循環の原因を根本から断ち切ることに寄与します。

関連記事:定着率とは?低い原因と効果的な取り組み

従業員のエンゲージメント低下

従業員エンゲージメントとは、従業員と企業双方向で結びつきを強めている状態を指します。

メンタルヘルス不調が増えることで、従業員がより前向きな気持ちで働きづらくエンゲージメントが低下します。メンタルヘルス対策を実施することで従業員が心身ともに余裕を持って働けるようになれば、職場の雰囲気が改善することも期待できます。

関連記事:従業員エンゲージメントを高める方法|具体的な施策と成功例

職場のコミュニケーション低下

メンタルヘルス不調が増える状況にある職場では、従業員同士のコミュニケーションがどんどん少なくなることが予想されます。

職場のコミュニケーションが活性化されていない状態では、「従業員が何を考えているかわからない」「従業員全体の心身の状態が好調ではない」「言ったことが伝わらない」「意見がでてこない」「無駄な会議が多い」などの状況が生まれます。

従業員のメンタルヘルス対策を実施し職場の活性化が進むことで、従業員は心身ともにのびのびと仕事をし活躍します。一人一人のコンディションが保たれ、人の話をよく聴き自分の考えを積極的に発信し、主体的に行動し、人を巻き込み、相互に助け合う状態を作り出すことができるでしょう。

関連記事:職場活性化のポイントとは|具体的なアイデアと取り組み方

労働災害の増加

メンタルヘルス不調が増えると、労働災害が増加します。業務上の重大な事故や過度な業務負担による過労死などの労働災害は、損害賠償などの訴訟に発展する恐れがあり、経済面においても社会評価の面でも企業に大きな損害をもたらします。

メンタルヘルス対策の実施によって職場に潜む健康や安全上のリスクを早期発見・早期対応することで、こうした労働災害を予防できるのです。

業務ミスのリスク増加

メンタルヘルス不調が増えると、従業員は心身の不調を抱えたまま仕事をしていることになり集中力などの不足によって重大なミスや事故が生じる可能性は増大します。

繰り返すミスの対策として仕事上の対策を立てるだけでなく、心身の健康状態をよく観察し相談を繰り返すことで、過度な𠮟責によるさらなる心身の健康状態の低下やミスの増加からの労働災害への増加を防ぐことにつながります。

医療費の増加

メンタルヘルス不調の増加は、医療費の増加をもたらします。メンタルヘルス対策を含む健康経営によって健康状態が改善されることによって、従業員が診療を受ける機会は減っていきます。これにより、企業が負担している従業員の社会保険料をコストダウンすることが可能です。

生産性の低下

メンタルヘルス不調の増加によって、従業員のパフォーマンスが下がることにより生産性は低下していきます。心身に不調を抱えたままでは、従業員が能力をフルに発揮することは難しくなるでしょう。メンタルヘルス対策に取り組むことは、従業員が万全の状態で仕事に集中できるコンディションを整えることでもあるのです。

関連記事:生産性とは?向上につながる取り組み事例、課題

社会評価と企業イメージの低下

メンタルヘルス不調の増加によって、自社の社会的評価や企業イメージが低下する可能性も高いでしょう。また、SNSによって誰もが情報発信できる現代では、不適切な労働条件や職場環境はすぐに拡散され、企業イメージに大きなダメージを受けることも考慮に入れなければなりません。

メンタルヘルス対策などの健康施策を計画的に実施して「健康経営優良法人」の認定制度を設置したり、東京証券取引所と連携して「健康経営銘柄」の認定を公的に受けることができれば、社会から「ホワイト企業」として認知されやすくなるでしょう。良い企業イメージは業績の向上や優秀人材の確保にもつながります。

関連記事:企業イメージ向上のための3つの方法、取り組み例

メンタルヘルスに起因する代表的な精神疾患

メンタルヘルスに起因する精神疾患は、種類も症状も様々です。また原因がわかっていない疾患が多いという特徴があります。

ここでは、メンタルヘルスに起因する代表的な精神疾患をご説明します。

うつ病

うつ病は気分障害の一つで、100人に約6人がかかる病気です一日中気分が落ち込んでいる、何をしても楽しめないといった精神症状とともに、眠れない、食欲がない、疲れやすいといった身体症状が現れ、日常生活に大きな支障が生じている場合、うつ病の可能性があります。

発症の原因は正確にはよくわかっていませんが、感情や意欲を司る脳の働きに何らかの不調が生じているものと考えられています。

依存症

依存症とは、日々の生活や健康、大切な人間関係や仕事などに悪影響を及ぼしているにも関わらず、特定の物質や行動をやめたくてもやめられない(コントロールできない)状態をさします。

依存症にはアルコールやニコチン、薬物などに関連する物質依存症とギャンブル等の行動や習慣に関連する行動嗜癖があります。これらは、特定の物質や行動を続けることにより脳に変化が起きることにより症状が引き起こされる病気で、本人のこころの弱さのために起きている現象ではないとされています。

パニック障害・不安障害

一生の間にパニック障害になる人は1000人に6~9人といわれます。また、男性よりも女性に発症しやすいということもいわれています。パニック障害・不安障害とは、なんでもない時にパニック発作のような反応が起きることです。命の危険がないのに、まるで命が脅かされているような不安や恐怖を感じ、身体にも死の危険から生き延びるために準備されている反応と同様の症状が起きます。

しかしどんなに検査しても内科的な異常がまったく見つからない場合、パニック障害が疑われます。

統合失調症

統合失調症は、100人に1人弱がかかる病気です。脳の様々な働きをまとめることが難しくなるために、幻覚や妄想などの症状が起こる病気です。

発症の原因は正確にはよくわかっていませんが、統合失調症になりやすい要因をいくつかもっている人が、仕事や人間関係のストレス、就職や結婚など人生の転機で感じる緊張などがきっかけとなり、発症するのではないかと考えられています。

ストレスチェックで職場のメンタル状況を把握する

ストレスチェックは、メンタルヘルス不調を未然に防ぐために、自分のストレスがどのような状態なのかを可視化する検査でメンタルヘルスの一次予防として非常に重要です。

これによって高ストレス者はストレスを溜めすぎないように注意したり、専門の医師に相談したり、業務の軽減を事業場に行ってもらったりするなどの対応を行えるだけでなく、部署ごとのストレス状況把握と改善対策が可能であり、それによって職場環境の改善方法を発見することにつながります。

ストレスチェックとは

ストレスチェックとは、従業員のストレス状態を調べるための簡易的な検査のことです。ストレスチェックは基本的にセルフチェック方式で行われ、従業員は選択式の調査票を通して、自身のストレス状態を回答していきます。

ストレスチェックを実施することで高ストレス者本人に自覚を促せるだけでなく、部署ごとのストレス状況把握と改善対策が可能であり、それによって職場環境の改善方法を発見することにつながります。

ストレスチェックは「労働安全衛生法」が改正されて、常時50人以上の従業員がいる事業所において、2015 年12月から毎年1回、この検査を全ての従業員に対して実施することが義務付けられました。なお、従業員が50人未満の事業所に関しては、実施義務も報告義務もありません。当分のあいだは努力義務に留まるとされています。

しかしメンタルヘルスの一次予防の役割として重要であることから、50人未満の事業所であっても実施することが推奨されています。

事業者側のメリットとしては、ストレスチェックを実施することで従業員のメンタルヘルス不調を未然に防いだり、早期対応をしたりできることが挙げられます。

高ストレス者の多い職場は人間関係もギスギスしやすく、不注意などによるヒューマンエラーも起きやすくなります。高ストレス者を放置せずメンタルケアに取り組めるきっかけとなると共に、ストレスチェックの分析を行うことで職場に内在するストレス要因を見つけることが可能です。大きな問題となる前に対策を打つことで、職場環境の改善や労働生産性の向上を期待できます。

実施の流れ

ストレスチェック制度の流れ

参照:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」

ストレスチェックには様々な事前準備が必要となります。事前準備においては、事業所の衛生委員会で以下に挙げる事柄を議論し、実施方法の検討をすることが必要です。ここで話し合った結論は社内ルールとして明文化し、全ての従業員に周知します。

  1.  【対象者の決定】ストレスチェックは誰に実施させるのか
  2.  【時期と頻度の決定】ストレスチェックはいつ実施するのか
  3. 【質問票の決定】どんな質問票を使ってストレスチェックを実施するのか
  4. 【高ストレス者の選び方】どんな基準でストレスの高い人を選ぶのか
  5. 面接指導の申し出は誰にすればいいのか
  6. 面接指導はどの医師に依頼して実施するのか
  7. 集団分析はどんな方法で行うのか
  8. ストレスチェックの結果は誰が、どこに保存するのか

実施の際には質問票作成と配布を行い、次にそれらを集計して評価、通知を行います。ITシステムを利用して、オンラインで実施することもできます。

使用する質問票は、①ストレスの原因に関する質問項目②ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目③労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目が含まれていれば、特に指定はありませんが、何を使えばよいか分からない場合は、国が推奨する 57項目の質問票※1を使用することができます。

※1 厚生労働省 職業性ストレス簡易調査票(57 項目)

ストレスチェック結果の評価方法、基準は実施者の提案・助言、衛生委員会における調査審議を経て、事業者によって決定します。

活用方法

回収した質問票をもとに、医師などの実施者がストレスの程度を評価し、高ストレスで医師の面接指導が必要な者を選びます。高ストレスとは、自覚症状が高い方や自覚症状が一定程度あり、ストレスの原因や周囲のサポートの状況が著しく悪い方をさします。

結果(ストレスの程度の評価結果、高ストレスか否か、医師の面接指導が必要か否か)は、実施者から直接本人に通知されます。結果は企業には返ってきません。

ストレスチェック結果で「医師による面接指導が必要」とされ た従業員から申出があった場合は、医師に依頼して面接指導を 実施します。面談実施後、面接指導を実施した医師から就業上の措置の必要性の有無とその内容について意見を聴き、それを踏まえて労働時間の短縮など必要な措置を実施します。

そして一次予防を主な目的とするストレスチェック制度の趣旨を踏まえ、ストレスチェックの結果を踏まえて従業員本人のセルフケアを進めるとともに職場環境の改善に取り組むことができます。ストレスチェックの実施者に、ストレスチェック結果を一定規模の集団(部、課、グループなど)ごとに集計・分析してもらい、その結果を提供してもらうことで集団ごとのストレス状況を把握します。

集団分析及び職場環境の改善は法的には努力義務にすぎませんが、職場に潜在するストレス要因を特定し、それらを組織的に改善していくことで、ストレス負荷の低い職場環境の構築が可能です。

関連記事:ストレスチェック制度とは?対象者、目的、メリット、実施方法

メンタル不調やストレス反応(症状)のサイン

ここでお伝えするような不調やストレス症状が2週間以上続いたり、日常生活に支障が出ている場合は、「うつ」の可能性もありますので、本人が専門家に早めに相談する必要があります。

一方で、こころの不調は自分では気づきにくい場合もあります。また、自分で不調に気づいてはいても、こころの病気だと思っていない場合もあります。その人らしくない行動が続いたり、仕事面・生活面での支障が出ている場合は、早めに専門機関に相談するよう勧めることが必要です。

本人が気づくサイン

  • 気分が沈む、憂うつ
  • 何をするのにも元気が出ない
  • イライラする、怒りっぽい
  • 理由もないのに、不安な気持ちになる
  • 気持ちが落ち着かない
  • 胸がどきどきする、息苦しい
  • 何度も確かめないと気がすまない
  • 周りに誰もいないのに、人の声が聞こえてくる
  • 誰かが自分の悪口を言っている
  • 何も食べたくない、食事がおいしくない
  • なかなか寝つけない、熟睡できない
  • 夜中に何度も目が覚める

周りが気づくサイン

労務管理上、管理監督者による日常的な接点の中で「いつもと違う」という部下の様子に気付くことが重要です。

不調の兆候は千差万別で、度合いや異変は人によって異なりますが、一例として下記のようなことが挙げられます。

  • 勤怠の異変
  • 元気がない
  • 口数が少ない
  • 服装や髪形などの身だしなみが乱れている
  • 表情が乏しい
  • 著しく集中力がない
  • 業務量や納期、クオリティの異変
  • 言動の異変

一時的に上記のような異変が表れることは誰にでもあります。しかし普段から接している管理者やチーム内でこそ些細な異変に気付くことができます。

病気の有無の診断は産業医もしくは医師の仕事です。そのためには異変に気付いた際に本人と話をし、産業医のところに行かせる、あるいは気づいた従業員が上司や産業医のところに相談に行く仕組みを職場内に作っておくことが望まれます。

異変に気付いても、「あれ?変だな。でも気のせいかな」あるいは「診てもらった方が良さそう」などの判断は難しいところです。では何を基準に判断すれば良いでしょうか。

それは、以前との比較です。管理監督者、あるいは周りが見たり接したりする中で、「いつもと違う」という気付きが重要です。下記の兆候の例を参考に、本人に聞き取りするか、相談があるかどうか声をかけたり、診断を勧めるか、などなんらかの対応をすべきかどうかの判断材料、見極めとしましょう。

一時的な兆候だけでの判断だけでは、なかなか判断できないこともあるため、従来と比較して明らかな異変の場合は1on1ミーティング等で話を聴き、診断を勧めましょう。

    勤怠の異変

    心身の不調によりプレゼンティーイズムやアブセンティーイズムに陥っている場合は、勤怠へその状態が顕在化しやすいため、最も把握しやすい指標の一つです。

    テレワークで出社しない勤務スタイルの企業や、交代勤務によるすれ違い、あるいは外出が多い勤務スタイルなど、さまざまな働き方があるため、チーム内であっても顔を合わせる機会が少ないケースもあります。「実は頻繁に遅刻欠席していたが管理監督者が見ていなかった」などということのないように普段から心がけておきましょう。
    顕在化しやすい勤怠の異変として下記が挙げられます。

    • 遅刻、早退、欠勤が増える
    • 残業、休日出勤が不釣り合いに増える
    • 休みの連絡がない(無断欠勤がある)

    例えば遅刻が頻発している場合、なぜ?と理由を問い詰めるのではなく、いつもと違う様子がないかを確認しましょう。また遅刻や、当日欠勤はメンタル面で疲れている可能性もあります。酷くなるとある日突然、仕事に行けなくなる出社拒否の症状を訴えるケースもあります。

    関連記事:プレゼンティーイズムとは?測定方法と予防・改善する具体策

    業務量や納期、クオリティの異変

    過剰なストレスによって、業務に遅れが出たり、普段よりも結果が出せないといったパフォーマンス低下が起きることがあります。

    またその後ろめたさ等から日報や週報などの定期報告や、状況相談が滞ることがあります。

    職場での会話量や内容にも注意が必要で、以前よりも極端に喋らなくなったり、その逆、多弁になるという変化にも注目です。そういった変化はストレスにさらされているサインかもしれません。

    • 仕事の能率が悪くなる
    • 業務の結果がなかなかでてこない
    • ミスや事故が目立つ

    言動の異変

    表情や挨拶、服装等はメンタルヘルスによる変化が表れやすい項目です。

    ストレスや体調不良があると、服装や身だしなみに意識が行き届かないことがあります。そのため、何日も洗濯しておらず匂いが気になるシャツを着たり、髪形やひげやメイクなどにもそういった変化が現れることがあります。

    また言動の中でも挙動がおかしく落ち着きがないということや、逆に、活気がなくうつむいているという状態変化、ミス・事故が目立つようになるという変化にも要注意です。

    • 表情に活気がなく動作にも元気がない
    • 不自然な言動が目立つ
    • 報告や相談、職場での会話がなくなる
    • 服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする

    出典:厚生労働省 「こころの耳 15分でわかるラインによるケア」

    メンタル不調の対応

    メンタルヘルス対策において、早期発見と同等に重要なのがメンタルヘルス不調への対応です。

    部下の異変に気付いた場合、あるいは部下自らの異変の相談を受けた場合、どういった対応が求められるでしょうか。対応のポイントを紹介します。

    相談しやすい環境をつくる

    日常的に相談しやすい環境であり、「困ったことがあったら話そう」、「伝えたら適切なアドバイスや対応をしてもらえる」という、信頼に基づいた関係性であることが不可欠な前提条件となります。

    一朝一夕に理想的な上下関係やチーム内の状態が築けるものではありませんが、常日頃のやり取りや行いからそういった環境ができていきます。心がけていきましょう。

    傾聴する

    チーム内の中でも特に管理監督者は、日常的に、部下からの自発的な相談に対応する役割を担っています。そのためには、部下の話をじっくりと聴くことがとても重要です。

    日頃からこのような話の聴き方ができれば、チーム内の関係は良い状態で維持されやすくなります。

    傾聴のポイント

    1.相手を受け止める

    相手に対して関心を持ち、関心を持っていることを表情や態度で相手に伝える。
    2.相手の立場に立つ
    もしも自分が相手と同じような立場に置かれていたら、相手と同じようなことを言ったり、したりするんだろうなぁと考えながら、話を聞く。

    そうすることが話の聞き方が批判的になることを防ぎ、相手に話を聴いてもらっているという気持ちを持たせる。

    引用:厚生労働省 「こころの耳 15分でわかるラインによるケア」 P8

    本人の状態によっては産業医や専門医等への相談を勧めることも有効です。

    しかし中には、人に悩みを相談することに抵抗がある方や、大仰にしたくない、周囲から変な見られになるんじゃないか、などといった考えや不安から、本人が産業医等に相談することに心理的な抵抗を示す場合もあります。

    そういった場合は、「産業医に話せ」「医者に行け」と強制したり、聞いた悩みを拒否するようなことはせず、「あなたの代わりに私が相談に行ってくるよ」と本人に伝え、合意を得た上で、相談を受けた従業員が管理者や産業医や人事、専門家等の第三者に相談し、その内容をフィードバックするなどの対応をしてみましょう。

    自己流にならないよう対応に注意する

    日々、良い関係でチームを構築するために3つのNG例を挙げます

    比較や押し付け言動に注意

    管理監督者の場合「私が20代の頃は」「営業たるもの」など自身の経験や価値観と比較したり、押し付ける言動はNGです。同様にして、「最近の若い子は」「うちの会社は」などの大きな主語を使う点にも注意が必要です。
    なぜなら、その価値観や括りに共感しない(できない)人が一定数いるからです。

    押し付けられた、大きな括りに入れられた、という感情は反発を買い、共感されることなく次第に信頼を失っていきます。

    適当な取りつくろいに注意

    うわべを取りつくろっただけの言動は本人に着実に伝わります。
    「適当に話を合わせただけ」「ちゃんと見てくれていない」「ちゃんと聞かずに頷いているだけ」という想いが募っていくと、信頼を失い、部下のモチベーションを下げることとなります。精神誠意、本人と向き合うことが本質です。

    「ついうっかり」やる気を削ぐ一言に注意

    「この仕事向いてないんじゃないか」、「もっと頑張ってよ」などの言葉は要注意です。励ます意図で口にした場合でも、些細な一言がモチベーションを下げたり、反感を買うことがあります。
    気にかかる一言を言われた側は、長期にわたって忘れることができず、場合によってはトラウマに発展するようなこともあります。そういった「気付かない内の、ついうっかり」の言動で本人を追い込むことがあることを認識しましょう。

    個人情報、人権へ配慮する

    相談を受けた場合に重要なのは個人情報や人権への配慮です。健康情報や個人情報の保護、また人権の保護や本人の意思尊重に努めなければなりません。

    これは人道的な観点からだけでなく、法令としても遵守する必要があります。

    人事に相談したり、第三者に相談するなど、情報の収集・管理・使用に際しては、なんらかの方法で本人の同意を得ることが原則とされています。

    このように、関連する法令や、社内規則を遵守し、コミュニケーションのなかで得た本人の情報を正当な理由なく他に漏らさないようにしましょう。

    人事部門や産業医を巻き込んで対応する

    相談を受けた場合に、親身になって考え、何とかしてあげたいという想いや責任感の強さから、管理監督者が過剰なストレスを抱え込み、メンタル不調に陥ってしまうというケースがあります。

    一人で抱え込まず、適切に産業医や外部機関、人事部門に相談をすることが重要です。

    高ストレス者を改善につなげる対応

    ストレスチェックにより高ストレス者を判別することによって改善へつなげる対応をとることにつながります。ストレスチェックを実施した後には高ストレス者を放置せず、できるだけ面談を実施することやその他の対応を実施し改善につながる対応を実施することでメンタル不調になってしまう高ストレス者を防ぐことにつながります。

    面談をどのように進めていったらいいのか、また面談を希望しない高ストレス者に対してどのような対応をとるべきかについて解説します。

    関連記事:ストレスチェックにおける高ストレス者の判定基準、対応、面談

    高ストレス者の面談

    面談には、事業者、ストレスチェック担当者、実施者(産業医)、人事担当者が関わります。面談の実施は事業場の産業医、事業場の産業保健活動に従事している医師、もしくは産業医資格のある医師に外部委託することが推奨されています。

    高ストレス者の面談希望率を上げるポイントと通知方法

    高ストレス者には産業医の面談を受けるように促す通知を送りますが、これはあくまでも「勧奨」に留まります。つまり、高ストレス者と判定されたからと言って、従業員が面談を受ける義務はなく、実際ほとんどの従業員は面談を希望しません。

    しかし、従業員のメンタルヘルス不調を予防するためには、やはりできるだけ面談を受けてほしいものです。そこで以下では、面談希望率を上げるためには下記のような点に配慮して勧奨することが望まれます。

    • 面談を受けるメリットを伝達する
    • 面談しても不当な措置や不利益がないことを伝える
    • 面談で得た情報の取扱いを明確にする
    • オンラインでも実施可能にする
    • 日時を限定せず、実施場所にも配慮する
    • 高ストレス者だと特定されない通知方法の配慮

    人事情報などの準備・面談者への共有

    面談に当たって、実施者は面談者についてより詳しい知識を得るために、ストレスチェック担当者を通じて、人事担当者や高ストレス者本人から収集した情報を提供してもらウ必要があります。以下のような情報が必要です。

    1. 対象となる労働者の氏名、性別、年齢、所属する事業場名、部署、役職
    2. ストレスチェックの結果(個人のストレスプロフィール等)
    3. ストレスチェックを実施する直前 1ヶ月間の労働時間(時間外・休日労働時間を含む)、労働日数、業務内容(特に責任の重さなどを含む)等
    4. 定期健康診断やその他の健康診断の結果
    5. ストレスチェックの実施時期が繁忙期又は比較的閑散期であったかどうかの情報
    6. 職場巡視における職場環境の状況に関する情報

    面談によるストレス状況等の確認・評価

    面談を担当する医師は、事前に入手した情報やその場で本人から聴取した内容に基づいて、ストレス状況等の確認に努めます。現在の勤務状況やストレス負荷の程度、生活習慣など、業務以外に心身に影響を与える事柄などが主な参考情報になります。

    これらの確認を通して、医師は面談者のストレスが業務に起因するのか否かや、心理的負担が心身に与えている悪影響の大きさを評価します。業務に起因する場合はその原因特定に努め、就業上の措置が必要かどうかなどの評価を下します。

    面談による評価を踏まえた本人への指導・助言

    医師は先の評価を踏まえて、面談者のストレス状態を改善するための指導や助言を行います。抑うつ症状などメンタルヘルス不調の兆候が顕著にみられた面談者に対しては、専門医療機関の受診を推奨する場合もあります。

    個人情報の保護と事業者への報告についての同意

    面談の冒頭で、医師は面談者に対して、面談で得た個人情報を保護することを伝える一方で、適切な対処を求めるために事業者へ報告することを伝え、同意を得ることが必要です。同意が得られない場合は面談を行うことができません。

    フォローアップ

    引き続き経過観察が必要と判断された場合、医師は今後も面談や支援等を継続することを面談者に提案することがあります。そのフォローアップを受けるかどうかの判断は、面談者本人が任意で決められます。

    面談以外の高ストレス者への対応

    いくら対策を講じたとしても、すべての高ストレス者が面談を希望するかと言えば、やはり難しいのが実情です。しかしだからと言って、何もできないわけではありません。以下では、面談を希望しない高ストレス者への対応策について紹介します。

    運動機会の増進

    運動することでセロトニンの分泌が増加し、興奮やイライラを鎮めることで心の安定につながります。また、睡眠の質を向上させるメラトニンも分泌されるため、運動の継続はメンタルヘルス対策に効果をもたらすことが期待されるのです。

    また運動で体を動かすことは、精神的ストレスの発散にもつながります。「疾病予防および健康に対する身体活動・運動の効用と実効性に影響する要因」で記載されている身体的な効果は2つあります。

    • ストレスの解消、うつ病の予防・改善に有効
    • シェイプアップし、自己イメージが改善

    運動によってストレス発散やセルフイメージ・自信の向上ができると、仕事面においても、集中力や目標達成能力の向上といった良い影響を及ぼします。また、従業員同士で運動不足解消に取り組むことは、従業員同士のメンタルヘルス維持やコミュニケーション促進にも効果的です。

    関連記事:運動とメンタルヘルスの関係とは?有効性と従業員への取組み

    運動機会の促進にあたり、研修会内での運動イベントの実施など単発の施策に加えて、運動習慣の定着に向けた継続的な施策も同時に行うことが重要となります。

    ▼実施施策例

    • ウォーキングイベントへの実施
    • 運動会などのスポーツイベントの実施
    • ラジオ体操の実施
    • 運動サークルの運営
    • 徒歩や自転車での通勤環境の整備
    • スポーツクラブへの補助金
    • 福利厚生の整備

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    食生活の改善

    適切な量とバランスの良い食事は運動習慣と並んで従業員の心身を活性化し、業務のパフォーマンスをあげる取り組みとして欠かせません。職場において、従業員が自ら正しい食事を選べるように、継続的な情報提供や実践活動、サポートが必要になります。

    ▼実施施策例

    • 社食などで健康づくり支援メニューを提供・栄養素やカロリー等の表示
    • 健康に配慮した食事・飲料の提供や補助
    • 外部事業者等の栄養指導・相談窓口の設置
    • 食生活改善アプリ提供等のサポートの実施
    • 特定保健指導の実施

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    休養の見直し

    長時間労働は過労死やメンタルヘルス不調、ストレスの要因となります。企業はリスクマネジメントの視点からも、長時間労働によって従業員の健康が損なわれないように、時間外労働の削減や、有給休暇の取得促進を行う必要があります。

    ▼実施施策例

    • 有給休暇取得目標の設定
    • ノー残業デーの導入
    • 残業の事前承認制度導入
    • 勤務間インターバル制度の導入
    • 業務繁閑に応じた営業時間の設定

    関連記事:長時間労働の原因や引き起こす問題とは?具体的な対策ステップ

    セルフケアの強化

    メンタルヘルスにおいては、他者からの手助けと同じくらいに本人によるセルフケアも重要です。「セルフケア」はメンタルヘルスを考える中で最も重要で、従業員が自分自身で行うメンタルヘルス対策を指します。

    セルフケアは従業員一人ひとりが自らのストレスを予防し、気付いた時に適切に対処することです。簡単そうですが実は正しい知識がないと適切に対処できません。

    例えば、体や気持ちに異変が生じていても「今の自分は、うつ病かもしれない」と、自発的に気付いて対応できる従業員ばかりではありません。また異変の度合いや、生じる症状や頻度は、人によってそれぞれであるため、判断が難しい場合があります。

    このセルフケアが十分にできれば、不調を未然に防いだり、重度に至る前に対処でき、組織全体でストレスへの対応力が強化されることとなります。また不調を感じた場合も重症化することなく改善できれば、企業にとってのダメージも軽減できます。

    ストレスの認知や、その反応に自ら気付くためには、従業員一人ひとりがストレス要因に対する反応や、心の健康について理解するとともに、気付こうとする姿勢が必要です。そのため面談を希望しない人には、せめてセルフケアに役立つ資料やチェックシート等を提供し、それを参照するように促すことでも一定の効果が期待できます。

    ですが、自ら気付き、対応する「セルフケア」を適切にできるようになるには、教育研修の機会を設けて、意識を高めていくことが重要です。

    関連記事:セルフケアの具体例|基本、必要性、職場のメンタルヘルス対策

    職場環境の改善

    従業員が1日の多くの時間を過ごす職場環境が悪いと従業員に大きな負担がかかり、企業の生産性低下にもつながりかねません。

    ストレスチェックの結果を活用して、職場環境の改善をしましょう。職場に潜在するストレス要因を特定し、それらを組織的に改善していくことで、ストレス負荷の低い職場環境の構築が可能です。従業員が働きやすい快適な職場環境を形成する配慮義務が事業主にあると定められています。

    職場環境とは、単に作業をする場所そのものに限られません。作業方法や疲労回復するための設備なども、職場環境に含まれています。

    • 人間関係:コミュニケーションなど
    • 業務環境:空調照明など~設備レイアウトなど
    • 業務内容:裁量権、負荷の量、労働時間

    ストレスチェックの結果によって、これらの職場環境の必要性と改善のための対策が浮き彫りになります。ストレスチェックを形骸化することなくメンタルヘルス対策の一次予防として生かすことで働く環境が整い、従業員一人ひとりがパフォーマンスを最大限発揮できるようになります。

    関連記事:職場環境とは|改善するアイデアと具体例、取り組み事例

    社外の相談窓口設置

    社外に相談窓口を設置するのも一つの手です。

    2020年6月に施行された改正労働施策総合推進法によって設置が義務化されています。中小企業については2022年3月31日までは努力義務となっていますが、2022年4月1日には、大企業と同様に義務化が適用されるため、全ての企業において体制整備が必要となってきます。

    相談窓口は社内・社外いずれかに設置するものです。しかし、高いストレスを感じて深刻に悩んでいる場合などは、相談窓口に相談を持ち掛けたことを周りに知られる不安や、相談によって、知られたくない人(例えばハラスメントの原因となる相手)にまで広まってしまうこと、社内に対する不信感などを抱いている可能性があるため、社外の相談窓口の方が相談しやすくなることが考えられます。

    特に事業所内の相談窓口の場合、対応者を知っている場合が多く、それが故に相談しづらいという不安が考えられます。また高ストレス者は、周囲からの評価や見られ方、噂に敏感であることが多く、知られることを嫌う傾向があります。そこで、気軽に相談できることがプラスに働く可能性があるため、社外に専門相談窓口を設置する方が良いでしょう。

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    メンタル不調の復帰支援

    メンタル不調を発症した従業員の治療と、休職後の職場復帰・再発予防の取り組みをおろそかにすると、再発したり離職につながることもあるため、慎重に取り組む必要があります。

    休職した従業員、管理監督者、職場内産業保健スタッフ等と連携して適正かつ慎重に進めましょう。

    産業医の協力体制をつくる

    休職者・産業医と連携し、休職・復職の判断、休職時・休職中・復職時・復職後などの各タイミングでの面談を実施して、企業として適切な判断を行いましょう。

    例えば、従業員の主治医の診断書により、休職が必要とのことで連絡を受けた場合でも、本当に休職が必要かどうか、産業医によるアドバイスを求めることも重要です。また、復職の申し出の際も同様です。

    産業医と、従業員の主治医の意見が異なる場合は、労働安全衛生法第十三条に基づき、産業医の意見を尊重しましょう。

    労働安全衛生法

    第十三条

    3 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならない。

    5 産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。

    6 事業者は、前項の勧告を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該勧告の内容その他の厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

    引用元:労働安全衛生法

    復帰支援プランをつくる

    休職者が安心して療養に専念できるよう配慮しつつ、休職者の管理監督者、職場内産業保健スタッフ等と連携して復帰支援プランを作成し、職場復帰を支援しましょう。

    職場復帰支援プログラムとは、職場復帰支援についてあらかじめ定めた事業場全体のルールのことです。

    職場復帰支援プランとは休業していた労働者が復職するにあたって、復帰日、就業上の配慮など個別具体的な支援内容を定めたものです。すなわち、休職者に合わせて作成された復帰までの計画書のことです。計画休職者対応は、一人ひとりの状況や特性が異なるため個別対応となります。休職者がスムーズに職場復帰するために、休職から復職までの流れや復職の日、復職後の部署を明確化したプランに落とし込んでいきます。

    職場復帰が可能と判断された場合の「職場復帰支援プラン」

    • 職場復帰日
    • 管理監督者による就業上の配慮:業務サポートの内容や方法、業務内容や業務量の変更、段階的な就業上の配慮、治療上必要な配慮など
    • 人事労務管理上の対応等:配置転換や異動の必要性、勤務制度変更の可否及び必要性
    • 産業医等による医学的見地からみた意見:安全配慮義務に関する助言、職場復帰支援に関する意見
    • フォローアップ:管理監督者や産業保健スタッフ等によるフォローアップの方法、就業制限等の見直しを行うタイミング、全ての就業上の配慮や医学的観察が不要となる時期についての見通し
    • その他:労働者が自ら責任を持って行うべき事項、試し出勤制度の利用、事業場外資源の利用

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